2-53竜聖さん観察日記
こんにちは、どうも竜聖さんの右腕こと加地ッス!
あたっ!!美合先輩に殴られるッス!
すんません!嘘つきました!
竜聖さんの舎弟の加地ッス…。
えっと今日は竜聖さんの恋のキューピッドでもある俺が
竜聖さんの学校での様子を報告するッス!
というのも竜聖さんが校門前で告白したことで
学校中は大騒ぎになったッス。
鬼の竜聖に女!とかあの吉田が純愛!とか
中には校門の前で愛を叫ぶ!なんてのもあったッス。
こんな古いネタ誰が考えたんッスかね?
まぁ、竜聖さんは学校ではカリスマ的に目立つお人ッスから
噂になるのは当然のことなんスけどね。
当の竜聖さんは騒ぎの事も噂される事にも
見向きもしないでいつも通りッス。
俺だったら恥ずかしくて学校来れないッスけどさすがッス!
やっぱり竜聖さんは格が違うッス!尊敬ッス!!
そういえばこの間この噂に関して
予想外の所から反応があったッス!
それは学校の先生だったんスけど…
その先生は竜聖さんに話しかけて笑っていたッス。
竜聖さんと先生が仲良しの姿を見たのなんて初めてで驚いたッス。
先生までも味方につける竜聖さん…侮れないッス。
そんで今、俺は竜聖さんと美合先輩、
相楽先輩といつも通り昼飯を食べてるッス!
「竜聖さん…よく平気でいられますね。」
「へ?」
「噂すごいじゃないですか。
純愛なんて言われて恥ずかしくないんですか?」
美合先輩が何だか遠慮がちに訊いてるッス。
珍しいッスね。
竜聖さんは自嘲気味に笑うと目を細めているッス。
「ははっ…実際純愛だし、否定できねぇよ。」
「うぇえ!?そうなんですか!?」
「何で驚いてんだよ!!」
美合先輩のリアクションに驚いたッス。
相楽先輩なんか純愛って聞いて
食べる手を止めて固まってるッス。
美合先輩が手をなんだか気持ち悪く動かして
何か言おうとしてるッス。
「その…えっと…マジで…何もしてないんですか?」
「は!?あたりめーだろ!!」
「えぇぇぇ!?!?キスもしてないんですかぁ!?」
「何大声で言ってんだっ!!」
美合先輩…そのリアクションの大きさは何なんスか?
俺だったら好きな子にキスなんておいそれとできないッス!
竜聖さんに一票ッス!
ここで黙っていた相楽先輩が動き出したッス。
「竜聖さん…美合に分かりやすく説明してやった方がいいです。」
「…そ、そうか?」
「はい。私も美合ほどではありませんが驚いています。
女子を物のように扱ってきた竜聖さんが純愛なんて…っふ…っ!」
笑うのを我慢している相楽先輩に
さすがに竜聖さんの手が出たッス。
先輩たちの竜聖さんのイメージに俺はついていけないッス。
俺と出会う前の竜聖さんって女子を食い物のようにしてたんッスかね?
正座して聞く姿勢になった二人に竜聖さんが話すようッス。
俺も気になるんでそばに行くッス。
「紗英とは中学の同級生だってことは知ってるな。」
俺たちは頷くッス。
「中学のとき紗英からバレンタインチョコレートをもらったことがあるんだ。」
その話紗英さん本人から聞いたッス。
竜聖さんは知らないはずッスけど。
「俺はそのとき自分の気持ちに気づいてなくて、紗英を拒絶しちまったんだ。
でも後から気づいて死ぬほど後悔した。」
「つまり…竜聖さんは中学のときから好きだったってことですか?」
「…そうなるかな…。でも紗英と再会してから気持ちがはっきりしたから
ずっとってのとは違うのかもしれないけど…心の中にはいたから…微妙なとこだな!」
つまり竜聖さんの話をまとめると…
中学のとき好きだと気づいた…手遅れであきらめようとした。
でも心の中にはずっとあって、再会して気持ちが再燃したってことでいいんスかね?
めっちゃピュアじゃないッスか!!竜聖さん!
先輩たちも俺と同じことを思ったみたいで
竜聖さんをどついてるッス。
「なんなんですか!!泣かせる気ですか!竜聖さん!!」
「超長い片思いだったんですね。
すれ違って結ばれるなんてドラマみたいで、感動しました。
まさか竜聖さんがピュアボーイだったとは…」
相楽先輩の言葉にまた竜聖さんが怒って頭叩いてるッス。
ピュアボーイって言い回しされたら俺だってイヤッス。
「でも、片思いが長いのと手を出さないのでは違わないですか?
竜聖さんだったら両想いになった途端押し倒してそうですけど…あだっ!」
「俺に謝れ!!!」
また手が出たッス。
相楽先輩も懲りないッスねぇ…
「竜聖さんが変わったのも紗英さんの影響だろ?
なら、竜聖さんが紗英さんを大事すぎて手を出せない気持ちは何となく分かる。」
おりょ?美合先輩らしくないセリフッス。
何だか竜聖さんが板倉先輩と別れてから美合先輩の雰囲気変わったッス。
「美合…。」
「竜聖さん、美合の言葉通りでいいんですね?
紗英さんが大事すぎて手が出せないという事で!!」
相楽先輩…なんだか悪ノリしてるッスね。
竜聖さんは照れたように顔を背けると
小さな声で「そーだよ」答えたッス。
「ピュアボーイッ!!!!」
相楽先輩の叫びに竜聖さんが叩くだけでは飽き足らず、
首を羽交い絞めにしてるッス。
でも相楽先輩の叫びも分かるッス。
竜聖さんのあんな姿見たことなくて、ドキッとしたッス。
初めて竜聖さんを可愛いと思ってしまったッス。
これは怒られそうで言えないッスけど。
「あのっ!!吉田君!」
俺たちが談笑してるところに女の先輩がやって来たッス。
「ちょっといいかな?」
おや?この雰囲気は…
竜聖さんは相楽先輩を離すと、立ち上がったッス。
「何?」
「ここじゃ…ちょっと…。」
女の先輩の言葉に竜聖さんは「ちょっと行ってくる」と言い残して
どこかに二人で歩いていってしまったッス。
でも何となく予想はつくッス。
「これで何人目だぁ?」
美合先輩があきれたように言うッス。
相楽先輩は絞められていた首を撫でながら咳き込んでいるッス。
「少なくとも…っ…5人目ぐらいですかね?」
そう相楽先輩の言葉の通り、竜聖さんが公開告白をしてから
少なくとも五人は竜聖さんに告白しに来てるッス。
今までもなかったわけじゃないッスけど、さすがに多いッス。
何でッスかね?
「竜聖さんが意外に真面目でまっすぐだって事が知れ渡ったからだろ。」
俺の心の問いに何故か美合先輩が答えてくれたッス。
せっかくなんで続きを聞くッス。
「竜聖さんは目立つ人だし、背も高くて体格も良い。
素行の悪い面がなければ、もっとモテる人なんだ。」
「俺たちが言うのもなんだが、竜聖さんは優しいしな。
少し親近感を与えたことで、人気が爆発したんだろう。」
へえ…よく見てるッスね。
俺は少し二人を見直したッス。
「ま、でも紗英さんがいるんだ。何人告白してこようと意味ねぇよ。」
「ですね。」
何だか二人とも誇らしげッス。
そうッスよね。
俺達のリーダーがかっこよくて人気があるなんて誇らしいッス。
そんな俺らのリーダーを
骨抜きにする紗英さんはもっとすごいッス!
今度機会があったら紗英さん側も観察したいところッスね。
加地君は動かしやすいです。
読んでいただきましてありがとうございます。




