第66話 武闘会本戦 二日目
武闘会二日目。
今日は魔法部門の試合である。
魔法部門の試合は見た目は派手で観客には人気だ。
また観客席には防御魔法が張られており流れ弾が観客席に飛んでもちょっとやそっとじゃ突破されない。
そして相手を死なせてはいけない以上手加減も必要で。
つまり魔法による手加減が難しいボクにはちょっと不向きなのだ。
魔法による手加減が難しいとわかってからも魔法の訓練は続けてきたし魔法による手加減も訓練してきたが魔法の能力が上がるほどに威力も上がり。手加減はますます難しくなっている。
いっそ殺傷能力のない魔法を開発したほうが早いのじゃないかと思う。
幾つか新しい魔法は開発したけど嘘発見魔法だったり魔力の網を飛ばす魔法だったり。
見た目が派手で強力な魔法も作ったりはしたけどコケ脅しの意味が強い。
魔力の網で捕らえるのが今は最も簡単な魔法による手加減になるだろうか。
そういう魔法による対人戦の上手い手加減を学べたらと思う。
と、思っていたのだが。
「予選から思ってたけど、なんていうか、皆結構派手というか遠慮が無いというか。手加減をほとんどしてなくないか?」
「前回まではそうでもなかったんだが今回からは事情が変わったからな」
「何があったんです?」
「お前だよお前」
「ボクですか?」
「お前が治癒魔法使いの育成に成功したからな。多少の怪我じゃ死ななくなった。なら遠慮なく攻撃出来るってな。弱い魔法を細かく打って弱らせていくよりも強い魔法を使って戦闘不能に追い込んだ方が楽だ。後の試合にも支えないしな」
なんという事でしょう。
怪我人や病人を治す為の治癒魔法が怪我人を増やす要素になっているとは。
いや考えてみれば当然なのか。
無茶して大怪我しても治せるとわかってれば無茶をする人が増える。
結果怪我人が増える事に繋がるのか。
それでも死亡率は下がってるはずだが、ちょっと考えてしまうな。
「大丈夫よ、ジュン。怪我をする人が増えたってそれは怪我をした人の責任。ジュンが悩む事じゃないよ」
「そうだよ、お兄ちゃん。確実に助かってる人の方が多いんだし、病院が出来たからって怪我しても平気なんて考えるほうがバカなだけよ」
「そうね、ジュン君の功績は間違いなく大きいわ。胸を張っていいのよ」
父アスラッドの言葉を受けて考え込んだのを落ち込んだと思ったのか、アイ達が慰めの言葉をかけてくれる。
「あ、あ~、そうだぞ、わしもお前のせいで怪我人が増えたなんて思ってない。そういうつもりで言ったんじゃないんだ。すまない」
パパ上まで慌ててフォローする。
ちょっと考え込んだだけなんだけどな。
「大丈夫です。分かってますよ、お父さん。病院が出来た事で怪我人は増える傾向が強くなったならそれはそれで対策を取らないと駄目かなと思っただけです」
「い、いやだからな、それはお前の責任じゃないから、お前が特に何かする必要はなくてだな」
「大丈夫よ、ジュン。その件はお父さんに任せておきなさい。ねぇ、あ・な・た」
「そうだぞ、ジュン。それはこの国の長であるアスラッドの仕事だ。なあ、ガウル」
「そうだな。アスラッド、しっかりやれよ」
「お、おう」
みんなに非難の視線を向けられて小さくなるパパ上。
なんか、ごめんね?
「さ、さ~次の試合が始まるよ。注目の試合はあるかな~?」
アイが場の空気を変えようと必死に明るい声で喋ってくれる。
いかんいかん、気を使わせてばかりじゃ、いかんな。
「そうだな、知ってる人の試合は、あ、いた」
「誰かいたの?」
「三バカ兄弟の一人があそこに」
ゴルドー・ツオーレさんの悩みの種。
三バカ兄弟の一人で確か、アレン・ツオーレ。長男だ。
「秘蔵っ子じゃなかったの?武闘会なんて目立つ物にでていいのかな」
「秘蔵っ子ってのはあいつらがバカなのを広めないよう表に出さないようにする方便なんじゃないかな。本人達に対する」
「ああ、それで合ってるぞ」
「合ってるんだ・・・」
で、隠しきれなくなってきて武闘会に出場ってとこかな。
本戦まで勝ち残ってるって事は魔法に関しては優秀なんだな。
「で、対戦相手は誰だ?あ。これまた知ってる子」
「子?女の子?」
「ええ、例の謎の仮面美少女剣士の連れの子ですよ。無口っ子」
あの仮面の子と壮年の男は只者じゃない。
その連れならあの子も結構な使い手かもしれないな。
よく見ておこう。
「ジュン様!私が優勝したら私の妻になってくださいね!」
「いや、無理だから。不可能だから」
まだ言ってるのか、あのバカは。
しかも大勢の衆人環視の中で言うとは。
何か理由があって男って事になってると思ってるならなおの事皆の前で言っちゃだめだろうに。
「バカね」「バカだね」「バカなのねえ」
満場一致でバカの判定がくだされました。
「さぁ、いくぞ少女よ!子供を倒すのは不本意ではあるが、私には負けられない理由があるのだ!できれば怪我をしないうちに降参してくれたまえ!」
そう言ってアレンは一度に十くらいの火球を生み出し無口っ子に放つ。
しかし無口っ子は即座にアレンの火球と同数の水球を生み出しぶつけて火球を打ち消していく。
「む!やるではないか少女よ!私と互角とはな!」
アレンはそう言ってるが決して互角じゃない。
「互角じゃあないな。無口っ子のほうが優勢だ」
「え、そう?あの子の水球も消えて無くなってるじゃない」
「完全には消えてない。アレンとアレンの周りをよく見て」
完全に打ち消されなかった水球はアレンとアレンの周りの地面を少しずつ濡らしていく。
火球と水球の打ち合いを三回も続けた頃にはアレンはびしょ濡れだ。
「アレンとアレンの周りの地面に充分な水をまいたら、あとは」
「ぷぎゃああああああ!」
「あ、決まった」
地面に雷系の魔法を放てばそれで決まりだ。
「なかなかやるじゃない、あの子。あれ全部最初から計算してたのかな」
「たぶん、そうだろうね」
アレンの火球を全て打ち漏らす事無く水球で迎撃。
僅かに水球の威力が上になるように調整しアレンを濡らしていく。
充分に濡らしたとこへ雷系の魔法。
かなりの実力が無ければできない芸当だ。
アレンも中々だったが相手が悪かったというとこか。
あの無口っ子は魔法部門での優勝候補の一人になりそうだ。
しかし、ほんと喋らないなあの子。




