第573話 神様の世直し 18
ユウ視点です。
エロースが眩しく光ったと思ったら…消えた。
でも…居なくなったわけじゃない。アイツは…
「ふぅ…うん、流石に良い身体してるぅ。自分の子供じゃなきゃ是非抱きたいところだよ」
「う…うわぁぁぁ!」
「おおっと!何するんだい、ユウ?お兄ちゃんに向かって」
「うるさい!早く、早くお兄ちゃんから出ていけ!」
こいつ!こいつ、よりにもよって!お兄ちゃんの身体を乗っ取った!絶対に許せない!
「まぁまぁ、落ち着きなよ。ジュンはまだ…うわおう!」
「ジュンを返せ!ジュンを…返せぇぇぇ!」
「ジュン!今すぐに助けてあげるからね!絶対、絶対に!」
アイもアイシスも。私と同じだ。
二人は完全にキレてる。ううん、私達だけじゃない。
「だから落ち着いてってば!ジュンはまだ…って!うわお!」
「私の…私のジュン様を返せ!」
「さもないと容赦無くブッ殺すですぅ!」
「ジュン様!ぜっーたいに御助けしますからねー!」
皆同じだ。皆、激しく怒ってる。
だけど…お兄ちゃんを助けるには怒りに支配されちゃダメ。冷静に…冷静にキレなきゃ…
「だから落ち着きなって!ジュンは必ず返すから!だから攻撃は止めなって!この身体が死んだら、ジュンが死ぬんだよ?」
「ぐっ…」
「ジュン殿…」
「…そうそう。この身体の支配権は僕が貰ったけど、ジュンは死んだわけじゃない。今は眠りについたようなものさ。事が済めば必ず返すよ」
『エロース…お主…下界に完全に降りておったのか』
「今頃気付いたの?鈍いなぁ」
「…どういう事?フレイヤ」
『…依代を介さず下界に顕現している、という事じゃ。その方が当然、神本来の力を発揮出来る。じゃがそれはその世界に与える影響が大きい。どんな問題が起きるか…故にそれは禁忌。絶対の禁止事項となっておる。なのに…貴様は!』
それでか…フレイヤの声が聞こえない人にもエロースの声が聞こえたのは。
エロースはよりダイレクトに神の力を振るえたから。
「だから言ったろう?禁忌とか今更…僕は数千年掛けて世直しの計画を立てたんだよ?あらゆる状況を想定してるに決まってるじゃん。当然、我が子が親に歯向かう事だって想定済さ」
『…貴様という奴は…!』
「君に僕を責める資格は無いと思うけど?フレイヤ。いざとなったら君がジュンを依代に顕現するつもりだったんでしょ?」
「なっ…本当なのフレイヤ!」
「ちょっと!フレイヤ様!?」
『…確かに、最終手段としては考えていた。じゃが本人の同意無くやるつもりは…』
「そんなの…!」
ダメ…皆、冷静さを失ってる。
無理もない、当然だと思う。私だって冷静とは言えないもの。
でも、それじゃダメ。確実にお兄ちゃんを助けるには、冷静にならなきゃ…
「…どんな影響があるの、フレイヤ」
『え?』
「神の依代にされた人には何か影響が出るんでしょ?何も問題が無いなら、とっくにお兄ちゃんを依代にあんたが顕現してる筈でしょ?」
『…神をその身に宿すというのは魂に大きな負荷がかかる。だから…長時間、神の依代にされた者は…その負荷に耐えきれず…消滅する』
「そんな…それってつまり…」
「ジュン様が死んじゃう…って、事?」
『それだけでは無い。魂が消滅する…それは転生すら出来なくなるという事。魂さえ無事なら神の力でなんとか出来る…じゃが、魂が消滅してしまっては…』
「だから本来は神の依代として専用の調整を受けた身体を用意するんだけどね。普通なら神の依代になる才能があると言っても長くは保たない。でもジュンは魂も強いからね。長く保つ方だとは思うけど…はてさて、どれくらい保つかな?」
こいつ…!お兄ちゃんの魂を人質にするつもり?
殺す…絶対に殺しやる…!
「うっ……そんな訳で時間が無いんだ。始めるとしようか」
「な、何だ?揺れてるぞ!」
「地震?こんな時に!」
「いいや、違うよ。世界樹が成長してるんだ」
「成長?世界樹が?」
…此処は…地下。
その地下にある世界樹が成長するって事は…
「此処は崩れる。君達は早く逃げた方がいいよ?」
「な、何だと!」
「ま、待ってください!ここには貴方の眷族が居る筈では!?」
「彼らはとっくに脱出してる。後は君達だけさ。ぐっ…うぅ…早く、行きなさいよ。ジュンの、大切な存在の、君…達は死なせたく…うぅ!」
「な、何?」
「何だか苦しそう…ご主人様が苦しんでるの?」
『いや…恐らくはジュンが必死に抵抗しておるんじゃ。わしの加護で護られてるジュンを無理矢理に依代にした影響じゃな』
「ぐっ…それでも、まさか魂だけで僕に抵抗するなんてね…こりゃ急がないとダメだね…一気に成長させるとしよう!」
天井が崩れ出した…ま、拙いかも!
「お兄ちゃん!転移で…あっ…」
「ジュン様の転移魔法無しじゃ…」
「脱出は不可能…ですな…」
どうしよう…お兄ちゃんが居ないと、逃げる事も出来ないなんて…
「落ち着け!大丈夫だ!Meに近付け!」
「ああ!そっか!」
『お、おお!そうじゃそうじゃ!わしがやった転移の神器があるじゃろが!一先ず脱出せい!』
「へぇ…君にしては気の利いた物を用意したもんだね、フレイヤ」
リヴァさんに預けたお兄ちゃんの御手柄だと思うけど…そんな事より!
「リヴァさん!やって!」
「ま、待ってください!ジュン様は!ジュン様はどうするのです!」
「…今は!今は耐えてノエラ!先ずは脱出しなきゃ、お兄ちゃんを助けられない!」
「し、しかし!」
「…堪えろ、ノエラ!」
「Meだって主を助けたい…でも今は!脱出するぞ!」
「…エロース!ジュンに何かあったら…いいや!何も無くても!あんたはウチが殺す!」
「僕だって許さないから!絶対に後悔させてやる!」
「…早く、行きなよ」
「…待っててね!お兄ちゃん!」
絶対に…絶対に助けに行くから!




