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第86話 ロックバード

「うあ~。あまりいい光景じゃないなあ」


「うあ~。本当に。正直気持ち悪い」


「うあ~。グロい」


ハーピーの群れの討伐依頼を受けて問題の山に来たのだが。

ちょうどお食事の時間だったらしく、あまり見たくない物を見てしまった。

何せ顔は人の顔に近いハーピーが魔獣に齧り付く姿はちょっとしたホラーだ。


「数はどのくらいかな?二十くらい?」


「見える範囲では、そのくらいだな」


「これって、多いのかな?」


どうだろうか。

ボクも初めてだからわからない。


「お爺ちゃんはわかります?」


「少ないな。本来ならこの倍はいる」


「そうね、五十くらいが平均よね」


この倍か。

それはさぞかし嫌な光景だったろうな。


「となると、ですよ。この群れがここに来たのは、何かから逃げて来たから?」


「ほう。どうしてそう思う?」


「よく見ると手負いのやつが混じってますから」


片足が無い奴や、翼の羽が酷く乱れてる奴。

胴体部分を半ば持ってかれて死に掛けの個体もいる。


「正解。ちゃんと観察出来てるな」


「偉い偉い」


まあ、最初は食事風景のグロさに目がいってましたけどね。


「じゃあ、どうするの?」


「どうするって?」


「このままハーピーを討伐するの?それともしらばく観察して何がハーピーを襲ったのか、確認する?」


うーん。

何がハーピーを襲ったのか、確認する必要はあると思う。

しかし、再びこの群れを襲うとは限らないし、襲うにしてもいつ来るのかわからない。

何より、受けた依頼はハーピーの討伐だ。


「ハーピーの討伐を優先しよう。何がハーピーを襲ったのか気にはなるけど、普通に考えてハーピーより強い存在が王都の近くに来るのも困るし、そもそももう来ないかもしれない。今は目の前の危険であるハーピーの討伐を優先する」


「ああ、それでいい。危なくなったら助けてやるから、まずはお前達だけでやってみな」


「はい。でも、その前に一応聞いておきますけど、ハーピーを襲う存在に心当たりは有ります?」


「そうだな…ハーピーより大型の人面鳥で少数の群れを組むハルピュイア。石化能力を持つコッカトリス。雷撃能力をもつサンダーイーグル。超大型の鳥で堅い羽毛で覆われたロックバード。あとはドラゴンか」


「その中で最も可能性が高そうなのは?」


「奴らの傷から見てロックバードだな」


「よし、とっとと片付けましょう」


ロックバードの討伐難度はS。

今まで倒した魔獣の中では最高難度だ。

神獣のドラゴンを除けば、だけど。


「そんなにヤバいの?そのロックバード」


「王都にある一番大きい屋敷よりデカいらしいよ。本で読んだ限り」


「うん、早く片付けよう」


それがいい。

万が一、この群れを追ってロックバードがやって来たら厄介だ。


「じゃ、作戦だ。アイ、セバスト、ノエラ、ハティは地上にいるハーピーに先制攻撃。空中にいる奴、逃げようとする奴はボク、ユウ、リリーで撃ち落とす。いいかな?」


「ウチは問題ないよ」


「私も」


「オレも問題ないぜ」


「私も問題ありません」


「リリーもですぅ」


「わっふ!」


お祖父ちゃんとお祖母ちゃん頷いている。

全員問題ないなら始めよう。


「じゃ、スリーカウントで行くよ。3・2・1・0!」


作戦スタートだ。

みんな一斉に飛び出しハーピーを狩って行く。

奇襲は成功。

地上のハーピーは禄に抵抗できず狩られて行く。


地上のハーピーの始末は完了。

残りは最初から空中にいた八匹程度。

魔法で始末しようとした時にそれは現れた。


突然大きな影が出来たと思って空を見たら急降下中のそれ。

とにかく巨大としか言いようのない鳥。

ロックバードだ。


「げ」


「何あれ、デカッ」


そう、とにかくデカい。

大きさがデカい以外は猛禽類って感じの鋭い鉤爪に嘴。

茶色を基調とした羽毛で中々かっこいいのだがとにかくデカい。

空中にいたハーピーはあっと言う間に食べられてしまった。


「流石に討伐難度Sの大物。ハーピー程度じゃ相手にならないか」


「満足して巣に帰るかな?」


エサを探しているのか空を旋回し続けるロックバード。

あれだけ巨大だと王都でも見えるだろうし、今頃大騒ぎになってそうだな。


そしてハーピー八匹だけじゃ足らなかったのか。

今度はボク達に狙いを定め襲いかかって来る。


「退避ー!」


上からではなく横方向から襲い掛かってくるロックバード。

ハーピーは山の頂上付近に居たのでボク達も頂上付近にいたのだが、木があろうが岩があろうがお構いなしに突っ込んできたロックバードによって山の頂上は平地になってしまった。


「とんでもないな!みんな無事か!?」


「大丈夫!無事みたい!」


何とかみんな無事のようだ。

ロックバードは今はまた空中で旋回している。


「平地になって、一見動きやすくなったように見えるけど…」


「ロックバードにしても、狙いやすくなったよね、これ」


そうなのだ。

隠れるものもないのですごく見晴らしがよくなってしまった。

これは一時撤退もやむなし、と一瞬考えたがすぐに却下する。


「ここで逃げたら、次はあいつ、王都を狙う、よな?」


「もしくは周辺の村ね」


そうだよな。

やっぱり逃げるのは無し。

なら倒すか追い払うか。

不思議だな、かなりやばい筈なのに凄く落ち着いている。

恐怖でマヒしちゃったかな。


「おい、ジュン。手伝うか?流石にきついだろ」


「はい、お願いします。でも多分大丈夫ですよ」


「ほーう?何か策があるのか」


「ええ。上手くいけば倒せます。上手くいかなかったら助けてください」


「いいだろ。お手並み拝見だ」


まだ、空中を旋回してるロックバードを確認してから、地面に土属性の魔法を使う。

それから、みんなにはボクの周辺に集まってもらい、補助魔法で強化しておく。


「奴が仕掛けて来たらギリギリまで引き付けてから逃げて。目くらましを使うから自分達の目をやられないように注意して」


いつ仕掛けてくるかわからないので必要な事だけ伝える。

ちょうど体勢が整った所でロックバードが襲い掛かる。

今度は鉤爪で捕らえるつもりのようだ。

ギリギリまで引き付けて…


「今だ!退避!」


みんなに退避するよう伝えてから光魔法で閃光を放つ。

一瞬だけだが、それで充分だ。

そして即座に地面に仕掛けておいた魔法を発動する。

地面を柔らかくして沼地のようにする魔法だ。

目くらましによって地面の状態もわからないロックバードはそのまま沼地となった地面にはまる。

そして次に沼地にロックバードごと氷魔法をかけ凍結する。

これでもう飛び立てない。


「あとは殴りたい放題だ!だけど油断はするな!」


こうなれば勝利は確実だろうけど、何せあの巨体だ。翼を広げただけでも強風が起こり翼が直接あたれば吹き飛ばされてしまう。

飛ぶことは封じたけど行動の全ては封じる事は出来ていない。

油断は出来ないのだ。


「何これ、堅い!」


「矢が刺さらないですぅ!」


やはりロックバードの羽毛は堅いらしい。

そんな堅い羽毛でどうして空を飛べるのか。

それにあの巨体だ。セバストの鉤爪やノエラの短剣じゃ刺さっても大して効かないだろう。

リリーの矢もしかりだ。


「ユウ!雷系の魔法を使って!なるべく強いの!」


「うん!行くよ、お兄ちゃん!」


ユウの魔法を受けて悲鳴を上げるロックバード。

そして嘴が開いたとこへ目の前に転移してから火魔法を放つ。


「やったぁ!」


「お兄ちゃん、やったの!?」


一発じゃなく数発の火魔法を打ち込んだのだ。

いくら堅い羽毛で覆っていても肺までは丈夫じゃないだろう。

肺を焼かれたロックバードは倒れた。

討伐完了だ。


「ふ~、流石にちょっとヤバかったな」


「ちょっとって…かなりヤバかったと思うぞ、ジュン様」


確かに。

流石に討伐難度Sの魔獣。

今までで一番ヤバかったかもしれない。

いや、やっぱり一番はドラゴンかな。


「上出来だぞ、お前ら」


「まさか本当に私達抜きで倒しちゃうなんて。流石私達の孫だわ!」


お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの賛辞を受けてから、ロックバードを魔法の袋に仕舞ってから撤収。

ハーピーの死体はロックバードによって山ごと吹き飛ばされてしまったので回収出来なかった。

ロックバードの胃袋には入ってると思うけど、それで証明になるだろうか?


何にせよ、依頼は完了。

帰るとしよう。

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