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とんでもスキルで異世界放浪メシ  作者: 江口 連


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第六百話 何事もほどほどに

一日遅れの更新です(汗)

 家のダイニングに、ハイエルフのみなさんと奴隷たち(従業員)が勢揃いしている。

 テーブルの上には、メンチカツが大量に載った皿が。

 山盛りの揚げたてメンチカツにみんな目が釘付けだ。

 特に子どもたちはソワソワしている。

 それにクスリとしながら、「ハイエルフのみなさんのリクエス卜ではあったけど、メンチカツだけじゃなく他にも何か作ればよかったかなぁ」なんて考えていた。

 でも、宴会とは言ったけど、どっちかっていうと親睦を兼ねた夕食会みたいなもんだからこれはこれでいいか。

「えー、今回うちに来ていただいたエルフのみなさんの歓迎会です。今夜は無礼講なので、大いに食べて大いに飲みましょう。ということで、カンパ~イ」

 俺のカンパイの合図とともになみなみとビールが注がれた陶器のタンブラーがカチンッと打ち付けられていく。

 まずは喉を潤してからとでも言うように、大人たちはビールで喉を鳴らす。

「ク~、美味いのう!」

「やっぱ冷えたビールは最高だな!」

「冷えたビールが体中に染み渡るぜ~」

 バルテル、ルーク、アーヴィンの酒大好きな酒飲みどもが声をあげる。

「これは、冷えたエールか?」

「いや、エールとはちょっと違うかも」

「ああ。苦味があるな。でも、冷えているからかスッキリしていいな」

「あたしはこれ好きかも」

「冷えているのがいいのかゴクゴクいけるな」

「うん、悪くないわ」

 キンキンに冷えたビールは、ハイエルフのみなさんにも好評のようだ。

 冷えたビールの美味さは既に承知のアルバン、テレーザ、トニ、アイヤ、タバサ、ペーターも、実に美味そうにゴクゴクとビールを飲み干している。

 子どもたちはというと、早速思い思いにメンチカツを皿に取っている。

 事前に「揚げたてだからそのままでも美味いし、ウスターソースをかけても美味いぞ」と伝えてあったのだが、コスティ君とセリヤちゃんとエーリク君は最初は何もつけづに、オリバー君とロッテちゃんはウスターソースをかけて楽しむようだ。

 サクサクの揚げたてメンチカツにフォークを刺してかぶりついている。

「美味しい~!」

 ロッテちゃんが小さな頭を左右に振りながら叫ぶ。

「ムコーダのお兄ちゃんっ、これすっごい美味しいよ! 中にねトロ~ッとしたのが入っててそれも美味しいの!」

 興奮して頬を赤らめながらそう俺に伝えてくるロッテちゃん。

 そんなロッテちゃんを見てチーズINメンチカツを選んだであろうオリバー君とセリヤちゃんも同意するようにウンウンと頷いている。

「こっちのお肉のもすっごく美味しいよ。サクッとして噛むと中から美味しいお肉の汁がジュワーッて出てくるんだ」

 普通のメンチカツを選んだらしいコスティ君がそう言った。

 そして、同じく普通のメンチカツを選んだエーリク君が「サクサク、ジュワジュワだよ」と言う。

「そっかぁ。良かった。ほら、もっと食いな」

 美味そうに食う子どもたちに気をよくする。

 そして、まずは酒で喉を潤してからと悠長にしている大人組に一言。

「このキンキンに冷えたビールに揚げたてメンチカツってめちゃめちゃ合うんだよね~」

 そう言って見せつけるようにチーズINメンチカツをサクッと頬張ったあとにゴクリとビールを飲んだ。

「プッハー、最高!」

 俺を見ていた大人組が我先にとメンチカツに手を伸ばした。

 そして、メンチカツにかぶりついたあとゴクゴクとビールで流し込んでいく。

「ク~ッ、なんじゃこれは! 無限にイケるぞ!」

「美味過ぎだろ、こりゃ! 本当にここは最高だな! 次から次へと美味いものが食えるんだから!」

「ウメェ、ウメェよ~! 俺、もう一生ここに住む!」

 バルテル、アーヴィン、ルークが冷えたビールとメンチカツの組み合わせに感嘆の声をあげる。

 他の大人組も冷えたビールとメンチカツの組み合わせに幸せそうな顔をして昇天しているよ。

 みんなの反応に「そうだろう、そうだろう」と満足する俺。

 キンキンに冷えたビール&揚げ物の組み合わせは最強なんだって。

 満足気にそんなみんなを見ていると、今度はフェルたちの声が。

『おい、おかわりだ!』

『儂もじゃぞ。もちろんビールものう!』

『俺も! 普通のメンチカツ多めでな!』

『スイも~! スイはねぇ、白いのが入ったのいーっぱいだよ!』

「はいはい」

 食いしん坊カルテットは平常運転だね。

 フェルたちにおかわりを出した後に、子どもたちにメンチカツバーガーを教えたら、こちらも大好評。

 パンに挟むことによって一気に“飯”っていう感じがして、子どもたちも大喜びだった。

 そんなこんなで腹具合も落ち着いたところで、アレを取り出した。

「今日はな、スペシャルなメンチカツも用意したんだ。良い肉を使ってるから数は少ないんだけどな。ということで、一人一つずつね~」

 そう言いながら、一人一つずつ取っていってもらう。

『おいっ、一つって我らもか?!』

 スペシャルメンチカツ一つだけというところに焦るフェルたち。

「あー、フェルたちは三つずつな」

『主殿、我らには三つは少な過ぎると思うのう』

『そうだそうだ!』

『あるじー、少ないよー』

「そう言うなって。気に入ったらまた作ってやるから」

『その言葉、忘れるなよ!』

「へいへい」

 スペシャルメンチカツをフェルたちにも配り終わり、いざ実食。

 サクッ―――。

「うまぁ。何もつけないで十分に美味い! というか、これはこのままが正解だな!」

 さすがグリーンドラゴン。

 ドラゴンステーキやローストドラゴンももちろん美味いけど、メンチカツにしてもこれまた美味い。

 肉汁ブワッで肉の旨みが口の中で爆発だわ。

 肉を粗びきにしたのも大正解だった。

 一口頬張ったあとには当然キンキンに冷えたビールをゴクリ。

「カ~、最高!」

 俺がスペシャルメンチカツをご機嫌で食っていると……。

 ジー……。

「ムコーダ、良い肉というと?」

「食ってみれば分かるよ、ヨルゲンさん」

 そう言うと、ヨルゲンさんがスペシャルメンチカツを凝視した後にパクリ。

 それに続くハイエルフのみなさん。

「これは!」

「アレね!」

「最高じゃないか!」

「あの肉をこんな風に食べるなんて!」

「美味いとしか言いようがないな!」

「これは美味し過ぎね!」

 グリーンドラゴンの肉を使ったスペシャルメンチカツはハイエルフのみなさんも絶賛だ。

 そんな中、スペシャルメンチカツになかなか手を付けないうちの従業員たち。

 子どもたちは大人たちに釣られてというか、その様子を敏感に感じ取って様子を窺っているようだ。

「ムコーダさんが良い肉って言う辺りがすっごーく怖いんだけど……」

「姉ちゃんの言うとおりだぜ。酔いも醒めちまったわ」

「だよな。怖くて手が出せねぇ」

 おい、コラ。

 タバサ、ルーク、アーヴィンよ、どこが怖いっていうんだ、どこが。

「そうじゃのう。普通にロックバードやらダンジョン豚やダンジョン牛の上位種を出してくるお人だからのう」

「今回は、わざわざ良い肉と宣言している。恐ろしい」

 バルテルにペーターまでそんなこと言って。

 この冒険者組の発言に、アルバン、テレーザ、トニ、アイヤも「やっぱり」って顔しないでよ。

 というか顔が引き攣ってるからねっ。

「いやさ、良い肉ではあるけど、一人一つずつなんだし、まぁ楽しんでよ」

「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」

 ちょっと~みんな「何軽く言ってんの?」って顔しないでくれるかな。

「で、なんの肉なんだい?」

「い、いや、別にいいじゃんそれはさ。な、タバサ~」

 ジト目で見てくるタバサから目を逸らしながらそういう俺。

「これは緑竜(グリーンドラゴン)の肉だぞ。実に立派な個体だった」

 ヴェルデさんっ、なにバラしてんのっ?!

 というか、冒険者組っ、頭抱えないでよ!

「グリーンドラゴンって…………」

「つ、ついにやりやがった…………」

「あり得ないだろ、ムコーダさぁん…………」

「なんてもんを出してくるんじゃ…………」

「ドラゴンはさすがにダメだと思う…………」

 みんな喜んでくれるかと思って出したのに、言い方ぁ!

 アルバン、テレーザ、トニ、アイヤはドラゴンと聞いて呆然としているし。

 ハイエルフさんたちは美味そうにスペシャルメンチカツを食ってビールをゴクゴク飲んでいるし、うちの従業員たちは呆然としているしでカオスだな。

 そんなカオスな状況を打破するのは、やっぱりロッテちゃんだった。

「ムコーダのお兄ちゃん、これドラゴンのお肉なの?!」

「そうだよ。すっごく美味いんだぞ~」

「うわぁ~、食べていい? ねぇ、食べていい?」

 俺が「もちろんだよ」と言うと、なんの躊躇もなくかぶりつくロッテちゃん。

「んん~~~っ、美味しい!!!」

「だろ。はいはい、みんなも食いな」

 他の子どもたちにもそう勧めると、恐る恐るスペシャルメンチカツを口にする。

 するとたちまち笑顔に。

 そうそう、それでいいんだよ。

 子どもは素直だね~。

「ほらほら、みんなも食いなって。せっかく作ったのが冷めちゃうじゃん」

 そう言って促すと、諦めたのかようやくスペシャルメンチカツに口をつける従業員の大人組。

「あ~、美味しいのは美味しいけど、これ一口でいくらになるのかが気になって食べた気がしないわぁ……」

「きっとこれ一つで立派な家が建つんだぜ……」

「だよなぁ。なんせドラゴンだもんなぁ……」

「ドラゴンを食ったなんて、冥土の土産話じゃな……」

「食べ物を食べているのに、胃の腑が痛い……」

 タバサ、ルーク、アーヴィン、バルテル、ペーター、君たちなんでそういうこと言うんだよぉ~。

 美味いんだから美味いとだけ言っときゃいいんだよ。

 アルバン、テレーザ、トニ、アイヤも表情失くして食ってんじゃん。

 も~。

 美味しい肉が手に入ったから、ちょっとしたお裾分け感覚で作っただけじゃん。

 なんだか締まらない終わり方になってしまった宴会もとい夕食会なのだった。

 俺は一つ学んだ。

 人に食わせるときは、美味いといっても材料はほどほどに。

 ちなみにだけど、食いしん坊カルテットは当然のように再びのドラゴンメンチカツを所望してきたよ。

 フェルもゴン爺もドラちゃんもスイも『次は絶対に腹いっぱい食う!』だってさ。






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― 新着の感想 ―
冷えたビールはうまい。 それは間違いない だけど… 常温でもうまいビールはある。 セントセバスチャン ダーク、うまいよ。 高いけど。
自分で狩って自分で消費するなら価値は美味しさだけだぞ 市場に出さない限りどんな物にも値段は付かない 漁師だって幻の魚を獲っても案外簡単に食べるしその場合市場価格は考えない
ムコーダさんの非常識な善意はもうそう言う物と諦めてもらうしかw あと、相変わらずロッテちゃんが良い意味でムードブレイカーになっててムコーダさんも助かってるね。
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