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第540話 神の島 12

 容器の中に居たのは世界樹の現身、或いは化身と呼ぶ存在。ユグド・ラ・シルだった。


「ど、どういう事でしょう?世界樹様が誘拐されて此処に居るという事でしょうか?」


「そうじゃないよ。だとしたらグリムモアは大騒ぎになってる。でもセフィさん達を送った時、何か起きてる様子は無かった」


「では…アレは一体…?」


 多分アレはコピー…クローンだろう。

世界樹の化身のクローンを作るなんて、どんな技術を使えば出来るのか全く理解出来ないが…そうとしか考えられない。だけど…これをノエラ達にどう説明するか…ううむ…


「えっと…上手く言えないけど、この子は世界樹様と同様の存在で、神族によって創られた存在だと思う」


「作られた…神族に?」


「そう。少なくともボク達が知る世界樹様と同一では無いよ。だってこの子、見た目五歳くらいだけどボク達が会った世界樹様はもう少し大きかったよね?」


「言われてみれば確かに…ではこの子は本当に創られた存在だと?」


「うん…グリムモアでさ、テレサ様が言ってた事覚えてる?」


「あ…誰かが世界樹様に何かしたから世界樹様が不調になったという話ですか?」


「そう。それってこの子を創る為でもあったんじゃないかな。只の憶測だけど」


 最初はバカ神が世界樹がこの世界の要の存在なのかを調べる為にやった事が不調の原因だと思っていた。

だけどそれだけじゃなかったようだ。


「でも…結局は此処は廃棄されたのですよね?」


「此処に居る魔獣共々…生命を創っておいて、随分と身勝手な話ですな」


「んー…それについては何とも。目的を達したから引き上げの途中という可能性も。勿論、要らないから施設ごと捨てた可能性もありますけど…」


「あの…ジュン様。神族は何の為に世界樹様の化身を創ったのでしょう?」


「ジュン様の推測通り、此処が魔獣の進化させる事を研究していたのなら…世界樹も進化させるつもりで?」


「まさか。この子に限っては何か別の目的があったんだろうけど…わからないな」


 仮に世界樹が進化するとして。それは一体どんな存在なのか。

全く想像が出来ない。神にでもなるんだろうか。


『あ、あのさ。もしかして俺が捕まってたのって…』


「想像通りだと思いますよ。貴方を神獣白猿から別の何かに進化させるつもりだったんだと思います」


『マジかよ…怖えぇよ…』


 結局、それはされなかったわけだが。しかし、この子はどうするべきか…


「この子だけじゃなくてさ。他の魔獣もどうする?放っておけない、危険な奴が多いよね。上のと違って、この部屋には」


「…だね。少し可哀想に思うけど眠ってるうちに始末して―――」


『あちゃあ…侵入者って君達かぁ。参ったなぁ』


「! この声…」


「エルミネア教国で聞いた声と同じ…」


 間違い無い、バカ神の声だ。やはり此処はバカ神が作った施設だったか。


『メイドから侵入者有りの報告を受けて来てみれば…まさか君達だったとはねぇ。参った参った。どうしよっかなぁ』


「悩んでる所悪いが質問に答えてもらおうか。この施設を作ったのはあんただな?何を研究していた?」


『ん?魔獣の進化だよ』


「…世界樹の化身のクローンも進化させるつもりで?」


『その子は違うよ。その子で何をするのかは秘密』


「なら…あの悪趣味な人形は何だ?」


『人形?何の話?』


「此処の一階にあった自分で動く人形の事だ」


『ああ!アレね!アレは完全な失敗作。ゴーストに肉体の変わりに人形を依代とする事で擬似的に蘇生させてから進化出来ないかを試したんだけどね!ゴーストって元々狂った存在ばかりだから。人形の身体を手に入れても狂ったままでさ。オマケに人形から出ようとしないし』


 という事はつまり…アレの中身はゴースト……聞くんじゃなかった。


「次の質問だ。何故魔獣を進化させる術を探してた?」


『君の為だよ』


「…何?」


『君が強くて危険な魔獣を倒したとなれば?君は有名になり人々から愛される存在になるだろう?君が望んだ通りの事だ』


「何を…」


 それは…確かに前世で世界が終わる寸前にそんな事を願った。

あの時の事を言ってるなら、バカ神は前世からボクの事を知っていた事になる。だけど心当たりが無い。


「……つまりは此処で進化させる事に成功した魔獣をボクが倒すように仕向けたと?」


『うん。その通り。ああ、君はよくそういうのに遭遇してるみたいだけど、全部が全部僕の仕業じゃないよ?あまり大きな被害が出ないように気を使ったしさ。僕が送ったのはアリとゴブリンくらいなもんさ。他にもあったような気がするけど』


「ゴブリンって…」


 ゴブリン・エンペラーの事か。アイツに武具を与えたのもバカ神で間違ってなかったわけだ。


「他にも送ったんだろう?ギガロドンやアンモナイトもあんたの仕業じゃないのか?」


『ギガロドンってのはデッカい鮫の事?アレは僕じゃないよ。どっちかと言うと其処の白いお猿さんの仕業かな』


『え?俺?』


『そ。珍しい存在だから調べてみたけどさ。アレは君の肉を食べた事で異常進化した個体だったんだよ。よほど体質に合ったんだろうねぇ。アンモナイトってのは何の事なのかサッパリだね。ただ、ここで働いていた僕の子供達…神族の仕事の可能性はあるけど』


 そう言えばさっきメガロドンに囓られたって…まさかギガロドンを作った元凶は白猿兄だったとは…確かに時期は合う。


『うーん…しっかし困ったなぁ。よりによって君らに見つかるとはねぇ』


「…この施設は廃棄したのか?」


『うん。後は残った魔獣を逃がすのと、その子の回収だけだったんだけどね』


「残念だったな。この子はボクが預かる」


『それは困るなぁ。仕方無い…あまり力を使いたくないんだけど』


「何を…」


「あっ!」


「女の子が消えたですぅ!」


 転移?この場に居ないのに…流石は神様か…くそっ。


『それから後は…お猿さん、命の恩人の頼みを聞いてくれないかな?』


『な、何だよ…嫌だよ。何か怖えもん』


『そう言わずに。ほら、走る!』


『な、なん…なんだぁ!?身体が勝手に!』


「あっ!ちょっ、待て!」


 白猿兄が向かった先は…さっきユウが操作してたこの部屋の操作パネル?


「もしかして…」


「ユウ?アイツが何をするのか、解るの?」


「多分…さっき操作した時に見つけたんだけど…使う必要も無いから黙ってたの。アレにはこの施設を爆破するコマンドが…」


「それって…」


 要するに自爆か!冗談じゃないぞ!


『いいかい?言うとおりにボタンを押すんだ』


『わ、わかったよ…』


『良い子だ。じゃあ…上上下下左右左右BA』


『ええとぉ…これか。上上下下…』


[最上位極秘コマンドが入力されました。当施設は五分後に爆破されます。施設内に居る職員は直ちに退避して下さい。繰り返します。施設内に居る職員は直ちに退避して下さい]


『えええ!?爆破!?』


『安心しなよ。ジュンが居れば大丈夫さ』


 間に合わなかったか!やっぱり自爆か!


『さて…じゃあね、ジュン。近い内に直接会おう』


「待て!まだ聞きたい事が二つある!」


『お、おい!そんな事より早く逃げないと…』


「黙ってろ!」


『はいい!』


『…何だい?』


「あんた、魔獣だけじゃなく、戦争にも介入していたろう。エスカロンに巨大ゴーレムや進化の宝玉を渡したり。教皇には神器を渡したり。何故だ」


『アレも君の為…だけじゃなくてね。アレは純粋に出来るだけ犠牲者が少なくて済むようにシミュレートした結果、ああいう形での介入になったのさ』


「…戦争を起こす後押しをするのが?犠牲者を出さずに済ませたいならあんたが神託を出すなりして止めさせればいいだろう」


[爆破まで残り四分。職員の方は速やかに退避してください]


『…は、早く逃げた方が…いいんじゃないかなぁ~…て』


 残り四分…大丈夫だ。十秒もあれば余裕で転移出来る。


『エスカロンの方はそれで先延ばしは出来たかもね。でもいつかは必ず戦争を起こしてただろうね。そして教皇の方は僕が止めようと確実に戦争を起こしていたよ。神器を渡さなければ真正面から戦って双方に多大な犠牲が出る大戦に発展してた。どちらの戦争も僕が介入して、君が初期の段階から関わる事で最小限の犠牲で済んだんだ。もし、ヴェルリア王国と小国同盟の戦争に君が最初から関わってなかったら。僕の予測ではヴェルリア王国が勝利するものの、ヴェルリア王家の殆どが死亡。人口は四割減。小国同盟も人口が似たような状況になってたかな』


「………」


 ボクが関わらなければカタリナさんやマークスさん達は死んでいた…?

小国同盟も似たような事に…メリッサやマリーダさん、カミーユさん達も死んでたと?

そりゃそういう可能性がある事は確かだろうけど…


「……最後の質問だ。あんた、まるで大昔(・・)からボクの事を知ってるような口ぶりだな。だがボクはあんたの事を知らないぞ。ボクの為とか言ってるが何故ボクに構う?」


『それは…いずれわかるよ。じゃあね、愛しい子よ』


「子…?」


 …消えた、か。姿を見せずに転移させたり神獣白猿を操ったり…流石は神と認めざるを得ないか。


[爆破まで残り三分。職員の方は速やかに退避してください]


『お、おい!話が終わったなら早く逃げようぜ!』


「そうですね。皆揃ってるね?」


「ああ。だがちょっと待ってくれ、ジュン様」


「何かあるの?セバスト」


「ニーズヘッグだけでも確保しないか?折角だし」


「ですな。アレはいい酒の肴になりますからな」


「兄さん…」


「お祖父ちゃん…でも僕も欲しいかも…」


『お前らおかしくない!?何でこの状況でそんな事考えてんの!?』


「転移魔法がありますから。貴方も知ってるでしょうに」


 とは言え。急いだ方がいいな。早いとこ済ませて…


『倒したよ、ご主人様』


「…早いね」


『うん!あたしもこいつの肉美味しくて好き~』


 まぁ、確かに美味かったけどね、こいつ。


[爆破まで残り二分。職員の方は速やかに退避してください]


「…じゃあ逃げるよ。皆集合」


「「「は~い」」」


『早くしようぜ!』


 魔獣の意図的な進化。それに世界樹の化身のクローン…一体何をするつもりなのか。

神様に報告…してももう何も掴めないと思うけど。でも何か…不安だな。

世界樹の化身のクローンを奪えなかった事が致命的な何かにならなければいいのだけど…

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