第531話 神の島 3
セフィさんの案内によって案内された遺跡は島の森の中にある神殿。
鬱蒼と生い茂った深い森の中に神殿があった。
「遺跡ってこれ?でも遺跡にしては…」
「随分と綺麗な形で残ってる。とても神族の遺跡には見えないけど…」
「確かに。セフィさん、この遺跡の中には入ったんですか?」
「いいや。私達だけで未知の遺跡に入るのは危険過ぎるからな」
「ん?それで何故この遺跡が神族の遺跡だと?」
「この島にかつて人が住んでいた記録など無いからだ。勿論周辺の島にも。故にこれは神族の遺跡以外にありえない、という訳だな」
歴史的観測からの推測に過ぎないって事か。
しかし此処に人が住んでた記録が無いのなら、こんな無人島に神殿を建てる事が出来るのも神族くらいか。
「もしかして遺跡じゃなくて現在進行形で此処に神族が住んでるんだったりして」
「それは無いと思うぞ?此処数日様子を見ていたが…中から誰かが出てくる事は無かった。入口にはトラップを仕掛けておいたが何も掛からなかったし」
「トラップって…」
「ホントに神族が出て来たらどうするのよ…」
怖いもの知らずにも程がある。素直に助けを求めれば助けてくれるかもしれないのに。
罠になんか掛けたら不要な怒りを買うだけじゃすまないかも。
「何、トラップと言ってもただ糸が張ってあるだけだ。その糸が切れたり外されたりしていれば、人の出入りがあったという事。だが今日までそれは無かった。少なくともあの遺跡に誰かが入った形跡は無い。第一、扉には鍵が掛かっているしな」
「なるほど…それに鍵ですか」
それなら確かにこの神殿は遺跡なのか。そして鍵…最悪扉は破壊するしかないかもな。
ああ、そうだ。一応試してみるか。
「ん?ジュン殿、それは?」
「魔法の鍵です。これで開くかどうか、試してみます」
『暴風の谷』の遺跡では役に立ったけど…此処ではどうかな。
意外とアッサリと開いたり…あ。
「ガチャリって…もしかして本当に開いたのか?」
「そうみたいですね…」
本当にこれ、どこで手に入れたんだ?ノエラに視線を送ってみるけど…ツイっと逸らされた。
やっぱり入手経路は秘密なんですね…
「凄いじゃないか。もしかしてどんな鍵もそれで開けられるのか?」
「対策が施されてない、余程複雑な作りの鍵で無ければ開けられるそうです」
「ほほう。もしかしてジュン殿の部屋にもその鍵があれば入れるのか?」
「不可能です。ジュン様の部屋の鍵は専用の鍵でしか開きませんし、トラップも仕掛けてあります。ジュン様以外の者が正規の手順を踏まずに扉を開けようとした場合、命の保証はありません」
「そ、それは大袈裟だろう?幾ら何でもそんな…」
「事実です。恐ろしい事に」
夜間にボクの部屋に侵入を企てる者が多く。
企ては全て失敗に終わり侵入者はゼロだったのだが…そんな騒ぎがあっちゃ眠れたもんじゃない。
毎夜そんな事じゃたまったもんじゃないので、ボクの部屋の警備と防犯は大幅に増強されたのだ。
トラップの解除はボクの部屋の中からのみ行える。
「まぁそれでも侵入しようとして気絶してる所を捕縛される人もいるんですが。ねぇクリステア」
「そんな事もありましたね…懐かしい想い出です」
「姉さん…何を遠い過去のように…そんなに昔の事じゃないでしょ。想い出にしまうこむには早すぎるわよ」
そう、ボクの部屋のドアに仕掛けられてるトラップはクリステアが気絶する程なのだ。
完全武装のクリステアだったら無事だったろうけど、ネグリジェに枕という装備だったからなのだが。
「い、一体どんなトラップが仕掛けてあるんだ?」
「聞きます?先ず、鍵を開けずにドアノブを回した場合、どんな大男でも気絶する電撃が放たれます」
「最初からそれか!」
「その電撃に耐えてドアを開けようとした場合は天井と壁から槍が出て来ます」
「完全に殺しに来てるじゃないか!」
「槍の穂先は潰してあるから痛い思いをするだけですよ。次に床が開いて落とし穴になります。地下牢まで直行です」
「…ジュン殿の部屋は何階にあるんだ?」
「五階です」
「やっぱり死ぬじゃないか!」
「地下牢にはクッションがあるから死にはしませんよ。更に落とし穴もクリアした者にはマヒ毒のガス攻撃です」
「本当に容赦ないな!」
「全部死にはしない程度じゃないですか。最後にそれでもドアを開けようとしたら警報が鳴ります」
「最初に警報にするべきだろう!?」
「安眠する為に罠を仕掛けたのに警報が鳴ったら安眠出来ないじゃないですか。ボクが嫌いな事の一つに安眠の妨害があります。結構本気で不機嫌になりますから。覚えておいてくださいね」
「う、うむ…」
これらの罠に加えて城内には夜間でも警邏中の兵士や騎士が居る。
彼らの監視網をすり抜けこれらの罠を全て突破するのは至難の業。
トラップを一つ一つ解除するにもトラップ解除のプロが数時間掛かる複雑さ。
此処までしてようやくボクの部屋に侵入しようと企てる者が居なくなったのだ。
「だ、だがそれでは緊急時にジュン殿を起こせないではないか。緊急時に部屋に入る為の手段があるのではないか?」
「中々鋭いじゃないですか。残念ながらそれは教えられませんけど、知った所でセフィさんがその手段を用いてボクの部屋に入る事は出来ませんよ」
「う、うむ…」
というか、普段からその手段を用いてノエラが毎朝ボクを起こしに来るのだが。
単に合鍵をノエラに預けてるだけだし。
それじゃノエラが夜に侵入するじゃないか、と当然考えたが誰に合鍵を預けるかの際、ノエラを外そうとしたら泣かれそうになったのでやむなしの人選だ。
「という訳で、ジュン様の部屋の警備は城内で最高です。そうでなくても魔王家の方の部屋は騎士が厳重に警戒してます。侵入は不可能だと思ってください」
「はい…」
何故落ち込むのか。理由を問いただしたいとこではあるが、そろそろ…
「さて、案内有難う御座いました、セフィさん。それじゃ一旦グリムモアに送りますね。ボク達は遺跡に――」
「お、おい!私は嫌だぞ!さっき帰らないと言ったばかりだろう!」
「落ち着いて、最後まで聞いてください。一旦ですよ。まさかそのままの恰好でエルムバーンに行くわけにもいかないでしょう?一旦戻って、荷物を用意しておいてください。遺跡の探索が終わり次第、必ず迎えに行きますから」
「ほ、本当か?そのまま迎えに来ないままだったりしないか?」
「約束しますよ。遺跡の探索中に死んだりしない限り迎えに行きます。あと本当にマークスさんの結婚式に参加するつもりなら祝いの品も用意しておいた方が良いんじゃないですか?」
「セラフィーナ様、確かにジュン様の仰る通りかと」
「私達、着替えも御金もありませんし…現実的に一度はグリムモアに帰りませんと」
「エヴァ様にも早めに謝っておいた方が宜しいかと…」
「わかった…だが温泉は良いのか?入りたがっていたろう?」
「あ!そうだ温泉!温泉入るー!」
そうだった、温泉もあるんだった。
あんまり時間に余裕は無いが…
「じゃあ先に温泉に入ってサッパリしてからにしようか」
「うん!」
「私達も最後に入っておこう…フフフ、混浴タイムと行こうじゃないか」
「ボクだけじゃなくセバストもいるんですから。当然水着着用ですよ」
「……」
「そんな眼で見られても困ります、セラフィーナ様…」
此処でセバストだけ除け者にして温泉を楽しむなんて酷い事は出来ない。
セバストだって温泉は嫌いじゃないみたいだし。
遺跡前から一旦離れて海岸沿いにある温泉へ。温泉は中々広く、この大人数でも一度に全員が入れる。
前方に海を見据える、絶景風呂だ。
セフィさん達の水着はアイ達が貸し出していた。何故魔法の袋に常備してるのかは知らないが。
そしてミズンさん達は全裸で入ろうとしていたが全力で阻止した。
エルムバーンで暮らして二年近くになる彼女達だが、そこら辺はまだこちらの色に染まってくれない。
「ふぅ~…いいお湯ね~…」
「ですねー…肩こりに効きそうですー…」
「あー…確かに…肩に良い感じに効いてます…」
「…ウチは肩こりないから、それはわからないわね~…もうすぐわかるようになると思うけど!」
「あ、リリーはわかるですぅ」
「私もわかります」
「……」
「ルチーナ…そんな泣きそうな顔しなくても…」
「セラフィーナ様も。泣いても胸は大きくなりませんよ」
「うるさいな!お前達だって私と大差ないだろう!」
「ほんとにそう思ってます?」
「私とペトラは並以上ですよ。パルヴィよりは小さいですけど。並以下のセラフィーナ様とは違います」
「な、並以下…」
うん。まぁ…ピエラさんとペトラさんはDに近いC。
残念ながらセフィさんは…Aに近いBといった所か。
「うぅ…ええと…」
「仲間を探しても無駄よ。この中で一番胸が無いのは貴女よ。間違いなく」
「そ!そんなバカな!そこの…セリアといったか!彼女は私より…あれ?」
「フ。今の私は立派な巨乳」
「バ、バカな…最初に会った時は私より小さかった筈…一体何故!」
「成長期」
「成長期…いや、それだけか?何か秘密があるんじゃないのか?」
「無い」
まぁ嘘だが。まさか世界樹の実を食べたからなんて言えないし。グリムモアの王族であるセフィさん達には尚更。
それに実際、世界樹の実を食べて胸を大きくした日から成長もしてる。
今のセリアたんの胸はDはあるのだ。
「さて。そろそろあがろうか。待機組が待ちくたびれてるだろうし」
「「「は~い」」」
「ほら、セラフィーナ様」
「いつまでも現実に打ちひしがれてないで」
「早く着替えましょう」
「うん…」
さて。温泉で時間をとってしまったが…今日明日中に遺跡を攻略するとしよう。




