第95話 お見合いパーティー
今日は兼ねてより計画していたお見合いパーティーの開催だ。
武闘会の時から思ってた婚活女子の多さ。
エルムバーンの人口は女性の方が多く、しかもオカマさんが多いので独身女性が多いのだ。
で、日本でもあった街コン?のような物を開催すれば儲かるかと思ったのだ。
「決して自分をターゲットにする女性を減らしたいからではない」
「別に素直に認めていいのに」
「まあ、自分がモテてるって自覚が出て来たのはいい事かもね」
魔王子の肩書がモテてる一番の理由だと思うけどね。
まぁそれはさておき、今回のお見合い会は一人大銅貨3枚の参加費で参加できる。
今回はお試しなので今後は男性は参加費無料とかやるかもしれない。
日本では確か女性が参加費無料だったが、こっちの世界では男性の方が数が足りてないのでそうするかもしれない。
「え~?ジュン様の親衛隊の騎士なんですか?すご~い」
「え、いあ、拙者は最近なったばかりの新参で…」
「え~でも~親衛隊が出来たのも最近なんですよね~?じゃあ、みんな新人ですよ~」
「え?ああ、そうでござるか?いや、でも、元近衛騎士の人もいるので…」
ギンは女性慣れしてないのか、複数の女性に囲まれてしどろもどろしてる。
結構イケメンだし、そりゃモテるよね。
「ギン、モテモテだけどタマモさんは加わらなくていいの?」
「わたくしとギンは幼馴染ではありますが、恋愛感情はありませんよ?それにわたくしはジュン様の妻になる女ですので」
「そんな約束した覚えはありませんよ」
「責任を取ってもらうと言ったではないですか」
「責任を取ってこのお見合い会の参加費はボクが払ったじゃないですか」
「わたくしの恥ずかしい姿を見ておいて、大銅貨三枚で済ませるおつもりですか!?」
ザワっと周りの人の注目が集まる。
人聞きの悪い事を。
「じゃあ、なんで参加してるんです?」
「悪い虫がジュン様に付かないよう、またはジュン様が新しい女を毒牙にかけないか監視するためです」
目下一番の悪い虫は貴女の気がするけども。
「監視なら、もう既に十分いますよ」
ユウにアイにノエラにリリー。
クリステアにルチーナ。何故かユリアにリディアまでいる。
「みんな、ボクは主催者であって参加者じゃないから。何も心配いらないよ」
「ウチはジュンと一緒にいるだけだよ」
「私も」
「私とリリーはジュン様付きのメイドですので」
「ですぅ」
「私達は親衛隊としてジュン様の護衛をしてるだけです」
「私は護衛兼姉さんの監視です」
あ、そう…
ま、いいけどね。
「イグナスさん、筋肉すご~い」
「そ、そうか?」
「背も高~い。何㎝くらいあるんですか~?」
イグナスも結構モテてる。
体が大きく強面で口数の少ない彼だが中々上手くやってるようだ。
いい人が見つかるといいんだけど。
今回、親衛隊の独身男性で結婚を考えている者には出来るだけ参加してもらった。
他の騎士団や兵団の独身男性にも出来るだけ参加してもらって男性の参加人数は総数二百名。
それに対して女性の参加人数は八百名。
本当はもっと沢山の応募があったのだが会場の大きさが千人が入れる程度だったので絞るしかなかったのだ。
「で、男性一人に対し女性四人の割合の中、一人の女性も寄り付いてない男性が一人」
「ああ、あの人…」
「空回りっぷりが凄いわね…」
手あたり次第に女性に声を掛け、全て失敗に終わり真っ白に燃え尽きている人が一人。
「ギルドマスター、せっかく立ち直ったのに」
「いや、立ち直る為に参加したんでしょ。余計に凹む結果になったけど」
凄い気合いを入れて参加したようだけど、それが逆効果だったようだ。
筋肉でピチピチになってるタキシード。胸にバラ。
髪も七三分けにして、無精ひげも剃ってる。
だが悲しいほどに似合ってない。
ていうかギルドマスターって短髪だったよね?
「あ、モンジェラさん」
「ギルドマスターに話かけてるけど、反応ないみたいだね」
モンジェラさんがこっちに気が付いて目が合ったので手招きして呼ぶ。
「こんにちは、モンジェラさん」
「こんにちは、ジュン様」
モンジェラさんの今日の姿は黄色のドレスにあまり派手じゃない銀のティアラ。
服装だけみればいいとこのお嬢様なのだが…
それでもモンジェラさんはゴリラだった。
「ギルドマスターはやっぱりダメですか」
「ダメですね…早く立ち直って仕事をして欲しいのですが…」
そうだよね。
モンジェラさんがフォローしなければとっくにギルドマスターはクビになってるだろう。
「いっそ、モンジェラさんがギルドマスターと結婚すればいいんじゃない?」
「ななななな!何ですか、突然!」
「だってモンジェラさん、ギルドマスターが好きなんでしょ?どこがいいのかわからないけど」
アイにユウが無責任な事を言うが、まぁボクも同意だ。
「どどど、どうして!?誰にも言った事無いのにっ」
「ウーシュさんが言ってた」
「どうしてあの子が知ってるんです!」
「見てればわかるそうで、冒険者ギルドの人はみんな知ってるそうですよ」
「そんな……嘘ですよね!いやぁぁぁぁぁん!」
いやぁんて。
顔を赤くしてクネクネして照れてるモンジェラさん。
仕草は可愛らしい。だがメスゴリラだ。
「で、どうなんですか?モンジェラさんはギルドマスターと結婚したいと思うんですか?」
「そ、それはその…はい…」
「なら今がチャンスだよ!」
「え?今がですか?」
今が?
今は何してもダメなんじゃ…
「今、ギルドマスターは傷心して弱ってるわ。そんな時に優しくされたらイチコロよ!イチコロ!」
「い、イチコロ?」
あ~まぁ、有効だとは思うけど。
「でも、そんな人の弱味に付け込むような真似は…」
「なーに言ってるの!恋は戦争よ!時には手段を選んでられない場面だってあるの!相手が弱ってる時こそ攻め時じゃない!迷うな!躊躇するな!一気に畳み込め!」
ユウの気迫にモンジェラさんが押されてる。
ていうかボクも初めて知ったけどユウの恋愛観てこんなのだったんだな。
間違ってるとまでは言わんが。
「なるほど、流石ユウ様。勉強になります」
「やはり、私ももっと強引に行くべきでしょうか」
「姉さんとノエラさんは今以上に強引になると問題になるから、やめなさい」
うん、ルチーナの言う通り。
この二人の前で落ち込めないな。
「わ、わかりました。で、でも…実際に何をどうすれば…」
「私にお任せ下さい。モンジェラさん、こちらへ」
ノエラがモンジェラさんを連れて少し離れたとこで何やらこしょこしょと話をしてる。
「そそそ、そんな事できませんっ」
「では、このまま何もせずに諦めますか?」
「それは…でも、そんな…」
「大丈夫ですよ、今時の女性は結婚前に経験してる方が普通です。誰にも邪魔させませんし。誰にも言いませんから」
「わ、わかりました、私、やります!」
「では、こちらへどうぞ」
モンジェラさんがギルドマスターを担いでノエラの案内でどこかへ行く。
十数分後、ノエラだけが帰った来た。
「ノエラ?二人をどこへ?」
「城にある今は誰も使ってない部屋へ案内しました」
何の為に?
て、質問するのが怖い。
怖いけど、聞かないわけにも…
「聞きたくないけど、聞くね。何の為に?」
「モンジェラさんとギルドマスターの間に既成事実を作る為に、です」
ああ…やっぱりろくでもない内容だった…。
「ノエラ、それはいくら何でも…」
「まぁそれも一つの手よねー」
え?
いや、駄目でしょ?
「まぁモンジェラさんの場合それくらい強引にいかないとダメかなー」
もしもし?
ユウさん?
「やはり、その作戦は有効ですよね」
いや、無効です。
アウトです。
「絶対にやっちゃダメだからね!姉さんだけじゃなく、ルガー家だってどうなるかわからないんだからね!」
「はっ!そうですね、ランドルト家に迷惑が…」
「ダイラン家に迷惑が…」
ユリアにリディアまで…
「はっ!とか言ってる場合じゃない!二人を止めないと!」
「いいの?ジュン」「止めた方がいいよ、お兄ちゃん」
「今行くと、二人の情事を目の当たりにする事になると思いますが…」
「う!」
それは…確かに…アレかもしれない…
「まぁモンジェラさんが襲われる方なら助けにいくんだけどー」
「今回はモンジェラさんがギルドマスターに愛を捧げるだけだしねー」
物は言いようだな…。
相手がギルドマスターならいいのか?
「ま、これでギルドマスターも幸せになれるよ」
「さっさと元気になって仕事してもらわないとねー」
あ、さてはギルドマスターの事なんてどうでもいいんだな?
「あのさ、例えばだけど、ボクがギルドマスターの立場だったとしても同じ対応なの?」
周りの女性陣がブラック過ぎて不安になったので聞いてみた。
「そんなわけないじゃん!ジュンなら相手が誰でも助けにいく!」
「お兄ちゃんを無理やり襲う?ふふふ、手の込んだ自殺方法ね…」
「それが許されるのはごく一部の女性だけです。他の女性は許されません」
「私のジュン様を襲うなど、許しません」
うん、アイ以外の三人には言いたい事あるけど、とりあえずホっとした。
「で、ギルドマスターはどうするの?助けに行く?」
「もう手遅れだと思いますが…」
確かに…今突入しても…
「ノエラ…様子見て来て…」
「はい」
ノエラに様子を見に行かせて再び十数分後。
「二人とも楽しそうでしたよ」
「ほんとーだろうね」
「はい。実に楽しそうな、艶めかしい声が…」
「あ、もういいでーす」
とりあえず、ギルドマスターが嫌がってないなら放置しよう…
それからお見合いパーティーは終り。
何組かのカップルが成立。
初回は成功と言っていいだろう。
そして、数日後。
冒険者ギルドに行くと……
「こんにちは、ギルドマスター。もう大丈夫なんですか?」
「おう!もう大丈夫だぜ。モンジェラのおかげでな」
「へぇ~モンジェラさんの…」
まあ結果として上手くいったのならいいか…。
「ああ。そうだ、今度結婚するんだよ、モンジェラと」
「「「え」」」
「お前ら、モンジェラの恋愛相談に乗ってくれてたらしいな。ありがとよ、おかげで俺達は結婚できる。礼を言うぜ」
「「「あ、はい…」」」
「じゃあな、仕事が溜まってるんでよ」
「「「はい、お疲れ様です…」
結婚?
この数日の間にそこまで?
ギルドマスターの好みからモンジェラさんはかけ離れていると思ったのだけど…
「あ、ジュン様。こんにちは。皆さんも、こんにちは」
振り返ると見知らぬ女性が話しかけてくる。
誰だろう、この人。
何だかピアノとか弾いてそうな線の細い美人さんだ。
「えっと、どこかでお会いしましたっけ?」
「え?いやだ、ジュン様ったら。私の事忘れたんですか?お見合いパーティーで会ったばかりじゃないですか」
「「「え?」」」
ここは冒険者ギルド。
そしてお見合いパーティーで会った。
ひょっとして…
「モンジェラさん?」
「はい。モンジェラですよ?どうかしました?」
いや…いやいやいや!
この数日で一体何があったんだ!
「あの…正直言って変わりすぎだと思うんですけど…」
「え?ああ。主人がもっと小柄な女性が好みだと言うので頑張ってダイエットを」
ダイエット…?
ダイエットで何とかなるレベルを遥かに超えていると思うのだが…
整形手術でもどうにならないと思うのだが…
「主人ってギルドマスターですよね。御結婚なさるそうで…おめでとうございます…」
「はい!ありがとうございます!これも皆さんのおかげです!結婚式には招待しますね!それじゃ失礼します!」
「はい、お疲れ様です…」
幸せそうだし、いいか。
いや、あの変わりっぷりは…
「あ、ジュン様!モンジェラさんに一体何があったんですか!?何ですか、あの変わりっぷりは!異常ですよね!幸せそうなんで、とりあえず皆あまり触れないようにしてますけど!」
「うん。ウーシュさんにとってもあの変わり様は異常なんだとわかって、とても安心しました」
よかった。やっぱりアレは異常だよね。
でも、とりあえず見守るしかないけど…
「ボクから見ても幸せそうだし、見守る事にしましょう。せっかくモンジェラさんの想いが叶ったわけですし…」
「はぁ。そう、ですね…いや、でもぉ~…」
うん。
今一つ納得いかない何かがあるよね。
「もういいじゃない。幸せそうだし」
「うん…そうだね…」
そうだよね。
とりあえず納得いかない部分は置いといて二人を祝福するとしよう。




