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勘違い系○○  作者: 流音
第三章:大学生
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3ー14元カノ騒動


俺は沼田さんのアパートに来てインターホンを押した。

でも留守にしているのか出てくる気配はない…


俺は連続3日で彼女に会えずにいた。

今までこんな事はなかっただけに、少し不安になる。

それも竜聖の真実を知ったばかりなので、余計な事まで考えてしまう。


あの時の話が沼田さんに聞こえていたのではないだろうか…?

それであいつを探しに行ったのではないか…


俺はあり得ないと頭を振って邪念をとばす。


今日も諦めて帰ろうと足を進めたとき、ケータイに電話がかかってきた。

画面を見て俺はため息をついた。


元カノからだった。


俺はしぶしぶ電話に出る。


「はい。」

『やっと出た~!今まで何してたの!?』


俺は彼女の高い声を聞いてケータイから耳をはなして顔をしかめた。

紗英のアパートの階段を降りながら、仕方なく返事をする。


「俺の事はいいだろ。いったい何の用だよ?」


『相変わらず冷たいなぁ~。でもそれが愛情表現だって知ってるから、許してあげる!』


もう切ってしまおうかと思うぐらい不愉快だった。

俺は階段を降りきると手すりにもたれかかった。


『あのね、今度花火大会あるでしょ?竜也、一緒に行こうよ!』

「あのさ、俺たち別れてるの分かってる?」

『えー?だって、私は竜也が好きだもん。ねぇ、花火大会行こうよ~!』


こいつ…話通じないな…

俺は何と言えば納得するのか頭をひねる。


「前も言ったけど、俺は好きじゃないんだよ。

だから花火大会にはいけないから、他の奴誘ってくれよ。」


『ひどーい!可愛い女の子が浴衣で行くって言ってるのに!』


甲高い声に耳が痛くなってきた。

女子ってのはどうしてこうも自分勝手なんだろうか?

俺は以前しっかり別れ話したはずだよな…と思い、

何で不必要な話に耳を傾けなければいけないのかとイライラしてきた。

だんだん話を聞くのも面倒になってきて、適当に相槌をうつ。


その間、沼田さんの居場所はどこか考えながら駅へと足を進める。


西城大学って…ここから二駅ぐらいだよな…

詳しい場所が分からねぇけど…翔平にでも電話して聞いてみるか…


そうして色々と考え事をして歩いていると、急に彼女の喜ぶ声が聞こえて俺は電話に意識が戻った。


『やった!じゃあ、22日に駅前でね!約束だよ!!』

「えっ?は!?何のはな――――」


一方的に電話を切られて俺は唖然とした。

どうも適当に相槌を打っている間に花火大会の約束をしてしまったらしい。

くっそ!やらかした!!

俺はかけ直そうと着歴からリダイヤルするが、一向に電話に出ない。

何だよ!!電話切ったのついさっきだろ!出ろよ!!

イライラしながら俺は電話を切った。


そのとき、今度は翔平から電話がかかってきた。

俺はイライラしていたので、思いっきり不機嫌な声で電話に出た。


「はい。」

『あ、竜也?聞いてくれよ!!』


翔平は俺と違ってすごく上機嫌だった。

その喜びように更に苛立ちが募る。


『俺、第一希望の会社の面接通った!!今度、最終個人面接なんだ!!』

「マジかよ!!面接失敗したって言ってたところだろ?」


例の竜聖に会った会社だと分かって、少し苛立ちが治まった。

翔平は嬉しそうに続ける。


『俺ももうダメだと思ってたんだけど、運に見放されてなかったよ。

明後日、最終だから一応報告しておこうと思ってな。じゃ、そういう事だから!』


「あ、ちょっと待て。お前…今、沼田さんどこにいるか分かるか?」


『へ?紗英?実家に戻ってるんじゃないのか?』


「実家か。」


俺は今まで会えなかった理由が分かってほっとした。

ただそれと同時に、やっぱり自分は蚊帳の外だという事が胸に刺さる。

俺は「面接頑張れよ。」と言って電話を切った。


俺は自分のアドレス帳を開いて沼田さんの番号がないのを確認する。

俺の番号は教えたが、一度もかけてこないので俺からかけられない現実に消沈した。

意地でもかけさせれば良かったと後悔するが、今更遅い。

自分でも何でこんなに彼女の事が気になるのか分からなかったが、

度々あのときの涙が脳裏に過って胸が苦しくなった。




***




あの電話の後、俺は元カノと連絡が取れなくなり

すっぽかすのも男のプライドが許さないので仕方なく花火大会に足を運んでいた。

宣言通り浴衣を着た元カノは嬉しそうに俺に腕を組んできた。


「やっぱり来てくれるって思ってたんだ~。竜也は私のこと大好きだよね。」


俺はイライラしながら腕を引き離すと言った。


「俺は花火大会に来たんじゃねぇよ!行かないって断るために来たんだ。

いい加減俺に執着するのやめろよ!!」


元カノは俺の腕を両手で掴むと顔をしかめた。


「執着じゃないよ!好きだから一緒にいるの!当たり前でしょ?」

「好きじゃねぇって何度言ったら分かるんだよ!!」

「竜也は照れてそんなこと言うんだよ!私には分かるもん!」

「照れてねぇよっ!!放せって!!」


こいつ…!!

殴ってやろうかと思うぐらい腹が立つ。

もっとひどい事を言ってやろうかと思って口を開きかけたとき、

声をかけられた。


「山本君?」


俺は聞き覚えのある声に咄嗟に反応した。

俺に声をかけてきたのは沼田さんだった。


彼女を見ただけで、少し気持ちが和らぐ。


沼田さんは見たことのある女子二人と一緒だった。

確か中学の同級生だった安藤と芹沢だと思う。


俺は神の助けだと思い、元カノから離れて沼田さんの肩を寄せて言った。


「俺は今この子と付き合ってるんだ!だから、分かるだろ?」


「―――――は?」


沼田さんが変な顔で俺を見上げるのが分かった。

彼女には悪いが、一番手っ取り早く元カノと別れられる方法だと思った。

元カノは呆然と俺たちを見ていたが、涙目になると肩を震わせ始めた。


「――――証拠は!?」


「へ?」


「付き合ってるっていうんなら証拠見せてよ!!」


俺はどうしようかと目が泳いだ。

沼田さんは俺と元カノの顔を交互に見て混乱しているようだった。

証拠って言われても…

俺は必死に策を探すが、この面倒な元カノを納得させる方法が一つしか思い浮かばなかった。

俺は沼田さんを見下ろすと小声で「ごめん」と言ってから、

元カノに背を向けて口元が見えないようにしてから彼女の唇の横に自分の口を寄せた。


「――――っ!?」


彼女の肩を持っている手が彼女の体が強張るのを感じた。

口を何とか避けたので、俺にしては上出来だと思って顔を離してから言った。


「どうだ?これで分かっただろ?」


元カノは持っていた鞄で俺を殴ると「最低!!」と言い残して走り去った。

俺はその背中を見送って胸をなで下ろした。

するとそのとき下から平手が飛んできた。

俺の頬を直撃して、俺は何が起きたのか最初は理解できなかった。

沼田さんが怒りに肩を震わせていた。


「ぬ…沼田さん…ごめん。元カノがしつこくて…協力してほしかったんだよ。」


彼女は怒りに赤らめた顔を上げると言った。


「だからっていきなりあんな事しないでよ!こんな人通りの多い場所で!!」

「だから悪かったって…でも本当に困ってたんだ!口は避けたし…その…」

「でも他にやり方あったでしょ!?私を巻き込まないでよ!!」


このままじゃ怒りを収めてくれそうになかったので、何か案はないかと考えた。

そのとき以前した貸しを思い出した。


「あ!前の貸し!!あれでチャラにしてよ!」

「貸しって…」


沼田さんは自分の醜態を思い出したようで、グッと口を噤んだ後俺から顔をそむけた。


「―――仕方ないな…。でも、これで貸しナシだからね!」


まだ彼女は少し怒っていたが、何とか許してもらえてほっとした。

恩は売っておくものだと俺は賢くなった。

すると様子を見守っていたのか安藤が俺たちの間に顔を覗かせた。


「あの…話終わった?花火大会始まっちゃうよ?」


それを聞いて沼田さんは俺に見向きもせず三人で歩いていこうとしたので、俺は無理やり輪の中に割り込むと花火大会に同行することにした。







竜也の元カノ編はまだ続きます。

次は久しぶりに登場した麻友視点です。

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