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勘違い系○○  作者: 流音
第二章:高校生
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2-54ネジがとんだ


俺は伊藤圭祐。

翔平のクラスメイト兼野球部のチームメイトだ。


今日は俺のグチを聞いてほしい。

この一カ月ストレスのかかる毎日にうんざりしている。

そのストレスの原因というのは翔平だ。


翔平は紗英ちゃんに告白してからというものの

彼女に対する行動に歯止めがなくなり俺がストッパーを務めている。

奴は気がつけば彼女に抱き付いていたり…下手すればキスしようとしている。

好きならあんな行動できないはずなんだが、

奴の中で何があったというのだろう?

もう毎日翔平から目が離せなくて気が抜けない状態だ。


振られたときに慰めてやるんじゃなかった。

頼むから俺の言葉で今の翔平になったとかはやめてくれよ。

胃がキリキリしてくる。


紗英ちゃんも翔平のことを突き放せばいいのに

何だか引け目を感じているのか、そこまで辛くはあたらない。

だから翔平が調子にのってどんどんエスカレートするんだ。

一度彼女に頼んでみようか?

彼女からビシッと言ってもらえれば、

さすがに振られた傷が開いて奇行も収まるだろう。


はぁ…本当に世話のかかる奴だ。



俺たちは今部活のウォームアップ中だ。

真横に翔平がいるので、俺は今日も目を光らせている。

真面目に部活には出てるし、こうしてると普通の男子高生なんだが…


「あ、紗英だ。」


また!!翔平の奴が下校する紗英ちゃんを見て立ち上がった。

彼女を目にすると一度ただの変人になる。

紗英ちゃんに向かって走っていく奴の背を追いかけて俺も走る。

何とかグラウンドを出る前に捕まえる事ができた。


「もう!いい加減にしろよ!お前!!」

「あ…。」


翔平は俺の叱責も無視して、紗英ちゃんの方を見て口を開けている。

こいつが大人しくしているなんて珍しい。

俺は奴の見ている方に目を向けた。


そこには文化祭で一度見た

翔平の中学の同級生(確か名前は竜聖君だ!)がいた。

紗英ちゃんが嬉しそうに駆け寄っている。

そういえば紗英ちゃんは竜聖君と付き合っていると聞いた。

俺は横目で翔平を盗み見た。

奴は黙ったまま二人を見つめてフェンスを握りしめている。

腕に力が入っているのが、捕まえている手から伝わってくる。


普段はあんなにおちゃらけてても

やっぱり紗英ちゃんをとられて悔しいんだろうな…


あの奇行は普段我慢している分の反動なのだろうか?


少し奴を見る目が変わりそうだったが、

紗英ちゃんを困らせているのは事実なので

容赦なく元の場所へ連行する。

やはり二人が一緒の姿にショックを受けたのか

連行するときは大人しかった。


何だかしおらしいので話しかけて

気を紛らわせてやろう。


「おい。気にすんなよ。

お前いつも充分紗英ちゃんにからんでるだろ?」

「……分かってるよ。」


分かってるって顔じゃねぇだろ。

翔平の奴はいつになく真剣な表情だ。


「あきらめれば楽になるんじゃねぇ?」

「できないから困ってんだよ。」

「他に好きな奴見つければいいんだよ。

お前モテるんだし、告られた相手と付き合ってみれば?」

「………それって相手に失礼だろ。」


意外に真面目な奴だなぁ。

俺は何か案はないかと考えを巡らせる。


「あ!でもお前が誰かと付き合えば、

紗英ちゃん意外と嫉妬してお前に気持ちが動くとかねぇかな!?」

「はぁ!?」


我ながら名案だ。

嫉妬させて振り向かせるぞ作戦だな!

当の翔平は不服そうだ。


「……紗英はそれぐらいじゃ振り向かねぇよ。」

「自信ないなぁ~…。お前そういう後ろ向きな所が良くないんじゃねぇ?」

「うっさいな。どうせ俺は竜聖と違いますよ!」


何で竜聖君がでてくるんだ?

こいつ竜聖君に何かコンプレックスでも持っているんだろうか?

俺はため息をつく。


「でもさ、紗英ちゃんの嫌がることしてたらいつか嫌われるぞ。」


これにはさすがに翔平も嫌だったらしい。

口を噤んで顔をしかめている。


「俺は前のお前の距離感が良いと思うんだけど…

最近のお前どうしちゃったわけ?」


翔平は何かを思い出したようで、目を細めて遠くを見ている。

さっきと違い雰囲気が柔らかくなると少し照れている。


「紗英に俺の気持ちは伝わってるし…紗英も俺のこと大好きらしいから…

そう思ったら、なんか今まで色々心の中に押し込めてたネジが吹っ飛んだっていうか…

こう紗英の姿見ただけで、気持ちがぐわーってなるんだよ。」


紗英ちゃんが本当に大好きと言ったのか気になる所だが、

ネジが吹っ飛んだってのは分かりやすい例えだ。

まさに今の翔平はそんな感じだ。


「でも紗英ちゃんにキスすんのはよくねぇだろ?

合意の上でもねぇのに、ただの変態だ。」


「変態って!!でも紗英には受け入れてもらってそうなんだけどなぁ…」


はぁ!?あんな公衆の面前でされて受け入れる女子がいるか!!

こいつネジがとんだだけじゃなくて壊れたんじゃないかって気がしてくる。


「根拠は何なんだよ!?きっとファーストキスだっただろうし、

それをあんな公衆の面前で!男として最低だぞ!!」


「ファーストじゃねぇよ。前に俺としてるし。」

「はぁぁぁ!?!?」


しれっと答えるこいつに俺は信じられなかった。

顔が叫んだままの状態で膠着して、翔平を睨む。

翔平はそのときの事を思い出したのか赤面してやがる!

その顔やめろ!!


「なっ…!なっ…!…いつの話なんだ!それ!!」

「えー…と、最初は文化祭で一緒に回ったときに隠れて一回。

次が公開キスの前の日に俺が告白したときに二回?かな。」


「初耳だぞ!!それ!!しかも何だキスしまくりじゃねぇかぁ!!」


腕がわなわなと震えてくる。

こいつ…いつの間に…ただの欲に塗れた猛獣状態だ。

厚生させなくては!!


「接触禁止だ!!これからお前を音楽科には近づけさせねぇ!!

紗英ちゃんに近づいてみろ!監督に全部話す!!」


「はぁぁぁぁ!?!?!」


翔平は立ち上がって俺に掴みかかってきた。

俺は奴に怯まずに睨む。


「当たり前だ!!この変態め!

お前が友達だなんて情けなくて涙が出そうだ。

厚生が見られるまで、一切近づくことを禁じる!!」


「……んんぬうぅぅぅっ!!」


「監督に話されたくなければ、俺の言う通りにするんだな。」


「っくっそぉぉ~……!」


さっきから言い返したくても言い返せない翔平を見て

俺は今までため込んでいたストレスがなくなって晴れやかな気分だった。


最初からこうしてれば良かったのかと一息ついたとき

監督にケンカしている所を見られていたようで

呼び出しされお叱りを受けた。


ホントこいつに関わると碌な事がない。




読んでいただきましてありがとうございます。

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