表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勘違い系○○  作者: 流音
第二章:高校生
40/218

2-34文化祭Ⅱ


俺は美合と加地に抱えられている紗英を奪い返すと

自分の来ていたパーカーを手渡した。

紗英は不思議そうな顔でこっちを見ている。


「その格好寒そうだから。着ててくれ。」


紗英はへらっと笑うとパーカーを受け取った。


「ありがとう。やっぱり廊下はちょっと寒いね。」


俺はあんなに肌を露出した紗英を見る方が耐えられない。

目のやり場に困るし、おかげでほとんど会話できていない。

でも…この姿を見られただけでも、俺は来てよかったと思った。

こんなに丈の短いスコート姿は中学のマーチングを見て以来だ。

自然に顔がにやけそうでその度に眉間に力を入れる。


「竜聖さん!!ここ!面白そうッスよ!」


俺の前を歩いていた加地が振り返って横の教室を指さした。

俺と紗英はそっちに目を向ける。

そこには二人三脚障害物と看板がかかっていた。

美合と相楽はすでに入り口で説明を聞いている。

俺がそこに行くと、相楽が振り返って説明してくれた。


「ここは二人一組で教室の中の障害物をくぐりぬけてタイムを競うゲームらしいです。

美合は面倒そうだからやらないそうなんで、俺と加地。

竜聖さんと紗英さんで勝負しましょうか?」

「え!?やることは決定なのか?」

「だって、俺と加地だけでやっても面白くないじゃないですか。」

「いやいや…」


俺は紗英が俺と組むのにどう思ったかが気になった。

ちらりと紗英の顔を見ようとしたとき、美合がニヤっと笑ったのが見えた。

あ、こいつ企みやがったな。

美合をじとっと見据えたとき、わざとらしく欠伸している。


「いいよ。吉田君。やろっか。」

「えっ…?いいのか?」

「うん。面白そうだし。」


俺は紗英がそういうならとしぶしぶ頷いた。

相楽が満足そうに俺に足をくくる紐を渡してきた。


そして教室の中に入ると、なんとまぁややこしい障害物が所狭しと並んでいた。

コースを見ると、最初に平均台が二本並んでいる。

二組同時に走るから、まさか一本を二人で渡るのか!?

次に網縄が広げられている。しゃがんでいかないといけないな…。

最後に麻袋!?これに二人で入れってか!?

二人三脚関係なくなってんじゃん!


横を見ると紗英も唖然としていた。

ゴールできるのか考えているんだろう…。

俺は大きく息を吸い込むと紗英を励ました。


「大丈夫だ!俺に全部頼れ!紗英!!」

「……う、うん。足引っ張らないように頑張るね。」


まだ少し不安げだったが、元気はでてきたようだった。

俺たちはスタートラインにつくと、

俺は左足、紗英は右足に紐をくくりつけた。

二人で足を上げて外れないか確認する。

準備ができて横を見ると、相楽と加地が紐をくくるのでもめていた。

こんな奴らを見ていると勝てる気がしてくる。


「じゃあ、準備はいいですか?よーい、ドン!!」


出し物担当の生徒の掛け声で俺たちはスタートを切った。

すぐ目の前には平均台だ。

俺は先に平均台に上がる。

そして紗英をひっぱり上げる形で俺たちが先に平均台に上った。

横では相楽が足を引っ張って平均台から落ちていた。


「紗英、ゆっくり行くぞ!」

「うん!」


俺は紗英の肩を掴んでバランスをとりながら前へ進む。

何とか落ちずに端まで来たとき、俺が片足を下ろして紗英に手を伸ばす。

紗英の手を掴むと、紗英は平均台を飛び下りた。

よし!順調!!


次の障害である網縄に手をついて入ったとき、紗英が急に止まった。

スコートを手で押さえて赤くなっている。

ここで気づいた。

丈の短いスコートではしゃがんで四つ這いになると中が丸見えになってしまう。

考えに及んでなかった。

どうしようかと考えていたら、

紗英がパーカーを脱いで腰に巻き付けた。


「ごめん、大丈夫。」


そういうと網縄に入ってきた。

俺はほっと胸をなで下ろすと、息を合わせてなんとか潜り抜けた。

でも、さっきのタイムロスで加地と相楽がケンカしながら追いついてきた。


最後は麻袋だ。

俺たちはつないである足を先に袋の中に入れると、反対外の足を交代で中に入れた。

そして麻袋を持ち上げると、意外と密着することに気づいた。

これは…ほぼ紗英を抱きしめている気が…

紗英もそれが気になるのか、少し頬が赤い。

今まで競技に集中していたので、深く考えなかったが

手をつないだり、肩を寄せたり大胆な事をしている自分に気づく。

心臓がバクバクと音を立て始める。


「竜聖さん!!」


美合の声にハッと我に返り、

紗英の体をぐっと抱きしめると「行くぞ。」と声をかけた。

紗英は頷くと息を合わせてゴールまでジャンプする。

運よく相楽、加地ペアがゴール前で転んでくれたので

俺と紗英は先にゴールすることができた。

ゴールラインで麻袋を放し、肩で息をつく。


「ゴール!!タイムは二分十秒!けっこうかかりましたね~。

最短時間は五十秒なんで、記念品だけもらっていってください。」


係りの生徒の明るい声を聞きながら、

なんだそれだけか!と心の中で突っ込みをいれた。

横で後からゴールした相楽と加地もバテている。

なかなかハードな競技だった。


「あはは!なんか面白かったね。

寒かったはずなのに汗かいちゃった。」


紗英が楽しそうに俺の横で笑っている。

俺もつられて笑った。

加地も相楽も笑ってたが、

係りの生徒にそろそろどいてくださいと

言われてしまい教室から廊下へ出た。


「次はどこ行くッスか?」


紗英は少し考えたあと、俺たちを見回した。


「…私、どんな出し物があるか…あんまり知らない…。」


俺は相楽と加地が顔をそむけて吹き出すのが分かった。

美合に至っては目を細めて、遠くを見つめている。


「あ、でもお化け屋敷があるのだけは知ってるよ!」


紗英は場の空気を何とかしようと絞り出したようだった。

でも言ってから少し後悔したようで、

明らかに元気をなくして俯いてしまった。


「じゃ、そこ行くか。」

「そうッスね!お化け屋敷楽しみッス!!」


「や…やっぱり…行くんだ…。」


紗英は先に進む美合たちを見てため息をついた。

俺は様子が変なので、紗英に近寄って訊いた。


「どうした?紗英。」

「……翔君のとこのお化け屋敷なんだけど…

私、お化け屋敷って苦手で…。」


翔平のところの出し物か…

紗英には悪いが、

俺は翔平にできる嫌がらせを思いついてしまった。

紗英の手を握ると、安心させるように笑う。


「俺と一緒にいれば大丈夫だって!行こ!!」


紗英はしぶしぶ頷くと、少し微笑んだ。


俺は紗英と手をつなぎながら、

翔平の顔を思い浮かべて心の中でほくそ笑んだ。



次は翔平視点です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ