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勘違い系○○  作者: 流音
番外編
205/218

番外編2 合コンに参加


俺は記憶が戻ってから、紗英が俺に向けてくれている愛の深さを感じて自信に満ち溢れていた。

俺が連絡をとれなかった5年もの間、紗英はずっと俺を待っていてくれた。

それに記憶のない俺と再会しても、諦めずにずっと傍にいてくれたなんて…

嬉しすぎて、俺の中の気持ちが溢れる。


だから、俺の深い愛を紗英にも分かって欲しくて、ついつい毎日のように家に行っては、求めてしまう。

これは体が勝手に反応するんだから仕方ない。

記憶のなかった期間と今までの禁欲生活のせいで、余計歯止めがきかないのかもしれないけど。

まぁ紗英も俺を好きでいてくれてるわけだし…

多少拒否されても嫌よ嫌よも好きの内ってことで、俺は本能の赴くまま行動していた。


そして今日も俺の腕の中で眠る紗英を見て、ニヤニヤ笑いが止まらなかった。

最高!!生きてて良かった!!

今ならこの日のために、俺は今まで苦しみに耐えてきたんだと言える。

婚約者だって言っておけば、変な虫も寄り付かないだろうし。

平穏な毎日に感謝だ。


すると紗英が目を覚ましたのか、目を手で擦り始めた。


「うぅ…ん…。…あれ…もう朝?」


紗英が目をしょぼしょぼさせながら聞いてきて、俺はちらっと時計を確認した。

時刻は六時過ぎ。

そろそろ起きた方がいいだろうけど、俺はそうしたくなかった。


「ううん。まだ早いよ。」

「…そっか。」


俺が嘘をつくと、紗英は純粋にも信じてしまってまた目を閉じた。

人を疑うという事を知らない姿に、俺は胸が熱くなってきて寝ようとする紗英の肌に触れた。

俺が紗英の胸に顔を埋めながら肌を触り始めると、紗英の体が急にビクついて紗英の手が俺を押し返してきた。


「またやってる!!もう…やめてよ…。寝させてくれてもいいじゃん…。」

「俺は睡眠よりもこっちがいいよ。」

「私はヤダ!」


俺はヤダと言いながらも最終的にはさせてくれる紗英を知ってるだけに、攻める手を緩めない。

予想通り紗英は最初こそ抵抗していたけど、途中から抵抗しなくなって俺は遠慮なくいただいたのだった。



そして元気ハツラツでベッドから飛び起きると、俺は紗英よりも先に着替えをすませた。

俺にしては珍しいと思う。

紗英は眠そうな顔でゆっくり着替えていて、今にもベッドに倒れ込みそうだ。

ちょっとやり過ぎたかな…

俺はここの所、毎日してる気がして、少し自制しようかと思った。

俺はまだ着替え終わりそうにない紗英を見て、たまには俺が朝飯を作るかと思って台所に移動した。

えーっと…食パンがあるから…それと…いつもは何出してくれてたっけ?

俺は紗英が作ってくれたご飯を思い返して、冷蔵庫を開けた。

そうだ、卵焼きとサラダだ。あとたまに果物。

俺は卵を取り出して、とりあえず卵焼きに取り掛かることにした。


フライパンを熱して油をひく。

あ、油多かったかな。まぁいいか。

俺はいつもやってくれてるのを見様見真似で取り組む。

卵焼きは…ちょっと焦げたけど食べられるだろう。

俺は次にサラダだと思って、レタスとプチトマトを取り出して適当に皿に盛った。

それをテーブルに運んでいると、紗英が目を擦りながらフラフラとやって来た。


「…あれ…作ってくれたんだ?」

「うん。たまにはね。紗英は座ってろよ。」


俺が指示すると、紗英は嬉しそうに微笑んで座った。

俺はパンを焼いてから、皿にのせて持って行くと紗英の前に座って手を合わせた。


「いただきます!!」


紗英も俺の声に合わせて手を合わせると、サラダから食べ始めた。

俺は一番心配な卵焼きに口をつける。

うっ…これは…油臭いし…苦い…飲み込んだ後の後味も悪いな…

俺は卵焼きは失敗したと思って、紗英の卵焼きを引き取ろうと手を伸ばしたら、紗英が皿を持ち上げてしまった。

そして卵焼きを口に運んでしまって、俺は口を開けてそれをガン見した。


「…さ…紗英…。それ、めっちゃくちゃ不味いんだけど…。」


俺が言い訳のように口にすると、紗英はケロッとした顔で飲み込んでしまった。


「竜聖、一生懸命作ったんでしょ?不味くないよ。」


紗英がふっと笑って言った。

俺はそんな紗英の姿が嬉しくて、頬が緩んだ。

紗英はこういうやつだよな…。

俺は紗英の好きな所を再確認して、自分の分を平らげた。

そして今度作るときは美味しいと言わせようと目標を立てた。





***





俺はいつも通り仕事に取り組んで、品出し作業をしていた。

というのも家の跡継ぎ問題が一段落して、俺はこっちの仕事に集中できるようになったためだ。

桐谷の家は猛が継ぐ事となり、親父の仕事には猛が同行している。

俺は縁を切ったわけではないが、自分の仕事をしながらたまに家に顔を出しに帰る程度となった。

家に縛られることもなくなり、自由を謳歌できる毎日は充実していた。


俺は紗英にプロポーズしたものの、まだ仕事も一年目で半人前なのですぐに結婚式を挙げようとは思ってなかった。

恭輔さんや俺の親父に反対されてるというのもあって、しばらくは周囲を固めていくつもりだ。

まぁ、ぶっちゃけ今の状態でも幸せを感じる事ができているので、焦っていないというのが根底にあるのだが…


「桐谷さん、今日も気持ち悪いですね。」


小関が俺の品出しを手伝いに来てくれたのか、ムスッとしながら話しかけてきた。

俺は気持ち悪いと言われて浮かれていた気持ちが少し落ちた。


「何で最近、気持ち悪いとか言うわけ?」

「だって、本当に顔が気持ち悪いんですよ。ニヤけてるし、たまに一人でブツブツ言ってるし。彼女ができてから浮かれすぎじゃないですか?」


小関に指摘されて、本当にそんな事をしていたかと思った。

まぁ浮かれてるのは事実なだけに否定できない。

俺は顔だけでも元に戻そうと、手で触ってから眉間に力を入れた。


「っていうか、桐谷さん。私との約束覚えてますか?」

「約束?」


俺はそんな事言っただろうかと首を傾げた。

すると小関がみるみる顔を歪めてきた。


「覚えてないんですか!?」

「あ、いや違う!覚えてるって!!」


俺は全く身に覚えがなかったが、とりあえず怒らせないように取り繕った。

すると小関が腕を組んで、ふうとため息をついた。


「私にした貸しの事ですよ。あれ、返して下さい。」


貸しという言葉で俺は約束を思い出した。

確か小関にひどい事を言ったときに交わした約束だ。

小関はポケットからケータイを取り出すと、画面を俺に見せてきた。


「この子達に合コンを頼まれてるんです。桐谷さん、男性メンバー連れて来てください。」

「…合コン…って。はぁ!?」


思いもよらぬ事を言われて、俺は声が裏返った。


「そっ…!合コンなんてできるわけねーだろ!?俺に彼女っつーか婚約者いるの知ってるだろ!!」

「あれ?婚約者になったんですか?おめでとうございます。」

「いや、ありがとう。…っじゃなくて!!」


俺は普通に祝われたことで丁寧にお礼を言ってしまった。

小関はケータイの画面を閉じると、小首をかしげている。


「合コンなんて行ったら、浮気だろが!!他の奴に頼めよ!!」

「合コンで浮気なんてどこの誰が決めたんですか?ただの飲み会じゃないですか。」


俺の反論にさらっと返されて、俺はどう言ったものかと頭を悩ませた。

すると小関はケロッとした様子で言った。


「とにかく、私に貸しがある以上はセッティングしてもらいますから。4人、連れて来てくださいね!」


小関は俺に手で4を示して言い切った。

俺はそれを見て口をパクつかせた。

貸しだと言われたら何も言えない。


「じゃ、そういう事なので。日時はまたメールしますね。」

「なっ!?ちょ…!!」


小関はくるっと踵を返すとスタスタと歩いていってしまった。

俺がその背を引き留められなくて、頭を抱えた。


合コン!?

これって絶対浮気だろ!!

俺はメンバーの事もだが、紗英になんて説明しようかと考えて頭が痛かったのだった。




***




その日は紗英の家に行く気になれず、俺はまっすぐ自分の家に帰ってきた。

ここのところ紗英の家にばかり行っていたので、自分の家がよそよそしく感じる。

俺はとりあえずソファに腰を落ち着けると、合コンのメンバーを考えた。


竜也だろ…翔平に…あと二人か…

颯太も誘ったら来そうだな。

あと一人…


俺はあと一人をどうするかで悩んだ。

猛はないな。空気をぶち壊しそうだし。

他に男の知り合いって…


俺はそこまで考えて、ある人物が思い浮かんだ。



「…これはアリなのか…?」


俺は激しく一緒には行きたくなかったが、何かの貸しになるかもしれないと、その人物に電話をかけることにした。

電話をかけるのも緊張するので、深呼吸してからボタンを押す。

何度か呼び出し音が鳴ったあと、その人物の不機嫌そうな声が聞こえた。


『もしもし。いったい何の用だ?』

「…お久しぶりです。恭輔さん。」


俺は今にも声を荒げそうな雰囲気を電話越しに感じ取って、生唾を飲み込んだ。

恭輔さんはふっと息を吐くと、動いたのか雑音が混じった。


『おい、お前が電話かけてくるとか嫌な予感しかねぇんだけど。まさか、子供ができたとか言うんじゃねぇだろうな?』


恭輔さんの言葉に俺は激しくむせて、立ち上がって否定した。


「そんなわけないじゃないですか!?何言ってるんですか!?」

『だってお前、毎日のように紗英の家に入り浸ってるらしいじゃねえか。』

「なっ!?何で知ってるんですか!!」

『お前、俺が誰の先輩だと思ってる。翔平に決まってるだろ?あいつから聞いたんだよ。この間、紗英が逃げ込んで来たってな。お前、本当にムッツリスケベだったんだな。』

「な!!何の話をしてるんですか!?ムッツリとか関係ないですよね!?」


俺は翔平から恭輔さんに伝わってるなんて思わなかったので、今度会ったら締め上げようと心に決めた。

紗英のお兄さんにすべて知られているとか恥ずかしくて、どうにかなりそうだ。

というか…恭輔さんとの距離がまた遠くなったんじゃ…

俺は、少しでも自分の株を上げようと、本題を切り出した。


「あの、今日は紗英の話じゃなくて。合コンの誘いなんです。恭輔さん、ずっと前に紹介しろって言ってましたよね?」


俺は高校のときの事を思い出して告げた。

恭輔さんは考えているのか、しばらく黙るとボソッと言った。


『…メンバーは可愛いのか?』

「それは保証します。相手は大学生ですよ。」

『マジか!!さっすがモテ男!!女子ホイホイだな、お前!!』

「その言い方やめてください。」


俺は変なところで見直されてムスッとした。

でも少しは俺の株が上がったと思って、安心した。


「じゃあ、恭輔さん、メンバーに加えますよ。いいですよね?」

『ああ!いいに決まってるだろ!これからの楽しみが増えたぜ~…。』

「………じゃあ、日時はまたメールします。」


俺は上機嫌になった恭輔さんに複雑な気持ちを抱えながら電話を切った。

…恭輔さんって単純…

俺はこの人に認めてもらうには女性を紹介するのが一番早いかもと思った。

そして俺は彼女持ちである翔平も巻き込もうと電話をかけた。


「あ、もしもし。翔平?」

『おう。電話とか珍しいな。何の用だよ?』


俺はさっきの恭輔さんの言葉を思い出して、翔平を脅すことに決めた。


「おい、お前。紗英と俺のこと恭輔さんに報告してるみてーだな?」

『あん?だって、恭輔さんに聞かれるからさ。それに正直に答えただけだよ。それがどうしたんだよ?』


俺はまったく分かってない翔平にイラッとした。


「俺たちの事まで首突っ込んでくるとか、あり得ねぇだろ。恭輔さんにえらく怒られたんだからな。」

『そうなのか?でも自業自得じゃねぇ?紗英のとこ入り浸ってるのは事実だろ?』

「そうだけど。だからそれを何で恭輔さんに言うんだっての!!」

『だから恭輔さんに言えって言われたら断れねぇだろ?言われたくねぇんだったら、もっと俺にバレねぇようにコソコソといちゃつけばいいじゃねぇかよ。』

「俺がコソコソしてても紗英から分かるんだろが!!今回の事も紗英からバレたんだろ!?」

『じゃあ、紗英に言えよ。俺たちのしてる事は秘密な?みたいな感じでさ。』

「俺はそこまで束縛しねぇよ!!」

『じゃあどうしろってんだよ!?知ってるのに、俺は恭輔さんに嘘なんかつけねぇからな!!』


こいつは超がつくほどの正直者だったと思って、俺は悩んだ。

もうこの際バレたのは諦めて、償ってもらうことにする。


「もう、いいよ。とりあえず恭輔さんにバラしたのはお前なんだから、俺に償えよな。」

『償え?って何をさせる気だよ?』

「お前、合コンのメンバー強制参加だからな。」

『はぁ!?合コン!?そんなの行ったら、浜口に殺される!!』


翔平が悲鳴を上げながら断ってくるが、俺は翔平をイヤでも引きずり込むつもりだった。


「うっせぇ!!俺だって強制参加なんだから、お前も俺に償うつもりで参加しろ!!でないと、お前の愛の巣に邪魔しに行くからな!!」

『あいっ!?お前、何言ってんだ!!バカか!!』


俺は自分で言っていても恥ずかしかったが、翔平はそれ以上に照れているようで若干むせていた。

俺は何が何でも道連れにしようと企む。


「とにかく、参加だからな!来なかったら、分かるよな?じゃあな!!」

『おいっ!!――――』


俺は一方的に告げると電話を切った。

そしてふうと一息ついた。

ちょっと一仕事終えた感じだ。

これで女持ちの仲間ができたと俺は安心して、残りの竜也と颯太にも電話をかけたのだった。






次までバイトちゃんの話になります。

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