第563話 神様の世直し 8
白猿のクローンを作り強化したと思われる個体が三匹。世界樹を守る番犬ならぬ番猿か。
取り敢えずコイツらの事は…
「この猿の事は黒猿と呼称する!」
「そ、そんなの後でいいじゃん!早くなんとかしないと!」
「お、落ち着きなさい、エミリ!」
『余裕じゃのう…お主ら。頼もしい限りじゃが…』
エミリエンヌさんは意外にもこういう時には常識的なのか。ちょっと安心した。
「…アイ。黒猿の強さはどの程度だと思う?」
「んー…どんな能力を持ってるのか知らないからはっきりと言えないけど…白猿と同程度だと思う」
「同程度?白猿より強くなってるんじゃないの?」
「普通に考えたらバカ神が手を加えて強化されてるんだろうけど…神獣をバンバン作って強化出来る技術があるなら此処に来るまでにも襲われてたと思うよ、お兄ちゃん」
「それもそうか…おい、お前達は喋れるのか?」
『『『……』』』
話は通じなさそうだ。
やはり倒すしかないか。
「連携させないように引き離すのが有効かな」
「あ、じゃあ一匹はウチとユウとアイシスで受け持つよ」
「…珍しい。アイが一人でやるって言うかと思った」
「神獣を相手にするのと同義なのに、そんな事言わないよ。でも守護宝獣の強さをもっと確認したくて」
「ああ、そっか。なら僕に異論は無いよ」
「私も。どうも私達の守護宝獣は連携して戦うようになってるみたいだしね。他に何が出来るのか確認しておいた方がいいわ」
というわけで一匹はアイ・ユウ・アイシスの三人が受け持つ事に。となると残る二匹は…
「私達にお任せ下さい」
「オレとノエラ。リリーとシャクティの四人で一匹受け持つ」
「頑張るですぅ!」
「たまには私も歌って踊るだけじゃなく、戦ってみせませんとねー」
「なら最後の一匹はMeに任せろ!」
「あたしも!あたしもやるー!」
というわけで。
ノエラ・セバスト・リリー・シャクティの四人で一匹。
リヴァさんとハティで一匹を受け持つ事に。
残りはシャンタルさんとエミリエンヌさんを護衛しつつ援護だ。
こちらの方が数は上だし、黒猿が神獣白猿と同等の強さだとしても今のボク達なら早々負ける事は無いだろう。
とは言え危険な相手には違いないので出来るだけの強化をする。
「先ずはボクが魔法で奴らを分断する。後は手筈通りに」
「「「「はい」」」」
「じゃあ、いっくぞー!テンペスト!」
風属性の最上位魔法テンペスト。
それを三つ同時に放ちそれぞれを黒猿に向けて放つ。
当てる事に重きを置いたので発動とスピードを早くし、威力控え目。
思惑通りに、分断する事に成功した。
「威力控え目…アレでですか?」
「何か今の魔法で結構なダメージ受けてない?『魔王の紋章』を手に入れたけど…あたしには真似出来そうにないよ」
「ジュン殿が神獣の相手を自分でやらないのは意外に思ってましたが…最初からこういうつもりでしたか」
「ジュン様は心配性。でも、それがいいところ」
そりゃあね。あんな危険な存在の相手させるのに何もしないわけにも。
能力は未知だし、油断は出来ない相手なんだから。
「さて、戦況は?」
「リヴァさんとハティはもう終わったようですね」
「えっ、早」
リヴァさんとハティがもう戻って来る。
死体になった黒猿をリヴァさんが引き摺りながら。
「早かったですね」
「主…アレじゃ殆ど主がヤッたようなものだよ。Meはこの転移の指輪を使って練習したかったのに、アッサリと仕留めちゃったぞ」
「あたしの出番なかった…」
リヴァさんもハティも。若干不満そうだ。
でも安全第一なので許して欲しい。
「で、アイ達はどうかな?」
「あれぇ?知らない人が居るよ?」
何か白い鎧を着た天使のような人が居る。
そして黒猿と戦っているが…誰だ?
「アレは守護宝獣です」
「え?あ、確かに見た目は似てますけど…」
「私は最初から見てましたが、三人の守護宝獣が一つになったようですな」
「何か光ったと思ったら、ああなってた」
なんと。つまりは合体か。
守護宝獣ってそんな事も出来るのか。
『合体じゃと…まさかそんな事が出来るとは…』
「何か驚いてますけど。前例の無い事なんですか?フレイヤ様」
『…うむ。少なくともわしは聞いた事がない。しかも何じゃアレ。合体して単純に強さが三倍になったわけじゃないじゃろ、アレ。確実にそこらの神獣より強いじゃろ』
そうなのだ。
合体した守護宝獣は黒猿を圧倒している。
援護の必要が無い程に。
アイ達も何もせずに見守ってるだけだし。
ボクが最初にダメージを与えた事を差し引いてもかなりの強さだろう。
「本当に圧倒的ですね」
「遠くから見てても、あたしには何してるのかサッパリだよ」
「ん。私も」
守護宝獣は合体したら身長や体格はノエラと同じくらい。
白い鎧と剣と盾を持ち、羽のある女性騎士。
見た目は本当にヴァルキュリアだ。
そして能力だが…剣技は剣聖級と言っていいかもしれない。
時折、剣から光が伸びるのだが…その光に触れたら斬れるようだ。
黒猿の右腕をそれで斬り落としていた。
更には自身を光に変える事が出来るようで。
光になって消えたと思えば一瞬で黒猿の背後に周っていた。
殆ど転移魔法だ。
結局、圧倒的なまま黒猿を一刀両断。アッサリと倒してしまった。
黒猿が死んだのを確認すると守護宝獣は三つに別れ、宝玉に戻った。
「そしてノエラ達は…」
「大丈夫そうだね…何かよく分かんないと状態になってるけど」
「アレはシャクティの糸ですね」
「シャクティの得意技です」
ノエラ達は先ず、ノエラが雷に変化しそのまま黒猿に攻撃。
一瞬動けなくなった所をセバストが『夢幻の紋章』で幻を見せ、混乱させる。そこをシャクティが地面から糸…恐らくは『操糸の紋章』で芝生から大量に糸を作って黒猿を縛り上げた。
そして止めの一撃をリリーが放つ。
黒猿の額に命中した矢は黒猿の頭を半分吹き飛ばした。
ノエラ達の完勝だ。
「皆、お疲れ。怪我は無いね?」
「ウチらは無いよ」
「僕らは見てただけだしね」
「というか、強すぎ。まさかあそこまで強いなんて思わなかった。神器なだけはあるわね」
『そ、そうじゃろそうじゃろ。ワハハハハ…』
乾いた笑いです事。
あの強さは本当に想定外らしいな。
でも、あれだけ強ければバカ神と戦う事になっても役に立ってくれそうだ。
「私達もありません、ジュン様」
「ジュン様の魔法で重傷を負ってたしな。楽な戦いだったぜ」
「神獣を相手にしてる気はしなかったですねー。怖かったのは最初の不意打ちだけでしたね」
「らくしょーですぅ」
この調子ならボクがダメージを与える必要は無かったかもしれないな。
でも、この先も戦いはまだまだあるだろうし楽に終わるに越した事は無い。
安全第一だ。
「さてさて…先に進むとして。出口は…」
「あ、あそこに扉があるよ、主」
「ふむ。一応、他にも扉が無いか確認してから進みましょうか」
探した結果、扉は二つあった。
南側に有った扉の先には上に登る坂があった。
多分、普通に進めばこの坂を降りて此処に来たのだろう。
という事は奥に進むのは北側の扉だ。
「そろそろ終点が…近いかな?」
「近いよ。Meには解る…神様の気配が確かにするよ」
バカ神…女神エロース。御対面の時は近い。




