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アナザポリス・オリジナル-怪力乱神幻瞑録-  作者: 浦切三語
幕間<中間回想> これまでのお話
22/78

回想(ダイジェスト)

第一幕~第三幕までのダイジェスト版です。話の流れを整理する意味で掲載いたしました。

【第一幕】

 二〇四〇年十月二十日


 15歳にして親族から見放された少女・獅子原琴美(ししはら ことみ)は、ある目的を胸に秘めて幻幽都市へ向かっていた。都市への入り口にあたる《虎之門》に辿り着いた彼女は、アルファ17と名乗る奇怪な門番とのやり取りを終えて、宿泊用のアパートへ行くために練馬区を訪れる。


 だがそこで、蒼天機関(ガルディアン)の練馬支部に所属する機関員・村雨了一、七鞍朱美のコンビと、覚せい剤の売人である伊原誠一とのいざこざに巻き込まれてしまう。


 村雨達に覚せい剤売買の現場を押さえられた伊原は、卑劣な手段に出た。体内に埋め込んだ機能片(フラグメント)を駆使し、偶然その場に居合わせた琴美を人質に逃走したのである。必死に後を追う機関員を辛くも退けた伊原だったが、しかし、そこへまた別の人物が現れる。


 その人物は、《オルガンチノ》と呼ばれる異次元と連結したコートを羽織り、両腕に黒いガントレットを装着し、顔に醜い傷痕のある、異様な出で立ちの男だった。二つ名に《スカー・フェイス》を持つその男は、依頼人からの要望で貴様の右腕を切り落としに来たと、冷酷な調子で伊原に告げた。


 高電磁ナイフを取り出して果敢にも挑む伊原であったが、あっけなく右腕を切り落とされる。命までは奪わない事を信条にしている《スカー・フェイス》は止めを刺さず、人質にとられて気絶してしまっていた琴美を保護し、いずこかへ姿を消した。


 そこへ遅れて駆けつけてくる練馬支部機関員の村雨と七鞍。二人は、血を流して倒れていた伊原の証言から、伊原に重症を負わせたのが《スカー・フェイス》だと勘づく。《スカー・フェイス》と浅からぬ因縁のある村雨は、今回も仕事の邪魔をされたことに、一人憤慨するのであった。





【幕間 2025年12月】


 最先端科学技術とオカルトが混在した異形の都市・幻幽都市の治安維持管理を行う巨大組織・蒼天機関(ガルディアン)に所属する特殊部隊《髑髏十字(クロスボーン)》のメンバーは、とある犯罪シンジケートの鎮圧に従事していた。


 メンバーの一人・アヴァロが屍の山を築き上げていく一方で、同じくメンバーの一人である女戦士・バジュラは憂鬱な気分でいた。【絶対的な正義】を渇望する彼女は、蒼天機関(ガルディアン)に所属する身でありながら、機関の暴力的なやり方に日頃から疑問の念を抱いていた。


 そして、犯罪者の屍の山を見た時、ついにバジュラの怒りが爆発する。


 例え相手が悪人であろうと、殺人は正義の行動ではない。我々がやっている事は正義の行為なんかじゃない。暴力を用いて犯罪者を殺し、赤の他人を救うことに、一体なんの価値があるというのだ――バジュラの言い分に負けじと反論するアヴァロであったが、平行線を辿るだけであった。





【第二幕】


 伊原に誘拐された挙句、気絶してしまった琴美。次に彼女が目を覚ました時、まず目に入ったのは見知らぬ部屋と、自分の顔を興味深そうに眺める見知らぬ少女の姿だった。


 少女は、自らをエリーチカ・チカチーロと名乗った。どこか人間離れしたエリーチカの言動と容姿に戸惑いを覚える琴美。エリーチカの話では、気絶した彼女を連れ帰ったのはこの部屋の主で、自分はただの同居人であるという。


 そうこうしているうちに、部屋の主人が帰宅する。部屋の主人は二つ名に《スカー・フェイス》を冠するあの男で、本名を火門再牙(かもん さいが)と名乗った。彼は、金さえ払えばどんな事でもやるのがモットーの、『万屋』という職業に従事していると言う。


 再牙が万屋であると知った琴美は、助けて頂いた上での無礼も承知の上で、解決して欲しい依頼があるのだと申し入れる。


 実は、琴美が幻幽都市にやってきた理由には彼女の父親が関係していた。琴美の実父・獅子原錠一(ししはら じょういち)は、六年前に突然家を飛び出し、二年前に幻幽都市で謎の変死を遂げたのである。


 何故、父は自分たち家族を置いて幻幽都市へ向かったのか。何故、父は殺されたのか。そして、父は幻幽都市で何を為そうとしていたのか――これらの謎を解き明かす為に、琴美は幻幽都市へやってきたのだという。


 再牙は万屋としてのプライドにかけて、必ずこの事件を解決すると、少女に約束したのであった。


 だが、そんな再牙の態度にエリーチカはどこか違和感覚えていた。その日の夜、琴美が帰った後で、エリーチカは再牙に詰め寄った。


『あの少女を自宅に連れ帰って保護したのは、あわよくば私の友人候補として引き合わせたかったからじゃないですか?』と。


 図星を衝かれて、再牙はうろたえた。

 

 エリーチカはアンドロイドである。人工魂魄(ノウアスフィア)と呼ばれる、人間の魂や精神といった概念物質と同等のものを体内に宿していた。そんな彼女にしてみれば、再牙がとった行動は迷惑以外の何物でもなかった。


『友人は、再牙、貴方だけです。貴方さえいれば、私はそれで充分です』


 そう言って突っ跳ねた態度をとるエリーチカ。だが、再牙は退かない。何故なら、エリーチカに人間の友人をつくって欲しいというのは、かつて再牙が世話になった女性の願いでもあったからだ。その女性こそ、かつては新宿区で『伝説の万屋』として恐れられ、かつてエリーチカとコンビを組んでいた人物であった。昔、世話になった人へ恩を返す意味でも、再牙はエリーチカの存在意義を尊重しつつ、どうにかして人間の友達が出来てほしいと心から望むのであった。


 その日、十月二十日の夜。


 新宿歌舞伎町周辺をパトロールしていた蒼天機関(ガルディアン)新宿支部の機関員二名が、突如として現れた怪物に殺されるという事件があった。


 殺される寸前、二人の機関員は確かに見た。怪物の額で輝きを放つ、赤い宝玉の存在――それは、幻幽都市の遥か西部に広がる魔界のジャングル・デッドフロンティアに棲息する《ベヒイモス》という怪物が持つ特徴と、一致していたのだ。


 だが、《ベヒイモス》は元旦の日にしか人里へ降りてこないというのが通例のはず。それが何故、この時期に、新宿の歌舞伎町へ姿を現したのか。この時点で、その原因を知るものはいなかった。


 時同じくして、どこかの地下施設。モニターに映る薄気味悪い怪物の活躍を眺めて、狂気に打ち震える科学者の姿があった。全身の大部分をサイボーグ化し、圧倒的戦闘力を宿すその科学者は、名を茜屋罪九郎(あかねや しんくろう)と言った。先の新宿歌舞伎町で機関員を殺した怪物も、彼が開発した生物兵器であった。生物兵器の名は軍鬼兵(テスカトル)と言い、傷ついたDNAを瞬時に修復する、恐るべき再生能力を宿した怪物であった。


 実験成果が予想以上に上手くいっている事から、罪九郎は自身が所属する『組織』の長で、御台所(みだいどころ)の名で呼ばれる女に、『計画』を実行に移す時が来た事。加えて、『計画』を円滑に進めるために、自身が開発した人造生命体(ホムンクルス)を使う事を提言した。


 全ては、幻幽都市を壊滅させんが為に――





【幕間 2040年3月】


 二十年前の大禍災(デザストル)で東京都を失った日本は新たに愛知県を首都に設け、《中央都》と改称した。


 場所は変わって新国会議事堂の特別会議室。ここで、日本国の政権を握っている民政党副総裁の山橋道元(やまはしどうげん)は、会議室に集めた新人議員たちを前に声を張り上げていた。


 その昔に東京都と呼ばれ、今は異形の街として名高い幻幽都市。その存在の歪さと脅威について徹底的に語った後、山橋は一人の男と連絡を取り、己の野望達成に向けて本格的に動き出す。





【第三幕】


 二〇四十年十月二十一日の午後。


 蒼天機関(ガルディアン)に所属する電脳兵士・真船司狼と不知火澪は、クラッキングの被害報告を受けて、とあるVRMMOへ没入(ダイヴ)していた。クラッキングの痕跡を発見した二人は犯人を捕らえようと、VRMMOに穿たれた虫喰穴(ピット)から別の仮想空間(ヴァーチャル・スペース)へ移動するが、そこへ、二重三重に仕掛けられた罠が襲い掛かる。


 何とか罠を潜り抜けて辿り着いた先で彼らが目にしたのは、都市の現実世界と仮想世界の両方のインフラ管理を司る、幻幽都市の最高機密・ヴェーダ・システムの末端と、そこから溢れ出る余剰処理能力を掠め取り、クラッキング活動をしていた錠前破り(クラッカー)……アナザ・スカイフォールの姿であった。


 だが、事情を追求しようとしたところで、事態は急変する。アナザが突如心身喪失の状態になったかと思うと、突然、身体が爆発したのである。


 突然の出来事に激しく動揺する中、司狼は炎に撒かれたアナザの遺体を注意深く観察した。そして、焼け焦げたアナザの脳みそから、自動遠隔チップの残骸を取り出したのである。


 同日の深夜。


 国立市を代表するモニュメント《鉄柱園》を駆ける四つの影があった。四つの影の正体は、茜屋罪九郎が造り出した人造生命体(ホムンクルス)であり、それぞれ、マヤ・ツォルキン、キリキック・ビュー、チャミア・バレンシア、スメルト・A・フィッチと言った。


 四人が茜屋から与えられた『実戦』という名の仕事を無事に終えた矢先、アジトで待機していた人造生命体(ホムンクルス)のうちの一人であるパック・ルブタニアから、マヤへ通信が入る。彼らの仲間であるアナザ・スカイフォールが、自室で亡くなっているのを発見したというのだ。


 急いでアジトへ戻ったマヤと他の三人が目にしたものは、没入(ダイヴ)用の操縦席(コンソール)に身を預けて死んでいる、アナザの変わり果てた姿であった。仲間を失った悲しみと怒りに打ち震えるマヤ。そこへ彼らの創造主である罪九郎から映像通信が入る。


 彼の弁によれば、アナザは『卒業試験』なるものを受けたものの、それに失敗して死んだのだという。そして、その『卒業試験』とは、罪九郎や人造生命体(ホムンクルス)たちが所属する『組織』が進めている『計画』の一部であり、これを上手くこなす事が出来れば、人造生命体(ホムンクルス)たちの自由を保障するという。


 罪九郎の身勝手な言い分に腹を立てるマヤ。その日の夜、彼は寝室へやってきたチャミアから、不安の籠った思いを吐露される。


 大切な仲間の想いを知ったマヤは一人、罪九郎への反逆を己に誓ったのであった。






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