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勘違い系○○  作者: 流音
番外編
208/218

番外編5 仲間達:加地雄介


どうも!!お久しぶりッス!!

今日は竜聖さんがこっちに帰って来るってことで、俺たちは駅で竜聖さんを待ち構えていたッス。

紗英さんから連絡をもらったときは、もう美合先輩達と声を上げて騒いだッス。

竜聖さんが記憶を取り戻して、紗英さんとも順調に付き合っていると聞いて、俺たちは嬉しすぎてどうにかなるかと思ったッス。


それぐらい竜聖さんの存在は俺たちにとって特別で、会えなかった5年があったとしても憧れの対象なんス!!

そんな竜聖さんが帰って来るなんて、もうワクワクし過ぎて昨日は寝られなかったッス!!


おっと、こうしてソワソワしている間に改札に竜聖さんっぽい人が見えてきたッス!!


「竜聖さん!!」


美合先輩が一番に声を出すと、改札をくぐった竜聖さんっぽい人が顔を上げたッス。

その顔を見て俺は竜聖さんだと確信したッス。

昔より磨きがかかってカッコよくなっていて、俺は思わず走り出したッス。


「竜聖さんっ!!」


「加地!美合!相楽!!」


竜聖さんが嬉しそうに笑って名前を呼んでくれて、俺は勢いのまま竜聖さんに抱き付いたッス。


「竜聖さん!!竜聖さん!おかえりッス!!会いたかったッス~!!!!」

「はははっ!!大げさだな。お前ら、昔と全然変わらねぇなぁ~。」


竜聖さんは抱き付いている俺の背中をポンポンと叩いてから、美合先輩たちに言ってるようだったッス。

俺は昔と変わらない竜聖さんの声に涙が出てきて、鼻をすすったッス。

後ろから同じように美合先輩たちの鼻のすする音が聞こえるッス。


「竜聖さんは変わりましたね。なんだか、東京の人みたいに磨きがかかって、オシャレですよ。」

「ははっ!俺、東京の人だからな。」

「そうでしたね。今はお金持ちのお家に住んでるって聞いてますよ。」

「それを言うな。金持ちとか言われると虫唾が走る。」

「いいじゃないですか!!竜聖さんの魅力に財力がプラスされて、もう敵なしですよ!!紗英さんのご家族だって玉の輿なんて喜ばれるんじゃないですか?」

「そう簡単にいったら、もう結婚してるっつの!」


竜聖さんはあまり紗英さんとの仲が上手くいってないのか、ため息をついてるッス。

俺はそんな竜聖さんが気になって、竜聖さんから離れると顔を窺ったッス。

心なしか元気がないような気もするッス。


「まぁ、とりあえず落ち着いて話できるところに移動しませんか?」

「そうだな。どこに行こう?」

「あ、俺、ちょっと会いたい人がいて…先にそこに行ってもいいか?」


竜聖さんが会いたい人と言って、俺たちは想像もつかなかっただけに竜聖さんを見つめたッス。

竜聖さんはニッと口の端を持ち上げると、胸を張って言った。


「俺らが出会った西ケ丘高校だよ。そこにいる増谷先生に会いたいんだ。」


竜聖さんの言葉に俺たちは顔を見合わせたッス。




***




俺たちは卒業して以来の高校に足を運んだッス。

変わらない校舎を見上げると、今にも高校時代にバカ騒ぎした事を思い出すッス。

俺は懐かしくて、その日の事を口にしたッス。


「俺…竜聖さんと校舎の横で昼食べるのが、すっげー楽しかったッス。もう毎日の楽しみで、チャイムが鳴ると一番に走っていってたのを覚えてるッス。」

「あ、だからお前いっつも一番にあそこにいたんだ?」

「あの頃のお前、忠犬みたいに竜聖さんを待ってたもんなぁ~…。あ、今もそうか。」

「失礼ッスよ!自分たちだってそうだったじゃないッスか!!」

「俺らはお前みたいに忠犬じゃねぇよ。」

「そうそう。加地と一緒にするな。」

「はははっ!お前らホント変わらねぇよなぁ~。」


俺ら三人が言い争っていると、竜聖さんが口を開けて笑い出したッス。

そんな笑顔を見られるのが素直に嬉しくて、俺はずっと胸が高鳴り続けているッス。

竜聖さんは本当に帰って来たんだと実感するッス。

そして俺たちは職員室の前まで来ると、ノックして職員室に顔を覗かせたッス。


「こんにちはー。お久しぶりです。増谷先生はおられますか?」


竜聖さんが普通に声をかけて、職員室が一瞬静まりかえってその後に何人かの先生が椅子の音をさせて立ち上がったッス。


「よ…吉田か!?」

「吉田!!」


2、3人の先生が竜聖さんに詰め寄ってきたッス。

竜聖さんはそれに少し後ずさりながら、愛想笑いを浮かべているッス。


「お前!!急に退学しやがって、何してた!!」

「東京に行ったってのは聞いてたが、無駄にでかくなったな!!」

「あの…でかくとかあんま昔と変わってないんですけど…。」


竜聖さんが言い訳のように言って、興奮する先生たちを宥めているッス。

5年も経っているのに、こうして先生たちに顔も名前も覚えられてるなんて竜聖さんはすごいッス。

というかまだこの高校に残ってる先生がこんなにいたのも驚きッス。

公立高校ッスから転勤があると思ったんスけどねぇ~…


すると興奮する先生の後ろから、落ち着いた雰囲気のメガネの先生が顔を見せたッス。

髪がボサボサなのが目を引くッス。


「増谷先生。お久しぶりです。」

「吉田…。その顔は…記憶戻ったか。」


その増谷先生は竜聖さんの事情を全部知っていたようで、柔らかい笑顔を浮かべて竜聖さんの肩を叩いたッス。

竜聖さんはそれを見て、照れ臭そうに少し視線を下げた後頷いたッス。


「はい。ご心配おかけしました。あれから、紗英とも会えて…今は彼女は婚約者です。」

「そうか!!良かったな!お前、自分の事で苦しめた分、彼女を幸せにするんだぞ。」

「はい。一生かけてそうするつもりです。」


俺は紗英さんが婚約者というのが初耳で驚いたッス。

でも増谷先生に真剣な顔で頷いた竜聖さんを見て、自然と嬉しくなって頬が緩んだッス。

美合先輩たちも同じようで、目を輝かせて笑い合っていたッス。


そして増谷先生と話をしたいという竜聖さんと別れることになって、俺らは懐かしい校舎横のスペースで竜聖さんを待つことになったッス。

高校の時と同じ場所に座っていると、あのときの感覚が蘇ってくるッス。


「竜聖さん、幸せそうだよな。」


美合先輩が胡坐を組んで座りながら、微笑んで言ったッス。

相楽先輩もメガネを指でクイッと上げると頷いたッス。


「そうですね。まぁ、昔から竜聖さんは紗英さんが横にいるときは、あーいう顔してましたけど。」

「ははっ!確かに。なんだかんだあっても一緒にいるんだからさ、もう壊れることはねーよな?」

「そう思いたいですね。駅での竜聖さんを見てると、結婚までは色んな苦悩があるようでしたけど。」


相楽先輩も俺と同じことを気にしていて、自分の気づいた事は正しかったと思ったッス。

何か協力できることはないんスかねぇ~…


「っていうか、今日紗英さん来てねーよな?」

「そうですね。紗英さんから連絡があったので、てっきり一緒に来られると思ってたんですが…。お仕事の都合でしょうか?」


相楽先輩が心配そうに言ったッス。

美合先輩も考え込んでしまって、腕を組んで黙ってしまったッス。

俺がそんな二人を見ていると、話が終わったのか竜聖さんが校舎の影から姿を見せたッス。


「待たせたな。っつーか、ここ寒くねぇか?」


竜聖さんが腕を抱えて言って、それを見た相楽先輩がさっきの疑問を投げかけたッス。


「竜聖さん。今日は何で紗英さんと一緒じゃないんですか?」


竜聖さんは一瞬目を見開いたあと、瞬きすると眉間に力をこめてムスッとした。

そしてその顔のまま高校のときの定位置にしゃがみ込んだッス。

校舎の壁に背をあずけているのが、昔の姿とかぶるッス。


「…紗英が一人で行けって言ったんだよ。」

「へ…?紗英さんが本当にそう言ったんですか?」


俺たちは紗英さんが本当にそんなことを言ったのか信じられなかったッス。

記憶が戻ったことを嬉しそうに報告してくれた、あの優しい紗英さんが『行け』と命令する姿なんて想像できないッス。


「言ったんだよ。だから…一人で来たんだ。」


子供みたいにふてくされている竜聖さんを見て、俺たちは顔を見合わせた後、真相究明することにしたッス。


「紗英さんが何もなくてそんな事言ったとは思えないんですけど。竜聖さん、何かしたんじゃないんですか?」

「そうですよ。正直に話してください。」


美合先輩と相楽先輩に詰め寄られて、竜聖さんはちらっと様子を窺って口を開いたッス。


「…その…俺、この間無理やり合コンに参加させられて…、それが紗英にバレたんだよ。」

「合コン!?」

「そりゃ、紗英さん怒ったでしょう!?」

「だからここに一人でいるんだろが…。」


竜聖さんははぁっと大きくため息をつくと、項垂れたッス。

余程紗英さんを怒らせたようッスね。

元気のない理由はこれかと納得したッス。


「それっていつの話ですか?」

「一週間ぐらい前かな…。まぁ…合コンのことを黙ってた俺が悪いんだけどさ。」

「何で黙ってたりしたんですか?正直に行きたくないけど、行かなきゃならないって言えば良かったのに。」

「そうですよ。黙ってたりするから、バレて怒らせる結果になったんじゃないんですか?」


美合先輩たちに正当な事を言われて、物凄く不機嫌そうな顔で竜聖さんが俺らを見たッス。


「うるせぇ。お前らにこの気持ちは分からねぇ。」

「分かるかどうかは話してもらわないと判断できませんよ。さぁ、どうして正直に言わなかったんですか?」


相楽先輩が竜聖さんの神経を逆撫でするように上から言っていて、俺は内心ヒヤヒヤしていたッス。

でも竜聖さんは昔のようにすぐ怒ったりはしなかったッス。


「…それまで毎日がすげー幸せで…合コン行くなんて言ったら、その毎日が壊れそうで怖かったんだよ。結果的に壊れたけどな。だから言えなかったんだよ。」


臆病にも怖がってる竜聖さんが可愛く見えたッス。

それだけ紗英さんとの毎日を大事にしてたって事ッスよね!!

う~ん!!竜聖さんのピュアさは健在のようで嬉しいッス!


「っぶは!!ピュアボーイ健在ですか!!まさか、まだ手を出してないとか言わないですよね!?」

「アホか。俺はそこまでピュアでもねーよ。毎日自分のやりたいようにやってただけだ。」

「毎日!?」

「えっ!?竜聖さん、毎日幸せって…そっちの話なんですか!?」

「それ以外に何があんだよ?」


ガーン!!

竜聖さんがピュアとは真逆のオオカミになっていて、俺はショックッス!!

てっきり結婚するまでそういうのはナシ!!とか言うと思ってたッス!!

まぁ…でも、この辺は健全な男子だったって事にしとくッス。


「あー…マジで限界だ…。今まで毎日だったのに、一週間も紗英に触れてねぇ…。もう一緒に住もうかな…。」

「一週間でそこまでとは…竜聖さんの紗英さんへのハマりっぷりは目を見張りますねぇ~。」


竜聖さんのぼやきに相楽先輩が面白そうに笑ってるッス。

俺も同意見ッスけど。


「うるせぇなぁ…。そういうお前らはどうなんだよ?彼女の一人でもできたのか?」


竜聖さんの問いに明らかに動揺した人がいたッス。

竜聖さんから思いっきり顔を逸らしたもので、竜聖さんに気づかれてるッス。


「おい、美合。あからさまに顔逸らすんじゃねぇよ。できたならできたってハッキリ言えよ。」

「いや…その…はい。できたのはできたんですけど…。」


美合先輩もさすがに竜聖さんには言いづらいのか口をもごつかせているッス。

相手が竜聖さんの元カノだけに言いだし辛いのは俺にも理解できるッス。


「竜聖さん。美合は板倉さんと付き合ってるんですよ。」

「さっ…相楽!!」


相楽先輩がサラッと言ってしまって美合先輩が焦ってるッス。

竜聖さんは「へぇ~。」と言って何だか嬉しそうに笑ったッス。


「なに俺に気を遣ってんだよ。良かったな。美合。」

「…あ、はい。ありがとうございます。」


竜聖さんの言葉に美合先輩は嬉しそうッス。

そうッス!元カノとか気にする必要はないんッス!!

竜聖さんはそういうお人ッス!!

今は紗英さんがいるんだからなおさらッス!!


「あーっ!!やっぱりここにいた!!りゅー連れてくるのに何時間かかってんのよ!?」


甲高い声が聞こえて、俺たちが声のした方を見ると、板倉先輩が肩を怒らせてこっちに向かってくるのが見えたッス。

今ちょうど話をしてただけに、タイミングばっちりの登場ッス。


「よう。板倉。久しぶりだな。」


竜聖さんが片手を上げて板倉先輩に声をかけると、板倉先輩は竜聖さんを見て立ち止まったッス。

そしてみるみる顔を歪ませると、こっちに向かって走ってきて竜聖さんに飛びつくように抱き付いたッス。


「りゅー!!りゅーっ!!心配したんだから!!何ですぐに連絡しなかったのよ!!バカーッ!!」

「悪い。電話とかより、直接会った方が良いと思ったんだ。心配かけて、ごめん。」


竜聖さんとの再会に涙ながらに抱き付いている板倉先輩を見て、美合先輩は複雑そうッス。

俺は美男美女の二人を見て、こっちがカップルのような錯覚を起こしたッス。


「もう勝手にいなくなったら許さないから!!末代まで呪うから!!」

「ははっ!じゃあ、いなくならないようにしないとな。紗英まで呪われる事になる。」


竜聖さんの言葉に板倉先輩が驚いて離れたッス。


「……それって…沼田さんと結婚するってこと…?」

「あぁ。すぐじゃないけど。俺らの親の許可がとれたら…かな。」


板倉先輩は涙を拭うとみるみる顔を綻ばせて笑ったッス。


「おめでとう!りゅー!!上手くいってるんだね!安心したよ!!」

「サンキュ。お前らも付き合ってるんだってな。俺の思惑通りで安心したよ。」

「思惑!?思惑って何!?」

「まぁまぁ、それはいいだろ?」


幼馴染なお二人は仲が良くて、美合先輩は我慢の限界のような顔をしているッス。

それを見兼ねた相楽先輩がふっと息を吐いた後、口の横に手を当てて茶化したッス。


「竜聖さ~ん。あんまりイチャつくと紗英さんに言いつけますよ~。」

「は!?イチャついてなんざいねぇだろが!!」

「傍目にはそう見えるんですよ。自重してください。」


相楽先輩に注意されて竜聖さんは素直に板倉さんから離れたッス。

板倉先輩は少しムスッとしていたッスけど、竜聖さんから美合先輩の横に移動して美合先輩が見るからに喜んでいるッス。


「美合、顔に出てんぞ。」

「へっ!?」


竜聖さんも美合先輩が喜んでいるのが分かったのか、ニヤッと笑って美合先輩をおちょくっているッス。

美合先輩は顔に出ないようにしているのか眉間に皺を寄せて怖い顔をしているッス。

それを見て板倉先輩が笑い出したッス。


「美合っ!変な顔しないでよ!!あははっ!!」

「あん?だって、竜聖さんが!!」

「お前、単純過ぎんだよ!ったく、その単純さ分けてほしいよ!」

「竜聖さん、美合から唯一の取り柄を奪わないで下さいよ。」

「相楽!!唯一とかなんだよ!?」


離れていたこの5年がなかったかのように、高校の時と同じで、俺は嬉しくなったッス。

やっぱり竜聖さんがいるだけで、俺たちは元に戻れるんス!!

本当に、ほんっとーに竜聖さんが帰ってきて良かったッス!!


竜聖さん、おかえりなさいッス!!






このメンバーは書いていて懐かしかったです。

大人なはずなのに、高校生のままのような5人でした。

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