第537話 神の島 9
『げっふぅ。干し肉にしちゃ美味かったぜ。ありがとな』
「ああ…備蓄の干し肉、全部食っちまったな…半分はアイシス殿だが」
「う…だって食べるの見てたらお腹空いちゃって…」
「それで…白猿兄はどうします?帰るなら転移魔法で送りますけど」
『そうだなぁ~お前らはどうすんだ?」
「ボク達はこの場所の探索を続けます」
『ならそれが終わったら故郷まで送ってくれよ。助けてくれたのと干し肉の礼に付き合ってやるからよ』
…何故だろう。普通神獣が協力してくれるとなれば心強い気分になると思うのだが。
彼が着いて来るのはマイナス要素な気がしてならない。
「…そうですか、有難う御座います。ただ、この建物には貴方にとっても未知の存在がいるし、罠なんかもありますので、こちらの指示に従って貰えますか?」
『んあ?未知?…仕方ねぇな。確かにこの部屋もよくわかんねぇもんばっかだし』
「御願いしますね」
部屋を出て探索を続ける。この部屋の残りの魔獣はやはり放っておく事に。
「で、次は何処に?」
「まだ下に下りる階段があったでしょ。左右に」
「どちらから行きますか、ジュン様」
探査魔法で調べた結果。階段の部分は魔法が阻害されなった。
左右の階段は降りた先で繋がってる。どちらから降りても問題は無い。
『こっちから行こうぜ!何となく!』
「待った、待ってください。罠があるかもしれないと言ったでしょ。安全の為ゴーレムを先に行かせます」
『お?おう』
やはり不安だ…注意力と危機管理能力が乏しい。
神獣とはいえ、野生に生きる獣である筈なのに。
「…クリステア、頼むよ。色々と」
「…はい。お任せください」
クリステアなら白猿兄が何かやらかしても護ってくれる筈だ。
ボク達も白猿兄も。勿論、ボクだって何かあればフォローはするが。
長い長い階段を下りた先には少し大きめの扉。
その扉は簡単に開いたのだが、扉を抜けたは広く天上も高い大部屋。そして部屋の中にはアンドロイド型メイド数十体並んでおり、その奥には魔獣が横たわっていた。
『侵入者を確認。迎撃作戦を開始します』
『『『『迎撃作戦を開始します』』』』
『何だ?アイツらは…どわあああ!』
こちらの姿を確認するなり攻撃して来た。
一瞬でゴーレムは粉々のバラバラに。ボクの結界とクリステアの防御が間に合い、ボク達は無傷だ。
『おい!何だよ、アレ!』
「言ったでしょ、未知の存在が居るって。防御無しであの攻撃に当たったら神獣といえども無事じゃすみませんから、迂闊な事しないでくださいね」
『お、おう』
「…それで、どうしますかなジュン殿」
「相手の攻撃は届くみたいですけど。こちらからは弓と魔法くらいしか反撃の術がありませんね。私の『断空断斧の紋章』では遠すぎて有効打は難しいですし」
『お前ら冷静だな!こんな激しい攻撃されてるのに!』
メイド型アンドロイドの武装はより一層重火力になっていた。
台座固定型重ガドリング砲。九連装ミサイルランチャー。ロングレンジライフルによるスナイピング。
そして二戦目でも使っていたロケットランチャー等だ
この世界の軍隊相手なら軽く蹂躙出来そうな装備…何を考えてこんなの用意していたのか。
「この状況ならやっぱり…魔法と弓だね。リリー」
「はいですぅ!」
『ようやく僕達の出番だね、マスター!』
リリーの弓と魔法を主力に攻撃を開始する。
アンドロイドは所詮メカ。ならば強力な電撃であっさり撃破出来る…とか思ってたのだが。
「効いてない?」
「電撃に対してのみではなく、魔法いに対して強力な防御が施されているようですね。あのメイド型アンドロイド?だけでなく武装にも」
「魔法は確かに効果が薄いようだな。だがリリーの弓は効いてるな」
「新しい力で破壊力が増してますもんねー。弓とは思えない威力です」
「えへへ!リリー無双ですぅ!」
リリーが得た新しい力『音の紋章』。
最初はどういう紋章か想像がつかなかったが、簡単に言えば振動波を操る事が出来るのだ。
音とはつまりは振動。空気や水等によって振動が伝わる事で音が聞こえる。
『音の紋章』はその振動を増幅したり減衰させたり振動する方向を操作したり出来る。
実はステファニアさんも『音の紋章』を持っていて、ステファニアさんの必殺技『ビッグインパクト』は『音の紋章』の力による技で、ハンマーで叩いた時に出る音・振動を増幅し方向を一定にする事で衝撃波を生み破壊力を増しているというのがビッグインパクトの正体だ。
リリーの弓の場合は矢に紋章の力を込めてから放ち、矢が刺さった瞬間に出る音を増幅、相手の体内に向けてのみ振動が伝わるように方向を指定。内部から破壊というやり方で矢の攻撃力を上げている。
『弓聖の紋章』の弓気とも併せれば弓矢とは思えない破壊力だ。ウルのサポートもあってほぼ百発百中。
遠距離からの撃ち合いとなればリリーに勝てる存在はそうはいないだろう。
弓においてリリーは世界最強と言ってもいいかもしれない。メイド型アンドロイドを次々と撃破していた。
『状況は不利と判断。最終作戦を開始します』
『『『『最終作戦を開始します』』』』
何だ?最初から気になってたがあの魔獣に何かするつもりらしい。
というか、あの魔獣見覚えがあると思ってたけど…
「どっかで見た事あると思ってたけど…ベヒモスだよね、アレ」
「だよね。ウチも見覚えあると思ってた」
「どうやって此処まで運んだんだか」
ボク達が来た入口から此処までの道じゃあのベヒモスは通れない。
なら別口があるのか?もしくは転移魔法とか?
「でも、今更ベヒモス一匹程度で何をするつもりだろ?」
「だよな。どう考えてもアイツらよりベヒモス一匹の方が弱いだろ」
「でも…ベヒモスに何かしてるよ?」
何だ、あれ?超巨大な注射器?
人に使えば大穴が空き過ぎて注射器としての意味をなさないだろう大きさの注射器だ。
メイド型アンドロイドが数体で持ってベヒモスに注射してる。
ボク達もそれを黙って見てる訳では無い。
嫌な予感がするので攻撃して邪魔しようとしているが、数体が日本の機動隊が持つような盾を持ってガードしてる為に邪魔が出来ない。
『グ…グルゥ…グォォォォ!!』
「何か苦しんでるよ」
「でも筋肉が盛り上がってデカくなってない?」
それどころか毛色も変わって…黒色から赤…赤黒い色に変わった。
これはまさか…魔獣が進化してるのか?
「何らかの薬品を用いて魔獣を強制的に進化させた?」
「ベヒモスを進化…元々ベヒモスは討伐難度Sの魔獣ですよ?それが進化したら…」
「ビッグ・モス並の危険な存在になるって事ではありませんか?」
しかも今回はビッグ・モスの時のようにゴーレムで相手の能力を探る事は出来そうにない。
ぶっつけ本番でやるしかないのか。いや、しかし今回はアイシス達も居るし白猿兄も居る。何とかなるか?
『………』
あ、ダメだ。白猿兄は役に立ちそうにない。ガタガタ震えてビビりまくってる。
『最終作戦実行。侵入者の排除を再開します』
『『『『排除を再開します』』』』
そうだった、まだメイド型アンドロイドが居るんだ。
進化したベヒモスと残ったメイド型アンドロイドが八体。
これも討伐難度を決めるなら難度SSSになりそうだ。
『グオオオオオオオオ!!!』
『……ハフン』
「あ。気絶した」
白猿兄はもはや完全なお荷物…気絶した白猿兄を護りつつ戦わないとダメなのか……




