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勘違い系○○  作者: 流音
第二章:高校生
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2-11修学旅行Ⅱ



私は一日目の観光が終わると、

ホテルの部屋に戻って反省会を開いていた。


目の前には涼華ちゃん、佳織ちゃんに、美優ちゃんが正座している。

私も正座すると、コホンと咳払いした。


「今日見てて思った事、言っても良い?」


私の問いかけに皆が頷く。

正直どう言えば…と迷ったが、一番言いたいことを最初に伝える。


「今日みんな相手の事、考えてた?」


するとお互いに目を合わせたあと、涼華ちゃんが言った。


「相手の事なんか考えてなかったなぁ~私の事知ってもらおうと思って

楽しく会話してたと思うんだけど?」


「私は会話はあまりしなかったけど、横で笑顔で頷いていたわ。

背が高くて素敵だった。」


佳織ちゃんが思い出してうっとりしていた。


「私は緊張しちゃって、相手の事なんか考えられなかった…

つまらない子って思われたかな!?」


美優ちゃんが涙目で私に縋り付いてくる。


私は頭が痛くなってきた。

皆の男の子に接する姿を初めて見たからかもしれないが、このショックは大きかった。

佳織ちゃんと美優ちゃんは女子中学出身。

男の子と接した機会が少ない…いや、まったくない…らしいし、仕方ないと思うのだが、

いつもしっかりしている涼華ちゃんにこんな内面があるとは思わなかった。

すごくわがままなタイプの…いや言うのはよそう…さすがお嬢様だ…。


う~ん…と少し考えて、一人ずつアドバイスすることにした。


「美優ちゃん。いつも私たちと話してるみたいにすれば緊張しないと思うよ。

あと、受け答えははっきり言うこと。相手が心配しちゃうから。」


美優ちゃんは涙目で頷いた。


「佳織ちゃん。ずっと見てるのはダメ。いくら素敵でも、相手にとってはプレッシャーになるから。

あとは相手に話させるだけじゃなくて、自分も話す。適度にね。そして無理に笑顔つくらないで。」


佳織ちゃんはコクコクと頷いた。


「涼華ちゃんは自分の話ばかりしないで、相手の話を聞いて褒めてあげて。

今日涼華ちゃんもすごいって言われて嬉しかったでしょ?

相手にもしてあげると喜んでくれると思う。」


涼華ちゃんは不服そうにしていたが、しぶしぶ頷いてくれた。

私は満足すると、一つ付け足した。


「晩御飯のときに、みんなで男の子の所に話に行こう。」


「え!?無理無理!!」「何で!?」と佳織ちゃんと美優ちゃんが反論した。

涼華ちゃんは構わないのか、横の二人を見ていた。


「今日の事情を説明しないと…緊張したから気まずい思いさせてごめんなさいって感じで。

あと、笑顔で明日も楽しみにしてます。って」


私はそこまで言って三人の表情が変わるのが分かった。

心なしか尊敬の目で見られている気がする…


「すごい…よくそんな気遣い思いつくね…」


「紗英ちゃんがモテる理由分かった気がする。」


「初めて紗英ちゃんに負けたって思った~。」


褒められてるのか貶されているのか分からない感想だった。

若干腹の立つコメントをしたのは涼華ちゃんだ。


こんなところで見直されても…当たり前の事だよね?

当たり前の通じない三人を見て、またため息をついた。



***



私たちは大浴場でお風呂を済ませると、残すは晩御飯のみとなった。

お風呂から部屋への帰り道、涼華ちゃんがしかめっ面で私の服をひっぱった。


「紗英ちゃん。これパジャマ?」


私は自分のキャラクターTシャツとグレーのスウェット姿を見て頷いた。

髪はお団子にしてまとめている。


「そうだけど。」


「さっきは感心したけど、これはナイから!!」


涼華ちゃんの言葉に佳織ちゃんも美優ちゃんもうんうんと頷いた。

何がいけないんだろうと首を傾げると、涼華ちゃんがご丁寧に説明してくれた。


「パジャマは女子の勝負服でしょ!?なのに、その男の子みたいな恰好…

私たちを見てよ!!」


言われて気づいた。

三人ともレースやフリルのあしらわれた女の子っぽさ満載のパジャマだった。

確かに可愛い…けど、これを私が…?

ナイナイと首を振った。


「いや…修学旅行だし…別に…」


「だからこそじゃない!?男の子とすれ違ったときに

『あ、あの子可愛い。』と思わせるにはお風呂上りのこの姿しかないでしょ?」


なんかズレてる…

頑張り所が違う気がしたが、お説教が長引きそうで黙っていた。

そのあとも廊下で長々とパジャマ談義を聞かされていたら、背後から声がかかった。


「あれ?紗英たちじゃないか?」


振り返ると翔君以下一緒に観光した面々が、男子風呂から出てきた。

ここ男子風呂前の廊下だったのか…

するとさっきまでパジャマ談義していた三人が私の前に並んだ。


「こんばんは。今日はありがとうございました。」


三人が揃ってペコリとお辞儀した。

その一糸乱れぬ動きに、私は後ろで黙って見てるしかなかった。


「私たち男の子と話すと緊張してしまって…」


「今日は気を遣わせてしまいましたよね…」


「ごめんなさい。」


打ち合わせでもしていたのかと思うほどに、セリフが完璧だ。

三人の表情も影があったり、上目づかいしたり、目を潤ませたりと

女子の武器をふんだんに使っている。


さすがの翔君以下男子の皆さんはそれにコロッとやられていた。


「いや、俺たちもあまり話盛り上げられなくて…」


「楽しませてあげられなくて、ごめん。」


照れて笑う男子陣を見て、私は心なしかムカムカしていた。

なんて単純なんだ。

ていうか皆もだよ…なんで私だけのけ者にするんだ…


一人だけ蚊帳の外にされた気分で、その場にぶすっと立ってるしかなかった。


そんな私をよそに三人対男子陣は話が盛り上がってきていた。

話の内容はコテコテ甘々な褒め言葉だらけだったが。


誰にも相手にされなくてつまらないなーとふくれっ面していると

翔君が私の頬を手で挟んできた。

途端に口の中の空気が外に逃げる。


「…なひふんの?」


私は頬を押さえられているので上手くしゃべれなかった。

翔君はいたずらっ子のように喉を鳴らして笑っている。

よっぽど変な顔になっているんだろう。

私は翔君の手を振り払うとそっぽを向いた。


「…っごめん。なんか構ってほしそうな顔してたからさ~…。」


図星だったので、また腹が立って横を向いたままむくれた。

翔君は私がそばにいてほしいときに限って来るんだから敵わない。

なんで分かるんだろう…

と思っていたら今度は髪をまとめていたお団子で遊ばれた。

まとめた髪がグシャグシャになるのが分かる。


「もう!やめてよ!!あ~絶対グシャグシャになったー。」


近くでずっと笑っている翔君をドンと押すと、私は髪をほどいた。

そして手櫛で整えると、近くの姿鏡まで移動した。

うーん…上手くいかない…

私は頭のてっぺんでお団子にしようと四苦八苦していたのだが、

また翔君が邪魔してきた。

私と鏡の前に立つと肩に手を置かれて、腕を無理やり下げさせられた。


「紗英。…その髪くくるなら、こう下の方で…」


翔君が身振り手振りをしながら言う。

私は意味が良く分からないのと、

何度も嫌がることをしてくる翔君にイライラしていたので

「どいて」と翔君を押しのけて、再度鏡とにらめっこした。

そしてくくるために腕を上げたところで、今度はTシャツを下に引っ張られた。

「何なの!?」と言おうとしたが、翔君が赤い顔で鏡を指さしてくるのでそっちに目をやると

私のお腹が丸見えになっていた。

おまけにスウェットとお腹の境界線に少しだけ下着まで見えていた。


「ひゃっ…!!!」


私は思わずしゃがんで周囲に目を向けた。

赤い顔の翔君に見られたのはもちろんの事、

涼華ちゃんたちと話をしてたはずの翔君の班の男の子たちがこっちを見ているのが見えた。

最悪だ…穴があったら入りたい…

恥ずかしくて死にそうだった。

私は顔を隠すようにうずくまった。

そんな私の肩に手を置いて、翔君が耳元で言った。


「紗英。ありがとう。」


その言葉に頭に血が上った。

顔をバッと上げると、翔君に向かってパンチを繰り出した。

私のパンチは残念ながらサッかわされてしまった。

私は真っ赤な顔で立ち上がると「最低!!」と吐き捨てて部屋へ向かって走った。

後ろで翔君の笑う声が聞こえて、

一度振り返ると恨みがましく彼を睨んだあと、また逃げるようにその場を後にした。



私たちの班の部屋の前まで逃げてきて、カギを持っていないことに気づいた。

どうしよう…

またあそこに戻るのは癪だった。

すると追いかけてくれていたのか、涼華ちゃんたちがやってきた。


「紗英ちゃんって本当天然だね~。」


彼女の貶されているのか分からない言葉を聞いて、

私は弱っていたのか涙がこぼれた。


「うぅ~~……。」


美優ちゃんが私の頭を撫でてくれた。

佳織ちゃんが部屋のカギを開けてくれると、「入ろ。」と涼華ちゃんに部屋へと手を引かれた。

あのときは私を仲間外れにした皆だったが、このときは頼もしいと思ってしまった。


そして一頻涙を流すと、私は満足したように落ち着いてしまった。

そんな私を見て涼華ちゃんがあきれたように言った。


「紗英ちゃんて本当たくましいよね~。

私だったら公衆の面前であんな姿晒したら生きていけない。」


言葉の針が胸に刺さった。

また出そうになる涙を必死に我慢した。


「でもでも!紗英ちゃんと仲の良い本郷君だっけ?

一生懸命、姿隠そうとしてくれてたよ。その姿がなんか可愛かった。」


美優ちゃんがふふと思い出し笑いした。

そうだったんだ…

私は彼にした仕打ちを思い出して、自己嫌悪した。


「確かに、本郷君は紗英ちゃんのことをよく見てますね。

私たちと話しているときもずっと紗英ちゃんの方を見てましたし。」


佳織ちゃんの言葉に驚いた。

『見てた』

その単語が妙に恥ずかしかった。

さっきとは違う意味で顔が赤くなった。


「や…やめてよ~、きっと私を見てたんじゃなくて

何か私越しに興味のあるものがあったんだよ。」


「鈍感!!良い女の条件は察する力だよ!紗英ちゃん!!」


いつぞやに聞いた言葉だった。

涼華ちゃんに怒られ何だか情けなくなってきた。

翔君が私を見てたなんて…勘違いはしたくない。

もしかして…なんてことは考えない方がいいんだ。


私はふと思い出しそうになるのを堪えて、

「ご飯、行こっか!」と明るく振る舞った。




読んでいただきありがとうございます!

腹出しネタは私が昔やってしまった実際の失態です。

ま、男子には見られてませんが(笑)

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