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最終話 魔王子様の世直し

「お、お兄ちゃん!お兄ちゃん!」


「ジュン!生きてる!?生きてるよね!」


「ジュン!は、早く治癒魔法!」


 ……ん?あ、身体の支配権を取り戻せたか。

なら…エロースは…どうなった?


 それに…皆、来てるのか。何で泣いてるんだ?

よく分からないけど、取り敢えず…


「え?お、お兄ちゃん?」


「ジュン?」


「ジュン…なの?」


 取り敢えず、ユウとアイの頭を撫でてみた。

アイシスは…混乱してるのかな。ボクが誰だか解ってない?


 いや…そうか。

ボクがエロースに乗っ取られてから会ってないから、ボクをエロースだと思ってたのか。

 

「うん。ジュンです」


「ほ、本当に?」


「お前が本当にジュンなら…わしの質問に答えてみろ。お前の婚約者の中で一番スタイルが良いのは誰だ?」


「もっと他の質問無かったんですか、パパ上…シャンゼ様ですね。最近ではリヴァさんが同率一位でしょうか」


「ジュン君!貴方は間違い無くジュン君だわ!」


「主のスケベ!でも主っぽい!」


「まだ判断するのは早いわ、シャンゼ。じゃあ次は私からの質問よ。貴方の婚約者の中で最年少は?」


「ベルですね」


「ブブー!カミーユの方が誕生日遅いから最年少はカミーユですー!」


「勝手にカミーユさんを婚約者に加えないように」


 しかし…何なんだ。

皆、泣いてるし…ベルとパメラさんはボクに治癒魔法を掛け続けて……ああ! 


「だ、大丈夫!この剣はボクを貫いているように見えるけど実際は刺してないから!ほら、血も出てないでしょ?」


「…ほ、本当に?」


「何とも無いんですか?」


「はい、この通り」


「もしかしてお主…自力でエロースから身体を奪い返したのか?」


「はい…って、あれ?その声とその硬そうなお尻をした姿…フレイヤ様?」


「うむ。わしじゃ…って、硬そうなお尻ってなんじゃい!あ、あれか!アフロディーテが言った事真に受けとるのか!硬くない!わしの尻は硬くないぞ!ほれ!触ってみぃ!」


 どうやら本当にフレイヤ様らしい。

そう言えばエロースがそんな事言ってたような。

…エロース?


「そうだ!エロースは!?…って、どあわおう!?」 


「お、お兄ちゃ…ぶっ!」


「ジュ…ふが!」


「ジ、ジュン様ー!」


「し、師匠ー!」


 ノエラが抱き着いて来たのを皮切りに。

皆が一斉に抱きついて来た…だが当然全員は無理なわけで。


「お、重い!流石に全員が乗ったら重いよ!」


「ぐ、ぐるちぃ…あんた達…どぎなざい…」


「じ、じぬー!」


 ボクの傍に居たユウとアイも苦しそうだ。

次に治癒魔法を掛けてたベルもヤバい……お?

急に軽くなった?


「全く…皆、落ち着かないか。感動の再会で婚約者を圧死とか。笑えないぞ」


 そうか、カタリナさんの『重力の紋章』で軽くしてくれたのか…


「何よ、姉さんだって抱きつこうとしてたじゃない」


「ん。カタリナ様は出遅れただけ。私と同じ」


「うるさいな!ほら、皆取り敢えず一旦離れないか。まだ全て終わったわけではないんだろう?」


 そうだ、エロース!エロースが見当たらない…一体何処に?


「ジュン。エロースならまだお主の中じゃ。酷く弱っておるようじゃがの。どれ…」


「何を…えええ!?」


「手がジュン様の中に入っちゃったですぅ!」


 そして…フレイヤ様の手がボクの身体から出た時、一緒に引っ張り出されたのは…エロースだ。胸から血を流してる。


「アレが…女神エロース?」


「男じゃないか」


「エロースは女神でもあり男神でもある。コイツは間違い無くエロースじゃよ。のう?」


「ぐっ…フレイヤ…」


 心臓を貫かれても生きているのか…いや、そもそも神様に心臓があるのか定かじゃないけど。


「ジュン…な、何故お前は無事なんだ?自分で自分の身体を刺したのに」


「この剣は【アトロポス】。能力は選択。お前だけを斬るように選択しただけだ。自殺するつもりなんか無かったからな」


「【アトロポス】…そうか…いや、それでもおかしい。あの一瞬、確かにまだ僕はお前の身体の支配権を奪えてなかった。だがお前の身体の中に居た以上、お前と同一人物と言える筈だ。お前に何の影響も出ないなんて事は…」


 …そうなのか?そう言われればそう思えてくるが…


「…お兄ちゃん、アレは?まだ持ってる?」


「アレ?」


「ほら、聖女の」


「あ」


 聖女のお守りか。

一度だけどんな災いからも護ってくれる……って、無いな。


「無い…消えてる」


「つまり…そういう事ね」


 つまり…聖女のお守りが無かったら、ボクは死んでいたかもしれない、と。……ダメじゃん【アトロポス】…


「…そう、か…どちらにせよ、僕の長年の計画はおじゃん、か…」


「…そういう事じゃ。覚悟しておけ。天界で貴様に振り回された神々が手ぐすねして待っておるぞ。のう、アフロディーテ」


『ええ、そりゃあ、もう!お仕置きの準備は万端よ!サッサと天界に送って頂戴、フレイヤ』


「うむ。じゃがその前に…ジュン。何か言いたい事はあるか?他の者も。何か無いか?」


「「「「……」」」」


 言ってやりたい事…沢山ある気がするけど…でも一つだけにしよう。


「エロース…神様なんてさ、基本は見守るだけでいいんだよ。時折、気まぐれに手助けするとか…結婚を祝福するとか。その程度でいいんだ。神様が直接手を出して世直ししようなんて…大きなお世話なんだよ」


「あたし、難しい事はわからないけど…強い力を持つ者は使い方をよく考えなきゃいけないってお母さんが言ってたよ?神様なら尚更だと思うんだよ?」


「……ふん。まさか我が子だけじゃなく、狼に説教されるなんてな」


「ジュンはわしとエリザの子だ。自分の子のように言うのは止めてもらおうか」


「それに…我が子と言うなら、子を困らせる事をしてはいけないわ。……何かしら、ジュン?その眼は」


「ママ上に言えた事じゃないなーと思いまして」


「んまっ!散々心配させておいて何を言うのかしら!私達がどんなに心配したか!」


「…解ってますよ」


 皆、涙の跡がある。セバストやパパ上ですら。

落ち着いて辺りを見回したら親衛隊も皆いるし。

皆が心配して来てくれたなら、本当に嬉しく思う。


『もういいかしら?』


「待ちなよ、アフロディーテ。僕からも言いたい事があるんだ」


「あ、あれ?」


「いつの間にか女性に…」


「こっちの僕の方が僕は好きなんだ。そんな事より…ジュン、僕のやり方がダメだと言うなら、君はどんな方法を取るんだい?」


「え?」


「例えば君が神様だとして。君なら世界をどう変えるんだい?」


「ボクなら…」


 ボクが神様になったとして?…世界を変えるとしたら?


「…世界中の人に、ほんの少し優しくなってもらう、かな」


「ほんの少し優しく?そんな事で世界が変わると?」


「少なくとも世界は良い方向に進むんじゃないかな」


「ほんの少しじゃなく、もの凄く優しくなる、の方が良いんじゃないの?」


「優し過ぎても、問題になる気がするからね」


「…どういう事だい?」


「…例えば動物や魔獣を殺すのが出来なくなったり…終いには植物だって生きているんだって言い出して何も食べる事が出来なくなったり、とかさ」


「いやいや…ジュン。それは些か極論に過ぎるだろう」


「そ、そうですよ、ジュン殿」


「そうですかね?十分に有り得る話だと思いますよ」


 今現在でも、凄く優しい人は居るんだ。

そんな人が更にもの凄く優しくなったら?

少なくとも狩りが出来なくなる人は続出すると思う。

そうなったら…色んな問題が出て来るし。

戦争は無くなるだろうけどさ。


「ほんの少し優しくなるだけ……それが君の世直しなんだね。なら、そうすると良い」


「…何?」


「エロース!お主、まだ!」


「慌てなさんな。僕はもう君達に抵抗する力も意思も無いよ。だけどさ、世界を変える…その下準備。それは残ったままなんだよ?」


「それって…」


 世界樹と化身のクローンの事か。

確かに…エロースの世直しは止めても、世界樹とクローンは確かに存在してる。どうしようか…


「フレイヤ様、世界樹とクローンを天界に連れ帰ったりは?」


「不可能では無いが…」


『止めておいた方が良いわよ?もうその世界樹、その大陸にしっかり根付いちゃってるもの。今、回収すれば被害は最小限で済むとは思うけど、周辺の街や村は移住を余儀なくされるのは間違い無いわね』


「逆に世界樹がこのまま此処に存在したら。この辺りは緑豊かな土地になる。湖だった部分も少し残ってるからね。水不足になる事も無いだろうさ」


 …世界樹はこのままにしておくのが無難という事か…


「それで、だ。ジュン、コレを」


「…コレは?」


「僕が長年貯めた神力が込められた宝玉さ。それを使って世直しをしてしまうといい。そうでないと残ったままの下地を使って、他の神が何かしないとも限らないしね」


 そりゃあまぁ…確かに?…やるしかないのか。


「ああ、そうだ。世界中の人間がほんの少し優しくなるだけ、を願ったら宝玉の神力が余るまくるから。他にもいくつか変えた方がいい」


「…神力が余ってると、どうなる?」


「君の意に反してもの凄く優しくなるかも。ああ、その願いだと肉体や体調には大きな変化は出ないはずさ」


「ううむ…そう言われても思いつかないな…」


「生まれて来る子供が健康で丈夫になる、とか。どうですか、ジュン様」


 なるほど、それはいいかもしれない。

病弱だったレヴィさんらしい意見だ。


「じゃあ…僕の胸を大きくするとか…出来ないかな?」


「…私の胸もついでに出来ませんか…」 


『マスター…ノエラはん…』


「…その御願いは残念ながら却下です」


 まだ諦めてなかったのか…二人だけじゃなく、ルチーナにレティシア。ユーファさんとフィービー。メリッサとマリーダさんもか。メリッサが気にしてるのはちょっと意外。


「健康にするというのもほんの少しにするならまだまだ神力は余るよ。何せ僕が数千年掛けて貯めた神力だからね。フフン」


「自慢げに言うな、バカもんが。しかし世界の影響を考えるならそれ以上は止めた方が良いじゃろうな」


「…じゃあどうするつもりなんだい?フレイヤ」


「余分な神力はわしが吸い取ってやる。呼び寄せた百万人を元いた場所へ送るのに使えるからの」


『エロース、貴女。そうやって徐々に変更点を増やして結局は大幅に世界を変えさせようとしたでしょ』


「ちぇ…」


 …それが狙いだったのか。抜け目の無い奴。


「…それで?どうやるんだ?」


「あの子に宝玉を当てながら祈れば良い。サポートはフレイヤがやってあげなよ」


「なら、わしがやった方が早いじゃろう。ジュン、宝玉を渡すがよい」


「……不安極まりないので、止めておきます」


「何でじゃ!?」


「アフロディーテ様も、天界からサポート出来るならお願いします」


『え?あ、はいはい』


「お願いね、ママ!」


「少しは信用したらどうじゃ!」


「信用と信頼ってこれまでの積み重ねですから」


「…ジュン様にここまで言われるって事は、よっぽどやらかしてるんですねー」


「ジュン様がここまで言うのは珍しいの!」


「あたいでもあそこまで言われた事ないぜ?あの人、神様なんだろ?あれでもさ」


「き、聞こえちゃうよ、クー。色々やってたし、神様なのは間違い無いよ。…多分」


「ニィナも結構酷い事言ってるよ…同意だけど」


「誰も味方せんのか!?」


 アイとユウは勿論、リヴァさんすら信用してないしな。

もっとも、一番の理由は神様と人間の感覚のズレの大きさだ。

神様にとってのほんのちょっとはボク達にとって大き過ぎる変化になるかもしれないのだから。


「ジュン、早く済ませて帰ろ?」


「そして国を挙げての祝勝パーティーよ!あ、今日を国の記念日にしちゃいましょ!」


「いいな、それ。そうしよう」


 …出来れば止めて欲しいけど…仕方無いか。

兎に角、早く済ませて…


「……」


「どしたの?お兄ちゃん」


「あ、また裸だから触りにくいとか?」


「いや…クローンの眼が開いてる」


「え?あ、ほんとだ」


「でも…何も反応もしないね」


 そう言えばこの子には感情が無いんだったか。

それに…世界樹をこのままにしておくという事は…この子はどうする?


「フレイヤ様、世界樹はこのまましておくとして…この子はどうします?」


「ん?当然、この世界に居てもらう事になるが?」


「この状態で、此処にですか?」


 こんな自分の事を何一つ出来なさそうな状態で?

此処にはグリムモアと違ってエルフの国も街も無い…

此処にほったらかしにする訳には…


「…なら、その子に感情を与えてやればいい。世界を変えるついでにさ」


「そんな事も出来るのか?」


「加減を間違えたら情緒不安定になりやすかったり支離滅裂な事しか言えない人格障害になったり多重人格になったりするからね。気を付けるんだよ」


「……どう気を付ければ?」


 そんな事言われても…初めての試みで全く自信なんてないのに。

しかも一発勝負なんでしょ?


「心配するな。それもわしがサポートしてやる」


「…アフロディーテ様もお願いしますね」


「いい加減泣くぞ!?」


『わかったからサッサとやっちゃって。他の神様も待ってるんだしぃ』


 何もしてない神様に文句を言われる筋合いは無いが…仕方無い。

覚悟を決めよう。


「…始めます」


「うむ」


「…」


 クローンと宝玉が光り始めた。

この状態で…願えばいいのか?


 世界中の人々が今よりほんの少し優しくなりますように。


 生まれ来る子供達が今までより丈夫で健康な身体で生まれて来ますように。


 目の前の女の子に感情が芽生えますように。


「……終わった?」


「…うん。終わったよ」


「え?え?もう終わったんですかー?」


「何にも変わってない気がしますぅ」


「当たり前じゃ。ほんの少しじゃからな。今までが100だとしたら101くらいにしかなっとらん筈じゃ」


『そうね、そんなとこね。ほんの少しってこれくらいよね?」


 どうやら上手く行った…かな?検証のしようが無いし暫くは様子を見るとして…


「お兄ちゃん、クローンは?」


「わからない。今は眠って…あ、目が覚めた?」


「ん…」


 喋った?もぞもぞと動き出してるし…さっきまでの空洞のような眼も今は光を帯びてる。成功……したのかな?


「…おはよう。お父様」


「へ?」


「お父様…って、お兄ちゃんが!?」


「…どうやら感情を与えたジュンを父親として認識したらしいね。でも、おかしいな。感情は芽生えてもこの世界の常識とか知識とか。一切無い筈なんだけど」


「ああ、それはわしがサービスで与えておいた。こんな大きな身体して中身が赤ん坊じゃあのう。気が利いたじゃろ?フフン、褒めていいんじゃぞ?」


「「「「余計な事すんな!!!!」」」」


「ええ!?何でじゃ!?」


 いや…うん。どうだろう。気が利いてるっちゃ利いてるんだけど…結果ボクをお父さん呼ばわり。

うう~む…正解は正解なんだけども…


「まぁ~いいじゃない。ほら、女の子をいつまでも裸にさせてないで。この子はエルムバーンに連れて帰りましょ♪」


「はぁ…そうですね。でも、お母さんは何でそんなに嬉しそうなんです?」


「だあって~ジュンの子供って事は私の孫でしょ?初孫よ、初孫!」


「……血は繋がってませんけどね」


確かにそうなるけども。ボクの子供として引き取るのは確定なんですね。


「そんなのいいの!私に孫が出来た!それが重要なの!さぁさ、この子に名前を付けてあげなさい!クローンなんて呼んでないで!」


「名前…」


 魂に名前は…無いか。となると…何かいい名前は…


「イルミンスール、なんてどう?お兄ちゃん」


「イルミンスール?どういう意味?」


「(現代地球の神話で世界樹の別名みたいなもの)」


 そんなのあったのか…知らなかった。

イルミンスールね…ふむ。


「じゃあ君の名前はイルミンスールだ。どうかな?」


「…わかった。私はイルミンスール。イルミンって呼んでね」


「…早速の愛称ですか」


 感情と知識を与えられたばかりにしては…本家本元の世界樹の化身よりは感情豊かなのだろうか?


『もういいかしらぁ!?いい加減エロースを送ってくれない!?』


「お、おう。アフロディーテも御怒りじゃし、良いなエロース」


「うん。……それじゃあね、ジュン。幸せになるんだよ、愛しい我が子よ」


「…ああ」


 最後までボクを自分の子供扱い、か。

まぁいい。もう会う事は無いだろうから。


「行ったか……それじゃ帰りましょうか。送ってくれるんですよね、フレイヤ様」


「ちょっと待て、ジュン。女神エロースの最後の言葉はどういう意味だ?」


「愛しい我が子って…ジュンは私達の子よね!?」


「…そういやぁ緊急事態だったから詳しくは聞かなかったが…エロースがお前に拘った理由はなんだ?」


「あ、あ~……それはですね……」


 どうしよう。どうやらエロースが語った初代魔王とボクの関係は伝わってないらしい。


 知らないなら知らないままで居てほしい。

特にママ上には知られてはいけない。何とか誤魔化す方向で…


「…よくわかりませんが、何故か最初からエロースはボクの事を子と呼んでましたね」


「嘘ですね。ジュン様は隠し事をして…モガッ」


「何でもかんでも暴けばいいってもんじゃないんですよ、マリーダさん?」


 全く…勘弁して欲しい。


「…ジュン?お母さんに隠し事は感心しないわよ?」


「お祖母ちゃんも、孫に隠し事されるなんて悲しいわぁ」


「…ボクの前世がエロースの眷族だったらしいです。そして……何でもボクの前世では妻が沢山いたらしいです。で、今のボクの婚約者の殆どは前世でもボクの妻だったそうですよ」


「な、何!つまり私の前世はジュンの妻だったと!?」


「わ、私もですか!?私もですよね!?」


「ジュン!私はどうなのよ!」


「一人一人の確認はしてませんから、カタリナさん達がどうだったかはわかりませんね」


 苦肉の策…出来ればこれも伝えたくなかった。だがしかし…


「私の前世が…私と師匠はやはり運命の二人なんですね!」


「わたくしもですよね」


「わたしもなのー!」


「あたいもそうだよな、きっと!」


 取り敢えず、話を逸らす事には成功したか。

マーヤさんとかカミーユさんとかもそうだって話は伏せておこう。

あの時、あの場にいた皆にも口止めしとかないと。


「ま、帰りましょう。そして祝勝パーティーです。フレイヤ様」


「うむ。では行くぞ」


 フレイヤ様の力で、全ての人は元の場所へ送り帰らされた。

その後、各国の代表者達を集めて祝勝パーティーに参加してもらった。


 勿論、助けに来てくれた人は全員参加してもらいたかったが…流石に百万人も招待は出来ないので、フレイヤ様の力でボクの言葉を届けてもらった。

あとは後日何処かで会った時に改めて御礼を伝えたいと思う。


 そして数日後、荒地の世界樹についてエルミネア教国、ドネール王国、ポーンド王国で話し合いが行われた。

ボクが参加した理由はイルミンスールがボクをお父様と呼んで懐いているから。それとご意見番として…というか絶対に参加させろとテレサ様から打診されたので送迎をボクが担当したからだ。


 結果から言うと、あの世界樹の周辺は三国で共同管理の中立地帯とし、世界樹を護る為に街を作る事になった。そして世話役としてテレサ様を始めグリムモアからの移住者が街を治める代表となる事に決まった。


 周辺三国の中から代表を決めなくていいのかとも思ったが、それをすると代表となった者の国の影響力が強くなる為、中立地帯の街としては好ましくない、という事だった。

実質、グリムモアの飛び地なったと言えなくもないが、かなり遠方の土地になるため、受ける影響は小さいだろう。

テレサ様達は世界樹の世話役になりたいだけで、おかしな野心は持ってないし。


 だが、新たな世界樹の世話役に決まったテレサ様からのイルミンスール…イルミンの引き渡し要求が凄い。毎日何回も魔法通信が送られてくる。

ボクも本体とこんなに離れても問題無いのか心配になったが、本人曰く問題無いらしい。

グリムモアの世界樹の化身、ユグド・ラ・シルも同じように離れる事は可能なのだとか。


 だけどイルミンはボクから離れるつもりはないらしい。

あれから毎日、ボクにピッタリと付いてくる。

そこでセフィさんがイルミンの面倒を見ると言い出した。

間違い無く、エルムバーンに滞在するための口実だ。

実際に世話をしてるのはパルヴィさん達だし。


 兎に角、これでバカ神ことエロース関連の事は全て終わり。

前世…いや、初代魔王から続いた因縁もこれで消えたわけだ。

世界の何処かで起きてる異変の情報を集めたり確かめに行く旅をする必要も無くなったわけだ。

ま、冒険者として旅をするのは楽しいし、それは続けるとは思うけど。


「で?何故まだ此処に居るんですか、フレイヤ様」


「もうすぐウチらの結婚式だから、参列して行くつもりなの?」


「こんなんでも女神様だし、周りには自慢出来そうだけどね」


「こんなんて何じゃい!お主らはもうちっと神様を敬わんか!」


「それで?何でなんです」


「…ふんっ、いつか罰が当たるぞ。……で、わしが此処に留まってる理由じゃが…実はの。わし、暫く下界に留まる事になったのじゃ」


「はい?」


「どゆこと?」


「神が依代を介さず下界に顕現すると世界にどんな影響を与えるか解らない、それは禁忌じゃという話はしたな?」


「ああ、うん。あったわね、そんな話」


「で、わしとエロース。二人の神が禁忌を破ってこの世界に来たわけじゃが…どんな影響が出てるかわからんから、暫くは下界に留まって様子を見るように言われたのじゃ。天界の懲罰委員会に、禁忌を破った罰としてな」


 懲罰委員会て。神々にもそんなのあるのか。

神の罪に罰を与える者は存在したのか…いやいや、それよりも、だ。


「もしかしてその間、ずっと此処に居るつもりですか」


「嬉しいじゃろ?依代用のボディは近い内に届くから心配いらんぞ」


「…まぁいいけどね。滞在費とか払いなさいよ」


「な、何?金を取るのか?女神から?」


「働かざるもの食うべからず、よ。基本でしょ」


「そ、そんな堅い事言うな。わしとお主らの仲じゃろ?」


「ウチらとフレイヤの仲?何だっけ?」


「この世界で言えば冒険者と依頼主に例えるのが近いんじゃない?あ、そう言えば何の報酬ももらってないわね。寄越しなさいよ」


「お主らはほんとーに神に対して遠慮の欠片もないの!」


 まぁ…こうして目の前に存在すると女神様っぽくないしね。ありがたみが薄れるというか…


「…全く。それで話の続きじゃがな。わしとエロースが与えたこの世界の影響が出てる思しき場所、異変を確認したらお主らに動いてもらいたいのじゃ」


「はい?」


「それってつまり…」


「また私達にあんた達の尻拭いをしろって事?」


「そ、そんな怖い顔しなくていいじゃろ。仕方ないのじゃ。わしが直接動くと、また影響を与える事になるからな。お主らに動いてもらうしかない。あ、安心せい!なにもタダ働きさせようと言うのではない。アフロディーテやイシュタルに言って天界から何か贈らせるし!あ、何だったらジュンにはわしを抱かせてやってもいいぞ?」


「…殺されますよ?ボクも、フレイヤ様も」


 ほぼ確実に。マリーダさんが居る限り隠し事も出来ないし。浮気即死罪になるのは間違いない。

いや、バレなければ浮気するつもりってわけじゃないけども!


「ま、まぁ、すまんが頼むぞ。この世界の為じゃし、な?」


「……仕方ない、ですね」


「ま、冒険者として世界を旅するのは楽しいし、いいんじゃない?」


「まだ暫くは、お役御免とは行かないみたいだね、お兄ちゃん」


 どうやらそうらしい。

ボク達の世界に起きた異常と異変を調べて解決する仕事はまだ終わらないらしい。


「でも、先ずはボク達の結婚式、だな」


「うん!今度こそ結婚する!」


「幸せになろうね、お兄ちゃん」


「皆一緒に、ね」


 そう、今度は幸せになろう。皆で、一緒に。



*

*

*



 そして、結婚式当日。


「お~い、エリザ。そろそろ時間だぞ」


「もう少しだけ待って。今いい所なの」


「また小説を書いてるのか?今日はジュンの結婚式だぞ?」


「わかってるわよ。でも、もう少しだけお願い」


「随分熱心だな。どんな内容なんだ?」


「ジュンのこれまでの活躍を記した自伝よ」


「お前が書いたら自伝とは言わないんじゃないか…」


「細かい事はいいの。これは間違いなく私の最高傑作になるわ。タイトルはそう…」


「タイトルは?」


「魔王子様の世直し、よ」

「魔王子様の世直し」これにて完結です。

初めて投降した日から約一年と半年。

一日一話更新、思いついた話は全部書く、完結まで持って行く、を目標に頑張って来ました。

残念ながら病気で一週間ほど更新出来ない日があった為に一日一話更新は達成できませんでしたが、後の二つは何とか達成出来ました。


 自分で書いて改めて思うのは小説家になろうに投降してる作家さんは皆凄いなぁと。

特に働きながら複数の連載を続けてる人とか…本当に凄いと思います。

私も仕事をしながら書いてましたが、一日一話の更新が限界です。

それもかなり大変でしたし…複数の同時連載なんてとても無理ですね。


 今後は誤字脱字の修正と細かな追記と登場人物紹介の更新。

外伝のストーリーを投降するつもりです。


 次回作の構想もありますが…暫くはゆっくりします。

取り合えずはクリアしてないゲームをやりたいな、と。


 それでは、もし次回作でお会いしましたらよろしくお願いいたします。


 最後まで読んで頂きありがとうございました。

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