第556話 神様の世直し 1
夏のバカンスも終わりに近づいたある日。
神様から通信が入ったので、アイとユウ、リヴァさんの四人でコッソリと城に戻った。
話の内容はバカ神の捕縛についてなのだが。
「ああ、やっぱりですか」
「正直予想してた」
「やっぱりかって感じよね」
「う、う~ん…Meは信じてたよ?ダメだったみたいだけど…」
『今回ばっかりは何も言い返せん…』
予想はしてたが捕縛に失敗したらしい。
バカ神…エロースは神々の手を逃れ、この世界の何処かに潜伏してるらしい。
「で?何が原因で取り逃がしたんです。自信満々でしたよね」
「あれだけ大見え切っておいて…ただ相手が上手だったなんて言わないよね」
「流石に何か理由があるんでしょ。あぁ~それじゃしょうがないかなぁ、って言えるような」
『いや…その…ただただアヤツが上手だっただけ…です』
「…どうやって捕まえようとしたんです」
『アヤツの潜伏場所を特定…其処へ使徒を派遣し、アヤツの存在を確認次第、神々がその場へ顕現。ボコボコにした後に捕縛。という予定だったのじゃが…』
「なに、それ。それで作戦のつもりなの?」
『お、大雑把に言っただけじゃ!アヤツが力を行使したら即座に反応出来るように常時網を張り、アヤツが逃げ込みそうな場所にも張り込みもしておった!他にも色々!それも複数の神々でじゃぞ!それをアヤツは単独で逃げ切りおった!』
…多分、あのバカ神は事を起こすずっと前から準備を重ねて来たんだ。
追手の神々の手段も、それからどうやって逃げるかも当然想定済み。
言葉通りに、バカ神の方が上手だったんだろうな。
「それで、逃げられたっていうの具体的にどういう状況なんです。単に見失っただけなのか、もう完全に手詰まりなのか」
『…完全に見失ってはいる…が、何も出来んわけではない。発見さえすれば最終手段としてわしがそっちの世界に顕現すればいい』
「神様がこっちの世界に来るって事ですか?」
「それって出来ないとか言ってなかった?」
『出来ないのではない。禁止事項じゃからやらないだけじゃ。今回は特例として認められるじゃろ。色々制限も問題もあるが…』
「でも、バカ神を見つけない事には出来る事は無いって事なのね?」
『………そうじゃ。そこでお主らに頼みがある。アヤツを探して欲しいんじゃ」
「神々に発見出来ない存在を、ボク達にですか?」
『アヤツはどういう手段を用いておるのかわからんが、神の力を行使せずに何処かに隠れておる。神の力はもう最後の最後まで使わんじゃろう。しかし、それでは遅い。何とかアヤツが事を起こす前に発見せねばならん』
事を起こす前…世界の改変を始める前に、か。それなら…
「世界を改変するのに必要な世界の要。その存在に目星は付いてるんですよね?それって何なんです?」
『想像は付いておるんじゃろ?』
「……世界樹の化身」
『正解じゃ。まさか世界樹本体は要では無いのに化身の方が世界の要になるとはのう。わしも予想外じゃったよ』
やはり、あの施設にあった世界樹の化身のクローンはバカ神にとって相当重要な存在で世界の改変に必要な存在なんだろう。
だからこそ、神々に位置がバレる危険を冒してでも回収した。
因みにこの事は神様に当然報告済み。
あの島の施設についても報告したが、施設は島ごと消滅。
何もかも綺麗さっぱりに消えて手掛かりは皆無だった。
「なら世界樹の周辺を張っておけばいいじゃない。世界の改変にはあの子が必要って事でしょ?」
『当然、万全に網を張っておるわ。じゃがそんな事はアヤツも承知の上じゃろうし、お主らが見つけたクローンの存在もある。クローンをどう使うのかわからん以上、早期に発見する必要があるのじゃ』
「何処に居るかの、凡その見当も無いんですか?」
「流石に何の当ても無く只当てずっぽうに探し回れって言われてもね。流石に無理があると思うな」
「というか、この世界の何処かに神族はまだ居るのよね?あんた達の眷属というか配下というか。そいつらにも手伝わせなさいよ」
『あ…それなんじゃがな…ひっじょーに言いにくいんじゃが…』
「……何です?」
『そちらの世界に送ったわしらの眷属…襲撃した時に返り討ちに会って、アヤツに皆殺しにされちゃった。もうその世界におる神族はアヤツの配下ばかりじゃ。お主らとレヴィアタンを除いてな』
「「「………」」」
何という…取り逃がしただけじゃなく手勢を全て返り討ちにされてるのか。
しかも、完全に見失ってる………あれ?もしかして状況は絶望的?
『しかもわしらがその世界に顕現するには依り代が必要…その依り代となるのは神族で…安全地帯に避難させておいた神族も殺されておった』
「ちょっと。あんたさっき最終手段としてこの世界に顕現するって言ってたじゃないのよ」
『あー…うむ。出来るか出来ないかで言えば出来るんじゃが…流石に気が引けるのでな…』
「どういう事です?隠し事とかしてる状況でも無いでしょう?」
『……すまんが、今は言えん。兎に角、お主らには捜索に協力してもらいたい。こちらも出来る限りの事はする。よろしく頼む!ではの!』
………結局ほぼほぼ丸投げか。よろしく頼むって言われてもな。バカ神が隠れている場所に心当たりなんて、まるで無いぞ。
最近は超常現象としか言えないような異常とか聞かないし。
「………」
「ユウ?どうかしたの?」
「……ううん。何でもない」
嘘、だな。ユウは何か隠してる。
伊達に長年兄妹してない。それくらいは顔を見れば解かる。
解かるが…こういう時のユウは自分の為の隠し事はしない。
なら、ユウが自分から話してくれるのを待つ。
多分、それが一番いい結果を生む。
いつもそうだった。
「……それより、お兄ちゃん。一ヵ所、調べてみたい場所があるの」
「調べてみたい場所?それってもしかして…」
「バカ神が居そうな場所に心当たりがあるの?ユウ」
「うん。明日皆を送ったら調査に行こ」
ユウにはバカ神が居場所に心当たりがあるらしい。
そして明日、その場所へ向かう事になったのだが…そこはボクももう一度調べる必要があるかなと思った、あの湖だった。




