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第545話 再び始まる女の戦い 1

「あらぁ!そうなの?へぇぇ?」


「うん。それでさ…」


「ねぇねぇ、何の話?」


 夏のバカンス初日。

今は昼食にバーベキューの最中だ。

午前中に話してた通り、サイ君はママ上にガウリカさんの事を相談。アンナさんも食いついたようだ。


「わかったわ!恋愛の事なら私に任せなさい!」


「おっもしろそう!私も力を貸すわ!」


「お、おう!」


 予想通りだ。

ママ上なら必ずそう言うと思った。


「ククク…計画通り」


「ご主人様が悪い顔してるー」


「ジュン様がそんな顔するの初めて見たですぅ」


「あー大丈夫大丈夫」


「お兄ちゃんがそんな顔する時は悪ぶってるだけだから。子供のイタズラ程度の事しか考えてないから」


「そうなんですかー?」


 ……今回はそうでもないと思うぞ、妹よ。


「そんな事より…何故にマーヤさんが此処に居るのか、の方がウチは気になるんだけども?」


「私も。他にも四人程新顔が居るよね」


「はい、シャンゼ様。出番です」


「え?ああ、はいはい。私が連れて来ましたー」


「「シャンゼ様…」」


「ちょおっと簡単な取引をしたの。…そんな顔しなくても大丈夫よぉ。私達に手を出さないジュン君が彼女達に手を出す筈が無いじゃない。彼女達からジュン君に手を出すのは禁じてるし」


「…でもアピールはさせてもらいますけど」


 アピールも出来れば止めて頂きたい。

マーヤさんのアピールは過激過ぎるので。


「ジュン様」


「少し宜しいですか?」


「…はい」


 遂に来たか。

サンドーラのダメダメ姉妹。

マルグリットさんとメラニーさんだ。

ジリオさん曰くボクを見返すつもりらしいが。


「今日は御招待頂き、有難うございます」


「心から感謝申し上げます」


「いえ。ベルの御家族は将来は親戚になるのですから。当然の事です」


 そうで無ければ貴女達を招待する事は無かった、と暗に言ってるのだが。気付かないだろうなぁ。


「それから…あの時は失礼しました」


「お母様から教えてもらってようやくですが…自分達が如何に愚かな行いをしたのか、痛感しました」


 ああ…やっぱり自分達では理解出来ませんでしたか。

だろうなぁとは思ってたけど。


「あの時ジュン様に救って頂いたのだと理解しています。ですが…」


「私達よりベルが魅力で勝ってるというのは受け入れられません。このバカンスの間に私達が如何に魅力的か。よく見てください」


「……はあ」


 まーだそんな事言ってるのか。

貴女達の場合、外見より中身に問題があるって事を理解して欲しい。それが解らない限り、貴女達がベルに勝つ事は無いな。


「それでは。他の方々にも挨拶して参りますので」


「また後ほど」


「…はい」


 まだダメなままっぽいな。

ウラリーさんが申し訳なさそうにボクを見て会釈してるし。あの二人は変わってないのだろう。


「あの二人もジュン様狙いみたいですけど…ダメそうですね」


「わかります?」


「はい。ジュン様の御顔を見れば。それが解ってない時点であの二人はダメだと思います」


 だからってマーヤさんなら可能性があるって話じゃないんですけどね?


「ジュンさん。今年も御招待頂き有難うございます」


「マークスさん。楽しんで頂けてるなら何よりです」


 今度はマークスさんが婚約者…いや、妻のヘルティさんとゼフラさんを連れて挨拶に来た。

マークスさんは水着だがヘルティさんとゼフラさんは薄着のワンピースだ。

ヘルティさんは似合ってるがゼフラさんの筋肉質なボディにはちょっと合ってないように思う。


「でも…新婚旅行なら三人だけで行きたかったんじゃ?こんなに大勢じゃ夫婦水入らずとは行かないでしょうし」


「それは王族である以上は避けられませんから。何処に行こうと護衛が付いて来ますし」


「その点、此処なら身内が多いですし。歳の近い人も沢山居ますから」


「手合わせ出来ないのは残念だが…もしもの時はジュン殿の治癒魔法で何とか出来たりしないか?」


「試した事はありませんが流産はどうしようも無いと思います」


 仮に何とか出来るにしても胎児に悪影響は出るだろうし。諦めてもらう他無い。


「そうか…残念だ。サンジェラ殿やガウリカ殿。それにジュン殿の親衛隊。手合わせするに申し分ない者がこれだけ揃ってるのに、我慢しなければならないとはな。来年は絶対にやるぞ!」


 ボクの親衛隊ね…フィービーやナターシャの事かな。

ナターシャは今、食事に夢中。水着のままで。隣でルチーナが口もとを拭いている。

クリステアに負けず劣らずのスタイル。実にけしからん。因みにビキニだ。


 フィービーは恐らくアイとユウの差し金だろう。

白スク水を着せられている。平仮名で「ふぃーびー」とキッチリ書いてあるし。


 そんな二人も世界樹の実で新しい力を得ている。

フィービーは胸を大きくしたいと願わないか不安だったが彼女が得た紋章は『魔剣士の紋章』というレアな紋章だ。剣技と魔法、両方が伸びる紋章でユウの『魔闘士の紋章』の剣士版と言ったとこか。


 ナターシャが得た紋章は『眠り姫の紋章』という…名前を聞いただけてはよく分からない紋章だった。聞いた時には頭を傾げた。睡眠の効率を上げる紋章で、短時間でも通常の何倍もの睡眠効果がある。八時間以上寝たら、どれだけ身体を酷使して疲労していても完全回復するし、軽い風邪程度なら治ってしまう。筋トレの効率を超高効率に出来るのだ。


 オマケに紋章の力で三秒掛からずに眠れる。好きな時に好きなだけ。三時間後に起きるとか十時間後に起きるとかも紋章の力で自由自在。目覚まし時計要らずの能力。ちょっと羨ましい。


 『剛槍の紋章』は自力で『槍聖の紋章』に進化させるつもりらしい。

その為に訓練の効率を上げる紋章を欲し、ゴードンさんに指導して欲しいと思ったようだし。

クリステアとルチーナを超える力を得たいと願うナターシャは、強くなる事に貪欲なのだ。


「私は正直、他の国にも行ってみたかったです」


「あ、ならヤーマンに来ますか?歓迎しますよ。送迎はジュン殿がやってくれますし」


「グンタークでも構いませんよ?復興も大分進みましたし」


「いっそ全ての国を周ってもいいんじゃないかな?バルークは私が案内しよう」


 ヘルティさんに、いつの間にか集まってたダーバ陛下にクローディアさん、ダンテさんがそんな提案をする。いい考えだと思うけど、ボクが送迎するのが当たり前みたいになってない?いいんだけどさ。


「いいなぁ…私達の新婚旅行は何処にする?シルヴァン」


「え?そ、そうですね…僕は世界樹を見てみたいです」


「世界樹…いいかも。お呪いに使える物とかありそう」


「世界樹がある王都エルドはとても幻想的な場所だと聞きました。私も行ってみたいです」


「という事は我が国、グリムモアか。君達が結婚した時に私は国を出てエルムバーンに居ると思うが、姉に頼むくらいは出来る。任せておけ」


「どういう理由でエルムバーンに居るのか知りませんけど。シルヴァン君達の事はお願いしますね」


 セフィさん達はどうやって諦めてもらおうか。

侍女三人組はすっかりセフィさん側に付いたし。

お見合いパーティーに参加して貰う…のは流石に酷いか。


「グリムモアの王族…ハイエルフの方ですか。初めて見ました」


「ん?そう言う貴女は?」


「あ、申し遅れました。私はクオン。ガウル・ダルムダット様の家臣です」


「ふむ。ダークエルフ…いや、ハーフか?」


「はい。私の父がリヴェリーの出身ですが、父も私も、グリムモアの方に思う所はありません」


「そうか。私もリヴェリーの者にもダークエルフという種族にも思う所は無い。私の侍女達もな。他の者と同じように接して欲しい」


「はい」


 そう言えばグリムモアとリヴェリーは仲が良くないんだったか。

事前に確認しておくべきだった。


「ところでジュン様。ジーク様とレベッカ様の恋路はどうなってますか?」


「そうですね…気長に見守るしか無いと思います」


「…そうですか。何とかこのバカンスでジーク様の恋が成就して欲しいのですが」


 それは難しいだろうなぁ。サイ君というライバルもいるし。


「ねぇねぇ、ジュン。午後からはどうする?」


「そうだなぁ…ビーチバレー大会でもやる?今回は男性陣と女性陣で別れて」


「お!いいね!」


「お兄ちゃん!優勝商品は?」


「好きな服とかアクセサリーを買ってあげ―――」


「女性陣は好きな男性と一晩過ごせる権利よ!」


 ザワッと。女性陣の空気が変わった。

突然話に入って来たママ上によって。アンナさんとあれやこれやと作戦を練ってるみたいだから安心してたのに!


「なるほど!ガウリカちゃんが優勝すれば!」


「フフフ…その通りよ、アンナ!」


 あー…そういう事ですか。

そしてガウリカさんが優勝しやすいように仕組む訳ですね。

ていうか今日会ったばかりの二人をそんな状況に放り込むつもりですか。


「でも、それじゃうちの娘達が可哀想だし…参加希望の女の子は多そうだから、幾つかのブロックに分けてブロック毎の優勝者に権利を与えるって事で!」


「そうね。尚かつ三人一組のチーム戦にしましょ」


「それと参戦しない人は賭けに参加出来るようにしましょ。賭けに勝った人には私から秘蔵のお酒を飲ませてあげる!酒好きなら欲しくて堪らない『ユニコーンの涙』!二十年物よ!」


 これまたザワッと。

今度は男性陣…主におっさん連中の空気が変わった。

『ユニコーンの涙』?聞いた事無いけど…美味いのかな。


「という訳でバルトハルトさん。『ユニコーンの涙』について説明を」


「『ユニコーンの涙』は酒好きなら誰もが知ってる有名な酒です。酒造りの天才がその生涯をかけて作ったとされる酒で…その天才は既に他界している為に世界中探しても、もう残っていないだろうと言われていましたが…まさかアンナ様がお持ちとは」


「それも二十年物…もし売りに出せばどんな値がつくか。想像も着きませんな。いやはや、まさかわしが生きている間にお目にかかれるとはのう」


 そんな貴重な酒をこんな賭けの景品に?いいのかなぁ…ユーグ陛下が驚愕の顔してるけど。


「おい…アンナ。余はお前がそんな酒を持ってるなど知らなかったが?」


「言ってないもの。ジュンちゃんを説得するのに使えるかなって思って確保しといたんだけど。使う機会無かったしね。私はお酒にそれほど興味無いし」


「それにしたって…確保するのに大金が掛かったでしょ?」


「いいえ、タダよ。無料」


「…どういう事です?」


「だってこれ、エスカロン・ガリアの私室に有った酒だもん。言わば戦利品ね」


「「「……」」」


 尚の事いいんだろうか…ユーグ陛下は諦め顔で首をふってるし、いいのかな…


「解ってるじゃない、アンナ」


「フフフ…これで男性陣の大半は賭けに周る。ジュンちゃんの優勝は濃厚よ!」


 それが狙いか…というか、そんな事堂々と口にしていいんですか?


「それで、男性陣の優勝賞品は何です?」


「そうね…好きな女性の胸を好きなだけ揉めるわ。人妻も可!」


 ダメでしょう。人妻はダメでしょう。

まぁ夫の目の前で人妻の胸を揉むような度胸の持ち主はいないだろうが。


「じゃあブロック分けと対戦表の作成は私とアンナでやるから」


「参加希望の人はチームメンバーの名前を書いた紙を私かエリザに渡してね」


 という訳で。唐突に開催が決定したビーチバレー大会。

ほどほどの景品でそれなりに朗らかに楽しむつもりだったのに。

既に皆は真剣過ぎる表情。怖いくらいなんだが。


「ジュン様、超真剣な表情ですねー」


「ジュン様なら言えば誰でも揉ませてくれると思いますが…」


「誰の胸を揉むつもりなんスか?」


「…婚約者の胸を守る為に頑張るだけですとも」


 決してこの機会に婚約者以外の…カトリーヌさんかアレキサンドリスの三つ子姉妹の胸を揉もうなんて考えてません。……決して。

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