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勘違い系○○  作者: 流音
第二章:高校生
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2-13修学旅行Ⅳ


修学旅行、二日目――――



私は現在の状況に怒り心頭していた。

それは涼華ちゃんたちも同じようで、三人で固まって前の集団を睨んでいる。


私たちの前方には翔君たちの班。

そしてなぜか女の子たち。

朝、紹介してくれたが同じクラスの女子班らしい。


その女子班の子達と仲良くしゃべっている、男たち。


朝紹介を受けたときから、スポーツ科の女子の子達は敵意むき出しだった。

何でいるの?といいたげな目に私たちも闘争心を出して戦うつもりだったが…

クラスの内輪ネタで話なんかされたらついていけない。


「紗英ちゃん…。」


美優ちゃんが私を見て涙目になっている。

何とかしなければと思うが、私は翔君と喧嘩していただけに気まずい。

そして昨日のあんな所を見せつけられたら、話す気なんかおきない。


昨日、宴会場から出てきたとき翔君がロビーのソファに座っているのが見えた。

それも女の子と肩がぶつかるぐらい近くに並んで座っていた。

私は声もかけずに逃げるように部屋に帰ったが、

正直私にあんな事しておいて一時間も経ってないのに、違う女の子に手を出すなんて幻滅だ。

いや幻滅を通り越している。


別行動しようかと思い始めたとき、スポーツ科の女の子の一人、

確か浜口さんが私たちの方に振り返った。


「ねぇ!沼田さんって本郷君と同じ中学って本当?」


突然の質問に私は思わず頷く。

彼女は「そうなんだ!」と言うと、また前を向いてしまった。

何なんだ…?

涼華ちゃんが私の腕を引っ張ってきた。


「紗英ちゃん。あの子、絶対本郷君狙いだよ。」


「え?」


涼華ちゃんはいつになく真面目な顔で続ける。


「あの距離見てよ!ずっと本郷君の隣キープしてるもん。」


言われてみれば、肩がぶつかりそうなほど近い。

そのとき昨日見たことを思い出しそうで、

頭を振って思い出さないように頭から追い出した。


「紗英ちゃん。ぼーっとしてたらとられちゃうよ!」


とられる…?

私は翔君の背中を見て考えた。


もし、翔君が浜口さんと付き合ったら…

私はもう前みたいに話せなくなるのかな…

ケンカしたまんまだし…

それは…イヤかも…


こんな気持ちになっている自分も嫌だった。

こんなに心の狭い人間だっただろうか…

ムカムカする心を押し隠した。


「平気だって。決めるのは翔君だしね。」


私の返答に涼華ちゃんは顔をしかめて不服そうだったが

何も言い返してはこなかった。


それから私たちは置いてけぼり感もあったが、

彼らにトボトボとついて行った。



***



お昼にお店に入ったときの事だ。


ずっと翔君たちと話していた浜口さんともう一人の女子、

浜口さんと同じバレー部だという山口七瀬さんが私たちのテーブルにやってきた。


「音楽科の人たちって男の子にモテそうだよね?」


また突然なんだ。と私たちの態度は好意的ではなかったと思う。

美優ちゃんが横で小さくなるのが分かった。

佳織ちゃんは怒り丸出しで彼女たちを睨んでいた。

涼華ちゃんなんかは、ものすごく冷たい目でジュースを飲んでいる。


誰も答えないので、私が代表して答える。


「そうかな…?今までの経験上、モテたことはないと思うんだけど…」


「うそー!!すごい女の子らしくて、男子ほっとかないと思うんだけどな~」


「そうそう、私たちなんか運動ばっかしてて女の子っぽい華奢な体型じゃないし

すごい羨ましいよ~。」


何がしたいんだろう…と愛想笑いを浮かべる。

すると彼女たちは私たちを見回して、挑戦的に笑った。


「何でスポーツ科の班と一緒に回ることにしたの?

そっちの男子班と回ればいいじゃん?」


これが聞きたかったんだと分かった。

私が返答にためらっていると、前に座っていた涼華ちゃんがジュースのグラスを置いて言った。


「私たちが紗英ちゃんにお願いしたの。

紗英ちゃんと本郷君、すーっごく仲が良いから話しやすいかなーと思って。」


言葉に棘がある。

涼華ちゃんが戦闘モードだ。

きっと女子には容赦しないだろう。


「でも、付き合ってるわけじゃないんだよね?」


この言葉に涼華ちゃんが固まった。

さすが体育系女子。切り返しがすばやい。

涼華ちゃん、ごめんと心の中で謝って私が答える。


「うん…。」


浜口さんは答えを聞いて満面の笑みになった。

隣の山口さんと顔を見合わせて笑っている。

なんか…ムカつく…


「あのね、沼田さんにだから言うけど、私本郷君のこと好きなんだ。」


へ?


私は思考回路が停止した。

目の前の浜口さんは笑顔のままで続ける。


「付き合ってなくて安心した!また色々話聞かせてね。」


それだけ言い残すと山口さんと連れ立って席に戻って行った。

私は意味を理解するのに時間がかかった。

えー…と…要するに……

仲が良いからって、私の好きな人に手を出さないでねってことかな…

私が冷静に分析して黙っている前で、涼華ちゃんが憤慨している。

私の肩を持って「言い返してきてー!」と揺さぶられる。

言い返したいけど…

私と翔君が付き合ってないのは本当のことだし、

彼女の気持ちに答えるのかどうかは翔君が好きにすればいい。

ただ、胸の辺がモヤモヤするけど…

何なんだろう…


眉間にしわを寄せて考えてみると、ふと気づいた


もしかして…嫉妬?

え…私が…?いや、ないない。

そんな友達なのに…


気づいたら急に恥ずかしくなってきた。

友達なのに嫉妬するなんて馬鹿みたいだ。


私は自分の頬が熱くなるのを誰にも見せたくなくて

両手で隠した。


でも前にいた涼華ちゃんに見られていた。

にやーっと笑っているのが見える。


私は慌てて顔をそらすと、その先に翔君と浜口さんが見えた。

浜口さんが翔君の腕をつかんで何やら楽しそうに話をしている。


私は一気に顔の熱が下がった。

それに伴て私は翔君に対する怒りを思い出した。


何あれ!!


私はグラスに残っていたジュースを一気飲みすると

席を立ってお店を飛び出した。


後から涼華ちゃんたちが追いかけてきてくれる。

背後から気を使われているのが空気で分かる。

私はムカムカする気持ちを落ち着け、振り返った。


「私たちだけで回ろっか。」


なるべく自然な笑顔でそう言った。

皆は仕方ないなぁって顔で頷いてくれた。

それを見て私は友達がいてくれて良かったと心から思った。





読んでいただきありがとうございます。

修学旅行もあと少しです。お付き合いください。

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