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兄vs妹 4

「今日は何処へ何を獲りに行くんですか?ノエラさん」


「…はい。ええと…今日はホーフェンに行きます」


 ミースさんの質問に眠たそうな目をしたノエラさんが答える。

昨日は遅くまで料理の練習をしてたし、私も眠い…


「じゃあ早速ホーフェンに…」


「あ、待ってください。その前に冒険者ギルドに行きます」


「冒険者ギルド?」


「何しに行くんですか?」


「実は昨日依頼を出してあるので、指名したパーティーと会いに行きます」


「指名、ですか?」


 ノエラさんが依頼を…そりゃ冒険者だって依頼を出す事は出来るけど。

察するに食材集めの依頼を出したんだろうけど…どうしてそんな?


 取り敢えずホーフェンに行く前に冒険者ギルドへ。


「おはようございます、ウーシュさん」


「あ、おはよーございまーす!ノエラさん。『結婚し隊』の人達はもう来てますよ。二階の会議室で」


「ありがとうございます」


 『結婚し隊』…?何処かで聞いたような?

それにしても酷いパーティー名…


「失礼します。お待たせしたしましたか?」


「いいや。時間通りだよ」


 会議室の中に居たのは女性五人組。

やっぱり何処かで見たような…


「(ニィナさん。あの人達何処かで見たような気がしません?)」


「(覚えてないの?卒業記念大会でジュン様達と戦って負けた人達。また婚期逃したー!って泣いてた人達がいたでしょ?)」


「(あ)」


 ああ〜…あの人達かぁ。

結構な美人さんの集まりなのにどうしてか結婚出来ない人達。噂では酒癖が悪いとか。

ジュン様曰く、他にも理由がありそうって評価だった人達。


「? 何だい?」


「あ、いえ。何でも」


「そうかい?ま、いいや。仕事の話をしようじゃないか」


「はい」


 ノエラさんが席について話を進める。

内容は予想通り、食材集め。

でも依頼の獲物は想像を超えてた。


「貴女方にお願いしたいのは…キングドリアンの実の採取です」


「ふむ、キングドリアン……は?」


「「「「え?」」」」


「「「「えー!!」」」」


 キングドリアンって、あのキングドリアン!?

私でも知ってる超有名な植物型魔獣!?


「ねーねー。キングドリアンってなに?」


「ハティちゃんは知らないの?キングドリアンって言うのはね…」


 自然界では極稀に野生の植物や動物が魔獣化する事がある。勿論、果物も。

その魔獣化した植物が繁殖に成功するのは更に稀なんだけど…その数少ない例の一つがキングドリアン。

その名前の通りドリアンが魔獣化した存在なんだけど…


「ふうん…強いの?」


「強くは…ないらしいよ?でも…」


「ものすご〜〜〜く臭いんだそうですぅ……その臭さの前には神獣も逃げ出すって言われてるですぅ」


「ええ…」


 うん…リリーさんの言う通り、とんでもなく臭いらしい。フェンリルのハティちゃんがその臭いを嗅げばどうなるか…最悪死んじゃうかも…


「皆はキングドリアンを見た事あるの?」


「あたいはねぇよ」


「私も。皆無いと思うよ?」


「でも有名な実話があって…その昔、キングドリアンの臭いで全滅した軍隊があったらしいよ」


「何でもキングドリアンの臭いで気絶した所を敵対国の軍隊に見つかったとか」


「他にもー…ベヒモスを気絶させたとかも聞いたのー」


「学校の授業で元冒険者の先生からね」


 他にも色々…とてつもなく臭い意外は特に強くもない魔獣で、臭いにさえ耐えれれば新人冒険者にも倒せるらしいんだけど…


「だけど目的は実の採取だろ?つまり倒すにしても実を傷付けちゃならない」


「しかもキングドリアンは数が少ない。少なくともエルムバーンには目撃されてないんじゃないのかい?」


「はい。ですがご安心を。キングドリアンが生息してると思しき場所近くの街までは彼女が転移魔法で御連れします」


「え」


 ああ…そこもミースさん頼りなんですね。

そしてミースさんの顔には「聞いてない」って書いてあるみたい。


「ふうん…場所はどこだい?」


「ヴォルフス魔王国の王都ヴォルフデルクです」


 ヴォルフベルク?カミーユ様達の故郷の…あそこに居るんだ。…なら、ミースさんも転移出来るはず。


「ふむ…で、何で実が欲しいんだい?」


「勿論、料理に使うのです」


「美味らしいですからね」


 そうらしい。魔獣のキングドリアンはとてつもなく臭いけど、その実は一切臭くなく、甘い。

普通のドリアンの良いところだけを取り出して、更に美味しくしたのがキングドリアンの実なんだとか。

私は食べた事も見た事も無いけど。


「で、報酬は?」


「実一つにつき金貨十枚です」


 金貨十枚…流石はジュン様のメイド長にしてSランク冒険者。

金貨十枚くらいなら何でもないのかぁ…でも『結婚し隊』の人達は不満みたい。


「おいおい…そりゃ安く見過ぎだよ」


「キングドリアンは臭いを除けば弱い魔獣ですけど、その臭さだけで討伐難度Sにランク付けされる魔獣ですよ?」


「討伐難度Sの魔獣を狩るのに金貨十枚は安過ぎます」


 あ、そうなんだ…キングドリアンの事は知ってたけど討伐難度Sなのは知らなかった…でも考えてみれば当然なのかな。


「そう仰ると思ってこんな物を用意しました」


「ん?何だい、これ」


「ジュン様主催のお見合いパーティーの優先参加券。五枚あります」


「「「「「!!!」」」」」


 あ。眼の色が変わった。

凄くわかりやすい…


「今回は前回よりも大規模にやるそうですよ。参加希望の受付はもう始まっていますが…参加希望の女性は多過ぎて抽選。普通に応募しても当選する確立はかなり低い。ところで皆様は応募されましたか?」


「した…初日に。でも…」


「募集人数は女性五百に対して既に千人以上が応募してるって聞いた…」


「はい。正確には昨日の時点で二千五百四十二名。期日はまだ先なのでまだまだ増えるでしょう。『結婚し隊』の皆さんが全員そろって当選する確立は…極めて低い。どうです?欲しくありませんか?」


「う、うぅ…」


 モノに釣られて安く引き受けるのがひっかかるのかな…悩んでるみたい。


「因みに。男性の参加者にはジュン様の親衛隊から何人か。それだけではなくジュン様の御知り合い…外国の方も参加されます」


「ジュン様の…知り合い?」


「外国の……それってもしかして…」


「どっかの王族!?」


「もしくは貴族でしょ!だってジュン様の御知り合いとなれば、それなりの身分の筈だもん!」


「だ、誰が来るの!?」


「申し訳ありませんが、誰が参加されるのかは現時点では申し上げられません。ですが私から見ても優良物件だと思いますよ?」


 誰が来るんだろ…わかんないけど、王族や貴族がお見合いパーティーでお嫁さんを見つけたりするかな?


「ど、どうする?」


「受けるしかないでしょ!」


「だな!」


「ヴォルフスまで移動する費用はゼロだし!」


「移動費用がゼロなら金貨十枚でも黒字でしょ!」


「それに討伐難度Sの魔獣を倒せば私達もSランク冒険者になれるかもだし!」


「決まりね!」


「ふふ…では契約成立ですね」


 と、いうわけで。

『結婚し隊』の人達をミースさんがヴォルフデルクに送ってからホーフェンへ。


「あの〜ノエラさん」


「何ですか?リリー」


「良かったんですか?あんな契約…」


「報酬にお見合いパーティーの優先参加券を付けた事ですか?」


「ですぅ…だってあの人達は元々参加が確定して…」


「え?そうだったんですか?リリーさん」


「ですぅ…ジュン様が『結婚し隊』の人達を可哀想に思ってそう指示してたですぅ」


「「「「えぇ…」」」」


 つまり…元々あの人達の当選は確実だったのに、ノエラさんが利用した?

うわぁ…


「問題ありません。ジュン様には御許可頂いてますから」


「で、でもそれジュン様が落選したら可哀想だから渡してあげてって仰っただけで…依頼の報酬にしろなんて話じゃ…」


「…良いですか、リリー」


「は、はい?」


「無償でこんなものを渡せば、あの人達はジュン様に好意を持たれてると勘違いするかもしれません。ですが依頼の報酬にすればそんな勘違いはしないでしょう。つまりはジュン様の為にやった事。故に正当です」


「そ…そうですぅ?」


「そうです」


 そうかなぁ…利用しただけじゃないかなぁ…


「…それに私達だけで食材を集め切るには時間が少々厳しいですし。何よりキングドリアンの相手は私達には…ハティとルーには厳しいでしょう。下手をすれば即死です」


「そ、即死…」


「臭さのあまり即死とか…」


「そこまでやべぇんだな…キングドリアン…」


「怖いの…」


 ハティちゃんは言うまでもなく…犬人族のルーさんもかなり鼻がいい。

確かに私達には難しい相手かも…


「さ、私達は私達で次の食材を集めに行きますよ」


「「「「は〜い」」」」


 何だか誤魔化された気もするけど…『結婚し隊』の人達を利用した事…ジュン様にバレたら拙い事になりそうだけどなぁ…

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