第535話 神の島 7
「此処は鳥類を研究してたのかな」
「そんな感じだね」
「うん。ちょっと鳥っぽい匂いがするよ」
メイド型アンドロイドを破壊した後。右側の部屋を調べている。
アンドロイドは別の誰かに回収されると面倒な事になりかねないので、魔法の袋に永久封印するつもりだ。
この部屋は鳥籠が多くあり、ダチョウとか飛べない鳥用の檻もあった。
やはり各部屋毎に研究する対象を分けているらしい。
「この部屋はもういいか。次の部屋に―――」
「ジュン様、何か来ますぅ。複数ですぅ」
「この匂いはさっきのと同じのだよ」
まだメイド型アンドロイドが居るのか。
しかも今度は複数で。さっきのアンドロイドが破壊されたのに気が付いたのか?
「さて、このままこの部屋で迎撃してもいいけど…次は誰がやる?」
「はい!はいはーい!僕がやるよ!」
「ん。なら私もやる」
「複数というなら私も新しい力を試すとしますかな。護りは御願いしますぞ、クリステア殿」
「はい、任せてください」
次は勇者パーティーで迎撃か。
セリアたんはまともに銃撃を受けたら死んでしまうがクリステアの援護があれば問題無いだろう。
光の盾を出す腕輪もあるし。
「じゃ、行って来るよ!」
「あ、待って。一応交渉出来ないか試してみるから」
「えー?さっきのと同じのが来てるなら交渉は無理っぽくない?」
そんな気は確かにするが…こちらの情報を全体で共有してるのか確認しておきたい。
廊下に出るとアンドロイド達は丁度角を曲がったとこだった。数は五体。
「先程は失礼。此方には戦闘の意思はない。話合いに応じて頂きた――」
『侵入者を発見。排除行動に移ります』
『『『『排除行動に移ります』』』』
問答無用か!
やはり情報は共有していて、ボク達はもう侵入者として認識。覆らないらしい。
少なくとも、もうアンドロイドとの対話は不可能だ。
それによく見れば武装してるし。
ガドリング砲に対戦車ライフルか?ロケットランチャーまであるな。
そして近接兵装にチェーンソーを持ったアンドロイドが二体。
施設が壊れるのはお構いなしなんだろうか。
「じゃ、僕が切り込むよ!行くよメーティス!勇者王アイシスのデヴュー戦だよ!」
『はいな!』
勇者王アイシスね…そのまんまだな。
アイシスが得た新しい力は『勇者王の紋章』…なんと『勇者の紋章』が進化したのだ。
基本的な能力は同じだが、アイシスの能力は大幅に向上。燃費も良くなったので全力戦闘可能時間も伸びた。
そのアイシスはガドリング砲の弾を避け、対戦車ライフルの弾を剣で防ぎロケットはすり抜けざまに切り落とした。
そして瞬時に敵陣に入り込み、チェーンソーを持ったアンドロイド一体を瞬時に破壊した。チェーンソーを持ったアンドロイド残り一体と相対している。
「セリア、頼む」
「ん。もう掛けた。いってらー」
「そのおかしな言葉は何とかならんか…?」
セリアさんが得た力は『支援者の紋章』。その名の通り仲間の支援に特化した紋章となる。
補助魔法の効果が向上。他にも探査魔法の精度、範囲。結界魔法の強度等が増した。
ボクのオリジナル魔法『トゥルー』や『インビジブル』もすぐさま習得してしまったし、セリアさんの魔法はサポート面に特化した形になる。
「ふむ。今までよりも確かに高い効果の補助魔法だ。これならば…見える物を斬るのは容易い」
バルトハルトさんが得た新しい力は魔眼だ。
『鷹眼』という魔眼で、簡単に言えば動体視力がかなり良くなる魔眼だ。
今のバルトハルトさんにはガドリング砲の弾一つ一つが見えてる筈。
それと千里眼程ではないが遠くの物も良く見えるようになるし近くの物も良く見えるようになる。
老眼で悩んでたのが影響したのだろうか。
「おー…弾を全部斬ってるね」
「流石剣聖ですねー」
「剣聖なら誰でも出来る芸当という訳ではないと思うけどな」
「私達の出番は無さそうですね」
ノエラ達も早く実戦で新しい力を試したいらしい。ちょっと残念そうな顔をしている。意外と好戦的な面があるよね、君達。
「ジュン、終わったよー」
「ん。楽勝」
「またつまらぬ物を斬ってしまった………こ、これでよろしいのですかな?アイ殿」
勇者パーティーにとってアンドロイド達は敵では無く、戦闘は即終了。一分も掛からず終わっていた。
そして……やはりバルトハルトさんに余計な事仕込んでいたか、アイ。いい顔でサムズアップしてるんじゃない。
「それにしても…何なのですかな、これは。全て同じ顔、同じ服装。警備防犯用のゴーレムのような物のようですがメイドの恰好をさせる意味は?」
「様式美でしょうね。それに防犯だけじゃなく建物内の清掃もさせてるんだと思います。今まで見た部屋は綺麗だったでしょう?」
「掃除、ですか?何故警備用のゴーレムに?掃除をさせるなら、それ用に分けて用意した方が良いのでは?」
「普通はそうなんでしょうけどね。さぁ、探索を続けましょう」
新たに倒したアンドロイドも回収して奥へ。
十字路の奥はT字路になっており、正面には扉。左右の奥には更に下に降りる階段があるようだ。
「あのアンド…メイド達は下から来たのかな」
「それかこの扉の先か。下には後で降りるとして、先ずは…ノエラ」
「はい。確認します…大丈夫です。罠はありません」
今までも罠など無かったが念の為だ。
案の定、此処にも罠も鍵も掛かって無かった。
故に、また空っぽの部屋かと思ったのだが…此処は様子が違った。
「何、これ…これじゃまるで…」
「あのマッド爺の研究施設と同じ…」
扉の先にはガラスの容器の中で何かの液体に浸かった魔獣達が並んでいた。
現代地球ではSF映画やゲームなんかで見た光景だが、生で見るとあまり気持ちのいいものじゃない。
「これ…生きてるの?」
「まさか…人魚族でもないのに全身液体に浸かって生きていられる筈がありません」
「でも、これ…微妙に動いてるわよ、姉さん」
確かに生きているようだ。
ゴブリンやロックモンキー。ハーピーやシザーマンティス。マンドラゴラまで居る。
やはり此処では魔獣の研究をしてたようだが…一体どんな研究を?
マッド爺のように人と魔獣の合成、何て事では無さそうだが…
「凄い数…百は軽く超えてるかな?」
「だな。どうする?ジュン様」
「今なら楽に始末出来ると思いますが」
…人に有害な魔獣ばかりだし、容器ごと破壊して始末するのは簡単だけど…やめておこう。
何となくいい気分しないし。
「やめておこう。幸い、それほど危険な魔獣はいないようだし。魔獣は放って置いて他に何か残ってないか、調べて行こう」
「……あ。そうも行かないかも、ジュン」
「あ。お兄ちゃん、あれ…」
「え?」
アイとユウが指差した先。
その容器の中には神獣白猿が眠っていた。




