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勘違い系○○  作者: 流音
第三章:大学生
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3-7三角関係

紗英の親友である涼華視点です。


私は山本君と手を繋いで帰ってきた紗英ちゃんを見て驚いた。

仲の良さそうな二人の姿が彼氏彼女のようだった。

私はてっちゃんと顔を見合わせると、帰ってきた紗英ちゃんに駆け寄った。


「紗英ちゃん!!」


紗英ちゃんは山本君から手を離すと、私の方へ駆けてきた。

表情は明るくて、思いつめていた今朝とは違って見えた。


「涼華ちゃん!ごめんね。もしかして心配かけた?」

「ううん。私はそこまで心配してなかったんだけど…」


私はさっきの山本君の姿を思い出して伝えるべきか迷った。

山本君は私から紗英ちゃんが岩場に言った事を聞くと、慌てた様子で岩場へ向かっていってしまった。

最初の印象ではスマートであまり表情の変わらないクールな人かと思ってたので、紗英ちゃんを心配する姿は意外だった。

本郷君もだけど、紗英ちゃんの周りの男の子は紗英ちゃんに対して少し過保護な気もする。

竜聖君の事もあるからかもしれないけど……少し心配しすぎだ。

紗英ちゃんだって子供じゃないんだから、自分で決めて前に進んでいくはずだ。

私はちらっと山本君と本郷君を見て、そう思った。


「紗英ちゃん、山本君と何かあった?」

「え?」


何気なく訊いたのだが、紗英ちゃんはあからさまに驚いて表情が固まった。

私はこんなに表情に出す紗英ちゃんが珍しくて、訊いても良いのか迷った。


「…えと…なんか仲良くなってるみたいだからさ…。ちょっとした興味なんだけどね?」

「あー…うん。実はさっきナンパされて男の人に囲まれちゃってさ。」

「ナンパ!?」


少し照れながら気まずそうにしている紗英ちゃんの発言に私は声が裏返った。

ナンパなんてドラマや映画でしか見たことがない。

実際にあるんだという事を初めて知った。

それがまさかこんな身近に起こるなんて…

私はちょっとした憧れを感じてしまった。


「紗英ちゃん、大丈夫だったの?」

「うん。山本君が助けてくれて。」


ちらっと山本君を気にしながら話す紗英ちゃんは、高校のとき竜聖君に恋してた紗英ちゃんのように可愛かった。

私はそんな紗英ちゃんを見て、胸が大きく跳ねた。


「山本君すごいんだよ!男の人4人もいたのに、みんな殴り飛ばしちゃって…私スカッとしちゃった。

何でもボクシングやってるんだって!後で山本君の腹筋見てみて!すごい割れてるから!!」


紗英ちゃんからこんなに男の子の話を聞くのは高校以来の事で、何だか懐かしかった。

目の前の紗英ちゃんは本当に嬉しそうに山本君の話をしている。

私は、紗英ちゃんの中に生まれた変化に気がついて、少し複雑だった。

なんとなくだけど、紗英ちゃんは山本君に惹かれている気がする。

好きとまではいかなくても、確実に友達とは違う目で見ている。

ずっと紗英ちゃんの隣にいた私だから分かる。


私は本郷君をちらっと見て、切なくなった。

本郷君はきっと今でも紗英ちゃんが好きなはず…

竜聖君がいなくなった後も紗英ちゃんを支える姿を見てたから分かる。

そんな彼が紗英ちゃんの中の変化に気づいたら…どう思うだろう?

それを考えるだけで、胸が苦しくなってくる。

仮にも一時期好きだった人だ。

早く幸せになってほしいと願っている。


「涼華ちゃん?」


紗英ちゃんがいつの間にか話をやめて、私の顔を覗き込んでいた。


「あ、ごめん。ぼーっとしてた。」


考えていたことが伝わらないように、笑顔を作って返した。

紗英ちゃんはいつものように笑顔を浮かべると、海の家を指さして言った。


「お昼にしようだって。行こっ!」


紗英ちゃんは私の肩をポンと叩いてから背を向けて歩いていった。

私はその背を見つめながら後に続くと、二人の気持ちのすれ違いにモヤモヤしていた。

私にできることはないか考える。

すると、いつものようにいつの間にかてっちゃんが私の隣に並んでいて、私は彼を見上げた。

てっちゃんはニヤっと口の端を吊り上げて私を見下ろしていた。


「まーた何か考え込んでる。今度は何考えてんの?」

「……紗英ちゃんと本郷君…それに山本君のこと。」

「あははっ!やっぱり。すずなら気づくだろーなって思ってた。」


てっちゃんはとっくの昔に気づいてたと言わんばかりに笑っている。

私は少し負けた気がして、口を突き出して拗ねる。

高校の時からだが、私とてっちゃんは周りの関係図に鋭く、時折こうして他人の恋愛事情について議論を交わしていた。


「翔平は臆病だからなぁ~…。それに身内を信用しすぎる面もあるからさ、山本君の事なんか気にもとめてないと思うよ?」

「だよね…。中学の同級生って言ってたし…山本君が紗英ちゃんの事好きになるはずないとさえ思ってそう…。」

「すず鋭いなぁ!実際、昨日そんな感じだったよ。わざわざ二人で肝試しさせたりしてさ!こいつバカだと思ったね。」


てっちゃんは余程面白かったのか、思い出してお腹を抱えて笑っている。


「本郷君も何でじっと見守るだけで勝負に出ないのかな~?見ててモヤモヤするんだけど。」

「あはは!それは高校の時に一回振られてるのが尾を引いてるんじゃないか?少なくとも沼田さんの中では翔平は友達なんだからさ。」

「そーだよねぇ…。」


私は紗英ちゃんの事を考えてため息をついた。

紗英ちゃんは本郷君の事は友達と思っている。

これは高校の時からずっと変わってない。

でも本郷君は紗英ちゃんを諦めずに好きなままだ。

ずっと変わらない恋愛ベクトルに頭が痛くなってきそうだ。


「本郷君も紗英ちゃん諦めて新しい人を好きになればいいのに…。」

「そーだな。変に一途な奴だからさ、諦めるのにも時間がかかるのかもしれねーよ?それに今は竜聖君もいないわけだしな。もしかしたら…とか思って諦められねぇんじゃないかな?」

「本郷君も不器用だねぇ…。」

「まぁ、それが翔平の持ち味だろ。俺たちが気をもんだって仕方ないさ。」


てっちゃんはいつも考えすぎな私を笑顔一つで明るくさせてくれる。

私はそんな彼が大好きだ。

てっちゃんは私の頭を優しく撫でると、ニカッと太陽のような笑顔を見せた。

私はその笑顔一つで胸がギュッとなるのが悔しくて、彼のお腹を小突くと海の家へ目を向けた。

そこには山本君と言い争っている紗英ちゃんが見えた。


紗英ちゃんが本当に竜聖君以外の人を好きになれるなら応援したい。

山本君がそうなのかは分からないけど、紗英ちゃんが幸せになれるなら…

本郷君には悪いけど、私は紗英ちゃんの味方だ。


私は言い争う二人と気にも止めていない本郷君を見て、また自然とため息が出た。




息抜き回でした。

次はまた竜也のお話です。

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