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第88話 ドラゴンゾンビ

新種の魔獣の目撃情報の確認の為に訪れた森で、ドラゴンゾンビの討伐をする事になった。


「いや、何でだよ」


思わず自分でツッコミをいれてしまう。

ギルドマスターの言った縁なんて信じたくないけど、否定出来なくなってきた。


「どうかしたか?ジュン様」


「何でもないよ」


問題の森に着いたのでここから先は隊列を組む。


「先頭はクリステアとルチーナ。二番目にリリー。最後尾にカイエンとユリア。中央に残り全員だ。索敵はリリーとハティに頼む。魔法での探査は魔力温存の為、ボクには出来ない。道中の戦闘も極力みんなで頼むよ。ドラゴンゾンビのせいで他の魔獣に襲われる事はないと思うけど注意はして」


「「「ハッ」」」


森の中を隊列を組み進む。

魔獣どころか普通の動物も虫の鳴き声も聞こえない。

実に静かだ。


「なぁジュン様」


「何、セバスト」


「ジュン様はアンデットが苦手なんだろう?ドラゴンゾンビもダメなんじゃないのか?」


「「「え」」」


セバストの言葉に驚くのはギルドマスターの依頼に一緒に行ってない人達。

親衛隊にお祖父ちゃんとお祖母ちゃんにルーとクーだ。

実に心配そうな顔で見て来る。


「大丈夫だよ。ボクが苦手なのは人型の幽霊とかゾンビだから」


「それはそれで何でだ?」


うん、まあ不思議だろうね。


「そうですか、ジュン様はアンデットが苦手なのですか。何かに利用できるかもしれませんね」


「ちょっと待ちなさい。何をする気なの姉さん」


うん。本当にナニするつもりなんだいクリステア。


「いえ、少し反省しまして。いきなりジュン様に調教してもらうのではなく、まずは男女の関係になってから、と思いまして」


「それ、全然反省できてない!」


本当にね。

だいたいそれとボクがアンデットが苦手なのをどう利用するつもりなんだ。


「以前、強い不安や恐怖を感じている時に一緒にいた異性とは恋愛感情に落ちやすくなると聞きまして。

アンデットを利用してその状況に持って行けないかと」


吊り橋効果の事か。

この世界にもそんな事を研究してる人でもいるのかな。


「アンデットの恐怖に震えるジュン様を私の胸で優しく包む。そして恋に堕ちる二人。そうすれば私の調教もスムーズに…」


やだ、それ結構効果的かも。

特に胸で包むあたり。


「いや、姉さん。そういう時にジュン様を御守りするのが親衛隊の務めでしょうが」


「私、アンデットに有効な手段を持ってないので」


それでもダメじゃね?

ルチーナの言うようにボクを守るのが親衛隊の仕事のはず。

いや、死ぬまで守れなんて言うつもりもないし、そうなる前に逃げるなり自分で倒すなりするけども。


「ジュン様、何かいます。左前方」


「わふわふ」


「ハティちゃんも嫌な臭いがするって言ってます」


砦が薄っすら見える位置まで来た時に、リリーとハティが何か感じたようだ。

皆に身を隠すよう指示をだす。


ズンッと地面を響かせながら。リリーの言う方向から出て来たそれ。

骨に薄っすらと皮が付いただけの体。

何も無い筈の眼は赤く光り胴体の中心に赤黒く光る球体がある。

あの球体はなんだろう?


「ドラゴンゾンビ…」


「間違いないね」


そう、間違いなくあれはドラゴンゾンビ。

でもなんか違和感が。


「何か、あのドラゴンゾンビおかしくないか?」


「え?わかんない、初めて見たんだし。お兄ちゃんも初めてみたはずでしょ?」


ユウの言うようにボクもドラゴンゾンビを見たのは今が初めてだ。

でも何か違和感が。


「あ、わかった。動きがアンデットぽくないんだ」


「動き?」


「アンデットの動きって不規則というかフラフラしてるというか。獲物に襲い掛かる時以外は動きも鈍いって聞いてたんだけど。でもあいつ、歩き方はしっかりしてるし、どうもさっきから見てる限り砦を中心に周りを周ってるように見える。アンデットには有り得ない行動パターンだ」


「言われてみれば、確かに」


「それに、あの胴体の中心にある球体。な~んか怪しいんだよなぁ。お爺ちゃん、ドラゴンゾンビにはみんなあの球体があるんですか?」


「いいや、わしがドラゴンゾンビを見たのは二回目だが前回の奴にはあんな球体は無かった。それにジュンの言うようにあんな規則正しい動きじゃなかったな」


なら、やはりあれは普通のアンデットではない。

ただドラゴンゾンビなのは確かだ。

やる事は変わらない。


「みんなは周辺を警戒。次に奴が最接近した時に浄化魔法を使う」


みんなが警戒してる中、集中して魔法を使う準備にはいる。

魔王の紋章と念の為に魔神の紋章も使用。

準備万端整えてドラゴンゾンビが再び来るのを待つ。


「来た。皆はここで待機!」


飛行魔法を使い、木の陰から空中に出てドラゴンゾンビの頭上から奇襲をかける。

ボクに気づいて咆哮を上げるドラゴンゾンビ。

だけどもう遅い!


「まず一回目の浄化魔法だ!」


浄化魔法を全力で使う。

一度じゃ浄化できないだろう。

さらに浄化魔法を使う準備をする。


「あれ?」


骨に残っていた皮も綺麗になくなり。

正しく骨だけになったドラゴンゾンビは崩れ落ちる。


「あれ?終わった?」


おかしい。こんなあっさりと終わる相手じゃないはずなんだけど。


「だから大丈夫だって言ったろう」


「ジュンの魔力の質って、やっぱり物凄くいいのね。まさか一発なんて」


「質、ですか?」


魔力の質が高いと魔法の効果が高くなり、魔獣との契約で有利になる。

それは知ってたけど、それが何か?


「以前、ドラゴンゾンビを一度見た時、ジュンより魔力の量も質も低い奴でもなんとかなった。ならジュンに同じ事が出来ないはずがねえからな。まさか一発とは思わなかったが」


なるほど。そんな経験があったから、あんな気楽だったのか。


「今度、ジュンの魔法で出した水飲んでみてえな。さぞかし美味いと思うぜ」


「私も飲みたいわ、それ~。料理を作るのに使うのもよさそう」


精霊が上質の魔力を好むのは知ってたけど、上質な魔力で作った水は美味しいのか。

今度試してみよう。


「じゃ、砦の中を調べて…待った!全員戦闘態勢!」


ドラゴンゾンビの骨がカタカタと震えだした。

そして胴体にあったあの球も怪しく輝きだしている。


崩れたドラゴンゾンビの骨が逆再生されたかのように元の形に組みあがっていく。

最後に球体が元の場所に戻ったとこで再生が完了したようだ。

再び眼球のないドラゴンゾンビの眼が赤く光る。


「ちょっと!どういう事!浄化したら復活できないんじゃないの?」


「普通ならね。やっぱりあのドラゴンゾンビは普通じゃないんだろ」


再生されたドラゴンゾンビが突進してくる。

ただの体当たりや尻尾による攻撃。

牙や爪での攻撃と、そんな直接的な攻撃ばかりだ。


「劣化している?いや、元々がこんな物なのか?」


皆の攻撃で骨が折れたり粉々に吹き飛んだりするが、その度に球体が輝き元に戻ってしまう。

あの球体が本体なのか?


「ユウ!あの球体を鑑定して!」


「え?あ、うん!」


魔法の袋から鑑定眼のメガネを取り出して鑑定するユウ。

なんだかんだで便利だよね、あのメガネ。


「あれは呪怨球っていうみたい!周りにある怨念や邪念、魔力を吸収してアンデットを動かす魔法道具だって!」


やっぱりアレが本体なのか。

ということはアレを破壊すれば終わる。

それにやはりアレは劣化版ドラゴンゾンビなのだろう。

ドラゴンブレスを使用することは無さそうだ。


「あの球体を砕け!それで終わる!」


「「「ハッ!」」」


全員が散会して波状攻撃が始まる。


骨しかないドラゴンゾンビにノエラの短剣やセバスト・ルー・クーの鉤爪は有効ではなさそうだ。

リリーは遠距離から弓矢で球体を狙撃してるが流石にそう簡単には当たらない。

やはり、あの球体のガードは堅い。


「ぬううううん!」


イグナスの鉄球は非常に有効だ。

骨をどんどん砕いていっている。大活躍だ。


「ガウゥゥ!!」


ハティは囮役になってくれている。

ハティの牙や爪も骨には有効ではない。


「ルチーナ!」


「はい、姉さん!」


クリステアが防ぎルチーナが攻撃する。

流石は姉妹。中々のコンビネーションだ。


「じゃ、いくかユウ。アイ、最後は頼んだ」


「うん、お兄ちゃん」


「任せて、ジュン」


ボクとユウも戦列に加わりアイの為に道を作る。

相手の懐に飛び込み強烈な一撃を入れる。

その役目に最も適任なのは間違いなくアイだ。


全員で攻撃、腕を飛ばし顎骨を砕いた瞬間。


「はぁああああ!」


一瞬で懐に飛び込み溜めた力を拳に集めて強烈な一撃をアイが放つ。

球体を覆っていた骨ごと砕き決着がつく。


「お見事。流石天才格闘家」


「ふふん。美少女が抜けてるよん」


まだ10歳のアイが胸をはって威張るがまだ胸は膨らんでいない。

とか言うと怒るしセクハラなので言わないが。


「なんか失礼な事考えてない?」


「いや、そんなまさか」


アイの頭を撫でて誤魔化しておく。

最近はユウだけでなくアイまで心の中を読みだしたな。


それから少し休息を取ってから砦の調査を開始する。


「さて、と。流石に何にもないって事はないだろう。砦を調べるぞ」


「「「は~い」」」


はてさて、一体何が出て来るかな。

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