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第568話 神様の世直し 13

「それで、何処に何があるって?」


「こっちこっち」


 アイシスが見つけた何かへ案内してもらう。

一見してボクの眼には何も…いや?


「…魔力の壁がある。隠匿結界の類か?」


「うん。だから此処で僕の破幻眼で…」


 アイシスの眼が薄紫色に光ると魔力の壁が消えた。

そして一見ただの壁に見えた場所に下り階段が現れた。


「どうやらアイシスのお手柄みたいだね」


「フフン♪どーう?褒めていいよ」


「初めてまともに役に立ったね、その魔眼」


「獲得してから二年間。初めてまともな使い方して役に立ったね」


「ん。頑張ったね、アイシス」


「褒めるならもっと素直に喜べるように褒めて!」


 言われて見れば確かに。

アイシスの破幻眼が役に立ったのって初な気がする…おかしな事に使おうとしてたのは覚えてるけど。


『フン…ユウ者アイシス君か。君は…いや、君達は本当に扱い辛い存在だねぇ。今も昔も、僕の邪魔になる事もあれば役に立つ事もあって。ジュンのお気に入りでもあるから迂闊に排除も出来ないし』


「僕がジュンのお気に入り?エヘヘ…流石神様、よくわかってるね!」


「アイシス、違う」


「何が?あ、セリア、もしかして…ヤキモチ?」


「そうじゃありませんよ…今の神様のセリフだとまるでアイシスさんが複数人居るかのような言い方でしたよ?」


「それに今も昔も、という言い方も気になります。アイシスさんが私達と行動を共にするようになってまだ三年足らず。それほど昔というわけでは…」


 確かに。この場に居る仲間達の事全員を指して言ってる訳でも無さそうだし。


『んん?…ああ、そっか。君達は前世の記憶が無いんだね。いや、あったとしても気が付く事は出来ないか』


「…前世の…記憶?僕の前世って…初代魔王の…」


「…それより。あんたさっきから誰の事言ってるの?」


「前世の記憶云々…何か引っ掛かるね」


『そうか…君達はフレイヤから何も聞かされてないんだね?ジュン、君もか』


「ボクも?一体なんの…」


 フレイヤから聞かされていない?

…ボクとユウ、アイの三人が現代地球から転生した事を知ってるのか?

そしてフレイヤ様はボク達に何か隠している?


「フレイヤ様?ボク達に何か隠してるんですか?」


『………』


「…沈黙は肯定と受け取るわよ」


「ここに来て今更隠し事は無しにしようよ。ウチら以外も巻き込んでるんだしさ」


『…ジュンには隠していた事はある。じゃがそれは悪意からでは無い。ユウとアイには特に隠してる事は無いぞ』


『んん?まさか…気が付いて無いの?フレイヤ。その二人は偶然選んだとでも?』


『何じゃと?』


『…フ~ン。いいよ、教えてあげる。フレイヤが隠してる事、気付いてない事、全て。降りて来なよ。直接話そうじゃない』


 …一体何だ?ボクが初代魔王の生まれ変わり云々という話なら…薄々察しが付いてはいた。

そしてアイシスの前世が初代魔王の妻だという事はわかってる。

でも…もしかしてユウとアイもそうなのか?

これまでそういう話はまるで無かったが…兎に角、階段を下りないと。


「………」


「………」


 ユウとアイも考え込んでる。二人には何か思い当たる事でもあるのだろうか?


「どうした?主。心配事か?だいじょーぶだぞ、Meが絶対、皆を守ってやるからな!」


「……ジュンさん?大丈夫ですか?」


「ご主人様?」


「ユウ様にアイ様も…大丈夫ですか?」


「…平気よ。少し考え事してるだけ」


「……ウチも」


「…ボクも大丈夫だよ」


「「「………」」」


 大丈夫と言っても信じられない、か。

自分でもさっきまでと違うのは解る。ユウとアイはもっとだ。


「…ねぇ、お兄ちゃん」


「…何?」


「前さ、ヴリティカさんが言ってた事覚えてる?私とアイがアイシスに似てるって。お兄ちゃんもそう思う?」


「……言われて見れば、容姿は少し似てるかな、って程度にはね。……何故、その話を今?」


「…そう。いいの、気にしないで」


「……」


「…僕がユウとアイに似てる…?」


「…アイシス?」


『…マスター?』


 アイシスまで考え込み始めてしまった。

いつも明るい三人が真剣な顔して考え込んでしまうと何だかパーティー全体が暗い雰囲気になってしまうな。

ボクも考え込んでしまったし…いかんな。

まだバカ神を完全に止めたわけじゃない。まだ手下の神族も残ってるだろうし…これくらいで終わる神なら神々から逃れる事は出来ないだろう。まだ何か手札が残ってる筈。

…この状態はマズいな。何とかしないと。

この長い階段を下りきる前に。


「…………そう言えばフレイヤ様」


『…何じゃ?』


「もし万が一バカ神を取り逃がしたら裸踊りするとか言ってませんでしたか?」


『………は?』


「ユウとアイも聞いてたよね?」


「え?……あ~……うん」


「そんな事……言ってたね?」


「でしょ?じゃあ見せてください」


『…いや、待て。確かにわしはそう言った。言ったが…何も今じゃのうてええじゃろ!?というか無理じゃし!』


「主…こんな時に何を…」


「ジュン殿?私にはフレイヤ様の声は聞こえませんが…そんな事を言う女神様なのですかな?」


「ジュンさん…」


「ジュンさんのスケベ」


 …うん、まぁ自分で何言ってんだって思うけども。

フレイヤ様の声は聞こえないバルトハルトさん達は余計にそう思うだろうけども。

…そう言えばフレイヤ様の声は聞こえないのにエロースの声が聞こえるという違いは何だろう?

いや、それは横に置いといて。


「無理なんですか?」


『無理!無理じゃー!だってお主らに見せようと思ったらその場に顕現せんとならんし!それが簡単に出来んからお主らに頼ったんじゃろ!?いや、裸踊りくらい全然平気なんじゃけども!』


 …平気なのか。いや、別に本気で神様の裸踊りが見たいわけじゃないけども。でも、裸踊りが平気な女神様ってどうなの?


「じゃあ仕方ないですね。代わりにボクの結婚式の時にはフレイヤ様の祝福を貰えますか?」


『あ?ああ…うむ。勿論じゃ。そんなの頼まれんでも――』


「え?私達…」


「女神さまから祝福を頂いた聖夫婦になれるんですか!?」


「あたしも!?聞いた?お姉ちゃん!」


「え、ええ!」


 …想像以上に皆大喜びだな。

特にクリステア。涙まで流して喜ぶなんて。


「えっと…というわけだからさ、ユウ、アイ。アイシスも聞いて」


「「「………」」」


「ボク達は…あー…夫婦になる。それは神様からの祝福があっても無くても変わらない。そしてバカ神に何を言われ、どんな真実が待っていようとも変わる事は無い」


「「「………」」」


『バカ神って僕の事?酷いなぁ…』


 …まだ聞いてたのかバカ神。…無視しよう。

で、三人はまだダメか。恐らくバカ神から聞かされる真実に何かしら思い当たる事があって、不安がドンドン大きくなってるんだと思うけど…


「それと…ボクの気持ちも変わる事は無い。ユウ。アイ。アイシス。ボクは…お前達を愛してる。その気持ちは何があっても変わらないから…だからそんな不安そうな顔しないで」


「お兄ちゃん………うん!」


「…ウチも!何があってもジュンを愛してる!」


「ぼ、僕も!例えまた生まれ変わっても!ジュンが大好き!愛してる!」


「……うん」


 漸く持ち直した、か。

うん、これで何とか………


『生まれ変わっても、ね。本当に…君は生まれ変わっても同じ事を言うんだね。実際にそうなってるから余計に腹立たしいよ』


「え?どういう事?」


『…続きは後だよ。一番奥の部屋で待ってるよ。途中襲って来る存在はもう居ないから、安心しておいでよ』


 階段はもう無い。

そして降りた先にはまた扉だ。

この先の奥に女神エロースは居る。

…教えてもらおうじゃないか、色々と。


「ところでジュン様」


「ノエラ?どうかした?」


「私達には愛してると言って貰えないのでしょうか?」


「あ!Meも!Meも言って欲しい!」


「……全部終わって帰ってからでお願いします」


 ノエラもいつだってブレないな…もう少しシリアスを保って欲しかった…

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