表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勘違い系○○  作者: 流音
第二章:高校生
28/218

2-22友達?

俺は緊張で喉が渇いていた。

授業が終わるまであと5分。


昨日紗英に会いに行ったとき、

一昨日に比べれば話は聞いてもらえた…と思う。

俺と目も合った。

少し前へ進んだような気がする。


でも、紗英が許してくれる日がくるのか…

それを考えるとこうやって喉が渇く。

緊張しているのかもしれない。


昔紗英と話してたときは緊張なんてしてなかった…と思う。

平気で話しかけていたのに、いつからこんなに緊張してまで

相手の事を考えるようになったのだろう。


答えはすぐに出た。

そうだ…紗英が特別だからだ。


中学のときのように好きかと言われたら、分からないが…

違う部分で紗英は俺にとって特別なんだ。

だからこそこんなに必死になるんだろう。


考えている間に終了のチャイムが鳴った。

俺は机の上の教科書をサッサと片付けると、

鞄に突っこみ席を立った。

あえて話す友人もクラスにはいないので

まっすぐ教室を出る。


出た所で、さっきの授業の担当だった増谷先生に呼び止められた。


「吉田。ちょっといいか?」


俺は早く紗英の所に行きたかったが、

以前相談にものってもらったこともあるので

大人しく話を聞くことにした。


「お前、最近真面目に学校の授業に出てるようだな?

何か心境の変化でもあったのか?」


増谷先生は俺より少し背が高いので、俺を見下ろして尋ねた。

メガネの奥の目が少し優しげだった。


「…別に…。将来のこと考えただけですよ。」


相談したときの事を聞かれてるんだと分かったが、

そんな恥ずかしい事言えない。

だから適当に思いついた答えだったのだが、増谷先生は嬉しそうに笑った。

目の横のしわがくっきり分かる。


「そうか。お前がなぁ…。これからが楽しみだよ。

大学のこと相談にのるからいつでも聞きにこいよ。」


増谷先生は俺の肩をポンと一度叩いてから歩いて行った。

楽しみ…か…

俺は叩かれた肩を触ると、校門へ向かった。



***



俺は昨日、一昨日と紗英に会った道の電信柱にもたれかかっていた。

紗英を待つ間、さっき増谷先生に言われた事を考えた。

最近真面目に学校に行ってたのは、

紗英と並んで歩ける俺になりたかったからだ。

大学なんて考えたこともなかったけど…

その道も考えても良いかもしれない

勉強はできないが、目標があれば頑張れるはずだ。


そこまで考えて一つの大きな壁があることに気づいた。

俺の父親だ…。

あいつが大学なんて許すはずない…

ただでさえ期待されてないんだ。

言い争いになるのは目に見えている。

自然とため息がでる。


「吉田君。」


声をかけられ、俺はどれだけそこで考えていたのか

記憶がとんでいる事に気づいた。

顔を上げると紗英がまっすぐ俺を見ていた。

俺は慌てて姿勢を正すと、紗英に向き直った。


「紗英…そのしつこいと思うかもしれないけど…

俺、本当なんだ。紗英と話したいのは。」


「うん。」


うん…?

てっきりまた無視されるかと思ってた俺は

驚いて紗英の顔を見つめた。

紗英はうっすら微笑んでいる。


「ごめんね。吉田君。

私…怖かったんだ…。また、拒絶されて傷つくのが…。」


初めて紗英の気持ちを聞いて、俺は何度も頷いた。

当然だ。それだけの事を俺はしたんだ。


「でも…私も吉田君と前みたいに話したい。」


紗英の笑顔が目の前にある。

作り笑顔じゃない、俺に向けられた本物の笑顔。

それだけで心に温かい何かが広がるのを感じた。


「ここから、また私と友達になってくれる?」


紗英は俺に手を差し出した。

俺はしばらくその手を見つめて、信じられなかった。

また…話せるってことだよな…?

俺は自然に笑顔になるとその手をとって、握手した。


「俺こそ!」


紗英が一瞬驚いたような顔をしたが、またすぐ笑顔に戻った。


俺は紗英の手を離すと、話すと言っても何から話せばいいのか

分からず言葉が出てこない。

紗英もそうなのか、目が泳いでいた。


…紗英に何か話題をふらないと…

何がいい…?俺の聞きたいことを聞いてみるか…?


「…吉田君はさ…」


俺が考えている間に紗英が口を開いた。


「私と会ってても大丈夫なの?」


……大丈夫?ってなんだ…?

紗英に会う事にダメな理由はないはずなので

返答に困った。

紗英は言うのをためらっているような感じだったが

続けて口を開いた。


「…板倉さんに誤解されない?」


板倉…?

急にあいつの名前が出てきて驚いた。

誤解って何だ?

あいつに何誤解されたって構わないけど…そう答えればいいのか?


「板倉って…別に…関係ないと思うけど?」


紗英は俺の答えを聞いて、目を丸くしている。


「え…?…板倉さんと付き合ってるんじゃ…ないの?」


つ…つきあって…


「え!?!?」


板倉と俺が付き合ってるという事に俺自身が驚いた。

俺たちって付き合ってたのか!?

いや…あいつは幼馴染だし…そんな目で見たことなんて…


ここで過去の間違いを思い出した。

顔の血の気がひいていくのが分かった。


紗英は純粋なままの瞳で俺を見て、首を傾げている。

俺はそれがまぶしくて、顔を逸らした。

付き合ってはないが…板倉には気を持たせている…

事に今気づいた。


最悪だ!



「吉田君…?」


紗英にだけは誤解されたくない!


「違う!!付き合ってない!!断じてあいつとはないから!」


身振り手振りで変に否定してしまったので、

怪しまれたかもしれない。

紗英はそんな心配もよそに、楽しそうに笑った。


「ふふっ…そんなに否定しなくても…。」


確かにそうだ…

これは板倉との関係をはっきりさせないといけないな

と心に刻み込んだ。


「もし彼女ができたら、私と会ったりはしない方がいいと思うよ。

誤解されちゃうだろうし…だから…そのときは言ってね?」


この言葉が俺の頭に強い衝撃を与えた。

彼女ができたら…か…

紗英の中の俺は恋愛対象外という事実が思った以上にショックだった。

何でショック受けてんだ…

俺と紗英は友達だろ。


俺は目の前の紗英に笑顔で頷いた。

でもしっくりこない気持ちが

胸の中で渦巻いてるのをうっすらと感じていた。



やっと仲直りしました~。

次からは姿をひそめていた梓の登場です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ