第三百六十話 イケメン爆ぜろ、リア充爆ぜろ
腹いっぱいになったフェルとドラちゃんとスイは早々に寝てしまった。
俺はというと……。
「さてと、デミウルゴス様へのお供えだな。今日はちょっと趣向を変えて、これも一緒に」
旅の途中もデミウルゴス様へのお供えはしていたけど、デミウルゴス様の希望もあって日本酒とプレミアムな缶つまばかりになってたからな。
今日の夕飯はちょうど日本酒にも合うモツ鍋だったから、一緒にどうかと思ってデミウルゴス様の分も用意してある。
すっかり日本酒の虜になってしまったデミウルゴス様だから、お供に抜群のモツ鍋はきっと気に入ってもらえると思うんだよね。
そして、要の日本酒は、今回は週間ランキングの中から選んでみた。
まず1本目は、栃木の酒だ。
低温でじっくりと醸した純米大吟醸で、メロンを思わせるフルーティーな香りに、口当たりが柔らかくほのかな甘味が広がるそう。
近年人気で需要に対し供給が追い付かず入手困難になりつつあるとのことだ。
2本目は、福井県の酒だ。
0℃で2年間熟成させた純米大吟醸酒。
氷温で長期熟成させたことでグレープフルーツのような香りが楽しめるとのこと。
アメリカの日本酒品評会でも3年連続金賞受賞しているそうだ。
ちなみにこのシリーズの酒は、数々の政府主催の式典などに使用されて、世界の要人が集まる席で振る舞われる酒というのが決め手になった。
3本目は、山形の酒だ。
浮世絵のラベルと名前が特徴的で目に付いたので、これを選んでみた。
辛口の純米吟醸酒で、このシリーズの酒の辛口タイプも造ってほしいとの要望で3年の試醸をへて完成させた酒なのだそう。
フルーティーな香りのスッキリとした味わいの辛口酒とのことだ。
この3本と、いつものプレミアムな缶つまを準備。
モツ鍋はすぐに食えるように熱々のまま土鍋ごと。
とりあえずスタンダードな醤油味のモツ鍋で、もちろん〆の中華麺も用意したぞ。
これでOK。
すべてをリビングのテーブルの上に並べて……。
「デミウルゴス様、どうぞお納めください」
『おぅおぅ、いつもすまんの~。楽しみに待っておったところじゃった』
「いつもの日本酒とおつまみの缶つま、そして……、このモツ鍋です。私が作ったものですが、日本酒にも合うと思いますので、どうぞ」
『鍋か! 地球の神様にご馳走してもらったことがあるぞ! あれは美味かったのう~。日本酒にも抜群に合う食べ物じゃった。それに具を食べた後の〆というのがまた格別でなぁ』
「デミウルゴス様がご馳走してもらった鍋とは違うと思いますけど、このモツ鍋もなかなかのものですよ。この鍋の〆は中華麺なんですが、これも美味いですから」
『ほぉ~、そうかそうか。それは楽しみじゃのう』
「煮えていますので、そのままどうぞ。具を食べ終えたら、〆はこの中華麺を入れて少し煮込んでから召し上がってください」
『すぐに食べられるとは、至れり尽くせりじゃのう。ありがたい。早速日本酒と一緒にいただくとしよう』
テーブルの上にあった酒やら土鍋やらが淡い光とともに消えていった。
『そうじゃ、一応お主には伝えておくが、お主らを召喚したレイセヘル王国じゃが、滅んだぞ』
「え? お隣のマルベール王国と戦争になったって聞いてますけど、やっぱり負けたってことですか?」
『うむ。案の定負けおったわい』
デミウルゴス様の話によると、戦争を仕掛けたはずのレイセヘル王国は、今までのお返しとばかりに魔族の国からも激しい攻撃にあい、強者揃いのマルベール王国からも逆に攻め込まれていたそう。
しかし、圧倒的な数の兵士によって、それでも何とか両国に対抗していたという。
その圧倒的な数の兵士というのが、奴隷にされた貧民、そして獣人やエルフ、ドワーフで構成されていた。
レイセヘル王国の奴隷は、デミウルゴス様に以前聞いた“隷属の腕輪”に似た魔道具を着けさせて歯向かわないよう行動を制限するそうだが……。
『奴隷兵など使い捨て同然じゃからのう。どうせ死ぬのなら散々苦しめられたレイセヘル王国に一矢報いて死ぬ方がマシだと、奴隷たちの反乱にあったんじゃ。これが決め手でな、短期間のうちにレイセヘル王国は瓦解していったわい。王族は全員斬首、戦争に積極的に加担したと言われる王族に連なった王族派と呼ばれる貴族たちも軒並み処刑されたぞ』
魔道具の効果で死ぬかもしれないが、それでもレイセヘル王国に手を貸す形で死ぬくらいならと玉砕覚悟での行動だったらしい。
あの国では奴隷は散々な扱いだったみたいだし、最初に会った贅沢三昧そうな豚王を見るからに、あの国で甘い汁を吸っていたのは王族や貴族連中だけっぽかったからなぁ。
因果応報というか自業自得というか、これも起こるべくして起こった結果なんだろう。
戦わされた奴隷たちについては哀れだと思うけど、レイセヘル王国が滅んだことについての同情の気持ちはない。
「ということは、レイセヘル王国はマルベール王国に併合されるってことですかね?」
『そうなるじゃろうのう。一般庶民はそのことを喜んでいるかもしれんのう。レイセヘル王国では一般庶民は搾り取られるだけ搾り取られていたのじゃからのう』
レイセヘル王国じゃ王族や貴族、そしてそれに通じる一部の裕福な商人以外は、税と称して搾取に次ぐ搾取だったらしい。
マルベール王国も俺が今いるレオンハルト王国と同じく差別のない比較的自由な国らしいし、デミウルゴス様の話では無茶な税を取るような国でもないようだから、大分暮らしやすくなるのではないかと思う。
『そうそう、最後にお主と一緒に召喚された3人の続報じゃ。マルベール王国の王都の教会で結婚式も挙げて名実ともに夫婦となったわい。それにダンジョンで無事エリクサーも見つけてな、莉緒とかいったおなごの腕も元通りじゃぞ。この3人、実に幸せそうじゃった。幸せなのはいいことじゃ。ふぉっふぉっふぉっ』
…………デミウルゴス様、ここでその情報ぶっこんできますか。
ぐぬぬぬぬぬ、おのれイケメンめぇぇぇぇ。
美少女2人も嫁にするなんてっ。
羨まし過ぎるだろーーーっ(血涙)。
俺についてるのは従魔が3匹なのに……。
何この落差。
いや、フェルとドラちゃんとスイがどうこうってことはないんだよ、もちろん。
何といってもフェルとドラちゃんとスイは俺の大切な仲間なんだから。
だけどさ、だけどさっ、俺には女性の影もないんだぜっ。
文句も言いたくなるってもんだよ。
ハァ~、俺に女運がないとはいってもこの仕打ちはあんまりだぜ。
返す返すイケメン爆ぜろリア充爆ぜろだ。
ケッ。
俺は俺で明日からの肉ダンジョン祭りを楽しんでやる。
その日の夜は、すさんだ心を癒すように俺の癒しであるスイたんを抱きしめて寝たよ。




