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第557話 神様の世直し 2

 夏のバカンスは終わり。

各国の招待客を送った後、例の湖の再調査へ即出発…する予定だったのだが。


「で?改めて聞きますけど。何故、皆さんは残ってるんです?」


「エリザ様と交渉しまして♪」


「私達もエルムバーンで治癒魔法使い育成の研修生として残る事になったんです」


「幸いな事に私達にも治癒魔法の適正があるようですので」


「勿論、ジュン様や他の皆さんと比べて高い才能が有るわけではないのですが」


「「「ですので、お暇な時に訓練を見て下さいね」」」


「………」


 マーヤさん達フレムリーラ周辺国の魔王女五名と、アレクサンドリス王国の三つ子姉妹がこのままエルムバーンに残る事になったらしい。ママ上の差し金で…ビーチバレーの時に呼び出して話してたのはこれか。

サンドーラのダメダメ姉妹が含まれていないのは流石というべきか…


「勿論、国の許可は取ってあります。二つ返事でOKが出ました」


「私達の身の回りの世話をする者達を用意するとの事なので、荷物を取りに行く時にでもお願いいたします」


「……少し用事がありますので、それを済ませてからでお願いしますね」


 アレクサンドリス王国とウィスラー魔王国には即行けるが、マーヤさん以外の魔王女達の国には時間を掛けて行く事になる。フレムリーラに集まっておいてもらうとして、今は調査の方を優先させてもらおう。


 という訳で。

いつものメンバーとリヴァさん、そしてシャンタルさんとエミリエンヌさんに同行してもらい湖の調査へ。


「ジュン様が行くのであれば何処へでも付いて行きますが…何故、今更この湖の調査など?」


「一向に水が減らず汚れもしない不思議な湖なのは確かだが…無害だから放置って事で決着が着いたんじゃ無かったか?」


「……ちょっと、気になる事があってね。ごめんね、付き合わせて。シャンタルさんにエミリエンヌさんも」


「いえ、気にしないでください」


「あたし達はジュンさんの婚約者だもん!頼まれれば協力するよ!」


 シャンタルさんとエミリエンヌさんに来てもらった理由。

それは湖の中に潜るとなれば人魚族の彼女達が居れば心強いと思っての事だ。

リヴァさんが居れば大丈夫だと思いたいが、もしバカ神がいたらと思うと…


「あ、そーだ。ねぇねぇ、セバストさん。ミースとはあの後どーなったの?イくとこまでイッちゃった?」


「……私は何処にも行ってませんが?エミリエンヌ様」


「またまたぁ。とぼけちゃってぇ」


「やめなさい、エミリ。すみません、セバストさん」


「いえ…」


 ビーチバレー大会でミースが指名した相手。

それはまさかのセバストだった。セバストを指名したのはミースだけだったので、二人きりで一夜を過ごしたわけだが…


「残念ながら、兄さんも奥手なので何も無かったと思われます。実際、ミースは処女のままでしたし」


「あちゃ~…ミースもかわいそ」


「お前には兄のプライバシーを尊重する精神は欠片も無いのか」


 ノエラには無さそうだな…命令されるか、口止めでもされない限り。


「それで、ジュン殿。調査とは具体的に何をして何を調べるのですかな?」


「えっと…ユウ?」


「うん。先ずは前と同じで上空から観察したいから。私とお兄ちゃん、アイの三人で行くわね。皆は此処で待ってて。あ、湖にはまだ入っちゃダメよ」


「ユウ様、私も一緒に――」


「待機してなさい。命令よ」


「……畏まりました」


 …ユウが命令してまでノエラを下がらせるなんて、珍しいな。

つまりは三人で話がしたいって事か。


「それで、やっぱり何かあるの?」


「うん…やっぱり、そうだ」


「何か解かったの?ユウ」


「この湖…丁度世界樹がすっぽりと入るくらいの大きさなの」


「え?」


 言われてみれば………確かに?

湖の深さは解らないが…根を除いた幹の部分が入るくらいの大きさ…に見えなくも無い。


「よく見ただけでわかるね」


「ほんと。ウチには遠目で見ただけじゃサッパリ。隣に世界樹が並んでる訳でもないのに」


「そこはほら、私って天才だから」


 本当に多才な妹です事。

……しかし、だとするなら、だ。


「ユウはこの湖の何処かにバカ神が居ると考えてるんだね?」


「うん。多分、水質や水量を管理する必要があるんじゃないかな。その為に、あの施設からこっちに設備やら何やらを移したんだと思う」


「でも、この湖には神の力は何も感じないって話だったじゃない。リヴァさんや、メーティスの話だとさ」


「神の力は使わずに隠れて管理してるのよ。使えば見つかるから」


「でも…それじゃどうやってこの湖の管理なんか?」


「あの施設で見つけた物、覚えてる?」


「世界樹の化身のクローンの事?」


「それじゃなくて。メイド型アンドロイドとかコンセントとか培養器とか。明らかにこの世界の技術では作れない物とか。私達が居た世界の科学技術より些か進んでると思しき物とかがあったでしょ。つまりバカ神は何処かの世界からかなり進んだ科学技術を持って来て、それを使って隠れてるんじゃないかな」


 なるほど…科学の力なら神々の網に掛かる事も無い。

この世界の住人に理解出来る代物でも無い。だから安心して隠れていられる、と。


「で、具体的に隠れてる場所は…普通に考えれば最も人の目が届かない場所。この湖の底ね。どれだけ深いか解らないのがネックだけど…取り合えず行ってみるしかないわね」


 皆の所へ戻り、水中戦用ゴーレムで湖の底へ。

護衛役にメガロドン型アイアンゴーレム二十体と、水の精霊を二十体ほど呼び出した。


「あの…ジュンさん」


「何です?シャンタルさん」


「私とエミリは外に居た方が良いのでは?これではいざという時に戦えません」


「そだよ。あたしもお姉ちゃんも、せっかく強くなったんだしさぁ」


「確かに、お二人には水中での戦闘を余儀なくされた場合に力を貸して欲しいから来て貰いましたけど、率先して戦わせようなんて思ってませんよ」


「それに二人は紋章を手に入れたばかりでしょ。あまり自分の力を過信しない方が良いわよ」


「はい…」


「はーい…」


 それに今回は深い水の底でも転移魔法で逃げる事も可能だ。

リヴァさんの力、クリエイトフィールドの応用でゴーレムに水圧が掛からないように調整。いつでも転移可能になった。


「…何にも無いね。海と違って楽しくない」


「ん。キラキラはしてるけど」


「楽しむ為に来たわけじゃないよ…あ、もう底に着いた?」


「みたいですねー」


「思ったよりは浅いね。三十メートルくらいかな?」


 透明度の高い水なので太陽光が届く。

結構明るいので見通しも良い。だけど見渡す限りは何も無い。

勿論、生物の姿も。


「…リヴァさん、何か感じます?」


「ううん。何にも」


「メーティス、ウル」


『感じひんなぁ』


『同じく。見た目通りに何も無いと思うよ?』


 今回はそれじゃ困るわけで。

此処がハズレだったら、完全に手詰まりだ。


「兎に角、探索を続けようよ。ジュン、操縦はウチがやるから」


「中央に向かって、アイ。お兄ちゃんは偶に探査魔法を」


「うん」


 現在地では探査魔法に何も引っ掛からない。

水中は勿論、地中も反応無し。

見た目通りに何にも無い。


「…ほんと、何にも無いわね」


「湖と言っても川と繋がってない、人工の湖だしね。作ったのは神様だから人工とは言えないかもだけど」


 湖の南端から中央に向かって進んでいるが変わらず何も無い。

仮に魚を放流しても餌になる物が無い為、直ぐに死んでしまうだろう。


「ん?あれ?」


「い、今メガロドン型ゴーレムが消えませんでしたか?」


「あたしにもそう見えたー」


 いきなり目の前に居たゴーレムが消えた。

反応はあるので戻って来るよう操作してみるが、戻って来ない。


「結界か何かですかな」


「ううん、僕の破幻眼で見たけど結界や幻の類じゃないよ」


「…進むしか無い、か」


「待って、お兄ちゃん。先ずは他のゴーレムを先行させて。精霊も」


「わかった」


 ゴーレム達と精霊を先行。

やはりいきなり見えなくなった。同じように戻って来るように操作する。

するとゴーレムは戻って来なかったが精霊は戻って来た。


「…とりあえず、このまま進んでもいきなり死ぬ事は無さそうだね」


「うん。アイ、進んで。皆は臨戦態勢。リヴァさんはクリエイトフィールドで戦いやすい空間を作る用意を」


「任せろ、主!」


 覚悟を決めて進む。念の為に結界も張って。


「そろそろゴーレム達が消えた辺りに入るよ」


「…さて、何が起きるかな」


 別空間にワープさせられるかな?とか思っていたが、そんな事は無く。

ゴーレムは湖の底からニメートルくらいの高さを進んでいたのたが、突然落ちた。突然落下する感覚に襲われ、対処出来なかった。

落とし穴に落ちた気分だ。


「アイタタタ…皆、無事?」


「ウチは大丈夫…ビックリしただけ」


「リリーも大丈夫ですぅ」


「ビックリしたぁ…いきなり何?」


 皆の無事を確認してから、状況を確認する。

すると何故急に落ちたのか、メガロドン型ゴーレムが何故戻って来れなかったのか。それは直ぐに解った。


「水が無い…」


「他のゴーレムも落下して動けないから戻って来れなかったんだね」


 ゴーレムが消えた境界線を越えると水が無い空間が現れた。

ボク達が乗ってるゴーレムも水が無くては動けない。

水が無い空間に入ったから、落下した訳だ。


「でもって…どうやらユウの勘はアタリだったみたいね」


「うん…間違い無さそうだ」


 湖の底に有った水の無い空間。

その中央には真新しい神殿が存在していた。

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