第534話 神の島 6
神族の遺跡で元は何らかの研究施設だったと思しき場所。その地下室の壁にコンセント。
剣と魔法のファンタジー世界にあってはおかしな物。
研究に必要だったのだろうけど…フォローの効きにくい物を。
「(どうする?ジュン)」
「(スルーするしかないんじゃない?私達には使いようが無いし)」
「(うん…でも一応確かめてみるよ)」
自分でやるのは…止めておこう。
ゴーレムに…何か適当な物無いかな。
「誰か…細長い金属製の物持ってない?針金みたいな」
「あります。針金で宜しければ」
「…聞いといて何だけど、何で持ってるの?」
「拷問用です」
「ああ、そう…兎に角、ありがとう。貸してくれる?」
「はい。どうぞ」
針金を拷問にどう使うつもりなんだ、ノエラ。
て、聞くのが怖い。
「ですが針金を何に使われるのですか?ジュン様」
「ちょっと確認したい事があって」
ゴーレムに針金を持たせてコンセントに差し込ませて見る。すると…
「きゃっ!ビックリしたですぅ!」
「今のは…罠ですか?電撃攻撃のようですが」
「ジュン様の部屋の扉と同じ罠ですね」
それは違います、クリステア君。
何にせよ、これでこの研究所の電源は生きているのが分かった。どういう発電システムかまでは分からないが。
とりあえず…
「今やった行為は大変危険です。場合によっては命の危険に繋がる重大な事故になりかねません。良い子は決して真似しないように」
「ウチとの約束だよ!」
「はーい!」
「…はあ。真似しようとは思いませんが…」
「ジュン様とアイ様は何処を見て誰に言ってるんだ?」
強いて言うなら世界に向けて。
…ま、兎に角探索を続けるてしよう。
水槽が置いてある一つ目の部屋から出て隣の部屋へ。
隣の部屋は檻…いや、動物用のケージがあった。
リスとかモルモットとか入ってそうな大きさの物から大型の動物…馬やゴリラとかが入れそうな物まで。
大小様々なケージが置いてある。それと机と椅子があるだけの部屋だ。
「さっきの部屋ジュン殿曰く魚の部屋。此処は動物…魔獣もでしょうかな?」
「魔獣は居なかったんじゃない?魔獣ならこんな檻、簡単に壊せるでしょ?」
「アイシス、そうでも無さそう」
「相当な頑丈さを持った檻です。アダマンタイト製では無さそうですが…それに近い硬さです。並大抵の力では破壊出来ないでしょう」
クリステアがガンガンとケージを叩く。
そしてクリステア曰く、アダマンタイト製では無いがそれに近い硬さ…まさかとは思うけど。
「ユウ、鑑定してみて」
「え?うん……あー…チタン合金だってさ」
うわぁ…やっぱり。薄々感じてたけど、この施設ってボク達が居た世界…現代地球から持って来た技術で作られた施設じゃなかろうか。
何故わざわざそんな事をしたのかは分からないが…
「チタン合金?聞いた事の無い金属です…神族が作った新しい金属なのでしょうか?」
「ステファニアさんのお土産にすれば喜びそうですねー」
確かに喜びそうだけど…止めておこう、何となく。
「それを持って帰るのは止めておこう。それよりハティ。動物の匂いは残ってる?」
「んー…ほんのちょっとダケ。近くまで行けば何とか」
「どんな動物か魔獣が居たのかまでは分からない?」
「ええとぉ…トカゲとかゴブリンとか?」
「うわぁ…悪趣味」
まさかペット目的で飼ってた訳じゃないだろうから趣味ではないだろうけど。あまり見ても楽しくは無さそうだ。
「他に馬とか猪とかも居たっぽいよ」
「それにしては…檻の中に毛の一本も残って無いね」
部屋の中もゴミ一つ無い。実に綺麗。まるで誰かが掃除してるかのような綺麗さだ。
「此処は綺麗に片付けてるのに、どうしてあの人形は放置なのよ」
「まさか本当に忘れただけだったりして」
もしくは面倒だっただけかのどちらかと思う。
檻のある部屋の隣も倉庫だった。
まだ四部屋しか調べてないが、研究部屋とその隣は研究に沿った倉庫という並びになっているのかな。
左側にあった部屋は以上の四つで。
次は反対の右側を調べよう。と、思ったのだが。
「ジュン様、何か歩いて来るですぅ」
「何か来るよ、ご主人様」
「数は?魔獣かな?それとも人?」
「数は一人…いえ、一匹?一体?聞こえる音が何か変ですぅ」
「えっと…鉄っぽい匂いと…何だろ?」
鉄?ゴーレムの類だろうか。
リリーが一人とか一体とかって迷ったって事は人型のゴーレムとかか?
「もうすぐあの角から出て来るですぅ」
「クリステア」
「はい。皆様、私の後ろへ」
角から姿を見せたのは…メイド?
箒とちり取りを持ったメイドさんだった。
「人?」
「でもどこか人っぽくないような…」
「あー…ボクが話してみるよ。失礼、貴女は――」
『職員の方ですか?職員の方ならIDカードを御提示ください。お客様であれば御名前を御教えください」
「あいでぃーかーど?…って何?セリア」
「知らない」
「(お兄ちゃん、もしかしてアレ…)」
「(うん…そんな気がする)」
もしかしなくてもこのメイド…ロボット?いやアンドロイドか?
此処を作った神族、いや神様か。ファンタジーな世界にSFを持ち込むとか。
一切合切許容しないとか言うつもりは無いが、これはやりすぎだろう。
というか何故此処を引き上げる時に一緒に持って行かない?
「えっと…ボク達は職員ではありません。ボクの名前はジュン・エルムバーン。此処に来た目的は…此処の調査です。此処の責任者、代表の方が居るなら取り次いで頂けますか」
『ジュン・エルムバーン………検索の結果、当施設に入る事を許可された者の中に該当する名前はありませんでした。一度当施設から退出し、アポイントメントを取ってから改めてお越しください。本日は速やかに当施設から退出ください』
「アポイントメントって……では、誰にアポイントメントを取れば?連絡先を教えて頂きたい」
『速やかに退出してください』
「ですから…」
「ねぇ、君。君の雇い主とか居ないの?居たら会わせてよ」
『マスター、今はジュンはんに任せて黙っといた方が…』
『退出の意思が無いと判断。対象を侵入者と断定。排除行動に入ります』
「えええ!?何でいきなり?僕?僕のせい!?」
「いや、アイシスのせいじゃないけど…取り合えず戦闘態勢!」
箒とちり取りを捨てたメイド型アンドロイドの手が…パカっと割れた。
そして中にあったのは御約束のマシンガンだ。
「な、何あれ!?ていうか人間じゃないの!?」
「何かを飛ばす物でしょうか…飛び道具の類だと思います。クリステア」
「はい!『守護神の紋章』を使います!」
クリステアが世界樹の実で得た新しい力『守護神の紋章』。
『大盾の紋章』が変化して得た上位紋章だ。
『大盾の紋章』の上位紋章は『金剛盾の紋章』だけだと思っていたのだが、かなりレアな紋章で世界中探しても所持してる人は極僅か。ボクの『天地剣の紋章』並にレアな紋章らしい。
『金剛盾の紋章』が自分を護る事に特化した紋章なら『守護神の紋章』の紋章は仲間を護る事に特化した紋章。
紋章の力で仲間の一人一人を盾気の膜…バリアーで包む。勿論自分自身も。
【アテナ】の力も併せればボク達は防御面ではほぼほぼ無敵。
クリステアが居れば怪我をする事はもう無いかもしれない。
「でも怖ー!マシンガンで撃たれるの、怖ー!」
「何あれ!?何なのあの武器!」
「壁や床が削れてる…何か堅い物を高速で連射してるようです。連射式クロスボウに少し似てますね。迫力が段違いですが」
「さっきから冷静だね、ノエラさん!」
クリステアが前に出て盾を構えてる御蔭で殆ど弾丸は飛んで来ないが…それでもマシンガン連射の迫力は凄い。
前世でマシンガンを撃たれた経験なんて無いし…この世界で色んな経験をして来たが、思わず怯んでしまった。
「クリステアの御蔭で撃たれても平気なのは解ってるんだけど」
「ジュン、そろそろ反撃しよ」
「アイ様、私がやります。お任せくださ―――」
『マシンガンでは侵入者に効果が無いと判断。グレネードランチャーを使用します』
「はあ!?」
おいいい!マシンガンどころかグレネードランチャーまで仕込んでるの!?
「今度は何!?脚が割れて…何か出て来たよ!?」
「まるで死神と呼ばれた男ね!」
「アイはこんな時に何言ってんの!?」
アレか。九人の戦鬼と呼ばれたサイボーグ戦士チームの一人か。いや、そんな事言ってる場合じゃなく!
「撃たせるな、ルチーナ!」
「はい!『断空断斧の紋章』を使います!」
ルチーナが得た新しい力。
斧系紋章の上位紋章『断空断斧の紋章』だ。
その能力は空間を超えて斬撃を飛ばせるという物。
例えば壁の向こう側に在る物を、壁を斬らずに斬撃を浴びせる事が出来る。
ボクの【アトロポス】と似てるが【アトロポス】の選択する能力ではあくまで剣が届く範囲での事。
だがルチーナの空間を超えて斬るという能力は射程距離がかなり長い。
目視出来る距離なら届くようだ。
但し、あまり遠くだと威力が落ちてしまうようだが…この距離ならば問題は無い筈。
「フッ!」
『グレネードランチャー、発、射…』
メイド型アンドロイドの頭が上から下までパカっと割れた。
アンドロイドなら頭が割れても動くかも…と、思ったがどうやら活動を停止したらしい。
自爆もしなさそうだ。
「何だったんでしょう…人間ではないのは確かなようですが」
「かと言ってゴーレムでもありませんな。喋るゴーレムなど聞いた事がありませんし、ある程度は自分で判断して動いているようでしたし」
「それにこの中身。何だ、こりゃ?一体何で出来ている?一階にあった人形とはまた別の何かみたいだが…」
「…神族が造った物だからね。理解出来ない物が出て来ても不思議じゃないでしょ。コレについて考えるのは後にして、先に進むよ」
アンドロイドの中身なんて現代地球の知識を持つボク達にとってもオーバーテクノロジー。
多分、ボク達が居た世界とは別の…もっと科学技術の進んだ世界から持って来たか再現したんだろうけど……こんなの神様の間でもタブーになるんじゃないのか?
今までの遺跡では危険な物はあってもこの世界の人にまるで理解出来ないような技術で作られた物は…
「……」
「ジュン様?どうかされましたか?」
「何考え込んでるの?」
「ああ、いや。何でもないよ。行こう」
この施設、もしかして…あのバカ神が作った施設じゃないだろうか。
このタブーとか世界観とかを無視した感じ…あのバカ神なら平気でやりそうな気がする。
だとしたら…まだ他にも色々と危険な物が…メイド型アンドロイドより危険な物もあるかもしれない。
それどころか、もしかしたら此処にあのバカ神が居る…?
此処でいきなり最終決戦…何て事は無いと思うが…




