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アナザポリス・オリジナル-怪力乱神幻瞑録-  作者: 浦切三語
第五幕 ホワイトブラッド・セル・カンパニー
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5-3 地獄はここにある

 ライトを動かせば、光が滲むように闇を溶かし、室内の全容を何もかも露わにしていく。だが、いくら照明を当てても晴れない闇が、壁の至る所に点在していた。煤の痕だと、遅れて悟った。天井部にはスプリンクラーが設置されてはいるが、人為的な破壊の痕が見られた。


 再牙は嫌な気配を強く感じた。心臓の鼓動が高鳴る。それでも、彼は歩みを止めない。恐怖心に対して鈍感になることの重要性を、彼は熟知している。不穏な気配の漂う場。そこから導き出されるであろう残酷な現実。出来ればこんな予想は外れてほしいと願いつつ、しかしいざという時に備えて、心の呼吸を整える。


 舐めるようにライトの灯をあちこちに当て、探索に徹する。部屋の隅に置かれているのは、破損が著しい人間大の生物培養ポッド。本来なら中を満たしていたと思しき有機溶媒も、生体試料も見当たらない。割れたガラスの表面には、茶褐色の濃い大きな染みが広がっている。


 右の壁に隣接して設置されている事務机には、旧式マンマシンインターフェイス搭載の大型パソコンが置かれていた。その横には、熱で溶けてしまったと思しき、回線接続式の原子間力顕微鏡の残骸が数台。


 本来なら全て、火災発生後に蒼天機関(ガルディアン)の検閲が入った時点で押収される代物だ。それがほぼ手つかずのままここにあるということは、機関側も、この不気味な地下施設の存在どころか、入り口さえ発見出来なかったのだろう。


 だが、そんなことを考えるよりもずっと、再牙の視線を釘付けにして離さないものが、目の前にあった。


 視線の先、部屋のど真ん中。天井に取り付けられた、二十個のすり鉢状の装置。そこから逆しまに力なくぶら下がるのは、全裸姿の少年少女の遺骸。


 縦に四列、横に五列。整然と吊るされた小さな遺体の肌は、体組織が壊死したせいで灰色にくすみ、蛆虫が湧いてうじゃじゃけていた。


 こういう光景は何度も見てきたが、それでも決して慣れるものではない。再牙は息を呑み込むと、ゆっくりと遺体に近づいた。手で蛆虫たちを払いのけて、遺体にライトを向ける。


 頭部の損壊が酷いせいで、顔は判断のしようがない。だがしかし、剥き出しの骨や身体全体の輪郭から、遺体の主が第二次性徴を迎える前の少年少女と見て間違いはなかった。


 手元のダイヤルを回して光量を強め、更に詳しく観察する。物言わぬ少年少女達の頭部には無数の電極コードが取り付けられ、焼け焦げた制御盤へと伸びている。加えて、未発達な体の至る所には樹脂製のミリチューブが突き刺さっていた。チューブの先端は、部屋の中央に置かれた機材――遺伝情報出力装置と、ナノ細胞改編機器へ繋がれている。


「どういうことだ……」


 それは、一人でこんな地の底にいるという恐怖心を紛らわす意味もあったが、純粋に疑問に思ったが故に出た独り言だった。遺伝情報出力装置に、ナノ細胞改編機器。何故に、今年販売されたばかりのナノマシン用の機材が、四年前に封鎖された施設の地下にあるのか。誰かがここで生活しているのかとも思ったが、ありえないと頭を振る。


 気は乗らないが、もっと詳細にこの遺体を調べる必要がある。そうして分かったのは、二十の遺体は共通して、頭部の損壊が最も酷いという点だ。ぱっくりと赤黒く開いた後頭部からは、干からびて変色した血管の束と青白い頭骨が剥き出しになっていて、綺麗に中身がくりぬかれていた。明らかに、人の手が加わっている。


 人体実験。忌むべき四つの文字が脳裏を過った時だ。遺体のあちこちに、黒い線が刻まれていることに気が付いた。つぶさに観察すると、その黒い線は重要臓器を避けるように、遺体を縦断していた。焦熱痕だ。それも、鋭利な道具でつけられた。


 ふと、練馬区の麻薬売人・伊原誠一が使用していた凶器を思い出した。高電磁ナイフ。本来なら医療用としての役目を持つそれは、最高到達温度が百五十度にもなる。血を一滴も流す事無く、処置が可能な万能の道具。この遺体には、それが使われていた痕跡がある。


 遺体から距離を置いて、再牙は大きく溜息をついた。ふらふらとした足取りで、今度は事務机の中を探る。地下の気温は二十度を下回っているというのに、背中に大量の汗をかいている。最悪の状況を考えれば仕方がないことだった。


 この地下施設で、非人道的なおぞましい実験が行われていたのは、ここに存在する物言わぬ死者達の骸を見れば一目瞭然。最悪の状況とは、その実験に、獅子原錠一も参加していたのではないか。ということの推測である。


 外れて欲しい。琴美のことを考えれば、尚更そう思わずにはいられない。が、事務机の中にぽつねんと収納されていた一冊の手帳を見つけた事で、その予想は辛くも現実のものとなる。


 ごく普通の手帳だ。埃を払って、破かぬように慎重にページを捲ると、文字の嵐が襲ってきた。ボールペンで書かれたと思しき、ありったけのメモ。ナノテクノロジーに関連すると思しき専門用語が並び、手書きのグラフや簡易設計図なんかも書かれていた。


 全体的に字の癖が強くて所々が擦れている為、手記内容の全容は把握できない。だがしかし、ここに勤めていた研究員が残した、実験手帳であるに違いない事は分かった。


 中ほどまで頁を捲った所で、再牙の手が止まった。写真が一枚挟まれている。写真の中には、真ん中に赤ん坊を抱えた、細身で眼鏡を掛けた男性がいた。その隣には男性の妻と思しき女性が立っている。どちらもにこやかな笑みを浮かべていた。


 再牙ははやる気持ちを抑えつつ、写真の裏側を見た。そこには、実に丁寧な想いの籠った字体で、次のように書かれていた。







『愛しい家族と、東北地方の岬にて。二〇二八年五月二日。獅子原錠一』







「…………ふざけるなよ」


 写真を手にしてひとりごちる。肩を震わせ、再牙は我が事のように怒りを肚の底に蓄えた。振り返り、吊り下げられた少年少女の亡骸と、写真に写る錠一氏の顔を交互に見やり、そうして悔しそうに下唇を噛んだ。無意識での行動だった。


 獅子原錠一が家族を残して幻幽都市へ足を運んだ理由……それが、こんな凄惨極まる人体実験をやる為だとは、再牙は絶対に思いたく無かった。思いたくは無かったがしかし、それを否定するだけの材料は、どこにもない。


 それに、認めたくはないが辻褄も合う。錠一氏の住居記録が、地理マップ検索サービスサイトに登録されていなかった件だ。WBCカンパニーでは、会社の寮で暮らすように全社員が義務付けられていた。社員の自己管理を、会社側でサポートする為という名目でだ。


 企業が保有している寮に従業員が住んでいる場合、《幽歩道》に住居情報は登録されない。会社情報、ならびに従業員の記録を収集・公開しているのは、個人運営サイトの幻幽ビジネス・データのみである。


 だが、幻幽ビジネス・データは現在、電子蜂(ウイルス)の電子攻撃でデータベースが壊滅状態。サイトは一時的に封鎖されている。確認する事など、最初から出来なかったのだ。


「(こんなのあんまりだ。琴美が可哀そう過ぎるじゃないか……!)」


 WBCカンパニーは非公式の実験施設を地下に保有していた。その施設では、年端もいかぬ少年少女達を残酷に弄り、何らかの実験に利用していた。そして、地下実験施設の事務机から獅子原錠一の研究メモが記された手帳が発見された――つまり、錠一氏がWBCカンパニーの研究員として雇われ、ここで行われていた極悪非道の実験に参加していたという事実を指している。


 それ以外に、果たしてどんな結論を導き出せというのか。


「くそっ!」


 心に燃え上がる怒りと哀しみを湛えたまま、部屋の左奥へ無意味に軍用ライトの光を向けた時だ。またしても、扉が目に入った。それも、さっきのような鉄製のものではない。乾燥した血で赤黒く汚れているそれは、元々は白亜色に染められた、カーボン製のドアであった。


「…………」


 写真と手帳をオルガンチノのポケットに仕舞い込んでから、再牙はやり場のない怒りを発散するかの如く拳を振るい、扉をぶち割ろうとしたが、彼が扉の前に立った途端、それは自動で開いた。彼の進むべき道を示すかのように、暗闇の中で照明が弾ける。つんのめりつつも視界に飛び込んできた眩しさに、思わず目を細める。


 光に目が慣れてくる。不意に、鉄製扉の横にあった、壊れた配電盤の存在を思い出した。あの配電盤は確かに故障していた。つまり、この部屋には電気が通っていない。確かな筈だ。自動ドアが作動する理由が、全く思いつかない。


【ネットルームは現在、非常電源にて稼働中です。使用可能な操縦席(コンソール)は、A2104、A3026、B4896のみに限られます。繰り返します。ネットルームは現在……】


 電子音声の機械的なオペレートが頭上で鳴り響くのを耳にしながら、再牙はぐるりと部屋を見渡した。地が白い壁の一面に、色とりどりの点描が為されている。それら点描に使用されている塗料は只の装飾用ではなかった。一つ一つが、ある重要な意味を備えていた。


 再牙は訝しみつつ、指の腹で軽く、壁を撫でた。点描模様から指先へ、微かな熱の伝わりを感じる。最大変換効率八十九%を誇る、最先端を走る都市技術の一端。


 疑問は、たちまちのうちに氷解した。


「(ああ、塗料式電池(ペンキ)か。これのおかげで稼働出来ていると……あぁでも、くそ、よりにもよってネットルームとはなぁ……)」


 流線型のフォルムが特徴的な、大きな背もたれのついたカーボン製の白色アームチェア。超現実仮想空間(ネオ・ヴァーチャルスペース)没入(ダイヴ)するのに必要不可欠となる操縦席(コンソール)が、目の前に配置されている。


 脚と肘掛け、そして背もたれの淵に、青白い蛍光色が灯っていた。丸みを帯びた脚からは何十ものコードが伸びて、床の上を這っている。


 その光景を見ているだけで、脳に埋め込まれてあるサーキット・チップが疼きそうだった。うなじの辺りを気にしつつ、再牙は苦い顔を浮かべた。


 再牙は没入(ダイヴ)するつもりでいる。錠一氏のものと思しき手帳と写真は手に入ったが、まだ諦めて切れていなかった。きっと何かの間違いだ。そうに決まっている。いや、そうであって欲しい。心からそう願った。


 錠一氏が、あのような現場で働く為に幻幽都市を訪れたとは、考えたくも無い。オルガンチノのポケットに裏付けの品を入れておきながら、再牙の心は割り切れていなかった。  


 甘い考えに酔って、一縷の望みを託しているのは承知している。だが万屋として。それ以上に人間として。そのような願いを持つのは当然の反応ではないのか。誰一人として得する事の無い結末を、少なくとも再牙は望んでいない。


 琴美だってきっと、同じ思いを抱いていることだろう。父親に愛情以外の感情を抱いているのに違いないが……それでも、実の父親が少年少女を八つ裂きにして実験していたなどと知ったら、とても耐えられないだろう。


 何か、『理由』があるはずだ。今はそれを探さなければならない。錠一氏は人体実験をしたかったが為に、この街を訪れた訳ではないはずだ。そう、己に強く言い聞かせて、再牙は操縦席(コンソール)の一つへ腰掛けた。


 下半身を包み込むような、柔らかな温かみを感じる。中々に高級な操縦席(コンソール)だ。再牙は無意識のうちに、不安と緊張がない交ぜになった顔を浮かべていた。まるで、生まれて初めて注射を受ける幼児のように。


 操縦席(コンソール)の背もたれに体を預ける。気持ちを落ち着かせようと、深く息を吐く。再牙の心拍数を計測した座席が形状をやや変化させながら、半透明の防護壁を卵型に展開。没入(ダイヴ)するにあたって無防備になる生身(リアルボディ)を防護する、文字通りの殻だ。


 再牙はポケットから、親指大程度の電脳端末(コネクター)を取り出した。右手の人差指でこめかみの辺りを強く押す。連動してうなじの辺りに取り付けた生体カバーがスライド・オープンし、脳神経回路への接続口が露わになった。


 再牙は慎重な手つきで、電脳端末(コネクター)を接続口に差し込んだ。一瞬、こめかみ部に鈍痛が奔るも、直ぐに治まる。続いて、電脳端末(コネクター)のもう片方の端部に爪を引っ掛け、極細の有線を引っ張り出す。アームレスト下部にある差込口に、それを接続。


 脳が疼く。

 目を閉じる。

 意識(サーキット)が奔る。

 0と1の大海へ、全身が沈んでいく。





△▼△▼△▼△▼

 




 次に目を開けた時、再牙は、だだっ広い平原のど真ん中に立っていた。精巧にプログラムされた仮想の風が、清涼な仮想の空気を運んでいる。情報体(アバター)に成り変った再牙の肉体は、それらの情景を現実(リアル)に感じていた。


 電脳ユーザーの多くは没入(ダイヴ)することにより、何とも言えない全能感を味わう傾向にあると言われている。肉体と魂とが量子化されて情報体(アバター)へ変換されるのに合わせて、意識そのものが『拡張された』と錯覚する為である。


 だが、再牙はそんな錯覚は何一つ感じなかった。元々、電脳に対して余り良いイメージを抱いていないのだ。意識の底で感じている仮想世界への没入(ダイヴ)……正確には、電忘症(フリーズ)への極度の恐れが、彼の深層意識にブレーキを掛けていた。無限に広がるネットの海に放り出されたにも関わらず、現実世界よりも窮屈さを覚えるのはそのせいであろう。


 視線の先、何処までも続く緑の光景。量子構造体(フェノジェクト)どころか、人っ子一人見当たらない。超現実仮想空間(ネオ・ヴァーチャルスペース)の、かなり『外れ』に位置する区画だろう。見てるだけで眠たくなりそうな程の退屈な風景からも、それが分かる。


 だが、没入(ダイヴ)してまず初めにここへ来たということは、恐らくこの場所が中継点(セーブポイント)であると考えるのが普通だ。実に、奇妙な話ではあるが。


 企業が保有する電脳設備の大半が、中継点(セーブポイント)電子倉庫(アーカイバ)の近辺に設定している。錠前破り(クラッカー)によるヴァーチャル・テロを始めとした不測の事態が発生した場合、迅速な対応がとれるようにする為だ。加えて、中継点(セーブポイント)には錠前破り(クラッカー)の排除も兼ねて攻撃的なプログラムが仕込まれているケースが一般化している。


 やはり奇妙だ。どう考えても、ここには攻性機能の類がプログラムされていない。部外者である再牙が侵入しても強制排除されないのが、何よりの証拠だ。それに、こんな明け透けた場所を企業情報の厳重な保管先に選択したことにも、違和感を禁じ得ない。


 考えていても埒が空かない。まずは正確な位置情報を知るべきだ。そう思った再牙は、視界の左下隅にあるリンク・ツールを起動し、仮想地図(マップ)を視界に広げた。現在地を指し示す青い輝点の他に、別の仮想空間(ヴァーチャル・スペース)への入り口を示す赤い輝点が、三か所に点在しているのを確認。


 仮想地図(マップ)の詳細情報から仮想IDを検索。再牙の視界に、蛍光色で八桁の数字が表示された。37225651。結構後半のIDだ。少なく見ても、恐らくは八年ほど前に構築された仮想空間(ヴァーチャル・スペース)であるということか。


 詳細情報を十分に確認しなくとも、再牙は直ぐに違和感に気づいた。蒼天機関(ガルディアン)の仮想領域認可証が見当たらないのだ。おまけに、危険区域を示すレッドサインすらない。


「違法に仮想空間(ヴァーチャル・スペース)を組み上げたか、あるいは、他所の企業や公共サービスが使っていた仮想空間(ヴァーチャル・スペース)を強奪でもしたのか……?」


 ぶつくさと疑問を口にしつつも、再牙はリンク・ツールを展開させ、車両構造体のアイコンを選択した。量子情報体(フェノジェクト)で出来た電子単車が、モザイク状態を経て目の前に現出するのを確認して、ぎこちなくも跨る。認証画面に軽く手を翳してエンジンを起動。マフラーから莫大な量子の煙を噴射させ、ネットの海を駆け巡り始めた。


 途中、ビル型の量子構造体(フェノジェクト)が草原の中に点在しているのを幾つか目にした。酷い損壊を受けている。電子蜂(ウイルス)にやられたか。あるいは、錠前破り(クラッカー)の手によるヌメロン・コードの改竄に遭ったかの、どちらかだろう。


 仮想の大草原は途中で途切れることなく、どこまでも続いていく。再牙は途端に空恐ろしくなった。一向に何の変化も見せない光景がこのまま無限に続くのかと思うと、探索を打ち切ろうかどうか迷った。


 その時だ。たまたま視界の端に、人の姿をした情報体(アバター)が佇んでいるのを見かけた。


 慌てて脳内で命令を下し、電子単車にブレーキをかける。現実(リアル)と同じように慣性の法則が働き、車両は進行方向にややつんのめって、急停止した。


 激しいエンジン音に反応して、人影が再牙の方へ振り返った。深い陰影が、太陽の光に照らされて露わになる。


 操縦席から降りた再牙が、唖然とした表情を浮かべた。


「おい、ウソだろ……!?」


 超現実仮想空間(ネオ・ヴァーチャルスペース)に持ち込めるのは、電脳ユーザーの記憶のみに限られる。現実(リアル)に存在する物質は、一切持ち込めない。それが決まりだった。


 電子体の再牙が羽織っているオルガンチノも、凄まじい程の威力を誇る魔銃マクシミリアンも、この世界では何の意味も為さない。それらは所詮、電脳端末(コネクター)を介して読み取った電脳ユーザーの身体情報を、ヌメロン・コードの力で再構築した情報構造体(フェノジェクト)に過ぎないからだ。


 手帳に挟まっていたあの写真も、今は取り出して確認する事すら叶わない。


 しかし、その必要は無かった。


 目の前に立つ長身の男性。白衣を着て眼鏡を掛けたその男が、果たしてあの写真に写っていた男性と同一人物なのかどうか。確かめなくとも、再牙は直感で理解した。


【珍しいな。こんな所に人がやってくるなんて】


 男は驚きと諦めが入り混じった声色で、静かに口にした。再牙は答えず、慎重に足元の草を踏み分けて男に近づき、やがてたっぷりと間をとった所で、尋ねた。


「あなた……獅子原錠一さん……ですよね?」

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