第551話 再び始まる女の戦い 6
「ようやく私達の出番ですねー」
「頑張るですぅ!」
「行って参ります、ジュン様」
ビーチバレー大会最終ブロック。
優勝候補のノエラ・シャクティ・リリーのチームの出番だ。
対戦相手にはノエラやセバストの同僚…セバスン配下の暗部に所属するメイド達がいるが…ノエラ達の優勝で間違いないだろう。
ついでと言っては何だが、セフィさんの侍女三人組も同じブロックだ。
「…此処まで試合を見ていて思ったのですが、ブロック分けに悪意…いえ、作為的なモノを感じます」
「始める前から言うべきセリフではないかもしれませんが、私達に勝ち目は無いのでは?」
「とても実力が近いチームを集めたとは…ノエラさん達と私達が同じブロックの時点でおかしいです」
うん、そう感じるのは無理も無いと思います。
ボクから見ても実力差は明白ですから。
そして予想通り、パルヴィさん達は初戦で敗北。
対戦相手はノエラ達では無く、暗部のメイド達だが。
うちのメイド達も元ヴェルリアの暗殺者兼メイドの三人と同様に鍛えられている者が多いのだ。
誓って全員では無く、一部だが。
「やっぱりこうなりました…」
「エルムバーンのメイドはおかしいです」
「明らかに戦闘訓練を積んだ者の動きです。とても普通のメイドに出来る動きでは…」
「気のせいです。それに動きならパルヴィさん達も良い動きしてましたよ」
特にパルヴィさん。チラリと見える日焼け跡いい味出して…
「イタタタタ!な、何するんです!」
「またいやらしいこと考えてましたね?」
「今日のジュンさんは婚約者以外にデレデレしすぎです。今日はもう許してあげません」
…マリーダさんとパメラさんが厳しい。
最初の試合から此処まで、見所満載の試合だったからな…でも、そんなに丸わかりなくらいガン見してただろうか?
「何言ってるんだか。誰が見ても解るよ」
「巨乳の人が倒れたら自分も寝そべって。飛び上がったらローアングルから眺めたり」
「そこまでして見たいなら、ジュン様なら見せろ言えば済む話なのに…」
それは人としてアレなので。
こういう時に合法的に生で見れるのが良いのです。
「さ、そんな事より。いよいよ最終戦ですよ。しっかりと見ないと」
「懲りてませんね?ジュンさん」
「腕をつねるだけじゃダメですね。もっと何か…いっそベルナデッタさんに頼んで浮気すると全身が痛くなる呪いを掛けて貰うとかどうでしょう?」
「それはあんまりです。ていうか浮気じゃねーし」
そもそもそんな呪いがあるんだろうか。
あるのだとしたらボクよりも先にお祖父ちゃんに掛けるべきだと思います。
最終戦はノエラ達のチームとエルムバーンのメイドチームとなった。
ノエラ達の同僚だけあって良い動きなのだがノエラ達の方が上だった。
「いや、胸の揺れの話じゃなく」
「何言ってんの?ジュン」
「間違いなくくだらない事でしょ」
「こういう時は心読んでくれないのね、君達…」
まぁ、胸の揺れもリリーとシャクティの方が上なのだが。
ノエラはも揺れているのだが…二人に比べるとどうしてもね。
「今度はノエラが泣いちゃうよ」
「ただでさえ女泣かせなんだから。せめて婚約者は泣かせないようにしないと」
「人聞きの悪い事を…」
「そんな事より…凄いな、ノエラは」
「凄いんだけど…眩しいわね。煩いし」
ノエラが手に入れた新しい力『変幻の紋章』。
その能力は変身。自分が見た事のある物なら何にでも変身出来る、一瞬で。
炎だろうが雷だろうが、別人にだって変身出来る。
但しノエラの記憶通りに変身するので、よく覚えてない人に変身すると全然違う顔になったりする。
更に炎や雷でも他人に変身しても誰かに触れられれば変身は解除されてしまう。
その点は熟練度が上がればある程度改善されるらしいが。
今は雷に変化してコート内を移動。
文字通り電光石火のスピードだ。ただ雷だけあって光るし爆音もする。
そして最大の欠点は…
「ノエラが眩し過ぎてリリーやシャクティがあまりよく見えない…」
「二人は何の為にサングラスしてるのかと思ったら…この為だったんだね」
「対戦相手が不利過ぎない?眩しくて眼を開けられてないもん」
というわけで。
物言いが入ったのでノエラの変身は禁止に。
しかし、それでもノエラの運動能力が損なわれたわけじゃないし、最初のリードが消えたわけじゃない。
それにリリーの『音の紋章』はビーチバレーでも威力を発揮出来る。
ジャンプする瞬間に出る音を増幅、振動の方向を足の裏に全て向ければジャンプ力を上げられる。
ボールを打った瞬間にも同じようにすればスピードが上がる。
そしてシャクティだが…
「シャクティは踊って歌ってるだけだから実質二対三なわけだけど…」
「一人減っても、それが不利にならないくらいの強化率だよね」
シャクティが手に入れた新しい力は『踊り子の紋章』。
『歌姫の紋章』と同じで高価範囲内の味方の能力を上げてくれる。
以前なら歌ってる間は歩くくらいしか出来なかったシャクティだが、今は歌って踊る事も可能。
シャクティ一人でパーティー全体がかなり強化されるのだ。
更にもう一つ、シャクテクィは新しい紋章を手に入れている。
それは『操糸の紋章』。シャクティの武器である糸の操作と切れ味、丈夫さが向上。
以前より複雑な操作が可能になった。
それだけでなく、岩や木から糸を作り出し使う事も可能。
鎧や盾、剣とか槍なんて武具からも作り出す事も出来る。
ただ堅い物から糸を作り出そうとすると時間が掛かるし、触れていないとダメなので戦闘中に敵の武具を糸に変える事は難しい。
それと植物以外の生物を糸に変える事は出来ない。
試合はノエラ達が優勢のまま終わり。
これにて全ての試合が終わったわけだ。
「これで全ての試合が終わったわ。今夜は頑張ってね、ジュンちゃん」
「今日婚約者全員が妊娠したとしても結婚式の頃にはまだ目立つお腹じゃないから、平気よ。あ、後でスタミナドリンクあげるわね」
「……ママ上とアンナさんにしては読みが甘いですね。ベルが居るんだからそんな事になりませんよ」
ベルはまだ十三歳。
それにベルはその辺りの知識が乏しい。
ベル以外の婚約者も、ボクから見れば子供が多いのだ。ティナ達とか。
一晩一緒に過ごすくらいでおかしな気持ちなったりは…
「ふふん。甘いのはジュンよ。優勝チームの中にはカミーユも居るのよ?あの子が『淫魔の紋章』を使えば…一晩も我慢出来るかしらね?」
「な!何故ママ上がそれを!?カミーユさんが『淫魔の紋章』を持ってる事を知ってるんです!?」
「そりゃわかるわよ。女の私には効かないけど、アレだけ急激に色気が増せばねぇ。それに私も『淫魔の紋章』を持ってるし~」
そうだったのか…いや、当然か。
「サキュバス・クイーン」のママ上なら持ってる方が自然なのか。
「でも流石は私が見込んだだけはあるわ~。私でも十三歳で『淫魔の紋章』はもって無かったわよ?これで処女を捨てればどうなるのか…明日が楽しみね」
「あぁ、そうだ。それと…皆ー!今日、負けちゃった人だけが参加出来る敗者復活戦を明日やるからー!」
「え?ちょっとぉ!?まさか明日も好きな男性と一晩過ごせる権利が貰えるとか言いませんよね!?」
「当然、貰えるわよ?」
「そんな勝手な!い、いや、優勝者が必ずボクを指名するって決まってないですけど!」
「決まってるも同然だと思うけど?いいじゃない、それくらい。多分、今夜でジュンは色々空っぽになって明日の夜はな~んにも出来ないだろうし」
「それに今日は流石にね~…色々偏り過ぎた思って。ちょっと悪い事したかな~って」
反省するにしてももっと別の形で示して欲しかった。
今日の試合で勝った人は参加出来ないというなら明日の優勝者は婚約者以外になるという事。
ボクの身が色々と危険過ぎないだろうか。
だが、しかし…
「よし!明日こそ!明日こそ勝って見せるぞ!待っていてくれ、ジュン殿!」
「特訓しましょう、セラフィーナ様」
「私達は作戦会議をするぞ、ナターシャ!ミース!」
「えー…姉さん達が出ないなら私はもうどーでもいい」
「不戦敗なんて許さんからな!」
セフィさん達とフィービーのやる気が凄い。
いや、他にもマーヒさんやイザベラさん達も。
これはもはや止められないのか…何とか今日と明日を乗り切る術を考えなくては。
「止めなくていいのかね?ジュン君」
「いくらジュン殿でも二日続けては死んでしまうんじゃないですか?」
「…抗う術は我が手には無い…って感じです」
「今、歌ったか?」
「歌ってないよ…というか、助けてくれないんですね、三人とも」
「私はアルテアと過ごすしな」
「私もオリビアとイチャイチャしますから。マルレーネ達の邪魔をする気もありませんし」
「私もクローディアと…アレだから。精々頑張る事だな」
薄情な…何とか、何とか乗り切らねば…!
もし、今夜皆と一線を超えてしまったら…死んでしまう気がする。
シャンタルさんのお父さんと同じ死因で。
ていうか、マルちゃん達もボク狙いなの?嘘でしょ?
「安心して、お兄ちゃん。私が作った秘薬があれば!一晩中励んでも元気ビンビンで!」
「何一つ安心出来ないから。それ使ったらユウとはしばらく口利いてあげないからね」
今までに何度かユウが作った薬の効果は実証されてる。
流石のボクも薬を使われたら…抑えきれる自信は無い。
何とかしなければ…!いっそ逃げるのもありか?
「あ、ジュン?例の転移魔法を封じる装置は設置済みだから。夜の間だけ城に戻るとか出来ないからね~」
「………」
本当に…こういう時のママ上ってば…周到過ぎません?どうしよう…
因みに。ガウリカさんは予定通り…と言っていいのかな。レオさんを指名して一晩過ごしたようだ。
レオさんはもっと嫌がるかと思ったが、一緒に酒を呑むだけだと言ったガウリカさんの言葉を信じたようだ。
翌朝、二人はは非常に仲良くなってるように見えたが何があったかは頑なに話してくれなかった。
二人の顔を見れば上手く行ったのは何となく解かる。
二人はこのまま幸せになってくれればいいのだけど…




