第569話 神様の世直し 14
女神エロースが居ると思われる部屋。
その部屋の前まで辿り着いた。見るからに特別な部屋と言わんばかりの扉だ。
「……行くよ、皆」
「「「はい!」」」
扉を開け、中へ。
中には特別製と思われる培養容器に入った世界樹の化身のクローン。
そしてその前に居る少年とも少女とも見れそうな十代前半くらいの人物。
「あんたが…女神エロースか?」
「そうだよ。久しぶりだね、愛しい子よ」
「またそれか……ボクを子と呼ぶ理由とかボクらが知らない事実とか。あんたが知ってる事全て、話てもらおうか」
『いや待て!それよりもじゃ!先に世界樹の化身のクローンを抑えるんじゃ!そうでなければ奴の野望を打ち砕いた事にはならん!』
「抑えるって…どうすれば?」
『容器を割って外へ出せ!それから…ええと、これじゃ!これを使え!』
目の前に出て来たのは…光る羽衣?
「これは?」
『それをクローンに着せろ!そうすればエロースの力を遮断出来る!そして奴にクローンを渡さなければ勝ちじゃ!』
そういうのは事前に渡して説明して欲しい…何故わざわざ目の前で説明するのか。
「ああ、もう!ノエラ、セバスト!」
「はい!お任せください!」
「容器はオレが割る!行け、ノエラ!」
ボクが女神エロースを抑える役。
ノエラとセバストがクローンを確保する役だ。
当然、エロースが妨害…若しくは何処からかエロース配下の神族が現れて妨害してくる…と思ったのだが…
「……何故、何もしない?」
「この状況じゃ、その子はもう不要だからね。欲しいならあげるよ」
……不要だと?仮にも生みの親だろうに。物のように扱うなんて…気に入らないな。
『よぉーし!よくやった!後は神々の尖兵がそのバカを捕縛しに行くまで捕まえとけばそれで何もかも終わりじゃ!』
「逃げないから安心しなよ。それより聞きたいんだろう?全てを」
「…ああ。あんたが何故ボクに拘るのか。フレイヤ様がボクに何を隠してるのか。アイシスに向けて言った言葉。その他全てをな」
「それじゃ何処から話すべきかな……ん~…そうだなぁ…この世界の成り立ちから話そうか」
「……何?この世界の成り立ちがボク達に何か関係があるとでも?」
「君達、じゃあないかな。ジュン、君に関わって来るのさ」
『………』
ボクに?この世界の成り立ちが?
一体どういう…何の事かさっぱりわからない…
「ま、最後まで聞きなよ。ええと…そうだな。この世界とは別の世界、その世界を仮にAとしようか。そのAの世界はとても安定したいい世界でね。今もなお成長を続けてる。だから神々はAの世界を参考に世界Bを作った。安定した世界を増やす為に」
とても安定した世界を真似て作る事で、同じく安定した世界を作った?
そりゃ安定した世界を真似れば安定した世界が作れる……という理屈は解る。
だけど、それが一体何だ?
「それがどうしたってのよ」
「それが私達やお兄ちゃんに何の関係が?」
「だからそう急かしなさんな。で…そのAとBの世界はとてもよく似ていた。Aの世界を参考にして作ったんだから当然だよね。世界の歴史も存在する人種も、大地の形も。とてもよく似ていたんだ。そしてAとBには共通して日本という国が在った」
…日本?もしかしてその安定した世界ってボク達が居た世界の事か?
「面白い事にその日本という国に住む人間が造る物もよく似ていた。世界が違うのにね。物語も、神話も、ゲームも、何もかもね」
「神様が何言ってるのか…解る?お姉ちゃん」
「解らないわ…何となくしか…」
シャンタルさんとエミリエンヌさんだけじゃなく、他の皆もよくわかってない感じだ。
突然別の世界の話とかされてもな…解らないのは無理もない。
「そのうち神々は日本人が作る物語に興味を持ちだした。そこである物語を参考にして作った世界。それが今、君達が居るこの世界。世界Dさ」
「…何?」
「この世界が…」
「日本人が作った物語を参考にして造られた世界?」
「それに…世界D?その流れで言えば世界Cになるんじゃないの?」
「世界Dを作る時、もう一つ世界Aを真似て作った世界。それが世界Cさ。その世界Cこそが…ジュン。君達が以前居た世界。僕が滅ぼしてしまった世界さ」
「え…ジュン様達が居た世界…?」
「それってどういう…」
『エロース…お主…世界の成り立ちを住人に伝えるなど…禁忌の中の禁忌。解っておるのか?』
「そんなの今更だよ。僕が気にするわけないじゃん。それに必要な事だしね」
…ボク達が居た世界Cは世界Aを真似て造られた世界…?
そして世界Aと世界Bにも日本は存在して、日本人が作った物語を参考にして造られた世界がこの世界…世界C。
なるほど、道理で…
「日本から転生した君達には馴染みやすい世界だったろう?この世界は」
「転生…生まれ変わり?」
「ジュン様とユウ様にアイ様が?」
「……それで?この世界の成り立ち。それがボクとどんな関係がある?」
「生まれたての世界は安定するまで神々が地上に降り調停する、それはこの世界も例外じゃない。そして僕もこの世界の安定の為に地上に降りた神の一柱だった。僕の子供達…眷属と一緒にね。…ところで、少し話は変わるけど…此処に来るまでに見た僕の子供達。君達から見てどうだった?」
「え?どうって…」
「…感情の無い、人形のような存在に感じたが?」
「うん、そうだろうね。神々によって違うのだけど…自分の眷属となる神族は感情を持たせない事が多い。その方が神々の命令を忠実に守ってくれるからね。言葉は悪いけど、その方が使い勝手が良いのさ」
「…反吐が出る理由よね」
「全くですな。命ある存在を道具として扱ってるという事でしょう?独裁者と変わりませんな」
本当に。聞いてて気分の良い話では無い。
…いや、何故だか解らないけど、女神エロースから聞くと余計に腹立たしい。
「勿論、ちゃんとした感情を持たせる神も居る。そこの…アフロディーテの眷属のようにね」
「ん?Meの事か?」
「そうそう。ま、僕の子供達は全く感情が無いわけじゃないんだけどね。今は」
「…今は?」
「うん、今は。…話を戻そう。この世界は日本人が作ったある物語を参考にして造られた。そしてその物語では…魔族は滅び行く存在だった」
『………』
「な…」
「オレ達魔族が滅び行く存在…?」
「え、でも…私達生きてますしー!繁栄してますしー!」
その通りだ。この世界にある国の半数近くは魔族の国…人族と魔族とで争ってる国はまだあるにはあるが…とても魔族が滅びるような状況ではない。聖エルミネア教国が魔族を滅ぼそうとする筆頭ではあったが改革が進む今、とてもそんな事になるとは…
「落ち着きなよ。魔族を滅ぼす予定はもう無いよ。最初はそのように導く予定だったんだけどね」
「…何故予定を変えた?」
「君が反対したからさ、愛しい我が子よ」
「……は?」
『………』
またボクを子と言ったな…ボクが反対した?
一体どういう…
「……まさか」
「ユウ?」
「お兄ちゃんが、まさか…」
何だ?ユウには何か解かったのか?顔色が悪いけど…一体…
「そのまさか、だよ。ジュン、君は僕がこの世界に降りた時、最初に造った僕の眷属…僕の子供の生まれ変わりなのさ」




