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兄vs妹 6

「ああ、止まれない♪もう止めれない♪レヴィさんは止めれない♪」


「…新曲ですか?」


「はい!レヴィのテーマver4です!」


「…そうですか」


「何ですか、ノエラさん。その残念なモノを見る眼…」


 何か変だったかな?

我ながらいい出来の歌だと思うんだけど。


 私達は今、森に入ってすぐに会ったザックさん達と一緒に迷子のアナスタシアさんとクレイジーバードを探して探索中。今の所何にも無い。


「王都ではああいう歌が流行ってるので?」


「まっさかぁ〜」


「そんなわけないの」


「流行ってるのはジュン様が作曲した歌ですね」


「レヴィが歌ってる歌は彼女しか歌いません」


「変だもんな」


「そもそも自分の歌とか自分で作曲する人なんていないの」


「酷い!」


 ティナさん達が酷い。

そりゃあジュン様の歌には及ばないのはわかってるけどぉ…


『元気だしなよ、レヴィ。レヴィの歌が人気無いのは今に始まった事じゃないしさ』


「そうですぅ。レヴィの取り柄は元気さですぅ。作曲家の才能じゃないですぅ」


「励ますんならもっと喜べる励ましをしてください!」


 リリーさんにウルさんまで…


「ええと…そ、そういえばジュン様の作曲された曲!アレは素晴らしいですね!私も音楽会に行きましたが…もう一度聴きたいですね」


「ザックさんも音楽会に来てたんですか」


「ええ。私も領主の息子ですから。アナスタシアも行きましたよ。アナスタシアは次の音楽会の開催をずっと楽しみにしています」


「それは…難しいかもしれません。音楽会の開催をジュン様が嫌がっておいでですから」


「えっ。何故です?」


 本当になんでだろ?

ジュン様はどうしてか音楽会の開催を頑なに拒んでる。

それどころかエリザ様がコッソリと開催しようとすると邪魔してる。

あんなに良い歌なのに…勿体ない。


「なーなー、それよりさ。この森にいる魔獣の事とか教えてくれよぉ」


「クレイジーバードの事も、もう少し詳しく教えて欲しいの」


「ああ…まだ話してませんでしたか」


「では私が…コホン。この森は我がホーフェン家が管理を任された森。定期的に調査を行っており、森を荒すような魔獣や危険度の高い魔獣は即排除されます。従ってこの森にいるのは討伐難度D以下の魔獣ばかり。そして一番難度が高いのがクレイジーバードの群れとなります。クレイジーバードの単体討伐難度がD。群れの討伐がCですね」


 群れの討伐でC…昔の私なら無理だったけど今の私なら余裕…かな?


「ふ〜ん…どんな攻撃してくるんだ?」


「クレイジーバードはクチバシと脚の爪で攻撃して来るだけです。脚はそれなりに速いので逃げられたら追いつくのは難しいですが…狙いは卵ですよね?」


「はい。その通りです」


「なら追い払うだけで問題ないでしょう。クレイジーバードは殺さずにいてくれた方が助かります」


「殺しちゃうと拙いんですか?」


「クレイジーバードの鳴き声は我々にとって不快なんですが…どういうわけか強い魔獣ほど不快に感じるらしく。この森に強い魔獣が住みつかない理由の一つになってるんです」


「えっ。それじゃぁ…」


 ハティちゃんには辛いんじゃ…だってハティちゃんはフェンリルだし。


「ねぇ、ハティちゃん。…ハティちゃん?」


「スンスン…見つけたよ、アナスタシアの匂い!こっち!」


「おお!」


 私達はザックさん達と合流してからずっとハティちゃんの先導で移動。

ザックさんにアナスタシアさんの匂いがする物を持ってないか尋ねたら、何故か着替え一式を持ってた。その匂いを辿って移動してたわけだけど…何で持ってたんだろ?


「んん?でも…その前に何か居るかも」


「何かが走り回ってる音と…何かが叫んでるですぅ」


「それって…」


「クレイジーバードじゃないんですか?」


 やっぱり。皆そう思ってるみたい。

ザックさんも頷いてるし…どうやらアナスタシアさんよりクレイジーバードの卵取りが先みたい。


 で。

ハティちゃんの先導で更にクレイジーバードの方へ向かってる途中。

異変が起きた。


「あれ?何か…」


「何かがこっちに向かって来るですぅ!」


「あ、あたいにも何か聞こえる!」


「変な鳴き声が聞こえるの!」


 リリーさんにだいぶ遅れてだけど私にも聞こえる…もしかしてこれがクレイジーバードの鳴き声?


「うわぁ…これは…」


「気持ち悪くなる鳴き声ですね…」


 ノエラさんにミースさんも…ううん、皆辛そう。

特にリリーさんが。ハティちゃんも不快そうだけど、心配したほどじゃなさそう。


「って、それどころじゃなくて!音がだんだん近づいて来てるって事は!」


「クレイジーバードの群れが私達に向かって来てます!」


「何でだよ!」


「わかりません!」


 クーさんの疑問にバッサリと言うザックさん。

でもわからないにしても対処しなきゃ!


「どうしますか、ノエラさん!」


「迎撃するの?」


「待ってください!倒さなくても大丈夫です!此処は森の中ですから!」


「というと?」


「クレイジーバードは飛べない鳥です!ですから!」


 全員で木の上へ登ればいい、と。

ザックさんの意見を採用して皆で高い木の枝へ。

少しするとクレイジーバードの群れが走って行く。


「うう〜…煩いですぅ…」


「どうして鳥が金属と金属が擦れ合うような鳴き声だすんですか…」


 早くどっか行って…!

皆そう思ってるに違いない…!


 時間にしてほんの十数秒だったと思う。

クレイジーバード達は走り去った。

随分長く感じたけど…あれ?


「なんかまだ奇声が聞こえるよ?」


「ほんとだ。でもクレイジーバードじゃねぇよな?」


「クレイジーバードほど不快じゃないですぅ」


「この声は…女性ですか?」


「まさか…」


 ザックさんと部下の人達がいやな予感がする、とばかりに顔を曇らせて。

奇声が聞こえる方を見る。


「きょーほほほー!きょほほー!」


「「「「「……」」」」」


 血塗れになって剣を振り回しながら奇声をあげる女性…もしかしてアレが…


「あのー…ザックさん?」


「…はい、お察しの通り…アレがアナスタシアです」


「「「「「うわぁ…」」」」」


 どうしよう…関わりたくない…

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