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勘違い系○○  作者: 流音
第二章:高校生
36/218

2-30ライバルで友達

俺は今駅前で下校してくるだろう紗英を待っていた。

手には昨日安藤に付き合ってもらって

買いに行ったプレゼントを持っている。


喜んでくれるだろうか?

心臓がドクドクと速い脈を打つ。

会う前からこんな調子で

俺の心臓は大丈夫なんだろうか?


こんなに心臓が速いのにはプレゼントを渡す以外に

もう一つ理由があった。

自分の気持ちを紗英に告白しようと決めていた。


中学の時は自分の気持ちを伝えなかったことで

すごく後悔した。

だから今度は結果なんかどうでもいい。

とりあえず気持ちを伝えることだけはしておきたかった。


手に汗をかいてきて、何度もプレゼントの袋を握りなおす。

電車が着く度に改札に目をこらす。

姿が見えないと、少しほっとしている自分がいる。

何分待っただろうか…

夕日が沈み始めた頃、やっと紗英の姿を改札に見つけた。

駆け寄ろうとしたとき、

柱の影に隠れて見えなかった翔平の姿が見えた。


俺は一瞬躊躇った。

プレゼントの袋を後ろに隠して立ち止まる。

少しずつ後ずさりしていたとき、紗英に気づかれてしまった。


「吉田君?」


紗英を見ていた翔平の目がこっちを向く。

翔平は紗英の前なので流石に睨んではこなかったが、

表情から歓迎されていないのは分かった。

そんな翔平に構わず紗英は嬉しそうに俺に駆け寄ってきた。


「どうしたの?

もしかして待っててくれてた?」

「あ……えと。」


俺はどう返事するべきか迷った。

翔平のいる前ではプレゼントなんて渡せない。

紗英は不思議そうな顔で俺を見てくる。

何か言わなければ…


「竜聖。なんか用があるからここにいたんじゃねぇのかよ?」


翔平は明らかに俺を挑発している。

それが分かってて黙ってる訳にはいかない。

俺は翔平を見たあと、決意を固めた。

翔平がいたって構わない。

俺の気持ちを伝える!


「紗英。これ!」


俺は隠していた袋を紗英に差し出した。

紗英はしばらくその袋を見つめていたが、

「いいの?」と訊くので俺は頷いて

彼女に向かって更に手を伸ばした。

紗英は「ありがとう」と言うと

俺の見たかった笑顔になった。


「中学のとき…チョコレート貰ったお礼…

できてなかったから…その遅くなったけど…。」

「…開けてもいい?」


紗英は目を輝かせていた。

俺はそんな嬉しそうな紗英を見て

自然に笑顔がこぼれる。

紗英は袋を開けてラッピングを綺麗に取ると

音符のパスケースを見て満面の笑顔になった。


「音符…嬉しい。ありがとう。」


今なら言える。

俺は緊張で渇く喉を潤すために一度唾を飲み込むと

まっすぐ紗英を見た。

すると翔平が紗英の肩に手を置いて俺を見てきた。


「紗英。ちょっと竜聖と話したいんだけど、二人にしてくれるか?」

「……翔君。」


俺は翔平に告白を邪魔されたようで、

内心イライラしていた。

紗英は俺のあげたパスケースを握りしめると、

翔平を見上げてムスッとふくれた。


「ケンカするの?」

「ち…ちげーよ!話しするだけだって。」


翔平は紗英の背中を押すと

少し離れた花壇の所まで連れていった。

紗英はしぶしぶ納得すると、その花壇に腰かけていた。

翔平は俺を見ると一息ついてから口を開いた。


「お前、今告るつもりだったろ。」


こいつやっぱり分かってて邪魔しやがったな…

翔平の上から目線にカチンときた。


「だったら?俺はいつも一緒にいても

気持ち伝えらんねー奴とは違うんで。」

「――――――っ!いい事教えてやるよ。

紗英は俺もお前も特別で失いたくないんだと。」

「はっ!?」

「要は恋愛対象外。良かったなぁ~告る前に知れて。」


恋愛対象外!?

何だか前、紗英と話したときにも感じた事を思い出した。

確かに告白する前に聞けて良かった…

良かったけど…何かひっかかる。


「俺も…お前も?」


翔平の言葉に気づいて繰り返す。

翔平は失言だったようで、顔をそむけた。

そんな翔平を見て、笑いがこみあがる。


「――――っぶ!あはははは!!お前もかよ!!」

「うっせーよ!!助言してやっただけありがたいと思え!」


翔平とこんなやり取りをしたのはいつ以来だろうか

なんだかすごく懐かしくて、嬉しかった。

俺は笑いが止まらなくてお腹を抱えてヒーヒー言っていると

翔平が俺の首をしめてきた。

駅前でじゃれているのが中学のときのようで楽しい。


「紗英に近づくなら、俺以上の男になるんだな!」

「えらそーに!昔は俺の背中にくっついてたクセに。」

「今は俺のが上なんだよ!」

「はっ!!すぐに追い抜かしてやるよ!」


俺たちがもみ合っているのを見てか

紗英が走ってやってきた。


「やっぱりケンカしてる!」

「ちがうちがう!これは男同士のスキンシップだよ、な!!」

「ああ。気にすんな、紗英。」


俺と翔平はお互いにもみ合っていたが、

顔を見合わせて笑った。

中学のときから感じていた翔平との壁がなくなったのが分かる。


紗英も何か感じ取ったのか、最初は怒っていたが、

いつの間にか俺たちを見て笑っていた。



俺たちは恋のライバルだ。

だけど、やっぱり嫌いにはなれない。

大事な友達で親友なんだ。




読んでいただきましてありがとうございます!

一件落着しました!次からは恋模様を絡めていきます。

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