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第64話 武闘会本戦開催

 武闘会本戦開催まであと数日。

例の四人組は王都の観光等して大人しくしてるらしい。

あの怪しい恰好のままで。

顔は隠すが隠れる気はないらしい。

悪巧みはしていないという事だろう。


 特訓の成果を実感できる事が有った。

双剣の紋章が双剣豪の紋章に変化したのだ。

それから新たに強脚の紋章という、ちょっと珍しい紋章を両足に獲得出来た。


「どういう紋章なの?」


「足の能力が上がるって紋章だ」


「それだけ?」


「それだけ」


「え~?しょぼくない?」


 まあ下位の紋章だしね。

でもボクは結構使える紋章なんじゃないかと思う。

単純に移動速度は上がったし地面を蹴る力が上がった事で瞬発力も増した。


「双剣を使ってる時には足技を多用してたのが影響したのかな。体術を習ってるから拳士の紋章を得るかもとは思ってたんだけど」


「そう言えば双剣豪の紋章の能力ってどんなの?」


「ボクの場合は双剣を使った際の能力の向上と剣気(ソードオーラ)の使用可能だな」


「剣気って?」


「アイの拳闘士の紋章は闘気を使えるようになっただろう?肉体に纏う気が闘気なら剣に纏う気が剣気だな」


 剣気を使えば剣の攻撃力や耐久性が大幅に向上する。

体力の消耗も激しくなるのであまり多用は出来ないけど。

アイの拳闘士の紋章の闘気は肉体能力が大幅に上昇する。

こちらも体力の消耗が激しくなるので多用は出来ない。


「師匠の双剣豪の紋章はどうなのです?」


「私の場合も同じですよ。恐らく中位の紋章までは獲得した紋章に差異はそうないかと」


「そうなのですか?でも師匠が剣気を使ったの見た事ないような」


「それは単に今まで使う機会が無かっただけですよ」


 そうなのか。

つまり今までは師匠の本気を出せていなかった、と。

流石は師匠。


「しかし、これからは使う事になるでしょう。ですがジュン様、一つ忠告をさせていただきます」


「はい、師匠」


「紋章は獲得したら、それで終わりではありません。紋章は成長します。双剣の紋章が双剣豪の紋章になったのはわかりやすい例ですが、双剣豪の紋章も獲得した時から能力が向上しないわけではありません。魔王の紋章と魔神の紋章もそうです。もっと日常的に使いこなしてください」


「わかりました、師匠。でもどうして今になって?」


「ジュン様はあまり紋章の力に頼らず己が持つ本来の力を向上しようと努力されてるようでした。その考えも間違っているわけではありませんので。ですがこれからは紋章の力も伸ばすようにしましょう」


「はい、師匠」


 流石は師匠。

ちゃんと弟子の事を考えてくれている。


「そう言えばウチの先見の紋章もほんの数秒先なら任意で使えるようになったよ。最初は出来なかったのに」


 それは戦闘においては大きなアドバンテージだろう。

アイの格闘センスと合わされば鬼に金棒もいいとこだろう。


「ジュン様、私の剣士の紋章も変化し剣豪の紋章になりました」


「おお。凄いじゃない。おめでとう」


「有難うございます。御褒美に調教等いかがでしょう」


「はいはい、姉さん、いい加減諦めなさい。ジュン様、私の斧の紋章も変化して断斧の紋章になりました」


「おお。ルチーナも凄いね。おめでとう」


「有難うございます」


「ルチーナは御褒美を強請らないのですか?」


「強請らないわよ。姉さんじゃあるまいし」


「無理しないほうがいいですよ。貴方が本当はジュン様と恋をしたいと思ってるのはお見通しです」


「ななな、何言ってるのよ!」


「貴方が『魔王子様と女騎士 純愛編』を愛読してる事は先刻承知です」


「何で知ってるのよ!」


 何だそりゃ。

クリステアが好きな本とは違うのか?


「私が好きな『魔王子様と女騎士』を純愛物に書き直した物語です。私には琴線に触れるモノが無く、少し物足りない作品だったのですがルチーナは好きらしいです」


「確かに好きだけど、だからって現実で本の内容を求めたりしないわよ!」


「無理はよくないですよ。それに現実に起こりうる内容だからこそ貴方も好きなのでしょう。私もそうですし」


 理解もできるし共感もできるけど、クリステアの場合は認めたくないなあ!


「クリステアさん、その作者は別の作品は書いていないのですか?例えば『魔王子様とメイド』とか」


 ノエラ、そこに食いつくのかあ。

 

「ありますよ。他にも『魔王子様と妹』『魔王子様と異国の姫』『魔王子様と執事』等がありますね。人気シリーズなんです」


 どこのどいつだ。そんな物をシリーズ化したのは。

特に執事は流れからして執事と恋愛関係になる話と予測がつく。

駄目だろう、執事とは駄目だろう。


「ウチも気になるなぁ。特に『魔王子様と妹』が」


「私も『魔王子様と妹』を読んでみたい」


 危機感が募る。

アイとユウにその本を読ませてはいけない気がする。


「どこのどいつだ。その本の作者は」


 有害図書指定してやろうか。

ボクの身の安全のためにも。


「それが作者は不明なんです。作者が誰なのかは一切の情報が出ていません。ですがリアルな描写とストーリーで人気なんです。ただ作中の魔王子様のモデルは恐らくジュン様ですよ」


「え。ナニそれ。聞いてない」


 それが事実なら肖像権の侵害ではなかろうか。

いや、この場合は人格権の侵害だろうか。


「どっちにしろこの国の法にそんなのないから無意味だよお兄ちゃん」


「今、ボクの心の中読んだ!?」


「まあまあ。私はその本買いに行くけどアイも行く?」


「うん、ウチも行く。ジュンは?」


「いや、ボクはいい・・・」


「では私とルチーナで護衛と案内をします。行きますよ、ルチーナ」


「はい、姉さん」


 切り替え早いなルチーナ。

クリステアもなんだかんだで真面目だしね。

 

 武闘会前の特訓はそのまま終了となり残りは各々が好きに過ごすことになった。

身体を休めてベストコンディションに持って行かなくてはならないからだ。

その辺りは師匠達のほうがよくわかってるしボクとユウはアイのアドバイスに従って休みを取っている。


 そして武闘会開催当日がやって来た。


「お前らー!賞金が欲しいかー!」


「「「ウォォォォォ!」」」


「ジュン様と戦いたいかー!」


「「「ウォォォォォ!」」」


「ウーシュさん、ノリノリだね」


「でもなんかキャラ変わってない?」


 色んな芸風持ってるなあの人。

最初のアレは計算な気がしてきた。


 今日も貴賓席で観戦だ。

貴賓席にはボク達だけでなくエルムバーン魔王国の領主達とその護衛。

そしてガウル様にアリーゼお姉ちゃんとクオンさんと護衛の騎士達。

シャンゼ様にコルネリアさんにユーファさんも来ている。


 さっきまで領主達が挨拶に来るのでその対応をしていた。


「はあ、疲れた。ジュン君、肩揉んでくれない?」


「はいはい。やっぱり疲れますよね」


 ボクも昨日までに王都に集まっている領主達との挨拶は済ませてあるが挨拶周りも人数が多いと大変だ。


「うんうん。ジュン君も魔王子として大変になってくるわよお。親衛隊を作ったんですって?」


「もう知ってるんですか?確かに作りましたよ」


「親衛隊一つ作るだけでも結構大変だったでしょ?魔王になるとそんなのしょっちゅうだから。今の内にやれることやっておくのよ」


 そう言えばシャンゼ様は先代魔王が急に亡くなったから魔王になったんだった。

やりたいこともやれないままだったのだろう。


「はい、ありがとうございます。シャンゼ様」


「うん。素直でよろしい」


 シャンゼ様と会話を終えるとガウル様とアリーゼお姉ちゃんもやって来た。今回、ジーク君は連れてきていない。

ジーク君は戦いを見て楽しめる子ではないらしい。


「よう、ジュン。お前、優勝者と戦うんだって?おもしれえ事になってんな」


「私も出ればよかったかな。惜しい事をした」


「お母さんの要望ですよ」


 ただ戦うだけにして欲しかった。

そりゃ優勝者を納得させる材料が必要なのはわかるけど。


「お前に勝ったら望みを叶えるねえ。大きく出たよなあ」


「全くな。大した自信だな」


「それもお母さんが決めた事ですよ。ボクが言い出したわけじゃありません」


「なんだ、そうなのか。じゃあ大丈夫だろう」


「何がですか?」


「エリザは昔から勝てないギャンブルはしない。一見無謀に見えても高い勝算を見出している。実際勝って来た。そのエリザが言い出したことならお前が負ける事はないと踏んでるのさ」


 そうかなあ。

誰が出て来るかわからない武闘会では賭けでしかないと思うけど。


「まあお前が負けても問題ないと思ってただ楽しんでるだけの可能性もあるがな」


「ああ、その可能性もあるな。エリザはそういう奴だ」


 ボクもそっちのほうが可能性高いと思います。


 武闘会開始の時間が来たようだ。

はてさて誰が優勝するのやら。

できればまともな人に優勝してほしいものだ。


「それでは!これより武闘会本戦を開催します!」

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