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兄vs妹 10

「……何かな?これは」


「…ユーグ陛下を始め、ヴェルリアの皆様から音楽会開催の嘆願書です…」


「……ほほぉ」


 ヴェルリアから戻ってすぐ。

ノエラさんはジュン様にエヴァリーヌ様達からの手紙…音楽会開催を催促する嘆願書を手渡し。

ジュン様は音楽会開催って内容にも驚いてるみたいだけど、その手紙の多さにも困惑してるみたい。

無理も無いけど…


「…ノエラはそんなにボクにお仕置きされたいのかな?ん?」


「い、いえ!決してそんな事は!で、ですがジュン様作曲の曲を聴きたいと望んでいるのはヴェルリア王家の方々だけではありません。どうか御再考を…」


「……はぁ」


 渋々だけど、取り敢えず手紙は読むよ、と。

ジュン様が手紙を受け取ってくれた。

実は私も楽しみにしてるし、これでジュン様が折れてくれたらいいけど…


「それでこの後はどうするんですか?ノエラさん」


「まだ何か狩に行くの?」


「いえ。後は『結婚し隊』の方々の成果を待つだけです。それで目的の品は全て揃います」


「と、いう事は…今日はもうお仕事は終わり、か?」


「自由にしていいのー?」


「ええ。皆、ありがとうございました。協力に感謝します」


「お、終わった?…これでようやく自由の身に…」


 ミースさんが安堵してる…まるで奴隷おとされたみたいなセリフだけど…


「ミースには明日『結婚し隊』の方々の迎えをお願いします」


「あ、はい…」


 ああ、ミースさんがまた暗い顔に…


「えっとぉ…そ、そういえばセバストさんに卵は渡したですぅ?ノエラさん」


「は?い、いえ…」


「え?まだ何ですか?」


「早く渡しちゃいましょうよ。ジュン様も気にしてましたよ?まだ喧嘩してるのかなって」


『二人が仲直りしないと冒険に行き辛いしね。アイシス君達も気にしてたよ』


「う…」


 周りにアレやコレやと促されて。

ようやくノエラさんはセバストさんと仲直りに動く事に。


「…兄さん」


「…何だよ」


 数日ぶりの兄妹の会話…を私達は物陰で見守ってる。

セバストさんはまだ怒ってる…のかな?ノエラさんを不機嫌そうな眼で…


「えっと…その……こ、これを」


「何だ…卵?デカい卵だな…もしかしてクレイジーバードの卵か?」


 見ただけで解るんだ…流石セバストさん。


「はい…差し上げます。受け取ってください」


「……どういう風の吹き回しだ?お前がティナ達を連れて食材集めをしてるのは知ってる。これはその一つだろ?」


「その…兄さんの調理器具を壊した件…アレはすみませんでした。これはお詫びの印です」


「お、おお。……珍しいな。お前がオレに素直に謝るなんて」


 本当に珍しいのか、セバストさんは眼を丸くしてる。

言われてみれば確かにノエラさんがジュン様以外に頭を下げてるとこなんて見た事ないかも?


「ま、まぁ、その、なんだ…そういう事ならこの卵は貰っておく。ありがとよ。それと…オレも一言余計だった。悪かったな」


「…はい。ですが!勝負は別問題です!絶対に負けませんからね!」


「お、おう…そりゃオレのセリフだ。料理でお前がオレに勝つにゃ十年早い。マリーダ様達に教わってるみたいだが付け焼き刃じゃオレに勝てないって教えてやる!」


 …あぁ〜折角良い感じに纏まりそうだったのに。

何もあそこで啖呵を切らなくても…


「仲直り出来たみたいで良かったですぅ」


「うん。いつもの二人だね〜」


「ええ…あれで?」


 リリーさんとハティちゃんにはそう見えるんだ…私より一緒に居る時間が長い二人が言うなら…そうなのかな?


 それから数日。

今日は遂に料理対決の日。


 デーデン♪デーデン♪


「…今回はやけに凝ってますね」


「音楽隊までいるのー」


「ティナさん達もこういうの見るの初めてですか」


「初めてなのー」


「あ、アイ様が出て来たぞ」


 わざわざ灯りを消して薄暗くして…魔法兵の人に光魔法で光を当てさせて…アイ様が凄く目立ってる。今日の主役ってセバストさんとノエラさんなんじゃ…


「なんか凄いドヤ顔で野菜喰ったぞ?」


「何の意味があるのー?」


 一口だけ生の野菜を…黄色いピーマン?をアイ様が食べた。

一体なんの意味が…


『私の記憶が確かなら~今日の対決はエルムバーンの城にてお送りします!』


 …うん?そりゃお城なのは皆知ってますけど?

どうしてわざわざそんな事を宣言する必要が??何かジュン様とユウ様が微妙な顔してるし…何で?


「はいー!皆さん!お待たせしました!遂に始まるノエラvsセバストの料理対決!本日の司会は私、アイと!」


「セバスンでお送りします」


 …こういう時にアイ様がやるのは何回か見たけど…セバスンさんがやるのは初めて見た。

しかも、結構楽しそう。


 料理対決の場所は城内のパーティー会場。

そこで二人が料理が出来るようにセッティングして、皆の前で料理してもらう。

で、審査員の人達に食べて貰ってどっちが美味しかったか票を入れて貰う。

より多くの票を入れて貰った方の勝ち。


「それでは次に審査員の紹介を!」


「はい。先ずは我らがお仕えするエルムバーン魔王家から、アスラッド様にエリザ様。そしてジュン様です」


 審査員席に座るアスラッド様達。

前魔王夫妻のハズラッド様にミリア様、それとユウ様にレベッカ様は座ってない。


「審査員席に座らなくて良かったんですか?ユウ様」


「良いのよ。私は料理出来ないし。面白そうだけどね」


 料理が出来ないから審査出来ない…でも料理出来ない人が審査員に居るけど…


「次はー…正当な評価が出来るのか怪しい人達が並んでますね!二人ほど!」


「アイ、酷い!」


「私だって料理の評価くらい出来ますよ、アイ殿!」


 アイシスさんとメリッサさんだ…言っちゃなんだけど、二人は美味しい!くらいしか言わなさそう…


「お次はマリーダ様と……何故居るのでしょう?」


「あら、酷い。私もステンナと一緒に料理教室に居たのよ?セバスンちゃん」


 メリッサ様は良いとして…ステファニアさんが居るのはセバスンさんには予想外…というより苦手なのかな?

セバスンさんが引いてるように見える。


 兎に角、審査員は以上の七名。

審査方法は二人に夕飯一食、一人分を作ってもらい、審査員七名でそれを食べて評価する。

七人分作らないのは時間が掛かるから。


「というわけで!準備はいいですかー!」


「おう!」


「いつでも大丈夫です」


「それでは!クッキングターイム!スタート!」


 …アイ様、楽しそう。

ジュン様もだけど、アイ様もこういう時は凄く楽しそう…


「さぁさぁ先ずはノエラさんに注目して見ましょう!」


「はい。この一週間、ノエラは料理の練習をしていたようですが…それなりに出来ているようです」


 元々、ノエラさんは不器用な人じゃない。

魔法を使うとか調理器具じゃなく武器を使うとかって奇行をしなきゃ普通には出来る…のだけど。


「しかし…所詮は付け焼き刃です。セバストの手際の良さには遠く及ばないですね」


「確かに!包丁の扱い一つとっても違いますね!」


 それはもう、私達から見ても明らかで。

セバストさんはテキパキと動いてるけど、ノエラさんの動きは緩慢。

マリーダ様達に慌てる事なく一つ一つ丁寧に丁寧にやるように、って言われて順守してるんだろうけど…隣でセバストさんがああまで違いを見せつけると…焦って失敗しないといいんだけど。


「んんん?どうも二人が作ってるメニューは…同じ物みたいですね?」


「そのようです。スープ、オムレツ、ステーキ、ですか」


「なっ…」


「フフン」


 同じ物を作ってると聞いたノエラさんが驚いてる。

セバストさんは得意気に笑ってる…もしかしなくてもセバストさんはわざと?ノエラさんが何を作るかわかってたの?


「これはどういう事でしょう。審査員のマリーダさん、何か思い当たる事は?」


「そうですね…ノエラさんは料理を習ってまだ一週間。それほど複雑な料理は出来ません。ノエラさんの性格を熟知してるセバストさんなら…ノエラさんが手に入れた食材がわかれば何を作るのか、予想は容易いのかもしれません。正直、オムレツもかなり頑張った結果ですし…」


 つまりセバストさんは…敢えて同じ物を作って腕の差を見せつけようと?

徹底的に勝つつもりなんだ…セバストさん。


「くっ…し、しかし同じ料理なら食材の質で上を行く私が有利なはず!」


「と、ノエラさんは仰ってますが!実際はどうなんでしょう!セバスンさん!」


「はい。確かにノエラが用意した食材は一級品ですが…セバストが用意した食材も、二級品ではありません。街で売ってる物の中では最高の物でしょう」


 となると…ノエラさんの勝ち目は薄い?


「出来たぜ」


「おっとぉ!速い!先に完成させたのはセバストさんだ!」


「くっ!まだ…まだです!先に完成させた方が美味しいと決まってるわけじゃありません!」


 そうなんだけど…腕前の差を見せつけるという意味では効果的…見物してる人達もセバストさんを褒めてるし…


 セバストさんにかなり遅れてだけどノエラさんの料理も完成。

二人が用意した品は同じ。

鳥肉と野菜のスープ。オムレツ。ステーキ。デザートにカットフルーツ。

それからドリンク。


「では!二人には作った料理の説明を!先に完成させたセバストさんからどうぞ!」


「おう。オムレツはクレイジーバードの卵を使った、卵だけのシンプルなオムレツだ。スープは一般的な鳥肉と野菜の鶏ガラスープ。ステーキは黒毛牛のサーロインステーキ。ソースはオレの特製だ。フルーツは街で売ってるありふれた物だがビッグビーの蜂蜜を使ったレモンと蜂蜜のソースをかけてある。ドリンクはジュン様の例の林檎を使った林檎ジュース。以上だ」


 何それ、美味しそう…いや、間違いなく美味しい…アイシスさんなんてさっきからヨダレが止まってないし…


「私の方は…スープはブレイドバードの肉と野菜のスープ。オムレツはクレイジーダイアモンドバードの卵を使ったオムレツ。ステーキはグリーンマウンテンバッファローのステーキ。フルーツはキングドリアンを始めとした高級フルーツばかりです。ドリンクは『神の雫』という銘酒です」


「なんですとぉぉぉ!?『神の雫』!?」


 『神の雫』と聞いて叫んだのは…バルトハルトさんだ。

そういえば凄い酒好きだった、バルトハルトさんは。

自分にも飲ませろと騒いでる…


「さぁ!それでは!いざ実食!」


「アイ殿ぉぉ!慈悲を!慈悲をぅ!」


 未だ騒いでるバルトハルトさんを無視して審査が始まる。

アイシスさんが全部食べちゃいそうで怖い…


「ううん…これは…」


「食べる前から想像出来てたけど…圧倒的かしらねぇ…」


「ですね…」


「最初を思えばかなりの進歩なのですが…」


「ですね。どちらも美味しいのは確かなのですが…」


「僕はどっちも好きだけどなぁ」


 全員が食べ終わった所で審査終了。結果は…


「それでは結果発表!セバスンさん、どうぞ!」


「はい。結果は……セバストが七票!セバストの勝利です!」


「セバストさんの勝利が決まったー!勝利したセバストさんにはウチから初代料理の鉄人の称号を送ります!」


 歓声と同時に。ノエラさんがガックリと膝をついた。

あんなに落ち込むノエラさんは初めて見た…セバストさんは当然とばかりに頷いてる。

それにしても…料理の鉄人って何?


「うぅ…一体何がイケなかったのでしょう…」


「…ノエラの料理も美味いのは美味いんだがな」


「でも美味しいだけって言うか〜」


「それにノエラの料理はバランスが悪い…かな」


「バランス…?」


「ですね!味付けが片寄ってる気がします!」


「わたくしも同意見です。ノエラさんの料理は味付けが片寄ってて飽きやすい。対してセバストさんの料理は飽きが来ないように味付けがバラけてます」


「一番良くないのはお酒だね。『神の雫』だっけ?ノエラ、このお酒味見した?」


「い、いえ…最高の酒だと聞いていましたので…」


「このお酒が一番バランス悪いかなぁ。メインのステーキに合ってないのが致命的かな。確かに美味しいんだけど」


「僕は両方美味しいと思ったけどね」


 ジュン様の意見にアイシスさん以外は同意みたいで。

結果はセバストさんの完勝。ノエラさんの完敗だった。


「ふっ。どうだノエラ。思い知ったか」


「くっ…くくぅぅぅ…」


 ノエラさんのあんな悔しそうな顔…初めてみた。

もう少しで泣きそうな…


「ところで、ノエラ。お前が勝った場合はオレの言葉の撤回という事だったが、オレが勝った場合は決めてなかったな?」


「なっ…は、敗者に鞭を打つつもりですか!」


「いや、むしろなんで自分から勝負を挑んでおいて負けてもペナルティ無しなんて甘い考えでいるんだよ…」


 そういえば確かに決めてなかったかも?

でもそんな事言うのってセバストさんらしくないような…


「くっ…一体何を要求するつもりですか。ま、まさか実の妹にあんな事やこんな事を!?」


「…あのな。オレがそんな要求するわけないだろが…折角お前も喜ぶ内容にしてやろうと思ったのに…」


「喜ぶ?…一体何を…」


「お前、今日から一週間。ジュン様の入浴時に背中を流せ」


「なっ!せ、セバスト!?」


 ああ〜…それは確かにノエラさんが喜ぶ…私もちょっと羨ましい…


「ちょっと待ちなさいよ!罰ゲームなのにご褒美になってるじゃない!」


「そ、そうだ!抜け駆けじゃないか!」


「ダ、ダメよ!ノエラさん!」


「すみません、レティシア様。カタリナ様。パメラ様。兄から妹への結婚祝いの一つと思って見逃してください」


「兄さん…私、兄さんを誤解していました。兄さんは最高です!」


 あー…そこまで手の平を返すんだ…


「待って!ボクの意見はどうなる!?」


「良いじゃないか、ジュン様。どうせもうすぐ結婚式だし。遅かれ早かれだろう?」


「兄さんは最高です!」


「「「「「断固反対!」」」」」


 セバストさんとノエラさんが仲直りして兄妹の仲が深まったのは良いけど…代わりに他の婚約者との溝が深まったような?


 でも一応は…一件落着…かな?



 それからしばらくして。

今日は例のお見合いパーティーの日。

勿論『結婚し隊』の人達も参加してるんだけど…


「ぐっ…がっ…な、何、この臭いはっ…!」


「く、くさい…何これ!」


 『結婚し隊』の人達はキングドリアン討伐の際…キングドリアンの樹液をもろにかぶったらしい…それがとてつもなく臭い。

もうそれなりの日数が経ってるのに、まだ臭い…


「鼻がもげそう…あっ、ハティ!?大丈夫!?」


「……」


 ハティちゃんは気絶…他にも鼻の良い獣人の人達が倒れてる。

既にパーティーどころじゃ…このままじゃ死人が出るかも!


「一体何ですか!これ!貴女達は何したんです!?」


「し、仕方ないじゃないですか!」


「キングドリアンの樹液をかぶったんですよ!もう随分経つのに全然臭いが消えないんですよぉ!」


「キングドリアン…?あ、ちょっ、近づかないで!」


「うっ!?は、鼻を塞いでも臭いが突き抜けて来る!」


「鼻だけじゃなくて眼も!眼も痛い!」


 結局。あまりの悪臭にパーティーは中止。

『結婚し隊』の人達はジュン様が町外れに魔法で作った密閉型ゴーレム砦に隔離になった。


「うわぁああああん!!また婚期逃したー!!」


「今度こそは…今度こそはと思ったのにぃ!」


「それどころか臭い女って街中に広まっちゃったよ!」


「だから行くのやめようって言ったのにぃ!」


「だって…だってぇぇぇ!」


 と、『結婚し隊』の人達は泣き叫んでた。

凄く可哀想になって来た…パーティーに参加してた他の人達にしたら『結婚し隊』の人達は加害者だけど真相を知ってる私達からしたら完全な被害者…


「さて…ノエラ?」


「ビクッ!」


「あの人達…キングドリアンとか言ってたけど?確かノエラが料理対決で出した料理の中にドリアンがあったよね?」


「あったね…凄く美味しいドリアンが」


「……」


「ノ・エ・ラ?」


「はい…」


 結局、洗いざらい全てを自白させられたノエラさんは悶絶擽り地獄スペシャルハードの刑に。

中止になったお見合いパーティーは延期という形になった。

当然『結婚し隊』の人達は参加確定。

それだけじゃなく『ファイブレディ』の人達同様、メイド体験が出来るように。あまりに不憫に思ったジュン様が自分から提案してた。

勿論『結婚し隊』の人達は大喜び。


 でも、それでも結婚出来なかったんだけど…


「「「「「……」」」」」


 背中が凄く悲しそう…『結婚し隊』の人達が幸せになりますように。

 次のお見合いパーティーではいい出会いがありますように。

 心からお祈りしよう…

これにて外伝も終了となります。

今後は登場人物紹介の更新と新作に向けて動く予定です。

もしかしたらまた何か追加で『魔王子様の世直し』を書くかもしれませんが…


新作のタイトルは『剣帝と魔帝を混ぜたら』の予定です。

もしも読む機会がありましたら応援のほど、よろしくお願いします。

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