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第576話 神様の世直し 21

 此処は…何処だ。

必死に何か…よく解らないモノにしがみついていたけど…もう、限界…


「…くっ…あ…あぁ!…ハァッハァッ…」


「…全く…危ないなぁ。もう少しで魂が消えてしまうところだったよ?ジュン。根競べで僕が負けるとはね。大した根性だよ」


「…一体…どうなった…此処は…」


「…君が粘りに粘った御蔭で、限界時間が来るまで君の身体の支配権を完全に奪えなかったのさ。君の魂を消してしまうのは不本意だからね。仕方なく返却したよ。で、此処は…世界樹の頂上。そこに創った僕の支配空間さ」


 …支配…空間?

何も無い…草原?青空と草原しかない。転生する時にフレイヤ様に会った場所と同じだ。

此処に居るのはボクとエロース、そして世界樹の化身のクローンのみ…か。


 クローンは容器から出され…何らかの力場?、と言えばいいのか?

何かよく解らない力で出来た光の球体に入れられている。


 で、ボクは…取り合えずは身体を取り戻したらしい。自力では無いが…


「皆は…そうだ、皆は!?」


「下で戦ってるよ。見るかい?」


 エロースが指をパチンと鳴らすと空中にビジョンが。

なんかどっかで見た技だが…そんな事より、だ。


「…戦い?」


「あー…うん。一応?」


「…一方的な虐殺に見えるんだけど?」


「……うん。…そう、とも言うかな?」


 場所は…恐らくはあの湖があった荒地か。

で、湖から世界樹が出て来てるのはわかる。

何故そこにあれだけの人が…エルムバーンだけじゃなく世界各国の騎士達が居るのか。

フェンリル一家や、ホリィさんが居るのはまだしも白猿達まで居るのは何故?


 いや、そんな事は些細な事だ。

あの天使はエロースの眷族だろう。

巨人は…多分、生き残りをエロースが確保してたんだろう。

そして黒猿が大量に居るのも単に大量に作ってただけだろう。

そこまでは良い、そこまでは。


「でも…普通に考えてあの天使と巨人、黒猿の軍は相当な戦力…だよね?」


「うん。まぁ…小さな国一つ墜とすのに一日も有れば十分かなー…」


 しかし、それでもエロースの軍勢は一方的に蹂躙されてる。

世界各国の連合軍によって。


「一番の理由は数の暴力…なのは間違いないね。何せ僕の眷族達は黒猿を数に入れても千とちょっと。対してフレイヤが呼んだ軍勢は凡そ百万人。勿論、大半が天使や巨人に比べたら、大した力を持ってない者ばかりだけど…百倍も数に差があればね。そりゃあ戦力負けするさ。それでもまともにぶつかればもっといい勝負する筈なんだけどなぁ。優秀な指揮官でも居るのかな?」


「……百万人?」


「うん。フレイヤが世界中に声を届けて呼び掛けてね。世界と君のピンチだから手を貸してくれってさ。世界も君も、全然ピンチじゃないのにねぇ。失礼だよね、ほんと」


 百万人…そのうちの何人がボクを助けに来てくれたのかは解らない。きっと大半は世界を救う方を重要視しててボクなんかどうでもいいのかもしれない。

でも、それでも…ボクを助けようとしてるのはほんの僅かだとしても…


「それに極力君の家族や婚約者は殺さないように言ってるからさぁ。非戦闘員も大勢来てるみたいだし。君を助ける為に。大した人気だね。ま、僕が君を人気者になるように手助けしたんだけどさ」


 非戦闘員?…ああ、ほんとだ。

城のメイドや執事達…戦う力を持たないリタ達やレヴィさんの両親…ギンの妹達。

ギルドマスターやウーシュさんまでいる…


「ボクを…助ける為に?」


「殆どの子がそうだと思うよ?ま、いきなり世界が滅びるかもしれないって言われてもピンとこないけど、君のピンチだって言われた方が理解しやすいのは確かじゃないかなぁ。ほら、あの子。君の木像に必死に祈りを捧げてるよ。戦う力も無いのに、此処に来て祈らなくてもねぇ」


 あの子って…ボクを見かける度に御祈りしてた御婆さん?王都で何度も見た、あの御婆さんまで…


「…ボクの為に…本当に、ボクの為に…」


「ホントに凄い人気だよ。君を人気者にしたのがこの局面で僕の首を絞める事になるなんてねぇ。ま、そんなわけで時間が無いんだ。悪いけど、今度は気絶してもらってフレイヤの加護を完全に消し去ってから実行させてもらうよ。大人しくしてれば痛い思いをせずに――」


 皆が危険を顧みず来てくれた…なら!

此処でボクがへばってるわけには行かないな!


「抵抗は無駄だよ!君はさっきまで魂だけの状態で僕を追い出そうと抵抗していた!肉体的にはともかく、精神は極度の疲労状態の筈!それで僕に抵抗しようなんて――」


「そうでもないね!」


「なっ!」


 出し惜しみ無しだ!

最初から全ての紋章を使用した全力全開で行く!


「驚いたね…まさか、まだそんな気力があるなんてね」


「精神の疲労なんて吹き飛んだよ。いい物見せてもらったからね」


「いい物?あの一方的な戦場がかい?それはちょっと悪趣味だねぇ」


「違う。そんな物見て喜ぶ趣味なんか無い」


「じゃあ何?他に何か良さそうなモノあったかなぁ」


「…そうか、解らないんだな。そんなだから、あんなロクでもない世直しの方法を実行出来るんだ」


「…ふうん?じゃあ、教えておくれよ。いいモノってなんだい?」


「あんたを倒した後に教えてやるよ!」


 今、教えて皆に余計な事されても困る。

皆が助けに来るまで…いや!先にコイツを倒して皆を助けに行く!

ボクの為に犠牲が出る前に!


「僕を倒す?僕に造られた君が?それは無理だねぇ!」


「どうかな!無茶ではあっても無理じゃないと思うね!」


 絶対に勝たなきゃいけない!そして…何の憂いも無く幸せな結婚式を迎えるんだ!

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