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双剣を求めて 2

「カトリーヌ!ターニャ!そっち行った!」


「はーい」


「…見えてる」


 旅を始めて三日目。

今日は街道沿いにある野営地で野営だ。

街道には大概、旅人用に野営用に整地された土地がある。其処を複数の組で利用する事で危険な夜を安全に過ごす訳だ。


 そして私達は近くの森で夕食用に狩りをしてる最中…なんだけど…


「ダバちゃ〜ん。行ったわよ〜」


「よしっ!貰ったぁ!」


 先ず私が獲物を発見して、襲って来たら王子が居る所まで引っ張って行く。逃げたらカトリーヌとターニャが魔法で援護しつつ追い込む。そして王子が仕留める…のだけど…


「ご苦労さん。中々立派な鹿だな」


「晩御飯と明日の朝ご飯くらいにはなるかしらね。…どうしたの?マルちゃん」


「ねぇ…このやり方、私だけ重労働じゃない?」


 引っ張って行くにしろ追い込むにしろ…全速力で走り続ける私は…他の三人に比べてかなりの重労働。

昨日と一昨日は街に泊まったから狩り貼しなかったけど…


「だってぇ〜私とターニャちゃんの脚じゃねぇ」


「…逃げ切れないし、追いかけられない」


「私は走る余計に腹が減るからなぁ。そうなるともっと狩る必要があるし」


「ブロちゃんは食事の用意があるしねぇ」


「…爺さんは?」


「ゴードン爺さんは一人で狩りに行ったぞ…って、丁度帰って来たな」


 槍を片手に持ち、もう片方の手には兎と鳥が。

もしかしなくても槍で仕留めたの?


「戻ったぞい」


「お帰り、爺さん。中々の成果じゃないか」


「槍で仕留めたんですか〜?」


「狩りは昔から偶にやっておったんでの。儂くらいになれば下手に弓や魔法で狩るより効率的じゃて」


 兎はともかく鳥をどうやって槍で仕留めたの?

…まぁ、いいけど。


「で、何だっけマルちゃん?」


「…もういいわ。サッサと夕食の準備をしちゃいましょ。私はブロイドを手伝うから、カトリーヌとターニャは野草や木の実でも探して来て。このままじゃ肉だらけの夕食になるわよ」


「それは困っちゃうわねぇ。行きましょ、ターニャちゃん」


「…うん。果物食べたい」


「あるかしらねぇ…果物」


 今は一月末…この辺りは暖かいけど期待は出来ないかしらね。

ターニャは野草に関する知識が豊富だし、野草は期待しよ。


「爺さんは獲物の解体をお願い。出来るのよね?」


「やれやれ…年寄使いの荒い…」


「お願いね。王子は水を汲んで来て。それから馬の世話をお願い」


「お前…仮にも王子に水汲みと馬の世話なんてやらせるつもりか」


「うっさい。あんたは料理出来ないし、野草を集めるのも無理でしょ」


 働かざる者食うべからず。陛下からも厳しくしていいって言われてるし。

だいたい一番食べる癖に一番働かないとかおかしいし。


「だからとっとと行く!」


「へいへい…」


 さてと…それじゃ私は…


「ブロイド、何したらいいかしら」


「…肉を焼いてくれ。串焼きでいい」


「うん。味付けは塩だけ?」


「…このスパイスも使え」


「りょーかい」


 私もブロイドほどじゃないけど料理は人並みに出来る。

因みにこのスパイス…ヤーマンでは広く使われてるありふれたスパイスだけどブロイドのお手製で普通のより味が濃い。


「……お前も大変だな」


「え?な、何よ、いきなり…」


 料理をしてるとブロイドが話かけて来た。

大変?……お母さんの事かな?


「…母親が亡くなってまだ半年。なのにいつ終わるか知れない旅に同行を命じられた。嫌だったんじゃないのか?」


「…そうでも無いわ」


 去年、長く病で臥せってたお母さんが亡くなった。

まだ四十代で早すぎる死だったけど…姉さんの花嫁姿を見れたのがせめてもの救いかな…


「家に居るとどうしても思い出しちゃうし。他所の国に行ってみたかったしね。丁度良かったのよ」


「…そうか」


「ブロイドこそ、ゲルダ様と一緒に居たかったんじゃないの?」


「…ああ。だが良いんだ。一生の別れじゃないからな。ヤーマンには無い、珍しい花を買って帰ると約束したしな」


「ふうん…」


 意外にマメなのね…もう長い付き合いになるのにブロイドの恋愛面の話なんて聞いた事無かったし。意外な一面を見たわ。


「…お前はどうなんだ?新しい恋は」


「…今はして無いわよ」


「…エルムバーンの魔王子は美少年らしいな」


「え?知ってるけど…それが何よ」


 私達の一応の最終目的地エルムバーン魔王国。

そこの魔王子ジュン・エルムバーンはとても美しく、慈悲深い少年で優秀な冒険者でもあるらしい。


「…お前は顔の良い男に弱いからな。惚れるなよ」


「なっ!何言ってるのよ!惚れるわけないでしょう!?」


「…エルムバーンに行けば会う事になるかもしれん。王子が挨拶に行けば会う事は出来るだろうしな」


「あのね、ブロイド…私、イケメンなら誰でも好きになるわけじゃないから」


「…だがエルムバーンの魔王子ならダーバ王子より良い男と言えるんじゃないか?」


「それ聞いてたの!?」


「…メルセデスさんのマルレーネの方がゲルダより美人だと言っていたのも聞いた」


「あ、アレは姉さんが言ってるだけで私の本心では…」


 ヤバい…やっぱり聞かれてた…


「…良いんだ、わかってる。だが帰ったらゲルダとは仲良くしてやってくれ。きっと驚く」


「わかった……ん?驚く?」


「…ああ。ゲルダは最近漸く化粧をするようになってな。オシャレにも興味を持ち出したし…旅を終えてヤーマンに帰ったらきっと見違える程の美人になってる」


「そ、そう…」


 そうかなぁ…化粧ってそんなに万能じゃないと思うけど…


「マルちゃん、ブロちゃん!ただいま〜」


「…ただいま」


 ブロイドと話してるとカトリーヌ達が戻った。

爺さんも解体が終わったみたいだし、王子はもう休んでる。


「いい匂いねぇ。流石ブロちゃん」


「…もうすぐ出来る。座って待ってろ」


「は〜い」


 料理が出来上がり、食べながら明日からの予定を相談する事に。


「明日の昼には次の街に着くわけだが…その街の冒険者ギルドで何か依頼を受けるぞ」


「どうしてぇ?これまでの道中で倒した魔獣も換金したし、結構稼げてないかしらぁ?」


「ダメだ。全然足りん。というか、それは追加で買った食料やら宿代で消し飛んだしな」


「…王子が食べ過ぎ。ゴードンさんは飲み過ぎ」


「はて?そんなに飲んだかのう?」


 ボトルで十本は空けてたわね…今更驚かないけど。


「ま、だから次の街では冒険者ギルドで少し金を稼ぐ。それと剣の情報を集める」


「どうして次の街なの〜?」


「これまでの街でも情報は集めてけどな。次の街がこの辺りでは一番大きな冒険者ギルドがあるんだ。その分、情報は集まるし身入りの良い依頼も多い。少しは稼げるだろ」


 私達はまだCランク。昔から小遣い稼ぎにと王子に付き合って冒険者の真似事をしてはいたけど…王都以外で依頼を受けるのは初めてね。

ゴードン爺さんは若い時は冒険者として活動してたから一人だけAランクだ。


「ふ〜ん…ねぇ、その街には何日か滞在するのかしら?」


「ん?まぁ受けた依頼次第だが…何故だ?」


「何日か滞在するならクッションを作りたくてぇ。長時間馬車に乗ってるとお尻痛いんですもの」


「ああ…自分で作るのか?」


「売ってるのを買ってもいいけどぉ。自分で作った方が安く済むでしょ?人数分作るからぁ」


「え?私達のも作ってくれるの?カトリーヌが?」


「どうして意外そうな顔するのぉ?むしろマルちゃんの方が死活問題なのにぃ」


「私が?問題って何よ」


「だって〜マルちゃんのお尻が傷だらけになったらマルちゃんは何処で男性にアピールしたらいいのぉ?」


「大きなお世話よ!色々あるわよ!」


 手料理とか気配りとか!

それに美脚だし!あと…そこそこ可愛いし!?

む、胸だって無いわけじゃないし!


「なるほどな。それは大問題だな。よし、その件はカトリーヌに任せた」


「は〜い、任されましたぁ」


「…良かったね、マルレーネ」


「ちっとも良くない!」


 何なのよ何なのよ!

皆して…まるで私に魅力が無いみたいに!


「純粋に心配してるだけよぉ?マルちゃんが悪い男に騙される前に良い男を捕まえて欲しいだけぇ」


「…過去を振り返ると不安しかない」


「う…」


 言い返せない…確かに私が好きになった男はろくでなしばかりだったけど…


「じゃ、マルちゃんの恋は皆でフォローしましょうね〜」


「…頑張って、マルレーネ」


「…うん」


 正直そっとしといて欲しいけど…でも今は好きな人居ないし、いいかな。

好きにさせておこう。その内に飽きるでしょ。

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