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双剣を求めて 5

「誰も居ないわね…やっぱり」


 盗賊のアジトがある砦跡を発見、皆は少し離れた場所で待機。斥候役の私が様子を見に来たのだけど…


「お帰り、マルちゃん」


「ご苦労さん。どうだった?」


「うん。やっぱり見張りは居ない。地下室への入口も見つけたから、中に入るのは簡単に出来る…とは思う」


 地下室への入口は一見したら只の石畳に見えるよう偽装されてた。

盗賊にして上手い偽装だけど私には解った。

恐らくは土魔法で偽装したんだろう。


「それでどうするの?」


「突撃するのぉ?」


「ああ。女性達が心配だし、私達が捕らえた盗賊達が戻らないのを不審に思ってるかもしれないしな。早めに仕掛けた方がいいだろう」


 情報通りなら盗賊の残りは二十人程度。

それくらいなら私達だけで何とか出来る。


「なら行きましょ。入口はこっちよ…っ!」


「…どうした?」


「…何でもない。野兎が居ただけ」


 さっきは鼠一匹居なかったから驚いちゃった。

白いから雪と同化して気付かなかったのかしら?


 皆を連れて地下室への入口へ。

私の見立てでは間違いないけど…


「此処よ。ターニャ、お願い」


「…うん。此処で間違い無い」


 念の為、ターニャにも探査魔法で確認して貰った。

私も探査魔法は使えるけど、ターニャの方が精度は上だ。


「ついでに盗賊達の様子とかわかるか?」


「…全員、奥の部屋で固まってるみたい」


「全員?二十人全員か?」


「ううん…十人くらいしか居ない。その隣に数人いるのは攫われた女性達だと思う…」


「十人だけ?それに入口付近には誰も居ないという事かの?ターニャよ」


「…うん」


「それは少しおかしいのぅ…外に見張りを立てんのは偽装工作の為にと考えれば納得行くが、入口を見張る者すら居らず、奥に固まってるというのは…」


 まるで私達が来るのがわかってる…待伏せしてるみたい。


「…だとしても行くしか無い」


「だな。ターニャ、此処にもゴーレムを出してくれ。退路の確保だ」


「…うん」


 入口を開けて地下室へ。

階段を二十ほど降りた先には通路があった。

左右には…牢獄がある。


「なるほど。元々は牢獄だった場所をアジトにしてるのか」


「攫った女性達を閉じ込めておくには便利だったでしょうねぇ。…ところでダバちゃん」


「何だ?カトリーヌ」


「ターニャちゃんの話だと、盗賊は十人くらいしか居ないって話だけどぉ…残りの十人は何処にいるのかしら?」


 情報通りなら残り二十人居る筈が十人くらいしか居ない。なら残りは?その答えは多分単純だと思う。


「私達が捕らえた奴等とは別行動の奴等がいたって事だろう。つまりは外だな。最悪挟み撃ちにされるかもな」


「…背後は任せろ」


「お願いねぇ、ブロちゃん」


 ブロイドは『鎧の紋章』を持つ。

私達の中では一番頑丈で屈強だ。背後を護るのは彼が適任だ。


「そろそろ静かに。扉が見えたわ」


「…あの扉の奥か?ターニャ」


「うん…」


「女性達は更に奥の部屋に居るんだな?」


「…多分。探査魔法で個人の特定までは出来ないから、盗賊達に混ざってる可能性は否定出来ないけど…」


「ふむ…なら魔法で扉ごと中を吹き飛ばすのは止めておくか。ターニャ、扉だけを吹き飛ばす程度の威力の魔法で…ん?」


「あ!ターニャ!結界を!」


「放てぇ!!」


 盗賊達が自分から扉を開けて、一斉に弓を射って来た!

やっぱり待伏せされてた!?


「ど、どど、どういう事ぉ〜!!」


「考えるのは後だ!爺さん!」


「おうさ!」


 ゴードン爺さんが牢獄の鉄格子を槍で切断。

全員で牢獄内に避難し、盗賊達の矢の斜線上から退避した。


「ふぅ…皆、怪我は無いか?」


「マルちゃんが脚を負傷したわ。でも大丈夫、もう治したわ」


「ありがとう、カトリーヌ」


 ターニャの結界魔法の御蔭で私が脚に矢を一本受けただけで済んだ。

幸い、カトリーヌが治癒魔法を使えるし、毒矢では無かったみたい。

大事に至らずに済んだ。


「てめぇら何もんだぁ!冒険者か!」


 部屋の中から出ずに一人の盗賊が叫んでる。アイツが頭目かしら?


「お前が頭か?女性達は無事だろうな?」


「お前らが質問してんじゃねぇ!いいか、女共に手出しして欲しくないなら武器を捨てて投降しろ!今なら命だけは助けてやる!」


「盗賊風情が随分強気じゃないか。盗賊の口約束なんか信用する筈がないだろ?ところで…お前達、待伏せしてたとこを見ると私達の侵入に気が付いていたな?それもかなり早い段階に。どうやってだ?」


「ふん!俺様は『獣使いの紋章』を持ってんだ!この周辺の動物達は皆俺様の眼であり耳よ!」


 『獣使いの紋章』…聞いた事がある。

確か自分より弱い動物を従え、その動物達の耳や眼を借りる…いや、共有する事が出来る能力…なるほど、外に見張りは居たのね。


「ほー…お前、紋章持ちか。聞いた話じゃ魔法も得意なんだろ?盗賊にしとくには惜しいくらいに有能じゃないか。騎士団か魔法兵にでも志願すればいいものを」


「……ん?」


 王子が手で作戦を出してる…これは…


「うるせぇよ!てめぇに言われるまでもなく俺はこの国の魔法兵団に所属してたさ!それも副団長だったんだ!だが無能な侯爵家のボンボンが団長になってからがケチのつけ始めだ!散々仕事を押し付けた挙句、てめぇがやらかした失敗の責任を俺に押し付けて追放しやがった!だから俺は!」


「そうかいそうかい。そりゃ気の毒に…なっ!」


「な、は、速っ!」


「ぐあっ!」「ぎゃぁ!」「ひぃあ!!」


 王子が出した指示は「私が突撃する。他は援護」だ。

私が投げナイフ。ターニャとカトリーヌは魔法。

爺さんがちょっと遅れて王子に続いた。

ブロイドは私達の守りだ。

『勇者の紋章』を持つ王子には盗賊が放つ弓矢を防ぐのは容易い。

スピードもあるし、一瞬で突入し盗賊を蹴散らしていた。


「く、くそぉ…」


「生き残ったのはお前だけだ。頭のお前は生きたまま捕縛して冒険者ギルドまで連れ帰ってやる。感謝するんだな」


「ふ、ふざけるな!犯罪奴隷になるくらいなら、いっそ!げぶぅ!」


「…死んで楽になどさせん」


 ブロイドが頭目を殴って気絶させた。

これで依頼は無事達成…あ、いや、まだだったわ。


「カトリーヌ、ターニャ。一緒に来て。攫われた女性達の解放に行くわよ」


「ええ」


「…あまり見たくないけど」


 ターニャの…ううん、皆が予想してた通り。

女性達は陵辱された後だった。女性達は皆、半裸だ。

殴られた跡がある女性も居る。

ゲス共め…!


「…大丈夫ですか?私達は助けに来た冒険者です。立てますか?」


「「「「「……」」」」」


 ダメね…皆、眼が虚ろ…眼に生気が無い。

…やっぱり、あの頭目も殺してやろうか…


「…ターニャ、カトリーヌ。ブロイドに言って暖かい飲み物でも作らせて。それから彼女達に何か着せる物を。この格好じゃ雪山を歩かせる訳に行かないから」


「はーい…」


「…マルレーネは?」


「私は彼女達の身体を拭いておくわ…あ、カトリーヌ。行く前に治癒魔法をお願い」


 カトリーヌの治癒魔法で身体は癒せる。

でも心の傷はそうは行かない。いつか彼女達の傷が癒える日が来ればいいのだけど…

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