双剣を求めて 12
ケルベロスが居る山に入って数時間。
襲って来る魔獣は全てミカエルさん達が撃退…私達は殆ど何もしてない。
楽ではあるけど…
「ねぇ、王子。少しくらい私達も手伝った方が…」
「おふ、ほうらなぁ」
「何食べてるのよ…」
「んくっ…サンドイッチだ」
「そうじゃなくて……もういいわ。で?任せっぱなしでいいの?戦闘時はお互いに自由にって話だったけど…私達がどのくらい戦えるのか、見せておいた方が良いんじゃない?」
これまでの戦闘でミカエルさん達の戦闘能力は見れた。アカード帝国のAランクパーティーの中でも上位なだけあって強い。少なくとも私より格段に。
「そうだなぁ…一度くらいはやるべきか。いいよな、爺さん」
「ふむ…ええじゃろ」
「ブロイドはどうだ?」
「…問題無い」
「カトリーヌ、ターニャ」
「良いんじゃないかしら〜?」
「…多分大丈夫」
「よし。なら次に来た魔獣は私達でやるか」
そんなわけで。
次に襲って来た魔獣は私達で対処する事に。
しかし…
「着いたわ」
「「「「「「……」」」」」」
私達が撃退すると決めた後。
一度も魔獣が来る事無く、目的地のケルベロスの巣に着いてしまった。
「…まぁ、考えてみたら当然か。ケルベロスに怯えた魔獣が山を下りてるなら巣に近づく程、他の魔獣には遭遇しないわな」
「そうね…」
「それでぇ…肝心のケルベロスの巣だけど〜…あの洞窟がそうなの〜?」
「…カトリーヌ、アレは洞窟じゃない。ただの巣穴」
ケルベロスはそんなに大きな魔獣じゃない。
普通の大型犬より一回り大きいという程度。
頭が三つある分、もう少し大きく感じるかもしれない。
そしてケルベロスの巣は大木の根本を掘って作った巣穴みたい。今、私達の位置からじゃ巣穴の奥までは見えないけど…洞窟と呼べるほど、深い穴じゃなさそう。
「でもぉ〜オルトロスもいるんでしょ?何匹居るかわからないけど、洞窟じゃなくて穴なら狭すぎるんじゃないかしらぁ?」
「オルトロスは別の巣穴に居るのよ。ほら、あっち」
ケルベロスの巣穴から離れた位置にある、同じような穴。ケルベロスの巣穴より少し大きい。
あの穴に配下のオルトロスが全て居るのかしら?
「ミカエル、どうする?」
「…今現在、巣穴に居るのか、オルトロスは何匹居るのか確認したいね」
「ならガブリエルのアレの出番だな!」
「…そうね、仕方ないわね。あまりパーティーメンバー以外には見せたくなかったんだけど」
ガブリエルさんが魔法で水を出した。
その拳大の水の塊は徐々に形を変えて…鼠になった。
水で出来た透明の鼠に。
「その鼠でどうするの〜?」
「こうするのよ」
ガブリエルさんの水の鼠は普通の鼠と同じように地面を走って巣穴に近づいて行った。
なるほど…アレなら安全に偵察出来るかも。
「アレで巣穴の中の様子が解るの〜?」
「言ったでしょ。私は紋章の力で水場の周りを視る事が出来る。だからこうやって、水で出来た鼠を巣穴に入れれば探る事が出来るってわけ」
「男湯を覗き放題な能力だよな!」
「しないわよ!」
「お、大きな声出さない…」
私達は肉眼で巣穴が見える位置まで近づいている。
ターニャが結界を張って隠れてはいるけど、大声を出せばバレるかも。
にしても…魔法で作った水からでも視る事が出来るのね…斥候や諜報活動には便利ね。私も欲しいかも…
「で?どうなんだよ、ガブリエル」
「もう…居るわ。丸まって寝てるし、薄暗いからよく見えないけどケルベロスで間違い無さそうね。次の穴に行くわ」
水の鼠だから匂いも無く、気配も無いのか。
ケルベロスとオルトロスに気付かれる事無く、巣穴の調査が終わった。
結果、ケルベロスもオルトロスも巣穴に居る事は解った。
「で…オルトロスが三匹、か」
「…やれそうですか?」
「余裕だろ!」
「ウリエルが答えてどうすんのよ」
「でも王子様達は強いんでしょ?魔法使いのアタシにはわからないけど」
「そうだなぁ…Aランクの魔獣が三匹か…私と爺さん、ブロイドで一匹ずつ相手にして、マルレーネ達は援護…という形に出来れば問題無さそうだが…」
「相手は魔獣じゃからのぅ。こちらの思惑通りに動くと考えるのは危険じゃ。安全の為にも策が欲しいとこじゃの」
もしもオルトロス達が王子達を無視して私達の方に来たら…私はともかく、ターニャとカトリーヌがヤバい。
「なら…単純だけど、こんな作戦はどう?」
私が提案した作戦は採用されて、その通りに行う事になった。
作戦の準備に使った時間は僅か五分。
その五分でケルベロス達に気付かれたり、気付かなくても巣穴から出てこないか、不安はあったけど無事に準備は完了した。
「それじゃ始めるわよ!ファイヤーアロー!」
巣穴から少し離れた場所から、ラファエルさんが魔法を巣穴に撃ち込む。
当然、巣穴からケルベロスとオルトロスが出て、外に居る私達に向かって来る。
「んー…山火事にならないように威力控え目にしたから、まるで無傷ね」
「そうね。さて、どうなるかしらね」
巣穴から怒り狂った様子で飛び出したケルベロス達は真っ直ぐ向かって来る。そしてその進路上には…罠が。
『ギャウ!』『ガッ!?』『!』
「よっしゃー!かかったー!」
仕掛けた罠は単純。落とし穴だ。
ターニャとラファエルさんが魔法で掘った、ただ深いだけの穴。
「ケルベロスは掛からなかったけど、オルトロスは二匹落ちた。急拵えな作戦にしては上手くいったね」
「ああ。…いや、そうでも無さそうだな」
「え?」
落とし穴に落ちた二匹の内の一匹が出てきた。一体どうやって…
「まぁ一匹でも無力化出来たなら上々だ。あの二匹は私と爺さんでやる。マルレーネ達は落ちた奴を始末。ブロイドはマルレーネ達を守ってやれ」
「了解じゃ」
「…ああ」
「それじゃあたいらは…」
「ケルベロスの相手ね」
「勢いのまま襲って来るかと思ったけど…来ないわね」
二匹のオルトロスは既に王子達と戦闘中。
だけどケルベロスは唸るだけで近づいて来ない。
「頭が三つあるだけあってオルトロスより賢いのかしらね」
「ならこっちから行ってやるぜ!」
「…ラファエル、ガブリエル。いつも通りに」
「ええ」
「わかってる」
取り敢えず、事前に決めた通りの形へ持って行けた。後は倒すだけ…なんだけど。それが一番大変よね…




