兄vs妹 8
「ノエラさん、冒険者ギルドから手紙が来ましたよ」
「ありがとうございます、レヴィ」
クレイジーバードの卵を手に入れた日の翌日。
今日は食材集めに出ず一日ゆっくりして身体を休めようとノエラさんがお休みをくれた。
とは言ってもお城の中にいるから、こうやって伝言くらいはやるんだけど。
ノエラさんもはう働いてるし。
「ところで冒険者ギルドからは何て?」
「私が出した依頼が無事達成されたそうです。成果を受け取りに来て欲しいと」
「あ、キングドリアンの実…手に入ったんですね」
『結婚し隊』の人達、成功したんだ。
でま昨日向かったばかりなのに、随分早いような?
「いえ、そちらではなくもう一件の方でしょう。『結婚し隊』の人達は明後日ミースさんが迎えに行く予定ですし」
「もう一件?キングドリアンとは別の依頼を出してたんですか?」
「ええ。ブレイドバードという鳥型の魔獣で…とても美味なんだとか」
「また鳥ですか」
ブレイドバード…聞いた事ない魔獣だなぁ。
「どんな魔獣なんですか?」
「ええと…鶏より一回り大きいサイズで羽やクチバシが刃のように鋭いらしいですね。単体討伐難度Bの魔獣です」
刃のように鋭い…だからブレイドバードって呼ぶのかぁ。
「興味があるなら一緒に受け取りに行きますか?」
「そうですね。折角ですし」
そんな訳で再び冒険者ギルドへ。
受付さんに話をすると依頼を受けた冒険者さんが待ってるらしい。
「何でノエラさんを待ってるんです?こういう場合って、冒険者さんはギルドに預けた報酬を受け取ってそれで終わりなんじゃ…」
「恐らく追加報酬の件でしょう」
「追加報酬?」
…もしかしてアレかな?
『結婚し隊』の人達みたいにお見合いパーティーの優先参加券で釣ったのかな…
「…何ですか、レヴィ…その眼は」
「いえ、何でも。兎に角、冒険者さんに会いましょうよ」
「え、ええ…」
冒険者さんが待ってる部屋に入ると…女性五人組が。
この人達も見た事あるような…
「お待たせしました『ファイブレディ』の皆さん」
「いえ、それほど待ってませんから」
『ファイブレディ』?…あー、思い出しました。
卒業記念大会で『結婚し隊』の人達と一緒にジュン様達に挑んだ人達。この人達にも依頼を出してたんだ。
「貴方達が私の依頼を受けてくださったのですね」
「はい。厳しい競争を勝ち抜いて」
あれ?指名依頼じゃないんだ…というか厳しい競争?
「依頼を受けるのに競争があったんですか?」
「それはもう…この依頼が掲示板に張り出された瞬間、大騒ぎですよ」
「収まりがつきそうにないからギルドマスターがある程度絞って訓練所でバトルロイヤルです」
「えええ…どうしてそんな…」
「そりゃ報酬が破格でしたから」
「報酬が?ノエラさん、そんな大金を?」
「あれ?知らないんですか?お金じゃないですよ」
「むしろ報酬の金額は少ないです。破格なのは追加報酬ですね」
あ、そう言えばノエラさんも追加報酬の件って…一体何を?やっぱりお見合いパーティーの?
「で!何時から私達お城に行けるんですか!?」
「そうですね…五日後。城に来てください。門番には私の名前を出せば通れますから」
「わっかりましたぁ!」
ん?五日後…城に?
「ノエラさん?追加報酬って一体…」
「……一ヶ月間、城でメイド体験を出来る権利です」
「へ?」
城でメイドとして?それってつまりは…ジュン様のメイドとして?
「えええ…それ、ジュン様の御許可は…」
「…問題ありません。エリザ様の御許可は頂いてます」
「えええ…」
でも、なるほどぉ…競争が起きる筈…きっとオカマさん軍団や『ジュン様ファンクラブ』の人達も受けようとしたに違いない…多分、オカマさん軍団はギルドマスターにはじかれたんだろうけど…
「それでは五日後に。メイド服や部屋は用意しておきますが私服や下着類等、身の回りの物は御持参ください」
「「「「「はい!」」」」」
…ほんと、大丈夫かなぁ。
あの人達のキラキラした眼…メイド体験じゃなく、ずっとメイドとして働けるって思ってそう…美人揃いだし、エリザ様は「いいわよ〜」って簡単に言っちゃいそうだけど…
そして夜。
今日もノエラさんと一緒に料理を習う…のだけど。
「我が姉、マリーダ・クアドラと!」
「タ、タマモと!」
「ステファニアと〜!」
「ス、ステンナの!」
「「「「お料理教室!開!催!」」」」
「「「「わー…」」」」
なんか増えてる…教える人も、習う人も。
メリッサ様達はおかしなポーズまでキメてるし。
なんの意味があるんだろう?
「えっと…何故こんな事に?」
「…私達が料理を教わってる事を聞いた人達が一緒に習いたいとマリーダ様に押し掛けたそうです」
「…流石にわたくしとタマモさんだけではこの人数は厳しいので…助っ人をお願いしました」
「はぁ…そですか」
習う側にはイーノ様にカタリナ様、レティシア様にパメラ様。
シャンタル様にエミリエンヌ様…それからクリステアさんやルチーナさん達親衛隊から何人か。
教える側の二人は…ドワーフさん?
「あの、ステファニアさんとステンナさんて、どういう…」
「レヴィは知りませんでしたか?ステファニアさんはジュン様の剣を造った鍛治士でステンナさんはステファニアさんの恋人です。お二人共料理上手だそうですよ」
「ちょっとノエラちゃん?ステンナは私の恋人じゃないわよ。女同士で恋人になるわけないじゃない」
「そ、そうだぞ。おかしな事言うんじゃない…」
…女同士?やっぱりステファニアさんてオカマさん?
「…カタリナ様達はどうして?料理するんですか?」
「ん?まぁ…私達が料理をする機会は少ないとは思うが基礎くらいは学んでおこうかとな」
「それに男は女の手料理が好きらしいじゃない?マリーダだけにいいカッコさせるのもねぇ」
「私は…前々からやってみたいと思っていたので」
「私もパメラと同じですよ、レヴィ殿」
…つまりはジュン様に食べて貰いたい、と。それは私も一緒だけど。
「クリステアさん達は?」
「私は…妹が料理上手なのに姉が全く出来ないなど…あってはなりませんから」
「あの子が私に勝ってるのは胸の大きさだけ!それだけにしないと!」
二人はナターシャさんに対する対抗心、ですか。
まぁ二人もジュン様に食べて貰いたいのは間違いないだろうけど。
だって…
「大変ですね、ジュン様…」
「…今日の夕食は少なめにしましたよ」
味見役としてジュン様が待機中。
それからネスさんが参加してるのでヘンリーさん。
ヘンリーさんに連れられてライリーさん。
後は前回に続きマリーダ様。
…主にジュン様が食べる事になるんだろうけど。
「今日はノエラさんの希望で鳥肉を使った料理という事で、鳥肉と野菜のスープを作りましょう」
「スープか。一度ジュンが戦地で作っていたな」
「アレね。作ってるとこは見てたけど…そんなに複雑な料理じゃなかったわよね」
「そうね。アレならなんとか作れるかも」
と、ヴェルリア王家姉妹は何やら自信ありげ。
「スープ…スープの味付けって、どうやるのかしら?」
「さぁ?あたしもわかんないけど…きっとそれも教えてくれるんでしょ?」
対してセイレン魔王家姉妹は自信なさげ。
やっぱり王族の人って料理が出来ない人の方が多いみたい。
そうして始まったスープ作り。
意外…と言えば失礼かもしれないけど、意外な人が料理の腕前を披露してた。
「あらぁ〜いい筋してるわねぇ、レベッカ様」
「うん。包丁の扱いも上手いし。よく料理するのかい?」
「えへへ…お母さんの手伝いをしてたから!」
元平民のレベッカ様は幼いながらも料理を多少はやってたみたい。
今は野菜の皮剥きの最中だけど…私より綺麗に出来てる。
ちょっとショック。
「ふ、ふん!私だってそれくらい……って、指切ったー!ジュンー!」
「レティシア…余所見するからだ……って、私も切ったー!ジュンー!」
「貴女達…静かにやりなさいな…って、私も指切れたー!ジュンさんー!」
「はいはい」
ヴェルリア王家姉妹の周りは血だらけ…あぁ、野菜まで…勿体ない。
ん?アレはノエラさん?一体何を…
「えっと…ノエラさん?何をやってるんです?」
「御覧の通りです」
「御覧の通り…戦闘準備ですか?」
「いいえ?メリッサ様、野菜をいくつかこちらに投げて頂けますか」
「は?はぁ…」
ノエラさんに言われるがまま、メリッサ様は野菜を投げて…両手に短剣を持ったノエラさんはその野菜を空中で切り刻んだ。
「ふ…如何です?マリーダ様」
「如何ですって…確かに綺麗カットされていますが…」
「なるほど!いまのやり方なら楽にカット出来ますね!流石です、ノエラ殿!」
「待ちなさい、メリッサ。関心しちゃダメよ…あ!クリステアさんも!真似しようとしないで!危ないです!」
確かに綺麗にカットされてるんだけど…皮が残ってる。それにあの短剣って…
「あの、ノエラさん?その短剣って、普段冒険とかで使ってるやつじゃないですか?」
「そうですが?何か問題でしたか?」
「…それで魔獣とか、盗賊…人を刺してるんですよね?それに確か毒も使ってるんじゃ…」
「はい。あ、毒はちゃんと洗い流してますよ?」
「はい、ノエラ。料理にその短剣使うのは禁止。その野菜は勿体ないけど処分で」
「ジュン様!?何故ですか!?」
凄くショック受けてるけど…当然だと思う。
幾ら綺麗に洗い流していても魔獣だけじゃなく人を刺した事もあるし毒も塗った事もある短剣で料理はちょっと…。
ノエラさんの料理の腕前上達はまだまだ時間がかかりそう…




