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勘違い系○○  作者: 流音
第二章:高校生
71/218

2-65遊園地Ⅰ


俺は駅前で紗英を待ちながら

先日のお宅訪問の事を思い出していた。


紗英のお父さん、お母さんには上手く受け答えもできたし我ながらよくやったと思う。

ただ二人きりの室内はやばかった。

あんなに初めてはロマンチックにと熱弁していたのに

体が勝手に反応してしまった。

恭輔さんが乱入してくれなかったら、俺の理想が崩れるところだった。

そこは感謝しているが、

あの後恭輔さんをひどく怒らせてしまい俺は恭輔さんに嫌われた。

俺を倒してから行けという雰囲気の恭輔さんを宥めるのにどれだけ時間と労力を使ったか…

まぁ、俺が悪いんだけど…

でも紗英の家に行って良かった。

これで紗英の家に訪ねて行くのも怖くなくなったし。

そう思い返していると、前から紗英が走って来た。

後ろにはなぜか翔平の姿。


「ごめん!待たせちゃったね。」

「何で翔平と一緒なんだ?」


俺は紗英の後ろから歩いてくる翔平を指さした。

翔平は不機嫌そうな顔で言った。


「今日は一緒に行くんだよ。聞いてないのか?」

「あ、メンバーまで言ってなかったかも。」


紗英がごめんと手を合わせて謝っている。

そういえば学校のメンバーと遊園地に遊びに行こうとしか聞いてなかった。

そのメンバーの中に翔平がいたって事か…

そこまで考えて、翔平の心の内を思った。

こいつ俺と紗英が一緒の姿見て大丈夫なのか?

もしかしてもう諦めたか?

紗英に接する態度が普通の翔平を見て少し安心した。


「現地集合だから、行くぞ。」


翔平が先導して歩いて行く。

俺と紗英は顔を見合わせると後を追った。




***




電車に揺られる事一時間。

俺は電車内で紗英と翔平の間に立ち、二人の接触を阻んだ。

やっぱりあいつの気持ちを知ってるだけに気が気じゃなかった。

当たり障りのない話をしている内に遊園地に到着した。

チケット売り場付近に紗英の友達らしき女子と一人の男子。

そして男の子みたいな女子の三人が並んで待っていた。


紗英が俺に皆を紹介してくれた。

まずふわふわした感じの女の子が紗英の友達の山森涼華さん。

で、その彼氏で翔平のクラスメイトの木下哲史さん。

あとは到着してからずっと翔平にくっついている女の子。

翔平は付き合ってないというが、あきらかに彼女の浜口理沙さん。

パッと見た印象でスポーツ科か音楽科がはっきり分かった。

スポーツ科のメンバーは何というか逞しい感じ、

対する音楽科は紗英も含め柔らかい感じだ。

普通科しか知らない俺は、外から見ていると特徴が出ていて中々に面白い。


そして俺たちはメンバーも揃ったという事で、

遊園地の中に入ることになった。

皆でパンフレットを見ながら最初のアトラクションを相談する。


「やっぱり最初はジェットコースターでしょ!」

「えぇ~!?最初からハード過ぎないか?」

「迷路みたいなアトラクションもあるよ。最初はここがいいんじゃないかな?」


ジェットコースターは後の楽しみにとっておくという事で落ち着き

俺たちは絶対迷宮というアトラクションへ向かった。


移動中は自然とカップルに分かれて歩く。

俺は紗英がスッと隣に来てくれたことが嬉しかった。

俺の隣にいるのが当たり前みたいな表情にグッと胸を掴まれる。

前を歩く翔平カップルは来てからずっと揉めている。

あれ…大丈夫なのか…?

対して紗英のお友達カップルはというと

カップルというよりお友達みたいな距離感だ。

もしかして付き合いたてとか…?

それぞれを観察している内にアトラクションに着いた。


「じゃあ、少し時間差つけて入ろっか。出口で合流ってことで。」


木下君の言葉に皆納得した。

そして最初に木下君・山森さんペアが入って行った。

そして次に彼女に引っ張られる形で翔平ペア。

最後が俺たちになった。


「もういいかな?入ろっか。」


紗英が俺を置いて走って行く。

俺は慌てて後を追いかけた。


中は西洋の古城のような造りになっていて、道は細かった。

たまにマジックミラーがあり、道に騙されてしまう。

これは中々難しい…

紗英は俺の前を壁を探りながら道を確認して進んでいる。

真剣な姿を見てるだけで楽しい。

今日何度目かの行き止まりに突き当たったとき、

紗英は隠し通路があるのかもと壁を叩き始めた。

俺は何気なくマジックミラーの壁を見てからもたれかかった。

すると浮遊感に襲われ、もたれた壁が回転した。


「うおっ!!」


俺は後ろ向けにひっくりかえって隠し通路に転がった。

俺は慌てて立ち上がると、自分の通って来た壁を見た。

そこはさっきと同じマジックミラーになっていた。

壁の向こうから紗英のくぐもった声が聞こえてくる。


「紗英!!紗英!ここの壁叩け!」


俺の方向から押すがビクとも動かない。

きっと一方向からしか回らない造りになっているんだろう。

紗英の戸惑う声は聞こえるが、何を言っているかまでは聞こえない。

俺は紗英の名前を呼びながら壁を叩いて合図した。

くそっ!!はぐれるなんて最悪だ!

違う道を探した方が良いかもしれないと思い壁に背を向けたとき

壁が回転して紗英が後ろから俺に激突した。


「ひゃっ!!」


「紗英!!」


紗英は俺の背中にくっついて俺を見上げると、安堵した表情になった。

俺も同じように緊張がとけてほっとした。


「良かったぁ…。」


紗英は俺の服を掴んだまま笑った。

俺は紗英の手を掴むと紗英の笑顔を見つめて言った。


「はぐれないように、手をつないでいこう。」


紗英は俺の手をギュッと握り返すと嬉しそうに頷いた。

それからははぐれることなく何とか出口まで辿りついた。

出てきたとき翔平が俺に詰め寄ってきたが、軽く躱した。

そしてその足でジェットコースターへ向かうことになったのだが、

通り道にお化け屋敷を見つけてしまい、何だか入る流れになる。


「怖さ☆5つだって!!すごいねぇ~。」

「本当だ!文化祭のやつより確実に怖いよねぇ?」


何故か紗英以外の女子が乗り気だった。

紗英は俺の手を握りしめて震えている。

文化祭の時も思ったがよほど苦手なんだろう。


「じゃあ、入るか?怖い奴いる?」


木下君の言葉に紗英がバッと顔を上げたが、

何か考えたあとまた俯いた。

嫌ならやめようかと木下君に言おうとすると

紗英が横で「大丈夫、大丈夫」と呟いているのが聞こえてきた。

そんな彼女が可愛くて少し笑ってしまう。

必死に我慢しようとしている彼女の頑張りを台無しにしたくなくて俺は言うのをやめた。


「紗英。怖かったら、俺にしがみついてたらいいから。」


紗英は真剣な表情で俺を見上げて、気合を入れるように頷いた。

怖いらしいので全員で一緒に入ろうかって事になったんだけど、

アトラクションの性質上大人数では入れないらしく…

結局また二人ずつになった。

順番を入れ替えて俺たちが一番最初になった。

俺は紗英の手を握りしめると紗英を先導して中に入った。


中は暗くてなんだか生温い空気が充満していた。

お化け屋敷のムードを演出するBGMが何か出るぞという雰囲気を醸し出している。

紗英は入った瞬間から目を瞑って背後で俺の服を握りしめている。

時々飛び出してくるお化けに驚きながらも、作り物だと自分に言い聞かせて進む。

俺自身もだいぶビビりなので何か出てくるたびに体をビクつかせて紗英を驚かしている。

頼りないなぁと思いながらも必死に怖さに耐える。

半分ぐらい進んだところで赤いスポットライトで照らされ

ここから絶叫ゾーンと書かれている垂れ幕を見た。

俺は唾を飲み込むとおそるおそる足を勧めた。

中は薄暗く足元がギシギシいっており、何か出るぞという雰囲気ばっちりだ。

俺は前ばかりに注意していて背後に気づかないかった。

紗英が息を飲み込むのが聞こえると、後ろから抱き付かれて驚いて振り返った。

そこには特殊メイクを施したゾンビだろう…そのときは本物に見えた…がいた。


「――――――っおわぁっ!!!」


俺は走って逃げようとするが紗英が抱き付いていて上手く前に進まない。

すると今度は横の壁からゾンビが出てきて囲まれる。


「っうわぁあぁぁ―――――!!!」


俺は大絶叫を上げて紗英を片手で支えて走った。

火事場の馬鹿力というやつだろう。

紗英の脇の下に腕を回して抱っこ状態で逃げる。

次のエリアに入ったとき真っ暗になり冷たい空気を吹きかけられ、

体中を何かが擽りまわった、それが気持ち悪いのなんの。

鳥肌が立ち、出口目がけてノンストップで走り抜ける。

出口から外に出ると、そばにあったベンチに座り込んだ。

紗英を放して上を見上げて息をつく。

あぁ…怖かった…

紗英は俺の横で座り込んで肩を震わせて真っ青な顔をしている。


「大丈夫か?紗英?」


紗英はゆっくり顔を上げて泣きそうな顔を崩すと俺に抱き付いてきた。

俺はその反動でベンチの背もたれに押し付けられる。


「うぅ~~~~っ!!」


紗英は文化祭のときと同じように俺の胸に顔を押し付けて泣いていた。

俺は頑張った紗英を心の中で褒めて、背中をさすった。

そうしているとお化け屋敷から木下君ペアが出てきた。

楽しそうに笑っている。

その姿を見て俺は驚いて口をポカーンと開けた。

二人は俺たちを見つけてこっちに向かいながら

あそこがすごかった等の話を繰り広げている。

この二人怖くなかったのだろうか?

紗英の様子に気づいた山森さんが驚いている。


「紗英ちゃん、どうしたの?」

「あー…紗英はお化け屋敷ダメでさ。」

「えぇ!?あ、そういえば文化祭のときも怖がってたもんなぁ。

気づいてあげれば良かった。」

「しばらくしたら元に戻ると思うし、大丈夫だよ。」


木下君も山森さんも心配そうにしていたが、

俺の言葉に納得してくれたようだった。

すると最後のペアである翔平たちが出てきた。

彼らはまた揉めていた。

怖くてくっついていたであろう彼女を力づくで引き離そうとしている。

何やってんだ…あいつらは…

このペアだけは本当に分からない…


まぁ、俺たちに気づいた翔平が肩をわなわなと動かして

何か言いたそうにしていたが、

俺は視線を外して紗英が落ち着くように背中を叩いた。




遊園地編です。

あと二話ほど続きます。

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