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勘違い系○○  作者: 流音
第四章:社会人
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4-42川遊び


ナンパされていた村井さんを助けようと思っていたのに助ける事ができずに、翔君と山本君に助けられてしまった。

さらにそれを知った吉田君が自分を責めてしまって、私は自分の行動を反省した。

吉田君はそれから私から少しも離れようとしない。

ペンションに帰ってもずっと手を繋いだままで、私は少し…本当に少しだけ自由にしてほしくなってくる。

そんな事を思っていると、川遊びに行くために水着に着替えようという事になった。

これにはさすがに吉田君も私の手を離してくれて、私はほっと一息ついて部屋に向かった。


女子メンバーの集まる部屋に水着を持って行くと、待ってましたと言わんばかりに理沙と城田さんに詰め寄られた。


「紗英~、皆に見せつけちゃってラブラブじゃん?」

「竜聖さんずっと紗英さんの傍から離れないなんて、すっごく羨ましい~!!」


二人が上機嫌でうっとりしたり、からかうように言ってきて私はどう答えればいいのか分からずに笑顔だけ浮かべた。

確かに守られるのは嬉しいけど、ずっとはしんどいかな…

私は二人にバレないようにふっと息を吐いた。

すると城田さんが水着に着替えながら言った。


「私なんか竜也君と一緒にいても全然ダメ!!全然落ちる気配なんかしなくて、お手上げだよ!」

「あ、分かる!!本郷君も同じだもん!時たまふっといい感じになる以外は、ずっと友達距離間で付き合ってるんだか疑いたくなるし!」

「えーっ!?そんなの付き合ってるってだけで良いよ~!私なんか微妙に拒否られてる気さえするんだから!!」


理沙と城田さんは余程気が合うのか恋愛話で盛り上がっている。

私は着替えながら、やっぱり山本君はモテるなぁ~と他人事のように思った。

すると着替え終えた村井さんがこそっと私に話しかけてきた。


「沼田さん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど…。」

「うん?何?」


私は村井さんの姿を見て、ちらっと服の隙間から覗く胸の谷間に驚いた。

胸…何カップあるんだろう…?

同じ女として少し悲しくなってくる。

村井さんはそんな私にも気づかず真剣な様子で言った。


「沼田さんは翔平さんと竜也さんの事、どう思ってるの?」

「へ?翔君と山本君?どうって…友達だけど…。え?何でそんな事聞くの?」


私が村井さんらしくない問いかけに尋ね返すと村井さんは急に取り繕って「何でもないよ。気になっただけ。」と言って私に背を向けてしまった。

一体何なんだろう…?

私は水着の上からパーカーとショートパンツを着て、着替えを完了させた。

すると皆も着替え終わったようで、まだ恋愛談義で盛り上がっている理沙と城田さんを先頭に部屋を出た。

和花ちゃんだけは一言も発さずに、じっと後ろから私たちを観察してるようでちょっと気になる。

昨日「見させてもらいますね!」と宣言していた彼女なので、私はあえて話しかける事もせずにじっとその視線に耐える。


そして広間に降りると男性陣はもう準備万端のようで、降りてきた私たちを見て腰を上げた。

私は何となく吉田君を見ると、吉田君は嬉しそうに笑って真っ先に私に近寄って来た。

その素早い動きにドキッとする。


「お…お待たせ。」

「うん。川遊び一緒に楽しもうな?」

「そ…そうだね。」


何だか距離が近くて、私は仰け反りそうになるのを堪えて笑顔を作った。

すぐに来てくれたのは嬉しいんだけど…何だろう…この圧迫感…

息が詰まるっていうか…

私は目の前の吉田君を見上げてそんな事を思った。

すると皆がそれぞれ川に向かってペンションを出ていく。

私はそれを見て慌てて追いかけようとすると、吉田君に手を握られた。

ニコニコとしている吉田君を見て、離してほしいなんて言えるわけがない。

私は心苦しい思いを抱えながら、べったりと私から離れようとしない吉田君がまっすぐ見れなかった。



そして皆でゾロゾロと連れ立ってペンションの裏にある川にやって来ると、男性陣が真っ先に飛び込んでいった。

私はその様子を吉田君と並んで眺める。

吉田君も飛び込みたいのかウズウズしていたので、私は隣を見上げると声をかけた。


「竜聖。私、理沙たちと遊んでくるから行ってきていいよ?」

「え?いや…紗英の傍から離れないって約束したし…。」


吉田君のすまなそうな顔に私は彼が私から離れようとしない理由が分かった。

律儀なまでに守ろうとするなんて、すごく可愛く見えてくる。

私は笑みが漏れるのを堪えると言った。


「傍ってそんなにすぐ近くじゃなくてもいいんだよ?ここにはいるんだから、行ってきて?私もその方が嬉しいよ。」


吉田君は私の言葉に少し悩んでいたけど「そう言うなら」と言って、翔君たちの所に飛び込んでいった。

その後ろ姿が子供のようで見ていて胸が温かくなる。

私は水浴びのように水をかけ合っている理沙たちの所に向かうと、混ざるために上に来ていたパーカーとショートパンツを脱いだ。

そして自分の姿とスタイルの良い村井さんと城田さんの水着姿を見て悲しくなってきた。

すると私の横に理沙がやってきて、ボソッと呟いた。


「アレ…へこむよね?」


理沙も私と同じことを思っていたのか、自嘲気味に笑って私を見た。

私はふっと微笑むと「だね。」と返した。

でもま、気にしてても仕方ないし、せっかく来たんだから楽しまなくちゃ。

私は理沙の背をポンと叩くと、川に向かって足を進めた。



川の水は冷たくて気持ちよくて、私は太もも辺りまで水かさのある所まで来ると、前のめりになって川の中を覗き込んだ。

透き通った川の中は底まではっきりと見えて、小さな魚が岩の間からチラチラと見え隠れしている。

何となく捕まえられるんじゃないかと思って手を伸ばすが、魚もそう単純じゃないので捕まるわけもなかった。

残念と思いながら体を起こすと、こっちを見ていた翔君と目が合った。


「翔君?」


翔君は飛び込んだからか全身濡れていて、髪がぺしゃんこで顔から滴る水を手で拭いながらこっちに向かってきた。


「紗英、何やってんの?」

「え?えっと…魚がいて…捕まえられるんじゃないかと思って…無理だったけど。」


私は我ながら恥ずかしい事をしたなーと思って笑って答えた。

すると翔君がニヤッと笑って言った。


「紗英、こっち来いよ。魚だったらこっちのがよく見えるよ?」

「へ?…翔君。私に構わないで理沙を誘ってきなよ。」


私はちらっと理沙を見てから言った。

二人は付き合ってるはずなのに、ここに来てからあまり一緒にいないような気がする。

私は理沙のグチを思い出して翔君に促したつもりだったのだが、翔君はケロッとした様子で言った。


「あいつ城田さんと楽しそうにしてるじゃん?邪魔するのはかわいそうだろ?」


私は翔君に言われて理沙の様子を見ると、確かに城田さんとまた話をして盛り上がっている。

私はその内容が分かるだけに翔君に諭した。


「翔君!理沙は彼女なんだから、ちゃんと気持ち伝えとかないとフラッとどこかに行かれるよ!?それこそお前は俺の一番だ!ぐらい言ってきなよ!」

「何それ?そんなん言うの、もう俺じゃねぇじゃん?」

「俺じゃないって…ずっと友達みたいな距離間だったら、理沙離れちゃうよ?それでもいいの?」

「あいつが離れるわけねーって!」


ヘラッと自信満々に笑った翔君を見て、私は二人の関係に頭が痛くなってきた。

翔君…理沙の気持ち何も分かってない…

私は何とかしようと考え込むと、翔君に腕を引っ張られた。


「浜口のことはいいからさ。魚!見せてやるよ!!」

「ちょっ!!」


私は引っ張られるままに足を進めていると、急に深くなってドキッとした。


「わっ!!」


その瞬間に私は動揺してしまって川底の石に滑ると川に前から倒れ込んだ。

水飛沫を上げて川の中に顔を突っ込んで、私は水の中で翔君の名前を呼ぶ声がくぐもって聞こえてきた。

私は何とか底に足をつくと、体を起こして水面から顔を出すことができた。

顔を出して何度かむせると、翔君が焦って私の体を支えてくれた。

少し深いので胸の下ぐらいまで水につかっている。

私は鼻に水が入ってしまって、痛くて顔をしかめた。


「紗英!大丈夫か!?」

「う~…翔君が引っ張るから…。鼻が痛い~…。」


私は鼻の頭を指で押さえて痛みを堪えていると、翔君が優しく背中をさすってくれた。


「ごめん。そんなに強く引っ張ったつもりなかったんだけど…。」

「もう…加減してよー…ケホッ!」


私はだんだん痛みはなくなってきたものの、鼻の奥が気持ち悪くて両手で鼻をいじっていると、背中にあった翔君の手に力が入って、私は翔君の胸に顔をぶつけた。

今度は何の意地悪だと思って見上げると、翔君が真剣な目で私を見ていてドキッとした。

ん?…何、その顔?

私は目を細めて翔君の考えていることを探ろうとしていたのだが、横から激しい水音と吉田君の声が聞こえた。


「紗英!!」


吉田君の声に翔君はビクッと体を震わせると、私の背から手を離した。

私はじっと翔君の顔を見てから、吉田君に視線を移した。

吉田君は私の傍まで来ると、私の腕を引っ張った。

私は引き寄せられて今度は吉田君の胸に頭をぶつけた。

その拍子に吉田君の右腕が回ってきて肩を掴まれた。

片腕で抱きしめられる状態になって、体温が上がる。


「翔平。紗英に何してんだよ?」


吉田君の不機嫌そうな声が聞こえて、私はちらっと目だけで吉田君を見上げた。

すると、吉田君はまっすぐ翔君を見て顔をしかめているようだった。


「魚見せようと思って、引っ張ってたら紗英が転んじまって…。それだけだよ。悪いな。」

「…本当にそれだけか?」


吉田君は何を疑っているのか翔君を追及している。

私はそれだけでしょと思いながら、翔君の言葉を待った。


「…それだけに決まってるだろ。お前が来たんなら、お前が紗英に魚見せてやれよ。」


翔君はそれだけ言うと立ち去っていったのか、水音がして翔君の気配がなくなっていった。

私は即答しなかった翔君が気になりつつも、私を掴んでいる吉田君の力が強くなった事の方が気になった。


「竜聖?」


私は黙ったままの吉田君が気になって声をかけると、吉田君はハッと我に返ったのか手の力を弱めて私を離してくれた。


「あ、悪い。紗英、大丈夫だったか?」

「うん。鼻が痛かったけど、今は平気。」


私は吉田君を見上げると鼻を少し押さえて答えた。

すると吉田君がじっと私を見つめて、少し赤くなると言った。


「紗英、水着可愛いよ。」

「へっ!?」


私は急な褒め言葉にグワッと体温が上昇して、心臓が速くなった。

顔に熱を持つのが恥ずかしくて俯くと、吉田君の体を手で押し返した。


「急に褒めるのナシ!!照れるから!」

「ははっ!だって思った事はそのときに言わないとさ!やっぱり紗英が一番可愛いよ。」

「……っ!!それもナシっ!!心臓に悪い!」


私はストレートな吉田君が嫌で、その場を離れようと岸に向かって足を進めた。

すると吉田君が私の手を掴んで引き留めてきた。


「魚、見るんだろ?」


顔をクシャっとさせて笑った吉田君を見て、私は胸がキューっと苦しくなった。

昔から私は吉田君のこの顔に弱い。

私はふーっと息を吐くと、仕方なく吉田君に手を引かれるまま川の深い所に足を進めた。







竜聖と翔平のやり取りを書いていると高校のときのようでした。

まだイチャつく二人が続きます。

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