兄vs妹 3
「うまっ!なにこれ!うんまぁ!」
「おいしぃーのー!」
「はぐはぐ、はぐはぐ!」
川から出て来た魔獣…グリーン。
標的を発見した私達は…ううん、リリーさんは即座に弓を放ち、グリーンの頭を矢が貫通。
アッサリと仕留めちゃった。
私も弓は多少は使えるけど…普通はあんなデカい魔獣の頭を貫通させるなんて出来ない。
流石は弓使いとして最高の紋章持ちのリリーさん。
で、仕留めたグリーンを血抜きして解体。
折角だから串焼きにして試食してみることに。
味付けは塩のみなんだけど…めちゃめちゃ美味しい!
皆夢中に食べてる。
「ぷぅ…あぁ美味かったぁ!」
「ほんと!脂ものって口の中で溶けるみたいだったし!」
「ただ焼いただけでこんなに美味しいなら…」
「ノエラさんでも美味しいステーキが作れそうですね!」
「うっ…ま、まぁその為に探して狩ったのですから、そうでないと困ります」
ルーさんに暗に料理下手だと言われて若干ヘコむノエラさん。
でもルーさんが少しトゲのある言い方をしたのにはわけがある。
それは…
「それだけに勿体ないよなぁ。これ」
「黒焦げなの…」
「もはや炭だよね…」
「アハハ…」
「……」
最初はノエラさんが串焼きを作ろうとしたんだけど、何故かノエラさんは火魔法…ファイヤーボールを使った。
結果、グリーンの肉は串ごど黒焦げに。
いくら美味しい肉でもこれじゃ食べられない…で、次は火の扱いに関しては自信のある私が担当に。
で、皆さんのお口が幸せに。
私も料理はあんましだけど…ただ焼くだけなら問題ない。
実際美味しかったしぃ!
「ま、まぁ幸いグリーンのお肉はまだまだありますから…それで、この後はどうしますか、ノエラさん」
と、ミースさんが話題を変える。
少しノエラさんがヘコんでるのを察したみたい。
「今日はこれで帰りましょう。明日は別の場所へ行きます。明日また協力をお願いします」
「「「「はーい」」」」
まだ明るいけど、此処からまた別の場所に行って狩りをするには遅いし、この後はノエラさんと私には用事…ううん、予定がある。
それは…
「『美魔女』こと!我が姉マリーダ・クアドラと!」
「タ、タマモの!」
「お料理教室!開!催!」
「「わー…」」
何だろ、このノリ。
ノエラさんが拍手を始めたから、私も乗っかったけど…
「メリッサ…恥ずかしいからやめて頂戴」
「いいじゃないですか!師匠も似たような事してますし、私も一度やってみたかったんですよ!」
ああ、うん。確かにジュン様やアイ様が似たような事してたかも。
「今日はよろしくお願いします、マリーダ様。それにタマモさん」
「えっと…よろしくお願いします!」
「…ええ、お任せください」
「メリッサ様のノリはよくわかりませんが…お料理をお教えするだけですよね?」
マリーダ様は王族には珍しくとても料理上手。
私も一度ご馳走になったけど、すんごく美味しかった。
タマモさんは親衛隊の宿舎で働くメイドさん。
エルムバーンの北方の村出身で…ずっとジュン様に責任をとって貰う事になってると言ってるけど、未だ認められてないとか。
どんな理由で責任をとってもらうのかは教えてくれない。
ただジュン様はタマモさんの出身地の料理が好きらしい。そしてタマモさんも料理上手だとか。
で、いくら良い食材を集めてもまともに料理出来なければ意味が無い。そこで最低限の腕前を身につける為、ノエラさんはマリーダ様とタマモさんに先生役をお願いして、お料理教室が開かれる事に。
私が参加するのは何となくノエラさんが心配だったから。お料理を覚えたいのも確かだけど。
場所はお城に複数ある厨房の一つ。隣は食堂。
そんな場所でやってるから、とっても目立ってる。
「はて?何の騒ぎでござるか?」
「マリーダ様が料理教室を開くらしい…」
「マリーダ様が?タマモは助手でござるか?」
「さぁ…」
何事かと人が集まってる。
主にジュン様の親衛隊の人達に…あ、お父さんとお母さんもいる。
「レヴィ?あなた何してるの?」
「あ。ハンナさん」
ハンナさんも居たんだ。
ハンナさんは恋人さんとベッタリで、最近はあまり話せてなかったんだけど…近々結婚するらしい。
「カクカクシカジカ。で、私も一緒にお料理を習おうかなって」
「ふ〜ん…あなた、料理下手だった?」
「あんまり自信は無いかなぁ…ハンナさんは出来たよね?」
「ま、人様にお出し出来る程度にはね」
意外と家事万能なんだよね、ハンナさん…
「レヴィさん、始めますよ」
「あ、はい!じゃあね、ハンナさん」
「ええ。折角たから彼と一緒に見学してるわね」
あ、恋人さんも居たんだ。
二人は早速イチャイチャし始めた。ひと目もはばからず
アイ様が言ってたけど、ああいったのをバカップルと言うんだとか。
でも、ちょっと羨ましい…
「では…今日はノエラさんのご希望で、美味しいステーキの焼き方を」
「味見は任せてください!」
今日はステーキを作るみたい。
昼間にグリーンの肉を手に入れたからだろうけど…料理勝負に出す料理の一つはステーキに決定なのかな?
「では料理に使うお肉ですが…先ずステーキに使うお肉は焼く前に常温に戻しておくと良いですよ。その方が表面は焼けたけど、中はまだほとんど火が通ってない、という事態を避けれます。それから塩などで味付けをする場合は焼く直前にーー」
と、教えを頂いてからいざ実践。
使うお肉はグリーンのお肉…ではなく、普通に街で売ってる牛肉。
それをマリーダ様に言われた通りに焼いてみたら…
「うん、美味しいですよ!レヴィ殿!」
「ええ。問題ないですね」
「よ、良かったぁ」
私は一枚目から合格点を貰えた。
ま、昼間も言ったけど火の扱いには自信があるし!
火力調整もなんのその!
「それで…えっと…ノエラ殿?」
「それは一体何ですか?」
「…ステーキ、です。一応は…」
お皿の上にあったのはまたしても黒焦げになったお肉。
マリーダ様がちょっと目を離した隙にこうなってた。
私も自分の料理に集中してたし…
「これは…食べなくてもいいですよね、姉上…」
「そう、ね…これは流石に…食べなくてもわかるわね。あの、ノエラさん?どうしてこうなったのですか?あの火加減で焼いていれば、此処まで焦げることは…」
「その…火力が弱い気がしたので…魔法で…」
「またファイヤーボールを使ったんですか!?」
昼間にも同じ失敗したのに……あ、もしかして昨日の爆発も?
「ノエラ殿…私でもステーキを作るのにファイヤーボールを使おうなんて発想はしませんよ…」
「で、ですが…じれったくありませんか?魔法で焼けば上手くやれば一瞬で…」
「無茶です…魔法の扱い長けた人ほど、どんなに弱い魔法を使ったとしても高い威力になる、だから魔法で手加減は難しいと、ジュン様も仰ってました。ノエラさんも魔力は高いほうなのでしょう?料理に使うのは無茶です…」
「う…」
「ま、まぁ料理に魔法を使わなければいいだけですよ。じれったくても魔法を使わない!それだけですよ、ノエラさん!」
「…はい」
ノエラさん…普段は落ち着いた雰囲気だから気付かなかったけど…実は結構せっかち?
「レヴィさんの言う通りです。料理に魔法を使うなんて一流のシェフでもやってなさそうな事は諦めましょう」
「普通にやれば大丈夫ですよ、ノエラ殿!フツーにやれば!」
「はい…」
ノエラさんの料理修行…思ってたより険しそうかも…




