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勘違い系○○  作者: 流音
第二章:高校生
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2-70新学期


新学期・四月―――――


俺の学校ではクラス替えが行われ、俺は竜也と同じクラスになった。

同じクラスになるのは中学以来の事で嬉しかった。


クラス替えしてあまり日も経っていないので、周りは新しいグループを形成しようと騒がしかった。

俺はそんなグループ構成に興味がなかったので、休憩時間も自分の席でぼーっとするか廊下に出てウロウロするかだ。

竜也の奴も俺と同じで興味がないらしく、大概自分の席で本を読んでいる。

こいつこんなに読書家だっただろうか…?

とたまに奴を観察する。あえて話しかけにはいかない。


また高校最後の一年でもあるので、

俺はこの一年大学受験に向けて勉強を頑張ることにした。

担任も二年と変わらず増谷先生で俺はホッとしていた。

何となくあの先生には素直になれるので、今後受験の事を相談していきたい。

ただぼーっとしているのもアレなので、単語帳でも見て覚えるかと思ったとき

目の前に一人の女子がやってきた。


黒髪の長い髪…優しい雰囲気が紗英に似ている女子だった。

どことなく空気に漂う匂いも似ている気がする。

俺は何の用かと見上げた。


「吉田竜聖君だよね?私、宇佐美麻里。

私、高校入ったときから竜聖君と話してみたくて…今いいかな?」


「ああ…別にいいけど?」


紗英に似た雰囲気が俺に興味を沸かせた。

宇佐美は嬉しそうに笑うと訊いてきた。


「竜聖君って二年のときに公開告白して彼女ができたって噂になったけど…あれ本当?」


まだその噂引きずってるのかと自然にため息がでる。


「あぁ。本当だけど。」

「えー!すごい勇気あるねぇ~きっとそれだけ素敵な彼女さんなんだね。」


女子から紗英の事を褒められるのは初めてで嬉しくなる。

顔がにやけそうになるのを堪える。


「どんな人なのか聞きたいな~どこの高校の人なの?」

「あぁ、西城だよ。」

「えぇっ!すごい!頭賢いんだね~。」

「いや、紗英は音楽科でさ。ピアノを専攻してるんだ。もちろん頭も良いだろうけど。」

「うわぁすごいねぇ~お嬢様みたいだね~。どこで知り合ったの?」

「中学が一緒なんだ。西中、知ってる?」

「うん!そうなんだ!!じゃあ彼女さんお家この辺なんだ。」

「そうそう、いつも駅で待ち合わせて一緒に帰ってるんだ。」

「へぇ~。」


宇佐美は話しやすくて、気持ちの良い返答をくれるから色々話してしまう。

紗英の話を女子にするなんて今までなら考えられない。


「いいなぁ~何だかすごく幸せそう。」

「そうかな?紗英のおかげかな。」

「紗英さんっていうんだね。」

「うん。沼田紗英。可愛い名前だろ?」


俺は名前を言っただけで胸が熱くなる。

照れる顔を手のひらで隠して笑った。


「……そうだね。あ、もう行かなくちゃ!また話聞かせてね!!」


宇佐美は一瞬表情を曇らせた気がしたが、満面の笑顔で手を振って行ったので気のせいだったのだろう。

俺もつられて振り返してしまった。

何だか不思議な空気を持つ女子だなぁ…

そんな事を思っていると、珍しく竜也が俺の席にやってきた。

何だか見下されていて、自然と姿勢を正す。


「今の宇佐美だろ?」

「んあ?…ああ。そう名乗ってたな。」

「あいつに関わるな。」


竜也が珍しく語気を荒げている。

俺はそれに驚いて竜也を見つめ返すことしかできなかった。


「いいな!関わるなよ!!」


竜也はそれだけ言うと席に戻って行った。

俺はその姿を目で追って首を傾げた。

何なんだ…?





***





俺は昼休み竜也の言っていたことをずっと考えていた。

あんなにいい子なのに…何で関わるななんだ?

紗英の事褒める女子なんて、俺の周りにいなかったぞ?


紙パックのジュースを飲みながら頭をひねる。


すると横で騒いでいた加地が俺にひっついてきた。


「竜聖さん!!紗英さんのお兄さんと仲良くなれたッスか?」


その言葉にそういえばこいつらも傍にいたな…とあのときの事を思い出した。

恭輔さんは何だかんだで俺を認めてくれた気がする。


「少し…かな?でも認めてくれてるとは思うよ。」

「すっげー!!さすがッス!あんな熊みたいなお兄さんに認めてもらえるなんてマジカッケーッス!!」


熊という例えがぴったりだな…と思った。

あのとき恭輔さんの事も聞いてみると、やっぱりラグビーをやっているようだった。

将来はスポーツ関係の仕事に就きたいらしく、俺と同じで驚いた。

今は残念ながら彼女がいないらしく。延々紹介しろと口うるさく言われて参った。


「あのお兄さん一筋縄じゃいかなそうですよね…。頑張ってください。」

「俺は怖くて見ているしかできなかった。」


美合と相楽が恭輔さんを思い出して口々に言った。

二人がそんなこと思っていたのが意外で、笑って誤魔化した。

そんな俺たちのところに宇佐美が走ってやってきた。


「こんにちは!」


俺は竜也の言葉がひっかかりマジマジと彼女を見てしまった。

宇佐美は俺の前にしゃがむと言った。


「竜聖君ってこんなところでお昼食べてたんだね~

今度から私も一緒してもいい?」


「え…?」

「いいッスよ!男ばっかりで花がなかったんッスよ!!」

「俺は構わないですよ。」

「右に同じ。」


仲間たちは了承しているようだったが、俺は竜也の忠告が頭から離れない。

宇佐美を見つめて考えを巡らす。

どう見ても悪い子には見えないし…

きっと竜也の思い違いだよな。

俺は昼食べるだけなら…と思い了承した。

宇佐美はやったーと喜んでいる。

そんな無邪気な姿が紗英とダブる。


「えっと君たちは竜聖君のお友達?」

「仲間ッス!!竜聖さんとゆかいな仲間達って感じッス!!」

「おい!!」

「ゆかいなって何だ!ゆかいなって!!」

「あははっ!おかしい~!!」


仲間達だけで盛り上がっている。

俺はなじんでいる宇佐美に驚いた。

けっこう評判の悪い面子なのに度胸あるな…。


「竜聖さん!この子、気持ち良い子ッスね!!」

「ありがとー!褒められて嬉しいな。」


仲間たちの楽しそうな姿を見て、

俺は竜也の忠告を頭の隅に追いやった。


これが、今後大きく歯車を狂わせるとも知らずに…




ここから大きな話のくくりの序章になります。


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