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勘違い系○○  作者: 流音
第二章:高校生
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2-42親子


紗英を送り届けて、家に帰ってくると

父親が居間にいるのが分かった。


いつもなら自分の部屋に行くところだが、

今日は居間に向かった。

紗英の言葉を少し信じてみたくなったからだ。

俺が居間に顔を出すと、父親が机の上の書類に向かっていた。

父親は俺に気づいて顔を上げると、かけていたメガネを外した。


「帰ったのか。ちゃんと送り届けてきたんだろうな?」

「あぁ。」


また上から目線で少しイラついた。

こいつはいつも変わらない。


「あの子、真面目そうないい子だな。付き合ってるのか?」

「は!?さっきも友達だって言っただろ!?」


こいつの口からそんな話が出るとは思わなかった。

体が熱くなり、変な汗が出てくる。


「でも、お前は好きなんだろう?」

「―――――っ!!」


父親に見透かされるなんて屈辱だ。

その場を立ち去ってしまいたかったが、

いつもと違う雰囲気の会話に少し期待している自分がいた。


「その様子だと、お前が変わったのも彼女のおかげかな?

彼女には感謝しなければならないな。」


親っていうのはこう何でも分かるのだろうか?

親とのコミュニケーションなんて久しくしていないので

分からない。


「竜聖、真面目に授業出ていると担任の先生から聞いている。

将来のことを考えてだと言っていたともな。」


増谷先生に話した事を思い出した。

適当な受け答えの一部だったのだが、まさか父親に伝えるとは…


「大学にいきたいのか?」


父親はまっすぐ俺を見つめてきた。

その目を見て紗英の言葉を思い出した。

『見守っている、あったかい目』

父親の目は俺を非難しているでも軽蔑している目でもない。

優しい目をしていた。


俺は正直に答えた。


「どこの大学に行きたいとかまでは考えてないけど…

進学はしたいと思ってる。今からじゃ間に合わないかもしれないけど…。」


「竜聖。間に合わないなんて事はない。

行きたければ、勉強すればいい。きっと間に合うさ。」


父親が俺を見て励ましている。

今までこんなことがあっただろうか?


「俺とお前は今までたくさんすれ違ってきたけど、

お前がしっかり自分の事を見つめることができる人間で安心した。

これからが大変だ、サポートはするから頑張れよ。」


父親の言葉に涙が出そうだった。

紗英の言う通りだ。

父さんは俺のことを見限ってなんてなかった。

ずっと俺の事を見て心配してくれていたんだ。

その事実に胸を打たれた。


俺は涙を我慢して、父さんに頭を下げた。


「ありがとう、父さん。」


父さんが優しい声で「ああ」と言ったのが聞こえた。




***




その日から俺と父さんの関係は少し変わった。

今までご飯はバラバラだったのが、一緒に食卓を囲むようになった。

朝一緒に家を出て、帰りは父親が食材を買って帰って来て俺が作る。

会話も以前より数段増えた。

この二年以上の間、壁があったのが嘘のようだった。


俺は紗英に感謝の気持ちでいっぱいだった。

その感謝も含めて、クリスマスにはとびきりのプレゼントをしようと心に決めた。

ショッピングモールに足を運んでは悩む日々。

また安藤に頼もうかと思ったが、せっかくの二人だけのクリスマスだ。

自分で決めたい。


でもどういうものが定番かもわからなかったので、

ある日仲間たちに尋ねることにした。


「クリスマスプレゼントッスか?」


加地がパックのジュースを片手に首を傾げている。

美合はカベにもたれかかって欠伸している。

相楽なんか自分には聞かないでください状態で本を読んでいる。


「こう普通のクリスマスプレゼントって何あげるものなんだ?」

「定番はマフラーとか手袋じゃないですか?あとはジュエリー系ですかね?」

「ジュエリー…」


俺は紗英にジュエリーを当てはめてみた。

指輪はピアノ弾くのに邪魔だよな?

ピアスは紗英、穴開いてないよな?

ネックレスはいいかもしれないけど、何だかピンとこない。

まぁとりあえず、候補にはいれとくか。


「他には?」

「他ッスかぁ~?」


加地は腕を組んで考え込んでしまった。

ここで美合が何を思ったのか、急に口を開いた。


「好きな女にジュエリー贈るのって

犬や猫の首輪と一緒で俺のものだって証らしいですよ。」


美合が意味深に俺を見てニヤリと笑った。


「竜聖さんにはぴったりかもしれないですね。」


どういう意味だそれ!!

俺が独占欲強いとでも言いたいのだろうか…?

まぁ、否定はできないけど…


でも俺のものって証か…

毎日身に着けてくれることを考えるとジュエリーも良い気がしてきた。

ただでさえ翔平の奴が近くにいるんだ。

ちょうど良いかもしれない…


俺はとりあえず一度見に行こうと立ち上がる。


「あれ?どこか行くんスか?」

「現物見てくる。でないと決められない。」


「あ、じゃあ俺もついて行きますよ。」

「俺も行きたい。」


美合の参加表明に、話にも参加していなかった相楽まで乗り気で立ち上がる。


「俺一人で買いに行くからいいよ。」

「見に行くだけで口は出しませんよ。」


美合の顔は明らかに面白半分だ。

こいつらのことだ、

口は出さないとか言ってからかってくるに決まっている。

できるなら俺一人で行きたい。


「皆さんが行くなら俺も行くッスよ!」

「じゃあ、皆で竜聖さんのプレゼント選びに付き合うってことで。」


話がまとまりそうで、俺は奴らを無視して教室に走った。

一人で行くには置いて行くに限る。


「あ!竜聖さんが逃げたッス!!」


背後で加地達が騒いでるのが聞こえる。

ここからはスピード勝負だ。

鞄をとって、校門…いやショッピングモールまで全力で走る。

頭で計画を立てて、実行する。


そのときは何とかショッピングモールまで逃げられたのだが、

選んでいる内に見つかったのはいうまでもない。




父親と仲直りしました!!一段落です。

次から一気に三人の関係が変わっていきます。

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