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第94話 いい物

 今日は王都から南の山の洞窟に出来た大規模なゴブリンの巣を潰しに来ている。

以前、遺跡に住み着いたゴブリン達はホブゴブリンが率いていた小さな群れだったが、今回はゴブリンキングが率いる大規模な群れでコブリンキングの他にもゴブリンナイトやゴブリンメイジ、ホブゴブリン等も多数確認されていて数も多い事から討伐難度Aの依頼となっている。


「ただのゴブリンは知能は低いがその分、ゴブリンキングの命令には忠実に動く。ゴブリンキングの知能は高いから罠を使うし計略だって用いてくる。油断するなよ」


「はい」


今回はいつものメンバーの他にお祖父ちゃんとお祖母ちゃん。

親衛隊からクリステアとルチーナにユリアの三名。

クリステアは最近何かと、どこにでも付いてくるようになってしまった。

クリステアが来るならルチーナも来てもらわないとダメで、そこにユリアも付いてくる形がよくできるようになっていた。

リディアも来たがるのだが、彼女はまだ戦闘技術が未熟なので師匠から許しが出ていない。


「しかし、数が多いね。何匹くらいいるの?」


「約二千」


「にせっ……多すぎない!?」


ボクもそう思うけど、探査魔法でわかった範囲では約二千だ。


「この人数で二千を相手にするには無理があるんじゃない?お兄ちゃん」


「やばくなれば転移魔法で一時撤退すればいい。そして再度攻撃して数を徐々に減らせばいい」


「それもいいが、ゴブリンキングの群れの討伐は対人戦に近い。いい経験になるからしっかりやれ」


確かに、ここのゴブリンは一味違うようだ。

前衛のゴブリンは盾を持ち、後ろのゴブリンは弓矢か魔法で攻撃。

分かれ道では左右から同時に襲撃と。

これまでのゴブリンには無かった行動だ。


「ところでジュン、以前から聞きたかったんだが」


「なんです?」


ゴブリンの攻撃が途切れて洞窟の奥へ歩みを進める中、お祖父ちゃんが不意に話しかけて来る。


「大した事じゃないんだがな。お前、防具は力を入れて揃えたみたいだが武器は、剣は並だよな?作らねえのか?」


「剣はオーダーメイドで将来作る予定ですけど、凄く御金が掛かるんで。今は資金集めの段階です。気長に貯めますよ」


「お前、かなり稼いでるんだろう?なのに作れないのか?」


「ステファニアさんに一度相談したら、刀身に使う金属は最低でもミスリル。出来ればアダマンタイトとミスリルの合金がいいって話で。オリハルコンが最高なのは勿論なんですけどね」


「そんな凄いの作る気なの?」


「ええ。で、どうせならオリハルコンで作ろうと思いまして。オリハルコンで双剣を揃えようと思うと相当な金額なので」


何せエルムバーンの城が三回は立て直せる金額だ。

それくらい希少な金属なのだ、オリハルコンは。


「ふーん…なら、将来いい物プレゼントしてやる」


「将来?いい物ですか?」


「ああ。剣を作るのはそれを受け取ってからにしろ。きっとお前にとって役に立つ」


「はぁ。わかりました」


何だろうな。

剣を作るのに使える物なんだろうけども。


「ジュン様、ゴブリンが来ます」


おっと。少し話に夢中になりすぎたかな。

また分かれ道に差し掛かったところで左右から襲撃だ。

しかし、先ほどからワンパターンだ。

この程度なのか?ゴブリンキングの知能は。


「ジュン様!後ろからも来ます!」


おっと、抜け道でもあるのか、それとも外にいた奴らが戻って来たのか。

左右と後ろからの挟撃だ。

だが問題はない。想定の範囲内だ。

左の敵はノエラとセバスト。右はユウとアイ。

後ろはハティとクリステアとユリアで対処している。

洞窟が少々狭くなってきたので双剣のボクと戦斧を使うルチーナは戦いにくい。

故にボクは魔法でバックアップ。

ルチーナはいつでもフォローに行けるようにしている。


「この洞窟ごと、潰せれば楽なのにね」


これだけ大きな洞窟を潰すと山の方にも影響が出るだろう。

そうなると近隣の村や街にどんな被害が出るかわからない。

迂闊にとるべき手段ではないだろう。


ゴブリンを撃破しながら更に奥へ。

洞窟の一番奥、そして開けた場所に出る頃には残りのゴブリンの数は八百くらいにまで減っていた。


「グギグググ、キサマラ、ヨクモヤッテクレタナ」


「おー喋った。あれがゴブリンキングかな」


「そうだな。あの粗末な装飾。間違いないだろう」


一応ゴブリンキングというだけあって、王様らしく着飾っているらしい。

あくまでゴブリン基準で、だが。


「ダガ、ココマデダ!ヤレ!」


一番奥にいるキングを守るための存在なのだろう。

残ったゴブリンの多くは上位種のゴブリンナイトやホブゴブリン等なのだが。

気になるのはゴブリン以外の存在だ。


「あれは狼だよな」


「ブラックウルフって魔獣で狼の仲間みたいだね」


「恐らくゴブリンキングが従えて支配下に置いたんだろう。結構な数がいるな」


黒い体毛で覆われた通常の狼より一回り大きい体躯のブラックウルフは二百匹くらいいる。

どうやら残り八百と思ってた内二百はブラックウルフだったらしい。

ブラックウルフの単体討伐難度はD。群れでCである。

二百もいればBにまでなるかもしれない。

ゴブリンと連携して襲われたら厄介だったかもしれない。

だが、魔獣でも狼であるのならなんの心配もない。


「ハティ、頼む」


「わふ!」


今まで活躍の場が無かったハティが持つ狼王の紋章。

全ての狼を強制服従させる事が可能な紋章の力。

その真価を発揮する時が来た。


「わふー!」


ハティの支配下に置かれたブラックウルフ達はゴブリン達に反旗を翻し襲い始めた。

まさか裏切られるとは思ってもいなかったのだろう。

ゴブリンキングを含め、ゴブリン達は大混乱だ。


「今だ!まとめて殲滅しろ!」


「「「ハッ」」」


ブラックウルフを従えて戦力を補強してた事が裏目にでたゴブリン達はあっさり殲滅出来た。

生き残ったブラックウルフ達にゴブリン達の死体の処理。

その後、人里離れた場所で魔族や人族を襲わないようにハティに命じてもらってからブラックウルフ達は解放する。

最後は彼らのおかげで楽だったし、討伐するのは気が引けたのだ。


後始末を終えて王都に帰還。

冒険者ギルドで依頼達成の報告をする。


「ゴブリンキングが率いる群れの討伐完了ですか。流石ですねー」


相変わらずの爆乳を机の上に乗せながら仕事をするウーシュさんに報告をする。

先日はいい思い出をありがとう。


「ところでギルドマスターは?」


「あ~、まだダメですね~。モンジェラさんが様子見に行ってますけど、今朝もダメそうでした」


先日、例の盗賊団の女頭目を捕まえた一件で、ギルドマスターは大いにへこんでいるのだ。

何せ殆ど無理やりボクに受けさせた依頼のせいで盗賊団は王都に便利な拠点を手に入れる事が出来たのだから。

さらに自分が惚れてた女性が盗賊団の女頭目だったために、利用されていたのだと再認識。

失恋のショックもぶり返し、連日酒場で飲んだくれ。

ギルドの仕事は全く手つかずらしい。

それを支えているのがモンジェラさんと言うわけだ。


「全くぅ。モンジェラさんも、あんなののどこがいいんだか。そう思いません?ジュン様」


思わなくもないけど、人の恋路に口を出す気はない。

そこまで親しい間柄でもないしね、モンジェラさんとは。


「まあ、いいじゃない。何かあるんでしょ、好きな理由」


「愛に理由は必要ないのよ、ウーシュさん」


アイとユウはモンジェラさんを応援するつもりらしい。

まぁボクだって諦めろなんて言うつもりは無い。


「それじゃ、失礼します」


「はい、お疲れ様でしたぁ~」


仕事を終え城に戻る。

お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが一緒に冒険者の依頼を受けるようになって難易度の高い仕事をこなす事が多くなった。

またランクあがるかな?


「ところでお祖父ちゃん。将来ボクにくれるいい物って何です?」


「秘密だ。まぁ楽しみにしとけ。絶対驚くから」


そう言われると気になっちゃうけど、あんまりしつこく聞いて機嫌を損ねられても困るし、我慢しよう。

実は結構楽しみなんだけどね。

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