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第84話 父から見た息子

今回はアスラッド視点です。

「じゃあ、行って来ます」


「おう、気を付けてな」


「行ってらっしゃ~い」


ジュン達が武闘会に参加していたサムライの故郷に遊びに行きたいと言い出したので認めてやる。

あいつがこういう子供らしいお願いをするのは珍しい。


普段はわがまま何て言わないし、叱られるような事も滅多にしない。

わしが子供の頃は親父に散々叱られたもんだが、二人を叱った事何てわしの記憶では一度だけ。

城に出たゴミ虫を始末するのに、城内で魔法を連射した時くらいだ。

場所が練兵場で、周りに大した被害も無かったから良かったものの。

どうして魔法を使ったのか聞いてみたら


「だってお父さん!Gですよ?ゴキブリですよ?奴らの生命力は半端ないんだから一気に始末しないと!」


とか言っていた。

確かにゴミ虫は繁殖力が高く生命力の高い虫だが、だからって魔法を使うか?

それとGとかゴキブリって何だ?


それにジュンは子供なのに働き過ぎている。

ユウにアイもだが、子供とは思えない能力の高さを持っている。故にわしもつい頼ったり、仕事をさせがちだが、あいつらはそれに文句を言わない。物分かりが良すぎるのではないか?

色々と我慢してなければいいが。


ジュンとユウはわしには似てない子供だと思う。

性格も容姿もだ。

エリザとは少し似ていると思う。性格も容姿も。

特にジュンは時折、突拍子もない事を考えて実行する辺り、エリザとよく似てる。

ゴミ虫用にホウ酸団子とかいう毒の餌を作ったり、タコを料理に使ったり。

どこから得た知識なのか、大人顔負けの知識で皆を驚かせる。


それに、魔法や剣の訓練等も積極的にやっている。

ハンデ有りとはいえガウルに勝った時は驚いた。

わしが子供の時に同じ事は出来なかっただろう。


つまりはわしの子供達は優秀過ぎるのだ。

それ故に負担を強いられたり、我慢させられたりと。

子供の時から色々と、不満を抱え込んではいないか不安になる。

わしもジュンに負担を強いた事があるので余り言えないが、親としては心配になる。


そんな優秀過ぎる息子から以前、頼み事をされた。


「珍しいな。お前が頼み事なんて。何だ?言ってみろ」


努めて平静に答えるが、わしは内心で安堵し喜んでいた。

ジュンは余り他人を頼らない。自分の事は自分でやるし、大概の事は出来てしまう。ノエラにセバストも、全然手がかからなくて楽だと言っていた。時折、メイドの仕事を手伝う程だと。


そんなジュンは、親であるわしにも滅多に頼み事をしない。

もっと小さい頃には、エリザには頼み事をする事があったようだが、それも街を見たいとか、魔法を教えて欲しいとか可愛い物だ。


滅多にないジュンの頼み事だ。

全力で聞いてやろう、そう思ったのだが。


「実は『魔王子様と女騎士』等の本を書いてる作者を見つけ出して欲しいんです」


それは無理だ。

それは出来ない。口止めされているからだ。


「ふむ…何故だ?」


一応、理由を聞いておく。


「実はその本に出てくる魔王子はボクがモデルらしくて。周りの人達に歪んだイメージを与えかねないので、せめて今後の作品には出さないでほしいんです」


モデルどころかジュンその者だな。

名前もジュンのままだし。


「そうか、わかった。探しておく」


「よろしくお願いします」


ジュンが部屋から出た後。

わしとエリザの寝室から行ける隠し部屋に行く。


「エリザ」


「あら、あなた。何かしら?」


「ジュンが自分をモデルにした作品を出して欲しくないそうだぞ」


「あら、それは無理ね。今更変える事は出来ないわ。それよりも私が作者だってジュンにバレたの?」


そう、ジュンが探している作者はエリザなのだ。

そしてジュンにバレたら止められると分かっているので秘密にしてある。


「いや、まだだ。わしに作者を探して欲しいと頼んできた」


「あら、珍しい。あの子が頼み事なんて。でも止める事は出来ないのよ。多くのファンが待っているし、ジュンの素晴らしさを少しでも多くの人に知って貰わなくちゃ」


「フィクションじゃないか」


「ジュンの内面はフィクションじゃないからいいの」


そうかなぁ。

『魔王子様と執事』なんて、かなり無理があるんじゃないか?


「それより聞いてよ!フレムリーラとダルムダットでも魔王子様シリーズの販売が決まったの!これでより多くの人にジュンの素晴らしさを伝える事が出来るわ!」


本の販売に関してもエリザは自分の立場を利用していない。

つまりは実力で売れる本を書いているのだ。

それは大した物だと思うが、ジュンからすれば悪夢でしかないのだろう。

すまん、ジュン。わしには止められそうにない。


そしてジュン達が帰って来た。

出発時よりも人数を増やして。


「もしかして、親父とお袋か?」


「おう、バカ息子。しばらく会わない内に親の顔も忘れたか」


「元気そうね、アスラッド。エリザも」


「お久しぶりです、御義母様」


「二十年以上、息子も国もほったらかしの癖に何言いやがる。おい、ジュン。説明してくれ。なんで親父達と一緒に帰って来た?その女子供達はなんだ?」


「はい、説明します。実はですね―――」


ジュンの説明を聞いて冷や汗が出る。

親父達と殺し合う一歩手前とか。


「そうか、話は分かった。セバスト、よく止めてくれた。礼を言う」


「はっ」


「それから、ジュン。女子供達の件も分かった。お前の好きにしていい。オットーの三男坊に関しては任せておけ。わしから一言言っておく。ま、何も言わずとも向こうから謝罪に来るだろうがな」


「はい、お願いします」


「じゃあ、親父達の土産話は明日にでも一緒に聞こう。今はその者達を案内してやれ」


「はい。では失礼します」


「じゃあね、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん」


「またね」


「お~う!またな!」


「三人共、今夜も一緒に寝ましょうね~」


初孫が可愛いくて仕方ないのか、えらくジュン達を気に入ったようだ。

お袋はともかく、親父まであんなに笑顔になるとはな。

それなら、ちゃんと連絡を寄越せばもっと前から一緒に居られたのによ。


「で?何か言いたい事があるんだろ?」


「ああ。あいつらは本当にお前らの子なのか?全然似てないし優秀過ぎるだろ」


「私とエリザとは似てるわよね~」


「そうですね、御義母様」


わしだけ除け者か。

いや、似てる似てないで言えば親父も似てないか。


「うるせーよ。まぁ、わしに似てないのは認める。優秀過ぎるのもな」


「なんだ。ちゃんと分かってるのか?あいつらの危うさを」


「当たり前だ。だからこそ親衛隊まで作ったんだ。こんなに早くな」


わしの親衛隊を作ったのはわしが魔王になってからだ。

ジュンの親衛隊をこんなに早く作ったのは訳がある。


「あいつらは優しすぎる所がある。特にジュン。山賊相手でも出来るだけ命を奪わないで済ませようとする。なまじ優秀でそれが出来る能力があるから余計に不安だよなぁ」


そうだ。

ジュン達はまだ魔獣か動物しか命を奪っていない。

それにしたって無闇矢鱈にではなく食べる為、依頼の為、自分の身を守る為だ。

人の命を奪った事はない筈だ。

暗殺者を撃退した時、暗殺者が死んでいるが、あれは暗殺者にかけられた口封じの呪いの為だ。 

つまりはジュン達は命を奪う事を忌避している。

だが、それでいいと思う。それはきっと美点だ。

少なくとも平気で殺人が出来る奴よりは、よほどいい。


「そんなジュンだからこそ、国民に人気なんだ。危ない所はわしらがフォローしてやればいい。その為に親衛隊も作った。あいつはあのままでいい」


「ほ~。なんだ、ちゃんと父親らしい事考えてるじゃないか」


「本当。あのアスラッドがねえ」


「意外と親バカなんですよ、アスラッドは」


「それはエリザもだろう」


むしろエリザのほうが親バカの筈だ。

自慢の息子を主人公にした本を売り出すほどだからな。


「まぁ、分かってるならいい。わしらも協力する」


「協力?何する気だ?」


「ジュン達を鍛えてやる。ついでに親衛隊もな」


「あら、それはいいわね」


「そりゃいいけどよ、あいつらが子供らしく過ごせる時間は作ってくれよ」


只でさえ、あの歳にしては働き過ぎなのだ。

今回だって遊びに行った筈なのに人助けとは言え山賊退治なんてやってるし。


「わ~かってる。あいつらが普段やってる訓練の時間を貰うだけだ」


「私達も孫と遊びたいしね~」


どうかなぁ。

親父達は加減を知らないからな。

不安だ。おかしな事にならなきゃいいが。

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