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兄vs妹 7

「きょほほー!……うふん。作戦成功ざます!」


「…作戦成功?その有様は作戦なのか?」


「酷い姿なの…」


「むむ!?誰ざます!姿を見せるざます!」


 クレイジーバードが走り去った後。

私達が居る木の下まで来たアナスタシアさんは作戦成功と言った。

その姿はティナさんが言うように酷い…頭から足先まで血塗れ。剣も…とても領主の娘なんて立場の人に見えない…


 アナスタシアさんの声に応えて皆、下へ。

お兄さんのザックさんを見ると、アナスタシアさんは警戒を解いた。


「お兄様!?何故木の上に?それにそちらの方々は?もしかしてジュン様の側近の方々ざますか?」


「ああ…うん…そうなんだけどね…」


「やはり!お初にお目にかかります。アナスタシア・ホーフェンざます!」


「…あ。はい。ジュン様付のメイド長ノエラです…」


 流石のノエラさんもアナスタシアさんの姿とさっきの奇行には引いてるみたい…若干距離をとってる…


「どうかしたざますか?」


「…アナスタシア。皆さんはお前のその姿に驚いてるんだよ…何があったんだい?」


「ああ!これざますか!これは森の中でゴブリンの群れを見つけましたので!始末したざます!」


「ゴブリンの群れが?そうか…それは御手柄だったね。発見した群れは一つだけかい?」


 つまりはアレはゴブリンの血…うわぁ…


「はいざます!ですが返り血で血塗れになってしまい…流石に気持ち悪かったのでお兄様と合流して着替えようと思ったざます。ですがその前にクレイジーバードの群れを見つけたざます。そこで、この血塗れの姿が役に立つと思ったざます」


 この森で狩をするならクレイジーバードの卵が目当てだろう、なら先に見つけた事だし確保しておこう。

という事らしい…ざます。


「狙い通り、臆病なクレイジーバードは私の姿にビックリして逃げて行ったざます。今なら卵は取り放題ざます」


「…多分、今のアナスタシアさんなら普通の人は逃げ出すと思うの…」


「だよな…冒険者や騎士でも関わりたくねぇって思うぜ、きっと」


「リリーもそう思うですぅ…」


『うん…だろうね。僕もそう思うよ』


「あら!お褒め頂いて恐縮ざます」


『褒めてないよ…』


 ハート強いなぁ…お兄さんと合流出来たのに着替えようとしないし。


「さあ!クレイジーバードの巣はこっちざます!」


「待った。待ちなさい、アナスタシア。先に着替えなさい」


「そうだったざます!直ぐに着替え…る、前に。お兄様、水魔法で血を流して欲しいざます」


「ああ…はいはい」


 アナスタシアさんは水魔法が苦手らしい。私も苦手だけど。


「ぷうっ…ありがとうざます」


「うん。ほら、これで体を拭いて」


「はいざます」


「ああ、此処で脱いじゃ駄目だよ!お、お前達は後ろ向け!」


 お兄さん以外にも男性が居るのにアナスタシアさんは着替えを始めた。

この場にルシールさんが居たら大喜びしたんだろうな…


「す、すみません。お見苦しい所を…」


「いえ…苦労なさってるようですね。ザックさんは」


「はは……少しだけですよ。ちょっとズレた所がある以外は出来た妹なので…」


「酷いざます。私だってお兄様の御世話をしてるざます。お互い様ざます」


「いや…私が何を世話して貰ったと…」


「お兄様はお寝坊さんざます。今日だって私が起こさないと寝坊してたざます」


「そ、そんな事はないさ。ちゃんと一人でも起きれるさ。私は騎士だぞ?」


「そう言って私が居ない日なんかは遅刻してるのは知ってるざます」


「ぬぐっ…」


「ふふん、ざます」


 兄妹喧嘩はアナスタシアさんに軍配が上がったみたい。仲いいなぁ。


 最初にアナスタシアさんを見た時は変人にしか見えなかったけど、思ったよりまともみたい。


 血を洗い流して着替えたアナスタシアさんは服装こそ冒険者風だけど、とても綺麗な人だ。

長い金髪を一本のおさげにした髪型で、とても柔らかな表情をした人。

ドレスを着たらお姫様に見えそう。

さっきの奇行を見てなければ…


 因みにお兄さんのザックさんも金髪で鎧じゃなくタキシードを着たら王子様に見えそう。


「片や仲睦まじい兄妹と片や絶賛喧嘩中の兄妹、ですか」


「な、なんですか、レヴィ。確かに私は今、兄さんと争ってはいますが喧嘩をしてるわけでは…」


「そうですかぁ?でもここ二日は碌に会話もしてないんじゃないですか?」


「う…だ、大丈夫です。兄妹喧嘩なんてよくあること。今回の件が終われば普段通りになりますから」


「そういうものですか?」


 私は一人っ子だから…その辺りはよくわかんない。

でもジュン様とユウ様は喧嘩した事はなさそう。


「ノエラさんはお兄さんと喧嘩中なのですか?」


「…はい」


「もしかして卵を獲りに来た事と関係があるざますか?」


「ま、まあ…そうです」


「詳細をお聞きしても?」


「……」


 ノエラさんは話すか話さないか、迷ってたみたいだけど一応は協力して貰ってるからか詳細を話し始めた。

改めて聞くと…ノエラさんが悪くてセバストさんは悪くないね、うん。


「なるほど…まぁセバストさんが怒るのは無理無いと思います」


「う…」


「ですがノエラさんの反発もわかるざます。ポンコツメイドというのは余計な一言だったと思うざます」


「そ、そうです。その通りです」


「まぁ、それを考慮に入れてもセバストさんが被害者だよなー」


「セバストさん愛用の調理器具全滅は悲惨なの」


「クーちゃん、お姉ちゃんも…」


「声が大きいよ…」


「ノエラ、大丈夫?」


「絶対に聞こえてましたよ、今の…」


『ちょっと震えてるねぇ』


「ノエラ先輩?大丈夫ですぅ?」


「……」


 明らかに聞こえてたけど…自分でもそう思ってたのかな。

ノエラさんは反論しなかった。


「そうざます!仲直りするならクレイジーバードの卵をセバストさんにプレゼントするといいざます!」


「え?ですが、それでは…」


「問題無いざます!あの群れの中にはクレイジーダイアモンドバードが居たざます!クレイジーダイアモンドバードの卵はノエラさんが使えばいいざます!」


「なるほど、いいかもね。ノエラさん、普通のクレイジーバードの卵でもかなりの美味。食材の差で腕の差を補うというのはわかりますが…セバストさんの愛用の調理器具を破壊してるのであればその時点でハンデがありますし。ここは仲直りの印に…」


「そ、そうですよ、ノエラさん。ギスギスした関係のまま勝負するよりお互いスッキリした気持ちで勝負に臨んた方がいいですよ」


「……」


 ザックさんとアナスタシアさん、それにミースさんの説得にノエラさんも悩んでるみたい。


「…考えておきます」


「ええ。それでは案内を再開するざます」


「…アナスタシア。そっちは私達が来た方向、クレイジーバードが逃げた方だ。アナスタシアが来たのはこっちだよ」


「あ。ちょ、ちょっと間違えただけざます!」


「はいはい…」


「むー…ふん!ざます!」


 ちょっとアナスタシアさんの道案内には不安を覚えつつも…着いた先ではクレイジーバードの巣は無事に発見。

ダイアの卵もあったし、今回の目的は無事に達成した。


「この森には他にも美味なる食材があるざますが…どうするざますか?」


「他にも?どんなのがあるんですか?」


「そうですね…キノコや木の実は勿論、川魚に…ああ、ハチノコもオススメですよ」


「ハチノコ?」


「蜜蜂の幼虫です。ホーフェンの名物の一つです」


「ハチノコなら街でも用意出来るざます。お土産に如何ざます?」


「いい!遠慮する!」


「わたしもいらないの!」


「わ、私も…虫はちょっと…」


「私も…ジュン様も欲しがらないと思います…」


「何故ざます?」


 あー…ジュン様やユウ様、アイ様は虫は苦手みたいですしねー…私は全然平気ですけど。


「お、お気遣いありがとうございます。ですが目的の卵は手に入りましたので、今日はこれで」


「そうざますか。それでは!ジュン様や魔王様に私や兄の活躍をよろしくお伝えして欲しいざます!」


「…はい」


 まぁ…アナスタシアさんは活躍した、かなぁ?一応、多分。

少なくとも話のネタにはなりそう…

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